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示談金で解決できる?不同意わいせつ行為における金銭的交渉の現実

2025.08.07 弁護士コラム

示談という選択肢が持つ意味

性的同意のない接触に対して、法律的な厳しさが増す中、「示談で解決できるのか?」という問いを抱える人は少なくありません。

逮捕や起訴といった重大な結果を避けるために、示談という手段が注目されるのは自然な流れです。しかし、その実態は一様ではなく、金額や成立の可否、相手の反応など、さまざまな要素が絡み合っています。

とくに、近年注目されている性的事件のうち、「同意のない行為」や「未遂」に関するケースでは、被害者感情や世間の目も厳しく、単にお金を支払えば済むというものではありません。

示談金とは?支払う目的とその効力

金銭の支払いが行われることを一般に「示談金」と呼びますが、それは損害賠償ではなく、被害者との和解の一部として位置づけられます。

つまり、加害者とされる側が誠意として金銭を支払い、被害者がそれを受け入れたうえで「これ以上の刑事処罰は望まない」という意思を表明する。その結果として、検察官が起訴を見送る判断をする――これが示談の目的です。

ただし、これは強制力を持つわけではなく、あくまで検察の判断材料の一つに過ぎません。相手の意向や事件の内容によって、示談が成立しても起訴されることはあります。

示談金の相場はどれくらい?

性犯罪に関する示談金の金額は、非常に幅があります。とくに「同意のないわいせつ行為」に関する事案では、被害者の精神的苦痛や経済的損害、社会的影響を考慮して算出されます。

【示談金の目安(不同意のわいせつ行為の場合)】

  • 軽度の接触・未遂:20万〜50万円
  • 接触があった場合:50万〜100万円
  • 悪質性が高い、継続的な行為:100万円以上

あくまで目安であり、交渉の進め方や相手側の受け止め方、示談書の内容などにより大きく上下します。

示談交渉の現実と難しさ

実際に示談を試みようとしても、思い通りに進むとは限りません。とくに性的な被害を訴える側にとっては、相手との接触自体が大きなストレスになるため、話し合いのテーブルに着くことすら拒否される場合があります。

また、代理人を通さずに直接交渉を試みると、「口止め」と受け取られて逆効果になることも。誤ったアプローチは、被害者の怒りを増幅させ、事件の悪化を招くリスクもはらんでいます。

示談は「お金で解決する手段」ではなく、「問題を円満に収めるための手続き」であることを、当事者が十分理解したうえで臨むことが求められます。

示談が成立したときのメリットと限界

適切に示談が成立すれば、さまざまな形で前向きな影響が生まれます。

  • 検察が不起訴を判断する可能性が高まる
  • 勾留の延長や起訴を回避できる場合がある
  • 精神的負担の軽減
  • 前科が付かない可能性を広げる
  • 社会的信用の維持(報道を防げるケースも)

一方で、次のような限界もあります。

  • 示談成立=無罪ではない
  • 被害者が「許さない」と言えば不起訴にならないこともある
  • 過去の示談でも、社会的批判を免れなかった例も

そのため、示談がすべてを解決してくれる“魔法のカード”ではないという認識が必要です。

示談交渉を依頼すべき理由

当事者同士では示談交渉は困難です。感情が絡み、誤解が生まれやすく、法的な形式も不備になりがちです。

だからこそ、交渉は法律の専門家に任せるべきです。代理人が間に入ることで、次のようなメリットが生まれます。

  • 被害者の心理的負担が減り、話し合いが成立しやすくなる
  • 示談書が法的に有効な形で作成される
  • 検察への報告資料としても信頼性が増す
  • 加害者側の意図が「誠意ある対応」として伝わりやすくなる

弁護士の存在は、交渉だけでなく、今後の進行全体におけるリスク管理の要でもあります。

「示談すれば大丈夫」は本当か?

インターネット上では、「とにかく示談金を払えば不起訴になる」といった情報も見かけますが、これは極めて危険な認識です。

示談は重要な手段のひとつではありますが、それだけで必ず不起訴になるわけではありません。事件の内容、被害者の意向、社会的背景、証拠の有無など、さまざまな要素を総合して判断が下されます。

また、金額の多寡よりも、誠意や真摯な態度、将来の再発防止への姿勢が重視されることも多くあります。

まとめ:示談金の話は、誠実な対話の延長線上にある

「お金を払えば済む」という発想で交渉を進めようとすれば、かえって傷口を広げてしまう可能性があります。

示談とは、あくまでも問題を円満に終わらせるための一つの方法にすぎません。金額だけを気にするのではなく、自分が相手に何をしたのか、なぜそれが問題になったのか、そしてどう償うべきか――そうした自問のうえに立った対応が、最終的な結果を大きく左右します。

適切なプロセスを踏み、誠実な対話を重ねた先に、はじめて示談という選択肢が意味を持つのです。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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