弁護士コラム

【現役弁護士が徹底解説】誓約書で確実に慰謝料を請求する方法|不倫問題の解決手順を徹底解説

パートナーの不倫が発覚し、「慰謝料はどうやって請求すればいい?」「夫婦関係を修復できるのか?」など、頭を抱えてしまう方は少なくありません。そんなとき、再発防止や慰謝料の支払いなどをきちんと取り決める手段として有効なのが「不倫誓約書」です。不倫問題は、感情のもつれや法的な手続きが複雑に絡み合うため、冷静な判断と確実な書面化が必要になります。

本記事では、「誓約書と示談書の違い」「誓約書の法的効力」「具体的な書き方」などをわかりやすく解説します。不倫によって傷ついた信頼関係を、どのようにして修復し、再発を防ぎつつ慰謝料を確実に受け取るか。その手順と注意点を、現役弁護士の視点から徹底的にお伝えしていきます。問題解決への第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

不倫誓約書って何?

不倫した人が書く「約束の証」

不倫誓約書は、過ちを犯した人が自らの意思で作成する重要な約束文書です。単なる謝罪の手紙ではなく、将来にわたる具体的な約束を示し、法的な効力も持つ文書なのです。

人は誰でも過ちを犯すことがあります。大切なのは、その過ちを認め、どう向き合うかです。口頭での謝罪や約束は、時として風化してしまうことがあります。そこで、書面という形で残す誓約書が重要になってきます。法的な拘束力を持たせることで、約束の重みが増し、信頼回復への第一歩となるのです。

誓約書には、具体的な約束の内容が明記されます。例えば、不貞相手との接触を完全に断つこと、配偶者への誠実な態度を約束すること、そして違反した場合の違約金額などが含まれます。これらの約束は、必ず実現可能な範囲で設定し、強制ではなく自らの意思で記載することが大切です。

誓約書は、決して相手を追い詰めるための道具ではありません。むしろ、新たな出発点としての意味を持つものです。公正証書として作成することで、より強い効力を持たせることもできますが、あくまでも双方の合意のもとで進めることが望ましいでしょう。

なぜ作るの?目的と役割

誓約書を作成する最も重要な目的は、壊れた信頼関係の修復にあります。不倫という深い傷を負った夫婦関係を立て直すためには、具体的な約束と、それを守る意思の明確な表明が必要不可欠なのです。

誓約書には、三つの重要な役割があります。一つ目は、不貞行為の再発防止です。違約金という具体的な制裁を設けることで、強い抑止力として機能します。例えば、「誓約書違反が発生した場合は、1回につき50万円を支払う」といった条項により、約束を破ることへの具体的なリスクが生まれます。

二つ目は、法的な拘束力です。口頭での謝罪や約束は時間とともに薄れがちですが、書面化することで明確な証拠となります。特に、強制執行認諾文言付きで公正証書として作成すれば、強制執行も可能な法的効力を持つことになります。

三つ目は、関係修復の意思表示としての役割です。自ら進んで誓約書を作成し、具体的な約束を示すことは、真摯な反省と更生の意思を表明することになります。これは、裏切られた配偶者の不安を和らげ、信頼回復への第一歩となるのです。

しかし、誓約書は決して復讐や制裁のための道具ではありません。むしろ、新たな出発点としての意味を持つものです。そのため、内容は実現可能で合理的なものとし、双方の合意のもとで作成することが大切です。また、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら進めることで、より適切な内容の誓約書を作成することができます。

このように、誓約書は単なる約束の紙切れではなく、夫婦関係の修復と、将来の平穏な生活を確保するための重要な法的文書なのです。

示談書と誓約書はどう違う?

示談書:お金のことを決める約束

示談書というのは、「お金の解決」を約束する大切な書類なんです。事故を起こしたときや、トラブルが起きたときに使います。

例えば、車の事故を起こしてしまったとき。「私(加害者)は〇〇さん(被害者)に、治療費として30万円を支払います」というように、はっきりとお金の約束を書きます。これは法律的にも効力があるので、後から「やっぱり払いません」とは言えません。

示談書を書くときは、いつまでにいくら支払うのか、どうやって支払うのかをしっかり決めます。お互いの印鑑(またはサイン)も必要です。

誓約書:これからはちゃんとしますという約束

誓約書は、「これからは気をつけます」「二度と同じことはしません」という約束を書く書類です。お金の話というより、これからの行動を改める約束をするものです。

例えば、会社でミスをしてしまったとき。「今後は会社のルールをしっかり守ります」「同じミスを繰り返さないよう気をつけます」というような内容を書きます。近所付き合いでも、「夜遅くは騒がないようにします」といった約束事を書くこともあります。

誓約書は、その人の「反省」と「これからちゃんとする」という気持ちが大切です。

どう使い分ければいいの?

基本的には:

  • お金の解決が必要なとき → 示談書
  • 行動を改める約束が必要なとき → 誓約書

場合によっては両方必要なこともあります。例えば、パワハラなどのケースでは、「慰謝料を支払う」(示談書)と「二度とハラスメント行為をしない」(誓約書)の両方を書くことも。

示談書は法的な効力が強く、裁判でも証拠として認められます。一方、誓約書は主に道義的な約束。でも、どちらも重要な約束事を記録する大切な書類です。

困ったときは、弁護士さんや専門家に相談するのがおすすめです。特に示談書は、一度書いたら後から変更するのが難しいので、慎重に内容を決めましょう。

誓約書の法的効力について

基本的な効力

誓約書の法的効力については、多くの方が気にされる点です。結論から言うと、誓約書は当事者の意思表示を示す証拠としては認められますが、それ自体では、強制執行を行う能力はありません。

誓約書は基本的に「道義的な約束」という性質が強いものです。例えば、「深夜に騒音を出さない」という約束を破っても、それだけで法的な制裁を受けることはありません。ただし、誓約書の存在は、トラブルが裁判に発展した際の重要な証拠となります。なぜなら、問題の認識と改善の意思を示した記録だからです。

また、誓約書は労働問題でもよく使われます。例えば、会社の備品を私的に使用した社員に誓約書を書かせる場合、それは懲戒処分の判断材料として有効です。同じ問題を繰り返した際、「既に誓約書で改善を約束していた」という事実は、より重い処分の根拠となり得ます。

違約金は払わないといけないの?

誓約書に違約金の定めを記載することは可能ですが、その効力については慎重な判断が必要です。違約金の支払い義務は、以下の条件で判断されます。

まず、違約金の金額が「合理的な範囲」を超えている場合、裁判所によって減額される可能性が高いです。例えば、「遅刻をした場合は100万円を支払う」といった明らかに過大な違約金は無効となる可能性があります。

また、違約金を支払う約束をした状況も重要です。強制や脅迫によって書かされた誓約書は無効です。例えば、「これに署名しないと解雇する」といった脅しのもとで書かされた誓約書は、法的効力が認められません。

実際の事例では、違約金の支払いを求める裁判で、「約束時の状況」「違約金の金額の妥当性」「違反行為の重大性」などが総合的に判断されます。

公正証書にするとどうなる?

誓約書を公正証書にすると、法的な効力が大きく変わります。公正証書は、法務局に勤める公証人が作成する公的文書であり、強制執行認諾文言を入れることで、裁判を経ずに強制執行が可能になります。

具体的には以下のような効果があります:

  • 裁判所での証明力が格段に高まります
  • 約束が守られない場合、すぐに強制執行できます
  • 内容について「そんなこと約束していない」という争いを防げます

ただし、公正証書にする際は費用がかかり、また双方が公証役場に出向く必要があります。さらに、公証人が内容の適法性をチェックするため、不当な内容は公正証書にできません。

例えば、借金の返済約束を公正証書にする場合、「毎月の返済額」「支払期日」「遅延損害金の利率」などを明確に定めることで、返済が滞った際にすぐに差し押さえなどの法的手続きが可能になります。

このように、公正証書化は誓約書に「強制力」を持たせる有効な手段ですが、費用と手間がかかることを考慮して、重要な案件に限って検討するのが一般的です。

4.誓約書の具体的な書き方

これだけは必ず書こう

誓約書を作成する際に、最も重要なのは基本的な構成要素を漏れなく記載することです。まずは「誓約書」という表題を明確に記載します。法的な文書としての性質を持つため、表題は中央上部に太字で記載するのが一般的です。

次に宛先を書きます。被害者である配偶者に宛てて、「○○○○様」と丁寧な表現を使用します。本文では、まず発生した事実を時系列に沿って明確に説明します。「令和5年4月頃から令和6年3月頃まで、貴殿の配偶者と不適切な関係を持ち続けていた」というように、期間や状況を具体的に記載します。その際、事実関係は客観的に記載し、言い訳がましい表現は避けます。

続いて、その行為に対する反省の意を示します。単なる「申し訳ありません」という形式的な謝罪ではなく、相手方とその家族に与えた精神的苦痛や、信頼関係を裏切った重大性についても言及します。

そして、今後の約束事項を記載します。これは実行可能な内容である必要があり、抽象的な表現は避けます。「今後は気をつけます」ではなく、「本日以降、貴殿の配偶者との一切の接触(電話、メール、SNSを含む)を断ち切ります」というように、具体的な行動として示します。

最後に、署名欄には作成日、住所、氏名を記入し、実印を押印します。生年月日も記載し、場合によっては立会人(弁護士等)の署名押印も加えます。これらの情報は後々の法的手続きの際の証拠としての効力を高めるために重要です。

実際の文例:不倫における誓約書の例

      誓約書

○○○○様

私、△△△△は、令和5年4月から令和6年3月までの間、貴殿の配偶者である□□□□さんと不適切な関係を持ち続けていたことを深く反省いたします。

この度の不倫により、貴殿ならびにご家族に多大な精神的苦痛を与えてしまいましたことを、心からお詫び申し上げます。

つきましては、下記の事項を誓約いたします。

  1. 本日以降、□□□□さんとの一切の接触(電話、メール、SNS等を含む)を断ち切ります。
  2. 慰謝料として金300万円を、以下の方法にて支払います。 ・令和6年5月31日までに:100万円 ・令和6年8月31日までに:100万円 ・令和6年11月30日までに:100万円
  3. 支払い方法は、貴殿指定の銀行口座への振込みとし、振込手数料は私が負担いたします。
  4. 約束した支払期日に遅れた場合は、その日から年14.6%の遅延損害金を支払います。

上記の約束に違反した場合、貴殿の法的措置に対して、一切の異議を申し立てません。また、本件に関する一切の事実を、第三者に口外いたしません。

 令和6年4月20日

  住所:○○県○○市○○町1-2-3   氏名:△△△△  印   生年月日:昭和○年○月○日

立会人   住所:○○県○○市○○町4-5-6   氏名:◇◇◇◇  印  (△△△△の法定代理人)

書く時の注意点

誓約書を作成する際は、まず関係期間や金額などの事実関係を正確に把握することが重要です。曖昧な記憶や推測に基づいて書くのではなく、必要に応じて関係者や弁護士に確認を取りながら、事実を正確に記載します。

文章は読みやすく丁寧な字で書きます。特に金額や支払期日などの重要な部分は少し太めに書いたり、適度な行間を空けたりして読みやすさを確保します。誓約書は法的な文書なので、略字は使わず、常用漢字を適切に使用します。

内容面では、自分の非を認めつつも、感情的な表現は避けます。例えば「深く反省しております」という表現は適切ですが、「取り返しのつかないことをしてしまい、後悔の念に堪えません」といった過度に感情的な表現は避けるべきです。

また、他者への責任転嫁は絶対に避けます。「相手から誘われた」「酔っていた」といった言い訳がましい表現は、誓約書の趣旨に反します。あくまでも自分の行動とその結果について、責任を持って記載します。

4.4 より効果的な書き方のコツ

効果的な誓約書を作成するためには、まず文章の構成を意識することが重要です。導入部では不貞行為の期間と概要を簡潔に説明し、中盤で具体的な反省点を述べ、後半で慰謝料支払いと今後の約束を明確に示すという流れを作ります。

各段落は適度な長さに収め、一つの段落で一つの内容を扱います。例えば、事実説明の段落、反省の段落、慰謝料支払いの段落というように区切ることで、読み手にとって理解しやすい文章になります。

約束事項を記載する際は、具体的な行動として示すことが効果的です。「二度と不倫はしません」という抽象的な表現ではなく、「配偶者との接触を完全に断つ」「SNSでのやり取りを即刻停止する」「勤務先での接触も避ける」というように、具体的な行動を示します。

また、慰謝料の支払いについては、金額、支払期日、支払方法、遅延損害金などを明確に記載することが重要です。高額な支払いであっても、確実に履行できる現実的な分割払いのスケジュールを設定します。

最後に、決意表明では「確実に」「必ず」といった強い意思を示す言葉を使用しつつ、同時に謙虚さも忘れずに表現します。「今回の不貞行為を深く反省し、約束した事項を必ず履行いたします」というような締めくくりが効果的です。

まとめ

誓約書は、不適切な行為に対する反省と今後の約束を明確にする重要な法的文書です。特に不貞行為に関する誓約書では、事実関係の明確な記載、金銭的な約束、そして将来の行動指針を具体的に示すことが求められます。

作成にあたっては、まず表題、宛先、本文、署名欄という基本構成を押さえ、事実関係を時系列に沿って正確に記載することから始めます。不貞行為の期間、関係性、そして相手方とその家族に与えた精神的苦痛についても明確に言及します。

慰謝料に関しては、具体的な金額、支払期日、支払方法、遅延損害金の利率など、金銭的な約束事項を明確に記載します。同時に、今後の行動についても「配偶者との一切の接触を断つ」など、具体的な形で示す必要があります。

記載内容は感情的な表現を避け、客観的な事実と具体的な約束に焦点を当てます。また、他者への責任転嫁や言い訳めいた表現は使用せず、自身の責任を明確に認める姿勢を示すことが重要です。署名欄には住所、氏名、生年月日を記入し、実印を押印することで、文書としての効力を確実なものとします。

このように、誓約書は単なる謝罪文書ではなく、法的な効力を持つ重要な約束文書です。そのため、作成時には弁護士などの専門家に相談することも推奨され、内容の正確性と実効性を確保することが望ましいと言えます。