「不同意わいせつ未遂」で問われる責任とは?未遂でも人生を左右する可能性とその対応策

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未遂でも処罰の対象になる時代
「未遂なのに処罰されるの?」
こう疑問に思う人は少なくありません。実際、行為に至らなかった場合でも、法律上は処罰の対象となる可能性があります。とくに「不同意わいせつ未遂」は、実際に接触がなかったとしても、その“意図”や“準備行為”が明確であれば、刑事責任を問われることがあります。
性的同意を重視する近年の法制度では、「未遂」であっても軽視されることはなく、むしろ被害を未然に防いだことを評価されることはあまりないのが現状です。加害の手前で止まった事案に対しても、警察や検察は厳しい目を向けています。
どんな行為が「不同意わいせつ未遂」と判断されるのか
単に「わいせつな目的があった」とされるだけで処罰されるわけではありません。問題になるのは、「具体的な行動」と「相手の同意がない状況」がそろったときです。
以下のようなケースが、未遂として扱われた事例に該当します。
【不同意わいせつ未遂とされた実例】
- 人のいない場所へ誘導しようとした
- 無断で手を伸ばし、相手に寸前で避けられた
- キスしようとして相手が逃げた
- 触れようとした瞬間に制止された
- 明らかに性的な目的をもって、相手の背後に回った
これらはすべて、相手の同意が得られていない中で行われた行動であり、「結果として未遂に終わった」だけで、行為の意図が明白であれば十分に立件される可能性があります。
なぜ未遂でも重く見られるのか?
刑法では、「未遂犯」も原則として処罰の対象です。
とくに性犯罪では、未然に防げたとしても、それが偶然や第三者の介入によるものであれば、加害者の危険性や悪質性は変わらないと考えられます。
また、被害者の心理的ダメージは、未遂であっても非常に大きいものです。触れられていなくても、「触れられそうになった」「逃げることができた」という体験自体が、深刻なトラウマになりかねません。
そうした背景もあり、未遂であっても警察や検察が積極的に動くケースが増えているのが現実です。
捜査対象となった場合、どのような経過をたどるか
未遂とはいえ、刑事手続きが始まれば、その流れは基本的に既遂と同じように進んでいきます。
最初は任意の事情聴取から始まり、疑いが深まれば逮捕に至ることもあります。場合によっては防犯カメラの映像、LINEなどのやり取り、目撃者の証言といった材料が「未遂の証拠」として使用されます。
捜査が開始されると、次のような影響が出る可能性があります。
- スマートフォンやパソコンの押収
- 勤務先や家族への連絡
- 場合によっては報道機関への発表
- 長期間の身柄拘束(勾留)
- 起訴に至れば裁判や罰金、禁錮刑の可能性
「結果的に触れていないから大丈夫」という楽観は通用しません。捜査段階からの対応が、その後の処分に大きく影響します。
未遂でも前科がつくのか?
答えは「つく可能性がある」です。
たとえ未遂であっても、有罪判決を受ければ前科は記録されます。略式罰金であっても、それは立派な刑事処分です。
特に性犯罪の場合、社会的信用の低下は深刻です。前科が付くことで、就職や転職、海外渡航、資格の取得にまで影響が及びます。前科を避けるためには、不起訴処分を得るか、そもそも捜査段階で適切な対応を取る必要があります。
不起訴や示談の可能性はあるのか?
未遂事案であっても、示談が成立すれば不起訴になる可能性はあります。ただし、それには被害者側の理解と、謝罪・償いの姿勢が不可欠です。
加えて、事件の経緯や相手の受けた精神的被害の程度、本人の反省の深さなども判断材料になります。とくに初犯の場合や、軽度の接触未遂であれば、不起訴処分が下されることも珍しくありません。
とはいえ、これらは一人で交渉できるものではなく、法律的に整った形で行わなければ逆効果になることもあります。
問題を起こさないためにできること
今後同じような問題を起こさないためにも、次のような点を意識する必要があります。
【再発を防ぐための心構え】
- 相手の沈黙を「同意」と捉えない
- 距離感を無視した接近は避ける
- お酒や夜の状況での判断力を過信しない
- 相手の表情や態度に常に敏感になる
- 「自分は大丈夫」という思い込みを捨てる
現代社会では、「冗談」や「軽いノリ」が通用しない場面が増えています。たとえ好意があっても、それが一方的なものであれば、誤解では済まされない時代です。
最後に:未遂だからこそ今すぐ行動を
実際に触れたわけでもない、誰かにケガをさせたわけでもない――
それでも「違法性あり」と判断されれば、あなたの人生は大きく変わってしまうかもしれません。
未遂だから軽く見られる、という時代はすでに終わっています。だからこそ、疑われたその瞬間から、迅速かつ冷静に行動することが何よりも重要になります。
あなたの立場や権利を守るには、正しい情報と戦略が必要です。過去は変えられなくても、未来を守る手段は、今この瞬間から選び取ることができます。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
