肉体関係なしの浮気でも離婚慰謝料は請求できる?広島の相談事例から学ぶ証拠の集め方と相場
配偶者が誰かと親密にしている。頻繁に二人で会っている。親しげなメッセージのやり取りをしている。でも、肉体関係があったという確証はない――。こんな状況で、「離婚して慰謝料を請求できるのだろうか」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
「浮気」と聞くと、多くの人が肉体関係を伴うものをイメージします。でも、実際には肉体関係がなくても、精神的な裏切りによって婚姻関係が破綻することがあります。配偶者が他の異性と恋愛感情を抱き合っている、デートを重ねている、家族よりもその相手を優先している。こういった状況は、肉体関係がなくても十分に辛いものです。
法律上、離婚原因として認められる「不貞行為」は、基本的に肉体関係を伴うものを指します。では、肉体関係のない浮気では、離婚も慰謝料請求もできないのでしょうか。実は、状況によっては可能なケースがあるんです。広島の家庭裁判所でも、肉体関係の証拠がないケースで離婚が認められ、慰謝料が支払われた事例があります。
この記事では、肉体関係のない浮気で離婚・慰謝料請求ができるケースとできないケース、必要な証拠、慰謝料の相場、請求の手順、よくある失敗パターンまで、具体的に解説していきます。グレーゾーンで悩んでいる方に、判断の基準と対処法をお伝えします。
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「肉体関係なし」でも離婚・慰謝料請求できるケースとは
法律上の「不貞行為」の定義を理解する
まず、法律用語を整理しましょう。民法770条に定められた離婚理由の一つが「配偶者の不貞行為」です。この「不貞行為」とは、判例上、配偶者以外の者と自由な意思で肉体関係を持つことを指します。つまり、法律的には肉体関係が要件なんです。
ここで重要なのは、「自由な意思で」という部分です。強制された場合は不貞行為にあたりません。また、一度きりの過ちでも、継続的な関係でも、肉体関係があれば不貞行為として認められます。
では、肉体関係がない場合はどうなるのか。厳密に言えば、民法770条1号の「不貞行為」には該当しません。でも、諦める必要はありません。民法770条5号には「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という条項があり、これが使えるケースがあるんです。
5号は非常に幅広い概念で、「婚姻関係が破綻していて、修復の見込みがない」と判断されれば、離婚理由として認められます。肉体関係のない浮気でも、この5号に該当する可能性があるのです。
「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる条件
肉体関係のない浮気が「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるには、いくつかの条件があります。ポイントは、婚姻関係が実質的に破綻しているかどうかです。
まず、相手との関係性の深さが重要です。単なる友人関係ではなく、恋愛感情を伴う関係であることが必要です。メールやLINEで「好きだ」「愛している」といったやり取りがある、頻繁にデートしている、プレゼントを贈り合っている、といった事情があれば、恋愛関係と認められやすくなります。
次に、配偶者との関係がどれだけ悪化しているかも考慮されます。浮気相手との関係を優先して、家庭を顧みなくなった。夫婦の会話がなくなった。一緒に寝なくなった。こういった事情があれば、婚姻関係が破綻していると判断されやすいです。
期間の長さも影響します。一度や二度会っただけでは、重大な事由とは認められにくいです。でも、半年、1年と継続的に親密な関係を続けていれば、婚姻関係への影響は大きいと判断されます。
認められやすいのは、明確な恋愛感情が証拠で確認できるケース、頻繁な接触があるケース、金銭的な支援をしているケース、配偶者との関係が著しく悪化しているケース、関係が半年以上続いているケースです。これらの要素が複数重なると、「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる可能性が高まります。
実際に認められた判例から学ぶ
過去の裁判例を見ると、肉体関係の証拠がなくても離婚が認められ、慰謝料が支払われたケースがあります。
ある判例では、夫が職場の女性と頻繁に食事やドライブに行き、メールで「君がいないと生きていけない」といったやり取りをしていました。肉体関係の証拠はありませんでしたが、裁判所は「配偶者以外の異性と恋愛関係にあり、婚姻関係が破綻している」と判断し、離婚を認めました。慰謝料は100万円が認められました。
別の事例では、妻が元恋人と頻繁に連絡を取り合い、夫に内緒で何度も会っていました。二人でホテルに入ったという証拠はありませんでしたが、深夜まで車の中にいたことや、親密なメールのやり取りから、「不適切な関係」と認定され、離婚と慰謝料50万円が認められました。
ただし、認められなかったケースもあります。夫が女性の友人と時々ランチに行っていたというケースでは、「友人として交流しているだけで、恋愛関係とは言えない」として、離婚請求が棄却されました。
広島地方裁判所の事例でも、夫が職場の同僚女性と頻繁に連絡を取り、休日に二人で出かけていたケースがありました。妻は探偵を雇って調査しましたが、ホテルに入る場面は撮影できませんでした。しかし、深夜まで二人きりで車内にいる写真や、親密なメールのやり取りを証拠として提出したところ、裁判所は「不適切な関係により婚姻関係が破綻している」と判断し、離婚と慰謝料80万円を認めました。
これらの判例から分かるのは、肉体関係の有無よりも、婚姻関係への影響の大きさが重視されるということです。証拠をしっかり集めて、相手の行為が婚姻関係を破綻させたことを示せれば、慰謝料請求の可能性はあります。
肉体関係なしの浮気で慰謝料が認められにくいケース
単なる友人関係と判断されるケース
肉体関係のない浮気で最も難しいのは、「ただの友達」と「不適切な関係」の境界線です。異性の友人がいること自体は、何も問題ありません。でも、配偶者からすれば、親しげにしている姿を見るだけで不快なものです。
単なる友人関係と判断されやすいのは、複数人でのグループ交流が中心の場合です。配偶者に隠さずオープンに会っている、恋愛感情を示すメッセージがない、会う頻度が月に1、2回程度、配偶者との関係に変化がない、といった状況では、問題視されにくいです。
例えば、趣味のサークル活動で異性の友人ができて、グループで時々集まっている。こういうケースは、問題視されにくいです。配偶者に「今日はサークルの仲間と飲み会だよ」と伝えていて、帰宅時間も常識的な範囲なら、浮気とは言えません。
職場の同僚と仕事の延長でランチに行く、たまに仕事帰りに軽く一杯飲む、といったことも、通常は問題になりません。社会人として普通の交流の範囲内です。
ただし、配偶者が不快に思っているなら、「浮気ではないから問題ない」と開き直るのではなく、配偶者の気持ちを尊重する姿勢が大切です。法的に問題なくても、夫婦関係を壊すには十分な行為になり得ます。
証拠が不十分なケース
肉体関係のない浮気では、証拠の重要性がさらに増します。肉体関係があれば、ホテルに入る写真一枚で不貞行為の証拠になりますが、肉体関係がない場合、状況証拠を積み重ねて「不適切な関係」を立証する必要があります。
証拠が不十分とみなされるのは、「怪しい」という直感だけで具体的な証拠がない場合です。二人で会っている事実はあるが頻度が低い、メールやLINEの内容が社交辞令の範囲内、浮気相手の特定ができていない、時期や場所が曖昧、といった状況では認められにくいです。
「夫が最近帰りが遅い」「スマホを肌身離さず持っている」といった状況だけでは、浮気の証拠にはなりません。もしかしたら本当に仕事が忙しいだけかもしれません。
「二人で食事しているところを見た」という目撃情報も、一度きりでは弱いです。「たまたま仕事の打ち合わせで」と言い訳されたら、それ以上追及できません。
証拠を集める際は、いつ、どこで、誰と、何をしていたかを具体的に記録することが大切です。日時、場所、相手の名前、行動内容を詳細にメモしておきましょう。
婚姻関係が破綻していないケース
もう一つの重要なポイントは、婚姻関係が破綻しているかどうかです。配偶者が他の異性と親しくしていても、夫婦関係は良好である、という場合、離婚理由としては認められにくいです。
例えば、夫が女性の友人とたまに会っているけれど、夫婦の会話は普通にある、一緒に食事もする、性交渉もある、という状態なら、婚姻関係は破綻していないと判断されます。
逆に、浮気(疑惑)が原因で夫婦関係が悪化して、会話がなくなった、別居した、性交渉を拒否されるようになった、という場合は、破綻していると認められやすくなります。
ここで難しいのは、「浮気が原因で関係が悪化した」のか、「関係が悪化していたから浮気した」のか、という因果関係の問題です。もともと夫婦関係が冷え切っていて、その結果として配偶者が他の異性に癒しを求めた、という場合、一方的に相手だけを責めるのは難しくなります。
裁判所は、「婚姻関係の破綻に、請求する側にも責任があるかどうか」を考慮します。あなた自身が配偶者を無視していた、家事を放棄していた、暴言を吐いていた、といった事情があれば、慰謝料が減額されたり、請求自体が認められなかったりすることがあります。
肉体関係なしの浮気を証明する証拠の集め方
デジタル証拠の収集方法
肉体関係のない浮気を証明するには、相手との関係性を示す証拠が必要です。最も有力なのが、メール、LINE、SNSのメッセージです。これらのやり取りから、恋愛感情や親密さが読み取れれば、強力な証拠になります。
証拠として有効なのは、明確な恋愛感情の表現です。「好き」「愛してる」「一緒にいたい」といった言葉があれば、単なる友人関係ではないことが明らかです。配偶者への不満や愚痴を共有している、将来の計画を話し合っている、親密な呼び方をしている、デートの約束や記録がある、といった内容も有力な証拠になります。
これらのメッセージを証拠として残すには、スマートフォンの画面をスクリーンショットで撮影するのが簡単です。ただし、相手のスマホを無断で見ることは、プライバシー侵害やデータ保護法違反の問題があります。
法的にグレーゾーンですが、実際には夫婦間でのスマホチェックは行われていて、そこから得た証拠が裁判で使われることも多いです。ただし、スマホのロックを無理やり解除したり、盗み見したりするのは避けるべきです。
より確実なのは、相手が自発的にメッセージを見せる状況を作ることです。「最近連絡取ってる人いるの?」と自然に聞いて、相手がスマホを見せてきたタイミングで確認する、といった方法です。
SNSの公開情報も証拠になります。InstagramやFacebookで浮気相手と親密そうな写真をアップしている、コメント欄でイチャイチャしている、といった情報は、誰でも見られる公開情報なので、証拠として問題ありません。
行動記録と写真・動画
相手の行動を記録することも重要です。いつ、どこで、誰と会っていたのかを詳細に記録しましょう。
記録すべきは、日時(何月何日、何時から何時まで)、場所(レストラン名、住所など)、相手の特定情報(名前、年齢、職業など、分かる範囲で)、行動内容(食事、ドライブ、映画など)、二人の様子(手をつないでいた、肩を寄せ合っていたなど)です。
これらを日記形式で記録しておくと、後で整理しやすくなります。「〇月〇日、夫は午後7時に外出し、深夜1時に帰宅。『仕事の飲み会だった』と言っていたが、スーツは着ておらず、カジュアルな服装だった」といった具合です。
写真や動画も強力な証拠になります。二人でレストランに入る写真、車の中で親しげに話している動画など、視覚的な証拠は説得力があります。
探偵に依頼すれば、プロの技術で証拠を集めてもらえます。尾行、張り込み、撮影など、素人では難しい調査を行ってくれます。広島市内にも複数の探偵事務所があり、浮気調査を専門に扱っているところもあります。
ただし、探偵費用は高額です。1日あたり5万円から15万円程度かかることが多く、数日間の調査で数十万円になります。肉体関係の証拠がない場合、高額な費用をかけて調査しても、期待した結果が得られないリスクもあります。
第三者の証言
第三者の証言も証拠になります。配偶者と浮気相手が一緒にいるところを見た人、二人の関係を知っている共通の知人などが、証人になってくれることがあります。
例えば、職場の同僚が「二人は明らかに恋人のような関係だった」と証言してくれる、友人が「本人から『好きな人がいる』と聞いた」と証言してくれる、といったケースです。
ただし、第三者が裁判で証言するのは、その人にとって負担が大きいです。会社の同僚に証人を頼むと、職場での人間関係に影響が出ることもあります。友人に頼むと、友情にヒビが入ることもあります。証人をお願いする際は、相手の立場も考慮する必要があります。
証言の内容も重要です。「そういう雰囲気だった」という曖昧な証言よりも、「〇月〇日、二人が手をつないで歩いているのを見た」といった具体的な証言のほうが有力です。
証拠収集の注意点と違法性
証拠を集める際、やってはいけないことがあります。違法な方法で集めた証拠は、裁判で使えないだけでなく、あなた自身が罪に問われる可能性もあります。
やってはいけないのは、不正アクセス(相手のメールアカウントに無断でログインする)、盗聴器の設置、GPSの無断設置、住居侵入(浮気相手の家に無断で入る)、脅迫(「バラすぞ」と脅して自白させる)です。これらは犯罪行為になる可能性があり、絶対に避けるべきです。
一方、自分が受信したメールやLINEのスクリーンショット、公道での写真撮影、公開されているSNS情報の収集、自分が所有する車へのGPS設置、自宅内での会話の録音は、基本的に問題ありません。
ただし、夫婦間のプライバシー侵害は微妙な問題です。配偶者のスマホを無断でチェックすることは、法的にはグレーゾーンです。違法とまでは言えませんが、プライバシー侵害として問題視される可能性があります。
証拠収集で迷ったら、弁護士に相談することをおすすめします。「この方法で証拠を集めても大丈夫か」「どこまでなら許されるのか」といった質問に、法的な観点からアドバイスしてもらえます。
肉体関係なしの浮気における慰謝料の相場
相場は50万円~150万円
肉体関係のない浮気で慰謝料が認められる場合、その相場は50万円から150万円程度です。肉体関係を伴う不貞行為の慰謝料(100万円から300万円程度)と比べると、やや低めになる傾向があります。
これは、肉体関係の有無が、精神的苦痛の程度を判断する一つの基準になっているためです。肉体関係があったほうが、裏切りの度合いが大きいと判断されるのです。
ただし、個別の事情によって金額は変動します。肉体関係はなくても、長期間にわたって深い恋愛関係にあった、多額の金銭的援助をしていた、といったケースでは、150万円を超えることもあります。
金額に影響する要素としては、関係の期間が長いほど高額になること、接触の頻度が多いほど高額になること、恋愛感情の深さが証拠から判断されること、金銭的な援助の有無と金額、婚姻期間の長さ、子どもの有無、婚姻関係への影響の大きさ、相手の収入や資産などがあります。
実際の判決例から見る金額
過去の判例を見ると、肉体関係のない浮気での慰謝料は、様々な金額になっています。
メールでの親密なやり取りがあったケースでは、夫が職場の女性と頻繁にメールをして恋愛感情を示す内容があり、期間は約1年間、婚姻期間は15年で、慰謝料は100万円でした。
頻繁なデートと金銭的援助があったケースでは、妻が元恋人と月に数回デートして小額のプレゼント交換をしており、期間は約6か月、婚姻期間は10年で、慰謝料は80万円でした。
深夜まで二人きりで過ごしていたケースでは、夫が同僚女性と深夜まで車内で過ごす行為を複数回繰り返し、期間は約3か月、婚姻期間は8年で、慰謝料は50万円でした。
旅行と多額の金銭援助があったケースでは、夫が浮気相手と泊まりがけの旅行をして生活費の援助もしており、期間は約2年間、婚姻期間は20年で、慰謝料は200万円でした。ただし、この事例は肉体関係の推認も含まれています。
これらの判例から分かるのは、関係の深さと期間が金額に大きく影響するということです。単に「二人で会っていた」だけでなく、恋愛感情の存在や、配偶者よりも相手を優先していた事実が重要です。
浮気相手への請求は可能か
肉体関係のない浮気の場合、浮気相手に慰謝料を請求するのは非常に難しいです。不貞行為であれば、配偶者と浮気相手の両方に慰謝料を請求できますが、肉体関係がない場合、浮気相手の責任を問うのは困難です。
浮気相手に請求できる可能性があるのは、相手が積極的に関係を作った場合、相手が既婚者だと知っていた場合、婚姻関係を破壊する意図があった場合、金銭的な援助を受けていた場合などです。
逆に、配偶者のほうが積極的にアプローチした、相手は既婚者だと知らなかった、単なる友人として接していた、といった場合は、浮気相手の責任は問えません。
実際には、肉体関係のない浮気で浮気相手に慰謝料を請求しても、認められないことが多いです。配偶者本人への請求に集中したほうが現実的です。
請求の手順と成功のポイント
まずは配偶者と話し合う
証拠が揃ったら、まずは配偶者と話し合いましょう。いきなり離婚や慰謝料の話をするのではなく、「あなたと〇〇さんの関係について話したい」と切り出します。
話し合いのポイントは、感情的にならず、事実を淡々と伝えることです。「あなたが〇〇さんと頻繁に会っていること、親密なメールをやり取りしていることを知っています」と、証拠に基づいて話します。
相手は否定するかもしれません。「ただの友達だ」「誤解だ」と言い訳するでしょう。そこで証拠を提示します。スクリーンショットや写真を見せて、「これをどう説明するのか」と問いかけます。
ここで重要なのは、相手の言い分も聞くことです。もしかしたら、あなたが知らない事情があるかもしれません。完全に勘違いだったということもあり得ます。一方的に責めるのではなく、対話の姿勢を持ちましょう。
相手が関係を認めたら、今後どうするかを話し合います。選択肢は大きく3つです。関係を断ち切り夫婦関係を修復する、しばらく別居して冷却期間を置く、離婚する、のいずれかです。
夫婦関係を修復するなら、相手には二度と会わないことを約束してもらいます。できれば「今後〇〇さんとは一切連絡を取らない」という誓約書を書いてもらうのが理想です。離婚を選ぶなら、離婚条件について協議します。慰謝料の金額、財産分与、年金分割などを話し合います。
協議離婚で慰謝料を決める
話し合いで離婚することになったら、慰謝料の金額を決めます。相手が素直に非を認めて、適切な金額を払うと言ってくれれば理想的ですが、そうでないことも多いです。
「肉体関係はないんだから、慰謝料なんて払う必要ない」と主張されることもあります。そこで、あなたは「肉体関係がなくても、婚姻関係を破綻させた責任はある。過去の判例でも慰謝料が認められている」と反論します。
金額交渉では、最初からギリギリの金額を提示するのではなく、少し高めの金額を提示するのがコツです。例えば、最終的に100万円で合意したいなら、最初は150万円を請求します。相手が「それは高すぎる」と言ってきたら、「では、100万円ならどうか」と譲歩します。
合意に達したら、必ず離婚協議書を作成します。口約束だけでは、後から「そんな約束はしていない」と言われるリスクがあります。書面に残すことで、証拠になります。
離婚協議書には、離婚すること、慰謝料の金額、支払方法、支払期限、財産分与の内容、年金分割を行うこと、子どもがいる場合は親権・養育費・面会交流について明記します。
できれば、離婚協議書を公正証書にすることをおすすめします。公正証書にしておけば、相手が慰謝料を払わなかった場合、裁判なしで強制執行ができます。広島市内にも公証役場があり、予約すれば対応してもらえます。費用は数万円程度です。
調停・裁判での立証
協議で話がまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、調停委員が間に入って、双方の話を聞き、合意を目指します。
肉体関係のない浮気のケースでは、調停委員を納得させることが重要です。「肉体関係はないけれど、婚姻関係を破綻させるほどの不適切な関係だった」ことを、証拠を示しながら説明します。
調停委員は法律の専門家ではない一般市民から選ばれることが多いので、専門用語を使わず分かりやすく説明することが大切です。「夫は毎週のように彼女と会っていて、家族との時間を犠牲にしていました。メールでは『君がいないと生きていけない』と言っていました。これは明らかに異常な関係です」といった具合です。
証拠は整理して、見やすくまとめておきましょう。メールのスクリーンショットは日付順に並べて、重要な部分にマーカーを引いておきます。行動記録は表形式にまとめると分かりやすいです。
調停でも合意に至らない場合、裁判に移行します。裁判では、弁護士に依頼することを強くおすすめします。法的な主張の組み立て、証拠の提出方法、反対尋問への対応など、専門的な知識が必要だからです。
裁判では、「婚姻を継続し難い重大な事由」があることを立証します。相手の行為、それによる婚姻関係への影響、精神的苦痛の程度などを、証拠を基に主張します。判決が出れば、相手はそれに従わなければなりません。慰謝料の支払いが命じられたのに払わない場合は、強制執行ができます。
よくある失敗パターンと対処法
証拠が弱くて請求が認められない
肉体関係のない浮気で最も多い失敗は、証拠不足です。「怪しいと思った」「きっと浮気している」という直感だけで動いてしまい、十分な証拠を集めずに問題を大きくしてしまうケースです。
例えば、配偶者を問い詰めて口論になり、関係がさらに悪化する。相手が警戒してスマホのロックを変える、メールを削除する、浮気相手との連絡方法を変える。こうなると、証拠を集めるのがさらに難しくなります。
対処法は、動く前に十分な証拠を集めることです。少なくとも1か月から2か月は観察して、パターンを把握します。いつも水曜日に遅く帰る、週末に理由をつけて外出する、といったパターンが見えてきたら、その日に集中的に調査します。
証拠が十分に集まるまでは、相手に気づかれないようにすることが大切です。普段通りに接して、何も気づいていないふりをします。スマホをチェックするときも、相手が寝ている間にこっそり見るなど、バレないように注意します。
もし証拠が不十分だと感じたら、探偵に依頼することも検討しましょう。費用はかかりますが、プロの技術で確実な証拠を集めてもらえます。
感情的になって不利な発言をする
配偶者の浮気を知ったとき、怒りや悲しみで感情的になるのは当然です。でも、感情に任せて行動すると、後で不利になることがあります。
よくある失敗は、配偶者や浮気相手を罵倒したり、脅したりすることです。「浮気をバラしてやる」「会社に言いつけてやる」「慰謝料1000万円払え」といった発言は、脅迫とみなされる可能性があります。
また、暴力を振るうのは絶対にNGです。浮気相手の家に押しかけて怒鳴り込む、物を投げる、殴る、といった行為は、傷害罪や器物損壊罪になります。あなたが加害者になってしまい、立場が逆転してしまいます。
対処法は、冷静さを保つことです。どんなに辛くても、感情をコントロールして、冷静に対応しましょう。怒りがこみ上げてきたら、その場を離れて、深呼吸して落ち着きます。
信頼できる友人や家族に話を聞いてもらうのも有効です。感情を吐き出すことで、少し冷静になれます。ただし、あまり多くの人に話すと、噂が広まってしまうリスクもあるので、相手は選びましょう。
弁護士やカウンセラーに相談するのもおすすめです。第三者の専門家に話すことで、客観的なアドバイスがもらえますし、感情の整理もできます。
自分の落ち度を指摘されて減額される
慰謝料請求をしたら、相手から「お前にも原因がある」と反論されることがあります。「お前が家事をしなかったから」「お前が冷たかったから、他の人に癒しを求めた」といった主張です。
実際に、婚姻関係の破綻にあなた自身も一定の責任がある場合、慰謝料が減額されたり、請求が認められなかったりすることがあります。法律上、これを「有責配偶者の法理」と言います。
例えば、あなたが長年にわたって配偶者を無視していた、暴言を吐いていた、家事を放棄していた、といった事情があれば、「婚姻関係を壊したのはお互い様」と判断されることがあります。
対処法は、自分の落ち度を認めつつも、相手の行為の不当性を主張することです。「確かに私にも反省すべき点はあります。でも、だからといって他の異性と親密な関係を持っていいわけではありません」という論理です。
また、自分の落ち度を改善する努力をしていたことを示すことも有効です。「関係を修復しようと、私はカウンセリングに通っていました。話し合いを求めても、夫は応じませんでした」といった事実があれば、あなたの責任は軽くなります。
弁護士に相談すべきタイミングと選び方
証拠を集める前に一度相談を
多くの人は、「証拠が全部揃ってから弁護士に相談しよう」と考えます。でも、実は証拠を集める前に一度相談するほうが効率的なんです。
なぜなら、弁護士に「どんな証拠が必要か」「どうやって集めればいいか」を聞いておけば、無駄な努力を避けられるからです。素人判断で「これが証拠になるはず」と思って集めたものが、実は証拠として弱かった、ということもあります。
初回相談は無料の法律事務所も多いので、気軽に利用できます。「配偶者が他の異性と親しくしているようです。肉体関係の証拠はありませんが、慰謝料請求はできますか?」と相談すれば、弁護士が可能性を判断してくれます。
弁護士からは「このケースなら、こういう証拠を集めてください」「この方法は違法なので避けてください」といった具体的なアドバイスがもらえます。それを基に証拠収集を進めれば、効率的です。
肉体関係なしのケースに強い弁護士を選ぶ
弁護士にも得意分野があります。離婚案件を多く扱っている弁護士でも、「肉体関係のない浮気」というグレーゾーンのケースに慣れているとは限りません。
弁護士を選ぶ際は、離婚案件の実績が豊富であること、特に「肉体関係なし」のケースを扱った経験があること、初回相談での説明が分かりやすいこと、「難しいケースだ」と正直に言ってくれること、費用が明確であること、相性が良いことをチェックしましょう。
初回相談で「このケースは難しいですが、こういうアプローチなら可能性があります」と正直に言ってくれる弁護士は信頼できます。「絶対に勝てます」と安易に言う弁護士には注意が必要です。
広島市内にも離婚問題に強い法律事務所はいくつもあります。インターネットで検索して、複数の事務所に相談してみることをおすすめします。実際に会って話してみないと、相性は分かりません。
弁護士費用の相場と費用対効果
弁護士に依頼する際、費用も気になるポイントです。離婚案件の弁護士費用は、一般的に相談料が30分5000円から1万円(初回無料の事務所も多い)、着手金が20万円から50万円、成功報酬が獲得額の10パーセントから20パーセント、実費が数万円という構成になっています。
例えば、着手金30万円、成功報酬が獲得額の15パーセントという契約で、慰謝料100万円を獲得した場合、成功報酬は15万円です。合計で45万円(プラス実費)が弁護士費用になります。
慰謝料100万円から弁護士費用45万円を引くと、手元に残るのは55万円です。自分で交渉していたら慰謝料ゼロだった可能性を考えれば、55万円は十分な成果と言えます。
ただし、慰謝料が50万円以下の見込みなら、弁護士費用を考えると費用倒れになる可能性があります。その場合、弁護士も正直に「このケースだと、弁護士に依頼しないほうが得かもしれません」と言ってくれることがあります。
まとめ
肉体関係のない浮気でも、状況によっては離婚と慰謝料請求が可能です。ポイントは、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかです。恋愛感情を伴う深い関係、頻繁な接触、婚姻関係への大きな影響があれば、認められる可能性があります。
証拠が最も重要です。メール、LINE、写真、行動記録など、相手との関係性を示す証拠を丁寧に集めましょう。証拠収集では、違法な方法を避け、合法的な範囲で行うことが大切です。
慰謝料の相場は50万円から150万円程度ですが、個別の事情によって変動します。まずは配偶者と話し合い、協議で解決できなければ調停、裁判へと進みます。
感情的にならず、冷静に対応することが成功の鍵です。証拠を集める前に弁護士に相談して、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。肉体関係のない浮気はグレーゾーンですが、諦める必要はありません。適切な準備と対応で、あなたの権利を守りましょう。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。