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【知らないと危険】不同意わいせつが相手を傷つけたときの法的責任と実務対応

2025.03.29 弁護士コラム

はじめに

近年、無理やり行われる性行為全般に対して、社会的な目が一層厳しくなっています。その中でも、意に反して行われる行為によって相手が負傷を負った場合は、通常の加害行為よりも重い刑罰が科される傾向があります。これは被害者の身体的・精神的ダメージが大きいだけでなく、再犯リスクや社会的影響への懸念が強いためです。

特に2023年の刑法改正以降は、当事者が本当に納得していたかどうかがより厳密に問われるようになりました。いわゆる無理強いを伴う行為だけでなく、相手が明確な拒否の意志を示しにくい状況だった場合でも、「合意していなかった」と判断されれば罪に問われるリスクが高まります。さらに、ここに「傷害」が伴うと、法的処分の重さが大きく変わってくる点に注意が必要です。

本記事では、合意を得ずに行われた性質の行為が相手を負傷させた場合、どのような罪名で処罰され得るのか、またどのように捜査・裁判が進むのかを詳しく解説します。被害に遭った人がとるべき行動や、逆に疑いをかけられた側が注意すべき点なども取り上げていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

合意を欠く行為による傷害とは何か

「合意」の定義

法律用語でいうところの「同意」は、単に相手が声に出して「いいよ」と言うだけにとどまりません。相手が心理的・身体的な負担や脅迫・威圧を感じることなく、自主的に意思表示をしたかどうかが重要です。たとえば、立場の差や酒に酔って判断力が低下している状況など、拒否できない環境であれば「真の合意がない」とみなされる可能性が高まります。

どうやって「負傷」が認定されるのか

性的行為によって生じる怪我には、見た目でわかる外傷(打撲や切り傷など)だけではなく、内部損傷や精神的なショックによる心的外傷も含まれます。医師の診断書やカウンセラーの所見が証拠として提出され、捜査機関や裁判所はそれらを総合的に評価します。外傷が軽微でも、心的外傷が深刻であれば、傷害として重く扱われるケースも増えています。

規定される法的根拠

強制わいせつ致傷・準強制わいせつ致傷

伝統的には、暴行や脅迫、または被害者が抗えない状況を利用して行うわいせつ行為により相手が傷ついた場合、強制わいせつ致傷や準強制わいせつ致傷といった罪名が適用されてきました。これらは刑法の旧176条や旧178条などに規定されており、法定刑も一般的なわいせつ関連の罪より重くなっています。具体的には「無理やり行為をしたうえで、相手に怪我を負わせた」場合などが該当します。

2023年改正で広がる「合意」の概念

2023年の刑法改正では、「被害者が本当に承諾していないのに行為を強行した」という事例を広く処罰の対象とする方向へシフトしています。以前は、暴行や脅迫といった外形的な強制力が立証されない限り、罪に問われにくいケースもありました。しかし改正後は、「拒否の意思を示せない状況にあった」「心理的圧力で断れなかった」という場合でも、違法性が認定されやすくなっています。さらに、その行為によって負傷が生じれば、より重い刑罰が科される可能性があるのです。

どのようなケースが該当するのか

酒に酔った相手への行為

お酒が入った場面では、相手の判断力や意思表示能力が低下していることが往々にしてあります。たとえ表面的には拒否の言葉がなかったとしても、実際には断れない精神状態であれば「合意なし」とみなされるリスクが高いです。そのうえで、乱暴にふるまった結果、相手に怪我や精神的苦痛を負わせた場合、違法行為として捜査される可能性があります。

力関係を利用した行為

職場の上司と部下、教員と生徒、先輩と後輩など、明確な地位の差がある関係では「断れば不利益があるのではないか」と恐れてしまい、本音で拒否できないケースが見受けられます。単に「承諾したように見えた」という表面だけではなく、被害者が内心でどれほどの圧迫感を受けていたかを捜査機関が調べる流れになってきています。この状況で傷害が認められると、かなり重い罪に問われる可能性が高まります。

SNSやマッチングアプリでの出会い

インターネット上で知り合い、実際に会ってみたら思っていた印象と違った、あるいは相手の言葉巧みな誘導で抵抗が難しかったというトラブルも増加傾向にあります。はじめは自分も興味があったとしても、途中で「やっぱりやめたい」と思ったのに押し切られた場合などは、合意がなかったことになる可能性があります。もしその結果として怪我や外傷が確認されれば、法的リスクは一気に高まるでしょう。

デートや交際関係でも要注意

恋人関係や夫婦間であっても、相手が本当に同意していないのに無理やり行為に及べば問題になります。長期的な関係であっても、あるタイミングで「今日はしたくない」という意思が示されたにもかかわらず行為を強行した結果、相手が身体を痛めた場合などは、重い処罰に直結しやすいです。

逮捕・起訴までの流れ

  • 被害届の提出または告訴
    被害者または周囲の人から警察に連絡があり、事情が聞かれるところから捜査が始まります。相手の怪我の程度や当時の状況が確認され、立件されるかどうかが判断されます。
  • 捜査と証拠収集
    警察は被害者・加害者双方の証言を取り、医師の診断書、現場の状況を示す写真・映像、SNSでのやりとりなどを証拠として集めます。被害者が抵抗できない状態だったかどうか、明確に拒絶したのにそれを無視したかどうかなど、合意の有無が詳しく調べられます。
  • 逮捕・取り調べ
    十分な証拠や被疑者が逃走・証拠隠滅の可能性があると判断されれば、逮捕状が請求されることがあります。逮捕後は警察署に留置され、取り調べや追加の証拠収集が行われます。
  • 勾留と起訴判断
    検察官は、逮捕後、被疑者を拘束し続ける必要があると判断すれば勾留を請求し、認められれば最大20日間(10日+延長10日)の身柄拘束が可能です。最終的に起訴に踏み切るか、不起訴とするかを決定します。不起訴でも、民事で損害賠償を請求される可能性は残ります。

実際の量刑と判例が示すポイント

強制わいせつ行為での致傷事例

強制わいせつ行為に傷害が伴った場合、法定刑が一気に引き上げられるのが特徴です。たとえば、強制わいせつ罪そのものは6か月以上10年以下の懲役ですが、致傷がつくとさらに処罰が重くなる可能性があります。実際の裁判例では、初犯であっても実刑判決が下されることが少なくありません。

量刑の判断材料

裁判官が量刑を決める際には、以下のような要素が考慮される傾向があります。

  • 被害者との力関係や抵抗の難しさ
  • 暴行・脅迫の程度や継続時間
  • 被害者の傷の深刻度(身体的・精神的ともに)
  • 加害者の反省の度合いや示談の成立状況
  • 過去の前科・前歴の有無

なかでも被害者の負った傷害が重篤である場合や、行為態様が極めて悪質だった場合は、実刑が強く考慮されます。一方で、被害者と示談が成立している場合や初犯である場合は、執行猶予がつくこともあります。ただし、性犯罪に対する世間の厳しい視線の高まりから、示談があったとしても実刑が回避できないケースも増えてきています。

相談先とサポート体制の重要性

性犯罪やそれに付随する傷害事件は、被害者・加害者の双方にとって精神的負担が非常に大きい分野です。とくに被害者の方は、身体的な被害だけでなく心理的にも大きなショックを受けるため、一人で抱えこまずに早めのサポートが求められます。

  • 警察・性犯罪相談窓口
    加害行為を受けたと感じたら、まずはためらわずに警察に相談するのが大切です。自治体によっては性犯罪被害専用の相談窓口があるため、そこで専門的なアドバイスを得られる場合もあります。
  • 弁護士
    刑事事件化する可能性がある場合は、弁護士の助言が不可欠です。被害者側は被害届の出し方や示談交渉、加害者側は弁解や証拠の整理など、法的サポートが必要になります。
  • 医療機関・カウンセリング
    怪我の手当はもちろん、心理的なケアも重要です。緊急避妊や性感染症の検査が必要なこともあるため、早めの受診を検討しましょう。また、心の傷を癒すためにカウンセリングを利用する人も増えています。

被害に遭った場合の具体的対処法

  • 身の安全確保と医療機関の受診
    加害者から離れることを最優先に行動し、必要に応じてすぐに医療機関を受診してください。身体的な怪我はもちろん、万が一の性感染症や心のダメージを診断してもらうためにも大切です。診断書は後の証拠として役立つ場合があります。
  • 証拠の確保
    衣類や下着、現場の写真、やりとりをしたSNSやメールの履歴など、捨てたり消したりせず保管しましょう。後からでも立証に役立つ情報になる可能性が高いです。
  • 早めの相談
    できるだけ速やかに警察や支援センター、弁護士に相談することをおすすめします。時間が経つほど証拠が散逸し、事件として立証が難しくなるケースもあります。

疑いをかけられた場合の注意点

弁護士への相談

身に覚えがない、あるいは相手との認識の違いでトラブルになったという場合でも、自己判断で捜査機関に応じるのはリスクがあります。なるべく早めに弁護士に連絡を取り、客観的なアドバイスを受けましょう。

    証拠やメッセージの保存

    自分が合意を得たつもりだったとしても、相手の言い分と食い違うことは十分にあり得ます。やりとりの画面を保存し、できる限り当日の状況を細かく記録しておくことが大切です。

    示談交渉の可能性

    場合によっては、双方が話し合いをすることで示談に至るケースもあります。ただし、示談が成立しても必ず不起訴になるわけではなく、検察や裁判所が独自に判断することを忘れないでください。

    不用意な連絡を避ける

    被害者やその関係者に直接謝罪や釈明をしたいと思うかもしれませんが、誤解や圧力と受け取られる可能性もあります。捜査中や示談交渉の段階では、弁護士を通したほうが安全です。

      まとめ

      合意がない形で行われた性質の行為により相手が負傷すると、従来のわいせつ関連の罪よりも重い処罰を受けるリスクが非常に高くなります。近年の法改正によって、暴行や脅迫といった直接的な強制力がなくても、「被害者が拒否できない状況だったのではないか」「表面上は同意していたように見えても、実際は嫌がっていたのではないか」といった点が厳しく問われるようになりました。

      また、被害に遭った側が抱える苦痛は身体面だけでなく精神的・社会的な面にも広がります。周囲の理解が得られず、一人で苦しんでいる人も少なくありません。だからこそ、万が一被害に遭った場合は証拠を大切に保管しながら、一刻も早く警察や弁護士、医療機関など専門家の力を借りることが大切です。

      疑いをかけられた側としても、「合意があった」と思い込んでいるだけで、実際には相手が恐怖や圧力を感じていたというケースは少なくありません。言葉で拒否されなかったからといって安心はできず、相手の状況や心情を無視した行為が後に大きな問題となり、人生を大きく左右する結果を招くこともあります。

      このようなトラブルを避けるためにも、お互いを尊重するコミュニケーションが欠かせません。「してもいい?」と聞くだけではなく、相手が本当に嫌がっていないか、体調や精神状態を慎重に確認する姿勢が求められます。性行為は一人で完結するものではなく、常に相手との相互理解のもとに行われるべきものであるからこそ、安易な思い込みや力任せは絶対に避けなければならないのです。

      以上が、合意がない状態での性行為によって相手が傷を負った際に問題となる法的リスクと、その具体的な流れ、そして当事者がとるべき対処法の概要です。周囲で同様のトラブルに悩んでいる方がいたら、ぜひ専門機関への相談を促すなど、早期のアクションをおすすめします。相手の心身を傷つける行為は決して許されないばかりか、自身の未来にも大きな影響を及ぼすことを忘れないようにしましょう。

      この記事を監修した弁護士

      代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

      所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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