盗撮示談の流れ|示談交渉のポイントと弁護士介入のメリット

盗撮行為は被害者のプライバシーを著しく侵害する犯罪行為です。盗撮で検挙された場合、刑事処分を軽減するためには示談が重要な役割を果たします。しかし、示談交渉の進め方や適切な対応について悩む方も多いでしょう。
本記事では、盗撮事件における示談の流れや交渉のポイント、弁護士に依頼するメリットなどについて詳しく解説します。盗撮事件の当事者となってしまった方や、そのご家族の方に参考にしていただければ幸いです。
目次 [閉じる]
盗撮示談とは
盗撮示談とは、盗撮行為の加害者と被害者が話し合いによって和解し、被害者が刑事告訴を取り下げたり、被害届を出さないことを約束したりする代わりに、加害者が被害者に対して慰謝料を支払うなどの条件で合意することです。
示談が成立するメリット
**被害者側のメリット**
- 民事裁判に比べて短期間で解決できる
- 精神的負担が軽減される
- 慰謝料などの金銭的補償を受けられる
- 裁判のような公開の場で事件について話す必要がない
**加害者側のメリット**
- 刑事処分を軽減できる可能性がある
- 前科がつくリスクを大幅に減らせる
- 社会的信用の失墜を最小限に抑えられる
- 示談成立により不起訴処分となる可能性がある
盗撮示談の流れ
盗撮事件における示談の一般的な流れは以下のとおりです。
弁護士への相談・依頼
盗撮事件で示談交渉を行う場合、まずは弁護士に相談することをお勧めします。特に加害者側は、逮捕されている場合や警察に呼び出されている場合は、早急に弁護士に相談すべきです。
弁護士に依頼する主なメリットは以下のとおりです。
- 法的知識に基づいた適切なアドバイスが受けられる
- 示談交渉を代行してもらえる
- 示談金の相場を把握している
- 示談書の作成を適切に行ってもらえる
- 被害者側との直接対面を避けられる
- 被害者の連絡先が不明な場合、弁護士限りで連絡先を教えてもらえる
示談交渉の開始
弁護士に依頼した場合、弁護士が被害者側と連絡を取り、示談交渉を開始します。この際、弁護士は以下のような役割を果たします。
- 被害者側の意向確認
- 示談条件の提案・交渉
- 示談金額の交渉
- 謝罪の意向伝達
加害者本人や家族が直接交渉する場合もありますが、感情的になりやすく、適切な交渉が難しいケースが多いため、弁護士に依頼することをお勧めします。
示談条件の合意
示談交渉が進み、双方が条件に合意すれば、示談成立に向けて具体的な手続きに入ります。主な示談条件には以下のようなものがあります。
- 示談金(慰謝料)の支払い
- 謝罪文の提出
- 被害者が被害届を出さない、または取り下げる約束
- 再発防止の誓約
- 撮影データの完全削除の証明
- 刑事処罰の宥恕
- 接触禁止の約束
条件に合意したら、示談書を作成します。示談書には以下の内容を明記します。
示談書の作成・締結
- 当事者(加害者・被害者)の氏名・住所
- 事件の概要(日時・場所・内容)
- 示談金の金額と支払い方法・期日
- 被害者が刑事告訴しないことの確約
- 示談条件を履行した場合の免責事項
- その他の合意事項(データ削除の証明方法など)
示談書は法的効力を持つ重要な文書ですので、弁護士に作成を依頼することが望ましいでしょう。
示談金の支払い
示談書に基づいて、合意した示談金を支払います。支払い方法は一括払いが一般的ですが、分割払いで合意する場合もあります。支払いの証明として、領収書を受け取っておくことが重要です。
示談成立の報告
示談が成立した場合、その旨を警察や検察に報告します。弁護士に依頼している場合は、弁護士が適切に対応してくれます。
盗撮示談交渉のポイント
早期対応の重要性
盗撮事件では、早期に示談交渉を開始することが非常に重要です。逮捕されてからでは交渉が難しくなる場合があります。特に現行犯逮捕された場合は、48時間以内に検察官に送致されるため、それまでに示談交渉を始めることが望ましいでしょう。
誠意ある対応
示談交渉では、加害者側の誠意ある対応が重要です。以下のような点に注意しましょう。
- 真摯な謝罪の姿勢を示す
- 被害者の心情に配慮する
- 言い訳や責任転嫁をしない
- 約束したことは必ず守る
- 撮影データの完全削除を証明する
適切な示談金の提示
示談金の金額は、事件の内容や被害の程度によって異なります。一般的な盗撮事件の示談金相場は30万円~100万円程度ですが、悪質なケースではそれ以上になることもあります。弁護士に相談し、適切な金額を提示することが重要です。
談書の内容確認
示談書の内容は慎重に確認しましょう。特に以下の点に注意が必要です。
- 示談金の支払い条件が明確か
- 被害者側の義務(告訴しないことなど)が明記されているか
- 将来的な請求権放棄が含まれているか
- 違約条項の有無と内容
- 宥恕を入れるか否か
- データ削除の証明方法が明確か
盗撮事件の特殊性と示談交渉の難しさ
盗撮事件の示談交渉には、他の犯罪と比べて特殊な難しさがあります。
被害者の特定と連絡
盗撮事件では、被害者が自分が盗撮されたことに気づいていないケースも多く、被害者の特定や連絡が難しい場合があります。警察が被害者に連絡を取ることもありますが、被害者が示談交渉に応じるかどうかは不確実です。
精神的ダメージの大きさ
盗撮被害は、被害者に大きな精神的ダメージを与えます。プライバシーの侵害や尊厳の侵害を受けた被害者は、強い怒りや不信感を抱いていることが多く、示談交渉が難航するケースも少なくありません。
データの完全削除の証明
盗撮データが完全に削除されたことを証明することは技術的に難しい場合があります。被害者側は「データがどこかに残っているのではないか」という不安を抱きやすく、この点が示談交渉の障壁となることがあります。
未成年者が被害者の場合
被害者が未成年者の場合、保護者が教育的観点から示談に応じないケースがあります。また、児童ポルノに該当する可能性もあり、より慎重な対応が求められます。
弁護士に依頼するメリット
盗撮示談において弁護士に依頼するメリットは多岐にわたります。
専門的知識と経験
弁護士は法律の専門家として、盗撮事件の法的処理に関する知識と経験を持っています。適切な示談条件の提案や、法的リスクの回避など、専門的なアドバイスを受けられます。
冷静な交渉
当事者同士の直接交渉では感情的になりがちですが、弁護士は冷静かつ客観的な立場で交渉を進めることができます。これにより、双方にとって納得のいく解決策を見出しやすくなります。
示談書の適切な作成
法的効力のある示談書を適切に作成することで、将来的なトラブルを防止できます。弁護士は示談書作成の専門家であり、抜け漏れのない文書を作成してくれます。
刑事手続きへの対応
示談成立後も、刑事手続きが進行する可能性があります。弁護士は検察や裁判所とのやり取りも適切に行い、可能な限り刑事処分を軽減するための活動を行います。
被害者側弁護士との交渉
被害者側に弁護士がついている場合、加害者側も弁護士に依頼することで対等な交渉が可能になります。法律の専門家同士の交渉は、感情的な対立を避け、合理的な解決につながりやすいです。
盗撮示談が難しいケース
以下のようなケースでは、示談が難しくなる可能性があります。
被害が重大な場合
盗撮の内容が特に悪質(例:下着の中を撮影、プライベートな場所での撮影など)で、被害者が深刻な精神的ダメージを受けている場合は、示談に応じてもらえない可能性があります。
常習性がある場合
過去に同様の前科・前歴がある場合や、大量の盗撮データが見つかるなど常習性が疑われる場合は、被害者側が示談に応じにくくなります。また、検察も厳しい処分を求める傾向があります。
未成年者が被害者の場合
被害者が未成年者の場合、保護者の感情的な反応や教育的観点から、示談に応じないケースがあります。また、児童ポルノ禁止法違反の可能性もあり、社会的にも厳しい目で見られる傾向があります。
示談交渉が遅れた場合
事件発生から時間が経過し、刑事手続きが進んでしまった場合は、示談が成立しても刑事処分に与える影響が小さくなることがあります。
盗撮示談後の見通し
盗撮事件で示談が成立した場合、その後の見通しはどうなるのでしょうか。
不起訴処分の可能性
示談が成立し、被害者が処罰感情を持っていないことが確認できれば、検察官が不起訴処分(起訴猶予)とする可能性が高まります。特に初犯で、行為の態様が比較的軽微な場合はその可能性が高くなります。
不起訴処分となれば、前科はつきません。ただし、検察庁のデータベースには記録が残るため、再び同様の事件を起こした場合には厳しい処分を受ける可能性があります。
起訴された場合の見通し
示談が成立していても起訴される場合があります。特に以下のようなケースでは起訴される可能性が高まります。
- 常習性が認められる場合
- 行為の態様が悪質な場合
- 社会的影響が大きい場合
- 被害者が未成年者の場合
起訴された場合でも、示談成立は量刑判断において有利に働きます。執行猶予付きの判決となる可能性が高まり、実刑を回避できる可能性があります。
社会的影響
示談が成立し、不起訴処分となった場合でも、職場や学校に事件が知られてしまった場合には、社会的な制裁を受ける可能性があります。会社からの懲戒処分や、学校からの処分などが考えられます。
まとめ
盗撮示談は、被害者と加害者の双方にとってメリットがある解決方法です。しかし、適切な示談交渉を行うためには、法律の専門知識や交渉スキルが必要となります。
特に加害者側は、早期に弁護士に相談し、誠意をもって対応することが重要です。示談が成立すれば、刑事処分の軽減や社会的信用の回復につながる可能性があります。
盗撮事件の特殊性を理解し、被害者の心情に配慮した対応を心がけることで、示談成立の可能性を高めることができます。
オリズル法律事務所では、盗撮事件を含む刑事事件の示談交渉に豊富な経験を持つ弁護士が、丁寧にサポートいたします。お困りの際は、お早めにご相談ください。
よくある質問
**Q1: 盗撮で逮捕された場合、すぐに示談交渉はできますか?**
A1: 逮捕直後でも、捜査機関より、被害者の連絡先をすぐに入手できれば、示談交渉は可能です。ただし、身柄拘束中は本人が直接交渉することは難しいため、家族や弁護士を通じて交渉することになります。早期に弁護士に相談することをお勧めします。
**Q2: 示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?**
A2: 示談成立は不起訴処分の重要な要素ですが、必ず不起訴になるとは限りません。事件の悪質性や常習性、社会的影響などを総合的に判断して、検察が起訴・不起訴を決定します。
**Q3: 盗撮データを完全に削除したことをどのように証明すればよいですか?**
A3: データ削除の証明方法としては、以下のようなものがあります。
- 弁護士立会いのもとでのデータ削除
- 第三者機関によるデータ消去証明書の発行
- 記録媒体自体の破壊(物理的破壊)
具体的な方法については、弁護士と相談して決めることをお勧めします。
**Q4: 示談交渉は自分でもできますか?**
A4: 法律上は自分で交渉することも可能ですが、感情的になりやすく、適切な交渉が難しいケースが多いため、弁護士に依頼することをお勧めします。特に刑事事件では専門的な知識が必要となります。
なお、被害者の連絡先が分からない場合には、捜査機関は、弁護士でないと、連絡先を教えてくれないことが多いです。
**Q5: 示談が成立した後も前科はつきますか?**
A5: 示談が成立し、検察官が不起訴処分(起訴猶予)とした場合は前科はつきません。ただし、起訴され有罪判決を受ければ前科がつきます。示談は前科をつけないための重要なステップと言えます。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
