弁護士コラム

【現役弁護士が徹底解説】不倫の慰謝料が払えない!その対処法とリスクを徹底解説

不倫・浮気を理由とする慰謝料請求。その金額を見て、愕然とした経験はありませんか?「こんな金額、とても払えない…」。そんな思いで、途方に暮れている方も少なくないでしょう。

この記事は、まさにそんな状況に直面している皆様に向けて書かれています。慰謝料を払えない場合の対処法、請求を受けた金額を払わなかった場合に考えられるリスク、そして問題解決への道筋を、できる限り分かりやすく解説していきます。

 不倫・浮気は決して許されることではありません。しかし、だからといって人生を台無しにしてしまうようなことがあってはなりません。この記事が、あなたの状況を少しでも改善するための一助となれば幸いです。

慰謝料を払えない場合の一般的な対処法

慰謝料を払えない状況に陥ったとき、まず覚えておきたいのは「諦めないこと」「粘り強く交渉を続けること」です。以下に、一般的な対処法をいくつか紹介します。

相手との交渉

   まず最初に考えるべきは、相手との直接交渉です。高額な慰謝料を要求されても、すぐに諦めてはいけません。相手の要求をそのまま受け入れるのではなく、あなたの経済状況(収入、資産)を説明し、適正な金額への減額や一括ではなく、分割払いの可能性について話し合いましょう。

   この際、重要なのは、相手方に対して誠意・誠実さを持って対応することです。謝罪の気持ちを伝え、今後二度と同じ過ちを繰り返さないという決意を示すことで、相手の心情を和らげることができるかもしれません。

弁護士への相談

   法律の専門家である弁護士に相談することは、非常に有効な手段です。弁護士は不倫・浮気問題に関する豊富な経験と知識を持っており、あなたの状況に最適なアドバイスを提供してくれるでしょう。

   また、弁護士を介することで、感情的になりがちな交渉を冷静に進められる利点もあります。相手との直接交渉が難しい場合や、交渉が平行線をたどっている場合は、特に弁護士の助けが有効です。

分割払いの契約

   一括で支払うことが難しい場合、「ない袖は振れない」わけですから、分割払いは有効な選択肢となります。ただし、口約束だけでは後々トラブルの原因になる可能性があるため、書面にて、きちんとした契約を結ぶことが重要です。

   具体的には、公正証書(できれば、強制執行認諾文言付きで)を作成することをおすすめします。公正証書は、法的な効力を持つ文書であり、支払い条件や期間などを明確に定めることができます。これにより、双方の権利と義務が明確になり、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

強制執行への備え

   最悪の場合、相手が裁判所に強制執行を申し立てる可能性があることを理解しておく必要があります。強制執行とは、債務者(あなた)の財産を強制的に差し押さえて、債権者(相手)への支払いに充てる法的手続きです。

   こうなると、給与の差し押さえや、不動産、預貯金口座の差し押さえなどが行われる可能性があります。ただし、生活に必要最低限の財産は差し押さえから保護されるため(99万円未満の現金や家具は差し押さえ禁止財産。)、完全に路頭に迷うことはありません。

   しかし、強制執行は避けたいものです。そのためにも、できる限り早い段階で対処を始め、相手との合意形成を目指すことが重要です。

慰謝料を払えない場合のリスク

 慰謝料を払えない、あるいは払わない場合、いくつかのリスクが考えられます。これらのリスクを理解し、適切に対処することが重要です。

裁判のリスク

   相手が納得しない場合、示談に応じない場合、民事裁判を起こされる可能性があります。裁判になると、弁護士費用や裁判費用などの追加の出費が必要になります。また、裁判の結果、当初の要求額以上の支払いを命じられる可能性もあります。裁判になると、慰謝料だけではなく、弁護士費用も請求できるためです。

   さらに、裁判は長期化する傾向があり、その間のストレスや時間的拘束も無視できません。可能な限り、裁判外での解決を目指すことが賢明です。

社会的信用の失墜

   不倫・浮気問題が周囲に知られることで、社会的な信用を失う可能性があります。特に、裁判になった場合はその可能性が高くなります。職場や地域社会での立場が悪化したり、新たな人間関係を築くのが難しくなったりする可能性があります。

   また、インターネット上で情報が拡散されるリスクもあります。一度ネット上に出た情報は完全に消すことが難しく、長期にわたって影響を受ける可能性があります。

精神的な負担

   慰謝料を払えないことで、相手から執拗な請求を受け続ける可能性があります。電話やメール、時には自宅や職場への訪問など、様々な形で請求が続くかもしれません。

   このような状況は大きな精神的ストレスとなり、日常生活や仕事に支障をきたす可能性があります。極端な場合、うつ病などの精神疾患を引き起こすこともあります。

   このような精神的な負担を軽減するためにも、早期に問題解決に向けた行動を起こすことが大切です。

慰謝料を減額できる可能性

 慰謝料の金額は、法律で厳密に定められているわけではありません。そのため、状況によっては減額の可能性があります。以下のような場合、交渉の余地があるでしょう。

相場との比較

   不貞行為に起因する慰謝料請求については、多数の裁判例があるため、ある程度の慰謝料の一般的な相場があります。もし相手の要求額が明らかに相場よりも高額である場合、減額を求める正当な理由となります。

   例えば、不倫による慰謝料の相場は、おおよそ50万円から300万円程度と言われています。もちろん、個々の事情によって変動しますが、これを大きく上回る金額を要求されている場合は、交渉の余地があると言えるでしょう。

経済状況の考慮

   あなたの経済状況が厳しい場合、それを理由に減額を求めることができます。例えば、失業中である、多額の借金がある、扶養家族がいるなどの事情があれば、それらを説明し、理解を求めましょう。

   ただし、単に「お金がない」と言うだけでは説得力に欠けます。具体的な収支状況や、今後の返済計画などを示すことが重要です。

誠意ある態度と反省の姿勢

   謝罪の気持ち(謝罪文の提出)と反省の姿勢を示すことで、相手の怒りや恨みの感情を和らげることができるかもしれません。心からの謝罪と、二度と同じ過ちを繰り返さないという強い決意を示すことが大切です。

   また、可能であれば慰謝料以外の形で誠意を示すことも考えられます。例えば、相手の希望する形での謝罪(家族や親族の前での謝罪など)や、相手のための何らかの行動(ボランティア活動への参加など)を提案するのも一つの方法です。

不倫の態様や期間

   不倫の内容や期間によっても、慰謝料の金額は変わってきます。例えば、単発的な不倫と長期にわたる不倫では、後者の方が一般的に高額になります。また、相手の配偶者の承諾があった場合(いわゆる「公認の不倫」)なども、慰謝料が減額される要因となり得ます。

   あなたの不倫がどのようなものだったのか、客観的に分析し、それに基づいて交渉を行うことが重要です。

分割払いの注意点

慰謝料の支払いで分割払いを選択する場合、以下の点に特に注意が必要です。

法的根拠のある契約の重要性

   分割払いを行う場合、必ず書面での契約を交わしましょう。特に、公正証書の作成をおすすめします。公正証書は、裁判所で認められた公証人が作成する公的文書で、法的な強制力を持ちます。

   公正証書には、支払い金額、支払い期間、各回の支払い金額、支払い方法などの詳細を明記します。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。

支払い計画の現実性

   分割払いの計画を立てる際は、自身の収入と支出を冷静に分析し、確実に守れる計画を立てることが重要です。無理な計画を立てて途中で破綻してしまっては、かえって事態を悪化させてしまいます。

   余裕を持った計画を立て、確実に実行することで、相手との信頼関係を築くことができます。

支払い遅延のリスク

   一度合意した支払い計画を守れないと、新たなトラブルの原因となります。支払いが遅れると、相手の信頼を失い、一括での支払いを求められたり、法的手段を取られたりする可能性があります。

   もし支払いが困難になりそうな状況が発生した場合は、すぐに相手や弁護士に連絡し、対応を相談することが大切です。

利息の考慮

   長期の分割払いの場合、利息が発生することがあります。その場合、利率や利息の計算方法などについても、契約書に明記しておく必要があります。

   利息が発生する場合、総支払額が当初の慰謝料よりも多くなる可能性があることに注意しましょう。

弁護士に相談するメリット

 不貞、不倫、浮気、もしくは不貞に準ずる行為(キス、ディープキス、手マン、フェラチオ、クンニ、オッパイを揉むなどの挿入を伴わない性交渉)に関する慰謝料問題で弁護士に相談することには、多くのメリットがあります。以下に主なものを挙げます。

専門的な法律知識

   不貞、不倫、浮気、もしくは不貞に準ずる行為に関する法律は、複雑で、一般の方には分かりにくい部分が多くあります。弁護士は、この分野に関する専門的な知識を持っており、あなたの状況に最適なアドバイスを提供してくれます。

   例えば、慰謝料の相場、時効の問題、支払い義務の有無など、法的に重要な点について的確な助言を受けることができます。

交渉力の向上

   弁護士は、相手方やその弁護士との交渉に慣れています。感情的になりがちな当事者間の交渉と比べ、冷静かつ効果的な交渉を行うことができます。

   また、弁護士が介入することで、相手方も問題を法的な観点から捉えるようになり、より合理的な解決策を見出しやすくなります。

書類作成のサポート

   合意書や示談書、分割払いの契約書など、法的な効力を持つ文書の作成は専門知識が必要です。弁護士は、これらの文書を適切に作成し、あなたの権利を守るための条項を盛り込むことができます。

心理的なサポート

   不倫・浮気に関する問題は精神的に大きな負担となります。弁護士は法的なアドバイスだけでなく、精神的なサポートも提供してくれます。専門家に相談することで、問題に対する不安や恐れが軽減されることも多いです。

リスク回避

   弁護士に相談することで、様々なリスクを回避することができます。例えば、法的に無効な合意をしてしまうリスク、不必要に高額な慰謝料を支払ってしまうリスク、あるいは相手の不当な要求に応じてしまうリスクなどです。

   弁護士は、あなたの状況を客観的に分析し、最善の対処法を提案してくれます。これにより、問題をさらに悪化させてしまうような判断ミスを防ぐことができます。

裁判対応の準備

   万が一、問題が裁判に発展した場合でも、弁護士に相談していれば迅速に対応することができます。初期の段階から弁護士が関わっていることで、証拠の収集や戦略の立案を効果的に行うことができ、裁判での勝算が高まります。

長期的な視点からのアドバイス

   弁護士は、目の前の問題解決だけでなく、あなたの将来にも配慮したアドバイスを提供し、また、あなたの再スタートを応援します。例えば、慰謝料の支払いが今後の生活にどのような影響を与えるか、あるいは法的な問題が将来的にどのような形で再燃する可能性があるかなど、長期的な視点からの助言を得ることができます。

このように、弁護士に相談することには多くのメリットがあります。費用面で躊躇する方もいるかもしれませんが、問題の早期解決や将来的なリスク回避を考えると、決して高い買い物ではありません。慰謝料の支払いで悩んでいる場合は、ぜひ弁護士への相談を検討してみてください。

まとめ

不倫による慰謝料の支払いに悩んでいる方にとって、この状況は人生最大の危機の一つかもしれません。しかし、適切な対応をすれば、必ずや解決への道は開けます。

ここで重要なのは、以下の点です。

一人で抱え込まない

   問題を一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談しましょう。特に弁護士への相談は、問題解決への大きな一歩となります。

早期対応の重要性

   問題を放置すればするほど、状況は悪化していく可能性が高くなります。できるだけ早い段階で対応を始めることが、スムーズな解決につながります。

誠実な態度で臨む

   相手との交渉や支払いの約束を守るなど、終始誠実な態度で問題に臨むことが大切です。これにより、相手の理解を得やすくなり、問題解決の可能性が高まります。

長期的な視点を持つ

   目の前の問題解決だけでなく、その後の人生にどのような影響があるかを考慮して行動しましょう。将来の自分のために、最善の選択をすることが重要です。

再発防止の決意

   この経験を教訓とし、二度と同じ過ちを繰り返さないという強い決意を持つことが大切です。それが、真の意味での問題解決につながります。

 慰謝料が払えないという状況は、確かに厳しいものです。しかし、適切な対応と強い意志があれば、必ず乗り越えられます。この記事が、そんなあなたの一助となれば幸いです。

決して諦めず、前を向いて歩み続けてください。きっと、より良い未来が待っているはずです。