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離婚時の金銭的負担が大きすぎるときに知っておきたい対処法と交渉のポイント

2025.02.03 弁護士コラム

夫婦関係の破綻によって婚姻を解消する場合、精神的な苦痛に対する金銭の支払いが発生することがあります。ですが、実際に請求される金額が高額になり、経済的にとても払えそうにない……という状況に悩む方も少なくありません。特に、突然大きな支払いを求められたり、多重債務の状態に陥っていたりすると、「どう対応すればよいのか」と混乱してしまうでしょう。

 本記事では、離婚時に必要となる補償金が重荷になっていても、最終的に諦めずに解決を目指すために役立つ情報をまとめました。法律上の取り扱いや交渉の進め方、減額交渉のポイントなど、具体的な方法を詳しく解説します。仮に経済的な事情が厳しい状態でも、適切な手順を踏めば、思わぬ道が開ける場合もあります。この記事を参考に、まずは落ち着いて対策を考えてみてください。

離婚時の金銭の支払いとは?その背景を知ろう

どんなときに請求される?

婚姻生活が破綻する原因にはさまざまな事情がありますが、不貞行為や暴力など、片方の違法または不当な行為によって相手が精神的苦痛を被った場合、請求される金銭的補償が「慰謝料」と呼ばれるものです。たとえば、夫婦の一方が別の異性と深い関係を持ったり、モラハラやDV(ドメスティックバイオレンス)に及んだ場合に、もう一方が「心理的ダメージを受けた」として求めるのが典型的な例です。

法律上の根拠

日本の民法では、他人の権利や利益を違法に侵害して損害を与えた場合、その損害を賠償する責任があると定めています(民法709条)。夫婦間でも同様に、相手に対する権利を侵害したと判断されると、精神的被害に対する支払いが必要となるわけです。金額は事案の内容や結婚期間、子どもの有無、夫婦関係の破綻度合いなど、多角的に検討されるため、「一般的には○円」という一律の基準はありませんが、過去の裁判例の蓄積により、ある程度の相場のようなものはあります。

なぜ多額の補償金(損害賠償金)が発生するのか

長期的な不貞行為や悪質な事情

たとえば、一方的に夫婦関係を裏切るような行為が長期間続いていた場合、相手の苦しみは深刻だとみなされます。あるいは、激しい暴力行為が続いていたケース、度重なるモラハラによって相手が重度の精神的疾患を負ってしまったケースなども、金額が高く算出されがちです。

経済力や資産状況

支払う側の経済力・資産状況も考慮されることがあります。たとえば、支払う側が高収入で資産が多い場合、金銭的補償が増える傾向があるとも言われています。ただし、逆に十分な収入源がないならば、その状況を考慮して決定されることもあるため、一概に「高額を払わなければならない」わけではありません。

付随する費用との混同

離婚時には、配偶者が専業主婦(夫)だった場合などに扶養的な意味合いで「財産分与」や「養育費」の話が同時進行になるケースも少なくありません。これらが一括で語られると、補償金の金額がとても大きいように感じるかもしれません。本来は性質の異なる費用ですが、合計が大きく見えてしまう要因にもなっています。

経済的に支払う余裕がないときに考えたい選択肢

一括での支払いが難しい場合

離婚の原因を作った側が明らかに不利な事案であっても、一度に大金を用意できない状況は珍しくありません。収入が低い、既に借金を抱えている、あるいは突然仕事を失ったなど、多様なリスクがあるでしょう。そうした場合には、一括払い以外の選択肢を模索することが大切です。

まずは相手との話し合い

裁判所が関与する前の段階であれば、当事者同士の協議や、弁護士を通じた示談交渉によって、支払い方法を柔軟に変更できる余地があります。分割払いで合意できるのか、一定期間据え置いてから支払うことはできないかなど、具体的な提案を行い相手の理解を得る道を探るとよいでしょう。

公的制度やローンの検討

高額な金銭をどうしても用意しなければならない場合、銀行やローン会社からの借り入れを検討する人もいます。しかし、これによって返済に追われ、生活再建が難しくなるリスクも考慮が必要です。また、日本政策金融公庫や地方自治体の融資制度など、公的機関が提供する低金利や無利子の貸付制度があるかもしれません。自分に適した制度がないか情報収集してみるのも一つの手段です。

分割払いや減額は可能?交渉のポイント

減額に応じてもらえるケース

「支払い額があまりに高すぎる」「当事者の収入から見ても非現実的」といった場合、交渉次第では減額してもらえる可能性もあります。ただし、相手が強い怒りや不満を持っている場合には簡単ではありません。誠意を示しながら、今後どのように支払いを完了させるか具体的な見通しを立てて話し合うことが重要です。

分割払いで合意を取る方法

一度に支払えない場合、月々いくらずつ払うのかを具体的に提案する方法が有効です。「収入から生活費を除いた残額を確実に支払っていく」という計画を数字できちんと示すと、相手も納得しやすくなります。ただし、分割でも払えなくなるリスクがあるなら、その点も含めて相談しておくと後々のトラブルを回避しやすいでしょう。

必ず書面化しておく

「口約束」で分割払いや減額をしてもらう約束をしても、後から覆される可能性があります。示談書や公正証書を作成し、支払い条件や期日、万が一支払いが滞ったときの対処方法などを明記しておけば、後日に「言った/言わない」の争いになるリスクが低減します。

法的手段に移行した場合の流れとリスク

相手が訴訟を起こす可能性

示談交渉が決裂したり、支払いが滞ったりすると、相手は損害賠償金の支払いを求めて、裁判を提起することがあります。裁判所で審理され、法律的に金額と支払い義務が確定する判決が出れば、それに従わなければ強制執行(財産や給与の差し押さえなど)を受けるリスクが生じます。

調停や審判

家庭裁判所では、離婚条件や金銭の請求をめぐる争いを「調停」の場で話し合う手続きが整備されています。調停委員という第三者の関与によって、双方が歩み寄りやすい雰囲気をつくることを目指しています。調停でも解決できなかった場合に「審判」や「訴訟」へと進む流れです。

強制執行のリスク

裁判所で確定した債務を支払わないままでいると、相手は強制的な手段を取ることが可能となります。たとえば、給与債権や銀行口座の差し押さえなどが代表例です。これが行われると、毎月の給料や口座に入金されたお金が差し引かれてしまうため、生活費すら不足するケースもあり得ます。

もし裁判で決まった金額を工面できないとき

破産手続きは適用される?

一般的に「精神的苦痛に対する補償の支払い義務」は、債務の一種として認められます。自己破産を申し立てると、この種の債務も免責される場合があります。ただし、悪質性が高い不法行為によって発生した支払い義務(悪意があるなど)は免責対象外とされる可能性もあり、注意が必要です。

生活保護を受給する場合

経済的に追い詰められ、生活保護を申請したとしても、その支給額から優先的に補償金が引かれるわけではありません。しかし、受給後に支払い義務が残る場合は、やはり協議や分割払いの合意などを模索しないと、今度は相手から強制執行されるリスクがつきまといます。生活保護だけでは補償金を捻出できない状況も多いため、専門家に相談することが欠かせません。

差し押さえ対象とならない財産

民事執行法では、生活に最低限必要な物品や一部の所得については、差し押さえができないと定めています。例えば衣類や寝具、家具など、日常生活に不可欠な財産は守られます。しかし、それ以外の価値ある財産(貯金や車など)は押さえられる可能性があるので、誤解のないように情報をチェックしておく必要があります。

弁護士や専門家のサポートを得るメリット

法的アドバイスと交渉力

専門家に依頼することで、裁判例を踏まえた適正な金額の見込みや、相手に納得してもらいやすい交渉ポイントを知ることができます。また、弁護士が間に入ることで、直接やり取りする際の精神的負担が軽減され、冷静に話を進めやすくなるでしょう。

書類作成と手続きの代行

示談書や合意書、公正証書などを作成してもらうことで、後のトラブルを防ぐ効果が期待できます。さらに、調停や裁判になった場合でも、手続きに必要な書類や主張の組み立てを専門家が行ってくれるため、自分一人で抱え込むよりもスムーズに進むはずです。

費用面の検討

弁護士への依頼には当然費用がかかりますが、法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、条件次第で相談料や着手金の立て替え制度が利用できる場合があります。経済的に厳しい状況であっても、相談の道を閉ざす必要はありません。当事務所のように、法テラスを契約を締結していない弁護士事務所もありますので、注意が必要です。

生活再建を意識した対応策

自身の収入アップ

離婚後は新たに就職・転職を考えるなどして、経済基盤を安定させることが再スタートには欠かせません。金銭的補償を支払うにあたっても、まとまった収入源がなければ計画倒れになる可能性が高くなります。職業訓練校やハローワークのサービスを活用して、新しい仕事に就く選択肢も検討してみると良いでしょう。

家計の見直しと債務整理

クレジットカードや消費者金融からの借入れがある場合は、債務整理を検討することで月々の返済を減らすこともできます。また、家計簿をつけて支出を見直し、少しでも返済や補償金の捻出に回す努力をすることが必要です。財産分与によって得られた資金をどのように活用するかも含め、計画的に考えましょう。

心理的サポートを活用する

離婚や補償金問題は精神的にも大きな負担がかかります。うつ状態や不安障害を引き起こすことも珍しくありません。カウンセリングやメンタルクリニックのサポートを利用しながら、生活再建に向けて前向きに動くことが大切です。

まとめ:早めの対処と情報収集がカギ

離婚時に求められる金銭面での負担が重く、「どうしても用意できない」と感じる場合でも、闇雲にあきらめる必要はありません。実際には、分割払いや減額交渉、法的手続きを含めたさまざまな選択肢があります。話し合いで相手が合意してくれるかどうかが大きなポイントではあるものの、強制執行のリスクや自己破産の可能性などを含め、知っておくべき情報をしっかり押さえれば、スムーズな解決に向けて一歩踏み出せるはずです。

特に一括払いが難しいときは、弁護士や公的機関のサポートを活用し、現実的に完済可能な計画を提案してみてください。また、裁判所で争う場合には、判決後に強制執行が及ぶ可能性があるため、できるだけ早期に相談し、対処法を確立することが最善策です。

このように、経済的な事情が厳しくても、方法はゼロではありません。自分から情報を収集し、適切なアクションを起こすことこそが、再出発への鍵となります。ぜひ本記事の内容を参考に、前向きに行動を開始してみてください。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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