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配偶者の自己破産で本当に困ること 弁護士が4組の夫婦を追跡【弁護士の現場】

2026.07.21 弁護士コラム

自己破産そのものは本人だけに法的効力が及ぶ手続きですが、配偶者がいる場合に限って言えば、現場で本当に困る場面はいくつかのパターンに集中します。配偶者の信用情報や戸籍がどうなるかという話は別の記事でも触れていますが、今回はそれよりも一歩踏み込んで、ご相談の現場でとくに対応が難しくなる4つの典型的な状況を、ご相談から解決までの流れに沿ってお伝えします。

紹介する4組は、いずれも実際にあった特定の一件ではなく、これまで担当してきた同種のご相談から共通点をまとめた典型例として整理したものです。

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パターン1:ペアローンで自宅を購入していたご夫婦

夫婦で共働きをし、ペアローンで自宅を購入されているケースは年々増えています。このパターンで夫婦のどちらか一方が自己破産することになると、自宅と住宅ローンの扱いがいちばんの問題になります。

ペアローンは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを組み、互いに連帯保証人になる仕組みです。一方が自己破産すると、もう一方が連帯保証人として残債の一括支払いを求められ、自宅にも双方の抵当権が設定されているため、片方が払い続けようとしても抵当権が実行されて競売にかかる流れになります。

このパターンで現場が動いていく流れは、おおむね次のようになります。

  • 自己破産の方針が固まった段階で、もう一方の配偶者にも一括請求がいくことが確定する
  • 配偶者の収入だけでは残債を払いきれず、配偶者も債務整理を検討せざるを得なくなる
  • 任意売却で自宅を売却し、残った債務をそれぞれが処理する流れに収束していく

任意売却で自宅を手放したあと、配偶者が任意整理または個人再生で立て直し、本人は自己破産で免責を取るという組み合わせになることが多くなります。住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使って自宅を残せないかというご希望もよくいただきますが、ペアローンの場合は配偶者名義の抵当権が物件に設定されているため、住宅資金特別条項の要件を満たせず使えません。

このパターンで本当に困るのは、自宅を残す選択肢が現実的にほぼなくなるという点です。受任のご相談に来られた段階で、自宅の処分は避けられないとお伝えするのは、いつも重い場面になります。

パターン2:配偶者が連帯保証人になっていたご夫婦

事業資金、自動車ローン、奨学金など、配偶者が連帯保証人になっているケースもよく見ます。とくに多いのが、ご本人が独立開業されたときの事業資金融資で、奥様または旦那様が連帯保証人になっていた形です。

このパターンで自己破産をすると、債権者は連帯保証人である配偶者へ全額を一括請求します。現場で起きていくのは、次のような流れです。

  • 事業資金の場合、残債が500万円から1,000万円規模になることも珍しくなく、配偶者の収入だけでは一括返済が現実的でない
  • 結果として配偶者も任意整理・個人再生・自己破産のいずれかを選ばざるを得なくなる
  • 連帯保証人として支払った分は本人への求償権として残るが、本人が免責を取ったあとは求償権も破産債権として消えてしまうため、配偶者は保証分を実質的に取り戻せない

このパターンで本当に困るのは、ご本人だけの問題ではなく、ご夫婦両方が信用情報のブラック状態になってしまう点です。事故情報は5年から7年残るため、その期間は夫婦どちらの名義でも新規ローンやクレジットカードが組めません。

事前の対応としては、自己破産を選ぶ前に、任意整理で保証人付き債務だけを整理の対象から外せないか検討するのが定石です。借入総額や債権者の構成によっては難しい場合もありますが、配偶者まで巻き込まずに済む可能性があるなら、最初に検討するべき選択肢になります。

パターン3:配偶者名義の口座を生活費口座にしていたご夫婦

夫が会社員、妻が専業主婦というご家庭で、夫の給料を妻名義の口座に振り込んで家計を管理していた、というケースは非常に多いです。このパターンで夫が自己破産すると、妻名義の口座が破産管財人の調査対象になります。

民法762条1項により、配偶者名義の財産は原則として配偶者の特有財産です。しかし、実質的に夫の収入だけが入っていた口座は、名義は妻でも、実質的所有者は夫であると評価される余地があります。

このパターンで現場が動いていく流れは、おおむね次のとおりです。

  • 申立て時に、ご家族名義の預金口座の入出金履歴を過去2年分程度提出する
  • 管財人が、妻名義の口座への入金が誰の収入によるものかを確認する
  • 入金のほぼ全部が夫の給与で、妻自身の収入がない場合、口座残高の一部または全部が破産財団に組み込まれる可能性が出てくる

加えて、破産直前に夫名義の預金を妻名義に移していた場合は、破産法160条以下の否認権の対象となり、移した分の取り戻しが請求されます。

このパターンで本当に困るのは、ご夫婦が共有財産だと思っていた預金が、手続き上は夫の財産として扱われることを、申立て直前に知るケースが多い点です。生活費を確保しておこうと考えて妻名義口座にまとめて入金してしまうと、それ自体が否認権の対象になってしまうこともあります。

事前の整理としては、ご相談の段階で過去2年分の入出金を弁護士と一緒に確認し、どこまでが安全で、どこからが問題になりそうかを洗い出しておくことが欠かせません。

パターン4:夫婦どちらも経済的に追い詰められているご夫婦

夫が事業の失敗で借入を抱え、妻も生活費の補填のために借入を重ねていた、というように、ご夫婦それぞれが借金を抱えてしまっているケースもあります。一方が自己破産しても、もう一方の借金が続いている限り家計は立ち直らないため、夫婦同時に債務整理を検討することになります。

このパターンで現場が動いていく流れは、おおむね次のとおりです。

  • 家計収支表は夫婦の収支をまとめて作成するため、片方だけ破産しても家計の健全化が見込めない場合は、裁判所から指摘が入る
  • 夫婦同時に自己破産を申立てる、または夫は自己破産・妻は個人再生というように手続きを組み合わせる
  • 同時に申立てる場合、弁護士費用と裁判所の予納金が2人分必要になるため、費用負担が重くなる

夫婦同時に管財事件になると、それぞれに予納金が発生し、合計で50万円以上の費用がかかることもあります。費用の積立てを進めながら、申立てのタイミングを調整するのが現場の実務です。

このパターンで本当に困るのは、手続き費用の捻出と、申立てまでの数か月をどう乗り切るかという生活設計の部分です。法テラスの民事法律扶助制度や、弁護士費用の分割払いに対応している事務所を活用するなど、複数の経済的支援を組み合わせて手続きに入っていくことになります。

まとめ:4組に共通するのは事前の準備の差

ここまで4つのパターンを見てきましたが、いずれにも共通するのは、ご相談に来られるタイミングが早ければ早いほど、選べる選択肢が広がるという点です。

  • ペアローンの場合、任意売却の時期を早めに設計できれば、配偶者の生活への影響を抑えられる
  • 連帯保証人がいる場合、任意整理で対象から外せるかを最初に検討できる
  • 配偶者名義口座の場合、過去2年分の整理を申立て前に終えておける
  • 夫婦同時破産の場合、費用の積立てを計画的に進められる

逆に、ご相談が遅れたり、自己流で財産を動かしてしまったあとでの相談になると、否認権の問題が出てきたり、手続きが管財事件に振り分けられたりして、解決までの時間も費用も増えていきます。

配偶者の自己破産で本当に困るのは、手続きそのものではなく、その手前の準備が不十分なまま手続きに入ってしまうことです。配偶者の暮らしを一緒に守ろうという視点で動けるかどうかが、その後の家族の生活を大きく左右します。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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