交通事故で骨折した場合の示談金相場と交渉のポイント

交通事故で骨折をしてしまうと、治療期間が長くなり、日常生活や仕事に大きな影響が出ます。単なる打撲や捻挫とは違い、骨折は完治まで数か月以上かかることも珍しくありません。さらに、後遺障害が残る可能性もあり、精神的な負担も相当なものです。
このため、骨折事故では示談金が比較的高額になりやすい傾向があります。とはいえ、保険会社から提示される金額が「本当に適正なのか」を自分で判断するのは難しいものです。相場を知り、何が金額に影響するのかを理解しておくことが、納得のいく解決への第一歩です。
目次 [閉じる]
骨折事故の示談金を構成する主な項目
骨折による損害賠償額は、いくつかの要素の合計で決まります。ここを理解しておくと、なぜ金額に差が出るのかが見えてきます。
- 治療費:手術費、入院費、通院費、薬代など。
- 入通院慰謝料:治療期間や通院日数に応じて支払われる精神的苦痛に対する補償。
- 休業損害:仕事を休まざるを得なかった期間の収入減を補うもの。
- 後遺障害慰謝料(該当する場合):骨折後に機能障害や変形が残った場合に支払われます。
- 将来の介護費や治療費(重度後遺障害の場合):今後も必要になる費用。
これらの合計額が示談金として提示されますが、どの基準で計算するかによって総額が大きく変わります。
示談金額を決める3つの基準
骨折事故の示談金は、どの基準を使うかによって大きく変動します。
- 自賠責基準
法律で定められた最低限の補償額。入通院慰謝料は1日あたり4,300円(2023年時点)。もっとも低額。 - 任意保険基準
各保険会社が独自に設定する基準。自賠責より高めですが、弁護士基準には及びません。 - 弁護士基準
裁判所の判例を基にした最も高額な基準。骨折事故では、自賠責基準の倍以上になることもあります。
骨折事故の示談金相場(基準別)
相場は骨折の部位や治療期間によって変わりますが、あくまで目安として以下のような傾向があります。
- 腕や足の骨折(手術なし・通院3〜4か月程度)
自賠責基準:約40〜50万円
任意保険基準:約60〜80万円
弁護士基準:約90〜120万円 - 複雑骨折や手術を伴う場合(入院+長期通院)
自賠責基準:約80〜100万円
任意保険基準:約120〜150万円
弁護士基準:約180〜250万円 - 後遺障害が残る場合(関節の可動域制限や変形など)
等級認定により数百万円〜数千万円になることもあります。
金額を左右する主な要因
骨折の示談金は、単に「骨が折れた」という事実だけでは決まりません。次のような要素が大きく影響します。
- 骨折の部位と重症度:日常生活や仕事への影響が大きい部位ほど高額になりやすい。
- 治療期間の長さ:長期化すればするほど入通院慰謝料が増える。
- 通院頻度:同じ期間でも通院回数が多い方が慰謝料は高くなる傾向。
- 後遺障害の有無と等級:等級が高いほど金額は跳ね上がります。
- 過失割合:自分の過失が大きいと、その分減額されます。
骨折事故の交渉でありがちな落とし穴
骨折事故の示談金交渉では、知らずに損をしてしまうケースが少なくありません。特に多いのは「保険会社の提示額をそのまま受け入れてしまう」ことです。初回の提示額は、あくまで保険会社側の都合で算出された金額であり、必ずしも適正とは限りません。
また、治療が終わっていないのに示談を急かされる場合も要注意です。骨折は治療が長引くこともあり、途中で示談してしまうと後から発覚した後遺障害が補償対象にならない可能性があります。
有利に進めるためのポイント
交渉を有利に進めるためには、次の点を押さえておくと安心です。
- 証拠を揃える
診断書、レントゲン画像、通院記録、領収書などを整理しておきます。 - 治療の打ち切りに注意
保険会社が早期終了を促す場合は、医師の判断を最優先に。 - 弁護士基準を調べておく
ネットや法律相談で自分の事故内容の目安を知っておきましょう。 - 後遺障害等級認定の可能性を検討する
機能制限や痛みが残っている場合は後遺障害の申請を検討します。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すると、保険会社との交渉を代行してもらえるだけでなく、慰謝料を弁護士基準で請求できるようになります。骨折事故では、基準の違いによる増額幅が大きいため、依頼するメリットが特に大きいと言えます。さらに、交渉や書類作成といった煩雑な作業から解放され、治療やリハビリに専念できるのも大きな利点です。
まとめ
交通事故で骨折した場合の示談金は、基準や交渉の進め方によって大きく変わります。相場を知ることは大切ですが、目安にとらわれすぎず、自分のケースに合った適正額を求める姿勢が重要です。証拠の確保と情報収集を怠らず、必要に応じて専門家の力を借りながら進めることで、後悔のない解決につながります。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
