【弁護士監修】不倫による離婚!養育費を確実に受け取るためにすること

突然、不倫の事実を知ってしまった――そんなショックな状況のなか、「離婚を考えているけれど、子どもの養育費はどうなるの?」「不倫が原因でも、きちんと支払ってもらえるの?」と不安や疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。特に、お子さんを抱えている場合は、将来の生活や経済面への心配がより一層大きくなります。
本記事では、不倫が発覚した際の初動対応から、証拠の収集方法、養育費の具体的な決め方までを、弁護士の監修のもとわかりやすく解説します。配偶者が不倫したうえで離婚を検討するケースや、養育費を確実に受け取るためのポイントを押さえておけば、いざというときに慌てず自分とお子さんの生活を守る道筋が見えてくるはずです。不倫による離婚問題を、どのようにスムーズかつ確実に進めるか、その具体策をぜひ参考にしてみてください。
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不倫が発覚した場合の対応
突然の不倫発覚に、今あなたは大きな衝撃と混乱の渦中にいることでしょう。信頼を裏切られた怒りや悲しみは当然の感情です。しかし、この危機的な状況を乗り越え、あなたの権利を守るためには、冷静な判断と適切な対応が必要になります。まずは深呼吸をして、これからの対応手順を確認していきましょう。
不倫発覚直後の緊急対応
不倫が発覚した直後は、精神的なショックで何から手をつければよいのかわからなくなります。まずは、あなたと家族を守るための緊急対応として、以下の行動を取りましょう。
【24時間以内に必ず行うこと】
- 通帳・印鑑・重要書類の確保
- 家族カードの利用停止手続き
- 不貞の証拠となる画面のスクリーンショット保存
配偶者が預貯金を引き出してしまうケースは少なくありません。また、家族カードの利用停止は慎重に行う必要があります。いきなりカードを止めることで相手を刺激する可能性もあるため、可能であれば弁護士に相談してから対応することをお勧めします。
証拠収集の重要性
証拠収集は、その後の交渉や裁判で決定的な役割を果たします。ただし、この段階で誤った方法を取ると、かえって不利な立場に追い込まれる可能性があります。
【有効な証拠となるもの】
- LINEやメールの履歴(日時表示を含むスクリーンショット)
- ラブホテルの領収書や飲食店の利用明細
- 防犯カメラの映像
- 第三者による目撃情報(日時・場所を記録)
ただし、以下の行為は違法となる可能性もあるため、慎重に行ってください:
- 配偶者のスマートフォンのロック解除
- 盗聴器の設置
- GPSによる追跡
- メールの無断閲覧
弁護士相談のベストタイミング
「まだ弁護士に相談するような段階ではない」と躊躇される方も多いですが、実は不倫が発覚した初期段階での専門家への相談が、その後の展開を大きく左右します。特に以下のような状況では、速やかな法的対応が必要です:
- 配偶者から暴力や脅迫を受けている
- 預貯金の引き出しや財産の処分が疑われる
- 子どもへの悪影響が懸念される
- 相手方から不当な要求や示談を迫られている
示談と裁判、それぞれの選択肢
示談による解決
示談は、当事者同士の話し合いで解決を図る方法です。時間と費用を節約でき、柔軟な解決が可能です。また、プライバシーが守られやすく、精神的な負担も比較的軽いと言えます。ただし、相手の誠意に依存するため、必ずしも適正な賠償を受けられない可能性もあります。
裁判による解決
裁判は、法的な強制力を持って解決を図る方法です。客観的な判断が期待でき、将来の強制執行も可能となります。ただし、以下のような点に注意が必要です:
- 解決までに時間がかかる(通常6ヶ月から1年程度)
- 弁護士費用などの経済的負担
- 公開の法廷での審理によるストレス
不倫問題の解決は、決して短期間で終わるものではありません。だからこそ、あなた自身の心身の健康を守ることが何より大切です。信頼できる家族や友人に相談し、必要に応じてカウンセリングも検討しましょう。
焦って判断を急ぐ必要はありません。証拠の保全と経済的な保身を最優先し、その上で専門家への相談を検討していきましょう。
配偶者の不倫が離婚原因のとき、養育費の支払いはどうなる?
配偶者の不倫に直面し、大きな精神的苦痛を抱えていらっしゃることと思います。特にお子様がいる場合、将来への不安も大きいことでしょう。ここでは、不倫による離婚時の養育費について、具体的なケースごとに解説していきます。
養育費の基本的な考え方
まず重要なのは、養育費は子どもの健やかな成長のために支払われるものであり、配偶者の不貞行為とは切り離して考える必要があるということです。つまり、誰が不倫をしたかに関わらず、子どもの利益を最優先に考えて決定されます。
裁判所も、以下の3つの原則に基づいて判断を行います:
- 子どもの最善の利益を優先すること
- 双方の経済状況に応じた適切な負担であること
- 養育費は慰謝料や財産分与とは別個の問題として扱うこと
具体的なケース別の解説
1. 夫が不倫し、妻が親権を持つ場合
このケースが最も一般的なパターンです。夫には不貞行為という重大な非がありますが、それは養育費の支払い義務とは別問題として扱われます。
具体的な手続きの流れは以下のようになります。夫婦で話し合いができる場合は、まず標準的な養育費算定表に基づいて基本額を算出します。その上で、以下の要素を考慮して金額を調整していきます:
- 夫の収入と今後の収入予測
- 子どもの年齢と教育段階
- 特別な教育費や医療費の必要性
- 母子の生活基盤の確保
養育費とは別に、不貞行為に対する慰謝料請求も可能です。むしろ、これらを分けて考えることで、より円滑な解決につながることが多いでしょう。
2. 妻が不倫し、夫が親権を持つ場合
母親に不貞行為があり、父親が親権者となる場合でも、養育費の基本的な考え方は変わりません。裁判所は、子どもの利益を最優先に考えて以下の点を検討します:
- 母親の収入状況と支払い能力
- 父子の具体的な養育環境
- 子どもの年齢や特別なニーズ
- 面会交流の頻度や方法
この場合、母親からの養育費の支払いが必要となりますが、金額の設定には慎重な検討が必要です。母親の新しい生活基盤の確保も考慮しながら、継続的な支払いが可能な金額を設定することが重要です。
3. 妻が不倫して妻が親権者になる場合
このケースは非常にデリケートな問題を含んでいます。母親に不貞行為があっても、裁判所は子どもの利益を最優先に考えて親権者を決定します。そのため、諸般の事情を考慮した結果、不倫をした母親に親権が認められるケースもあります。
この場合の養育費についても、基本的な考え方は変わりません:
- 父親の収入に応じた適切な養育費の算定
- 子どもの生活水準の維持への配慮
- 教育費用などの特別な支出の検討
- 面会交流を含めた総合的な取り決め
不倫による離婚は、誰もが大きな心の傷を負う出来事です。しかし、子どもの将来のために、できるだけ感情的にならず、客観的な判断を心がけることが重要です。
養育費の取り決めに不安を感じる場合は、一人で抱え込まず、専門家に相談することをお勧めします。弁護士への相談は、あなたの権利を守りながら、子どもの利益も確保する最適な方法を見つけ出すための重要なステップとなります。
養育費の取り決め
離婚に際して養育費の取り決めは、お子様の将来に直接影響する重要な問題です。ここでは、具体的な計算方法から実際の支払い方法まで、詳しく解説していきます。
養育費の計算方法
養育費算定表の基本
養育費算定表は、双方の収入と子どもの人数に基づいて標準的な養育費を算出するための指標です。算定表の見方は以下の通りです:
縦軸には養育費を支払う側の年収、横軸には子どもの人数が記載されています。例えば、支払い義務者の年収が400万円で子ども1人の場合、標準的な養育費は月額4万5千円程度となります。ただし、これはあくまで目安であり、実際の金額は様々な要因により調整されます。
具体的な計算の手順
- 基準となる金額の算出
- 養育費を支払う側の手取り収入を確認
- 控除すべき経費(住居費、生活費等)を差し引く
- 残額から養育費負担割合を算定
- 考慮すべき要素
- 子どもの年齢と教育段階
- 特別な教育費や医療費の必要性
- 両親それぞれの収入状況
- 子どもの預け先や保育費用
増額・減額が検討される状況
養育費は、以下のような状況で増額や減額の検討が必要となります:
【増額が検討される場合】
- 支払い義務者の収入が著しく増加
- 子どもの進学や病気による支出増
- インフレによる生活費の上昇
- 受給者の失業や収入減
【減額が検討される場合】
- 支払い義務者の失業や収入減
- 新たな扶養家族の発生
- 子どもの自立による支出減
- 受給者の収入増加
養育費シミュレーターの活用
裁判所のウェブサイトで公開されている養育費シミュレーターは、以下の手順で利用できます:
- 基本情報の入力
- 双方の収入
- 子どもの人数と年齢
- 特別な支出の有無
- 計算結果の見方
- 標準的な養育費の表示
- 増減要因の確認
- 将来の試算
養育費の支払い方法
支払い期間の設定
一般的な養育費の支払い期間は以下の通りです:
- 基本期間:子どもが成人するまで
- 延長事由:大学進学など
- 終了事由:子どもの就職、結婚など
ただし、個々の事情により、これらの期間は柔軟に設定することができます。
具体的な支払い方法
【月々の分割払い】
- 毎月決まった日に指定口座へ振込
- 自動振替の設定
- 給与天引きの活用
【一括払い】
- 退職金などを原資とした一括支払い
- 不動産や有価証券による代物弁済
- 信託の設定
確実な受け取りのための工夫
養育費を確実に受け取るための方法として、以下のような対策が有効です:
- 公正証書の作成
- 強制執行認諾文言付きで作成
- 具体的な支払い条件を明記
- 将来の変更可能性も考慮
- 口座管理の徹底
- 専用の受取口座の開設
- 通帳の定期的なチェック
- 入金記録の保管
不払い時の対処法
養育費が支払われない場合は、段階的に以下の対応を検討します:
- 初期対応
- 支払い義務者への確認
- 事情の聴取と話し合い
- 分割払いの提案
- 法的対応
- 支払い督促の申立て
- 強制執行の実施
- 履行勧告の申立て
- 公的支援の活用
- 養育費立替払い制度
- 母子支援給付金
- 法テラスの活用
養育費の取り決めは、お子様の将来に関わる重要な問題です。計算方法や支払い方法について不明な点がある場合は、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
また、状況の変化に応じて柔軟に見直しを行うことも大切です。定期的な確認と必要に応じた修正を行うことで、より良い養育環境を維持することができます。
まとめ
不倫の発覚は、誰にとっても大きな精神的ショックをもたらす出来事です。しかし、その後の人生を守るためには、冷静な判断と適切な対応が不可欠です。
まず発覚直後は、通帳や印鑑といった重要書類の確保を最優先に行う必要があります。同時に、不貞の証拠となるLINEやメールの履歴、ラブホテルの領収書、ラブホテルの利用がわかるクレジットカード明細書などは、日時が分かる形で確実に保存しておきましょう。この際、違法となる可能性のある行為(盗聴や無断でのGPS追跡など)はなるべく慎むける必要があります。
証拠が整ったら、速やかに弁護士への相談を検討します。特に、暴力や脅迫、財産の隠匿が疑われる場合は、直ちに専門家のサポートを受けることが重要です。その後の解決方法として、示談と裁判という2つの選択肢がありますが、これは状況に応じて慎重に判断する必要があります。
養育費については、不貞行為の有無に関わらず、子どもの利益を最優先に考えて決定されます。例えば、夫が不倫して妻が親権を持つ一般的なケースでは、夫の収入に応じた養育費の支払いが必要となります。逆に、妻が不倫して夫が親権を持つ場合も、子どもの利益を考慮して、母親からの養育費支払いが検討されます。
さらに難しいケースとして、不倫をした妻が親権者となる場合もありますが、ここでも養育費の支払いは子どもの利益を基準に判断されます。つまり、養育費は慰謝料や財産分与とは別個の問題として扱われ、あくまでも子どもの健全な成長のために必要な費用として位置づけられるのです。
このように、不倫問題の解決には、初期対応から養育費の取り決めまで、多岐にわたる判断と対応が必要となります。しかし、一つ一つの段階で適切な対応を取ることで、必ず道は開けます。決して一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、着実に問題解決を進めていくことが大切です。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
