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風俗店における無断撮影トラブルと話し合いによる解決のポイント

2025.04.06 弁護士コラム


大人向けのサービスを提供する店舗でのトラブルは、日常生活ではあまり表面化しにくいものの、一度問題が起こると深刻な結果を招きやすいのが特徴です。その中でも、利用客による隠し撮り(無断撮影)は深刻なリスクを伴う行為といえます。撮影された側の心的ダメージだけでなく、刑事事件化したり高額な損害賠償を請求されたりする可能性があるため、当事者双方にとって大きな負担となります。

一方、こうしたトラブルが発生した場合、被害側・加害側ともに「話し合いによる解決」を模索することがあります。いわゆる“示談交渉”と呼ばれるもので、刑事事件に発展する前に、あるいは刑事手続きと並行して和解を成立させ、精神的・経済的負担を軽減しようとする方法です。

本記事では、風俗店で無断撮影が行われた場合に焦点をあて、以下の内容を中心に解説していきます。

大人向けサービス提供店での無断撮影の実態

どんな店舗が対象になるのか

大人向けの接客サービスを提供している店舗には、さまざまな形態があります。リラクゼーションの名目で異性の身体に触れることが中心の店や、個室内でのサービスを主体とする業態など、多岐にわたります。こうした場所はプライバシーが確保されやすく、利用者と従業員が密室状態になるケースが多いのが特徴です。

このような状況がある一方、残念ながら一部の利用者がスマートフォンや隠しカメラなどを用いて、従業員や他の利用者を無断で撮影する事件が後を絶ちません。店側も監視カメラや持ち込み禁止ルールなどで対策を強化していますが、完全に防ぎきれているわけではないのが実情です。

無断撮影が発覚する瞬間

個室や暗がりを利用しているからこそ、隠し撮りは発覚しにくいと思われるかもしれません。しかし、スマートフォンのシャッター音や不自然な動きによって従業員や店側が異変に気づくことは珍しくありません。また、利用後に写真や動画が流出してしまい、店や第三者に発覚するケースもあります。

さらに最近では、店舗側が利用客の持ち物をチェックすることもありますし、サービス中の姿勢や目線の不自然さによって不審に感じられ、あとで部屋を確認した際にカメラや録画機材が見つかることもあります。いずれにせよ、一度見つかった場合のダメージは大きく、刑事・民事の両面で責任を問われるリスクが一気に高まります。

どのような罪に問われる可能性があるのか

刑法上の罰則

大人向けサービス店内での無断撮影が法律上問題となる場合、考えられるのは「各都道府県迷惑防止条例違反」です。地域によっては「卑わいな目的での撮影」や「盗撮行為」として処罰対象になることもあります。また、撮影した画像や動画を外部に漏えいしたり、SNSに投稿したりした場合は、名誉毀損やプライバシー侵害、あるいはわいせつ物頒布罪など、より重い罪に問われる可能性も出てきます。

民事上の責任

刑事上の問題だけでなく、民事上の責任を問われるケースもあります。撮影された従業員や店舗側から「プライバシーを侵害された」「人格権を侵害された」という理由で損害賠償を請求される可能性があるのです。とくに、被写体の裸や半裸の状態、あるいはサービス提供中の際どい場面が撮影されていた場合は、被害者の精神的苦痛が大きく評価され、高額の慰謝料を求められるケースも少なくありません。

法律以上に厳しい店舗独自の対処

大人向けのサービス店は、トラブルを避けるために利用規約や独自のルールを定めていることがあります。「店内での撮影は一切禁止」「違反があった場合は即座に警察に通報」といったものです。これを破った場合、出入り禁止や追加料金の請求など、店舗独自の対応を取られることもあります。また被害者となった従業員のケアのために、店側が積極的に警察に届け出を行う場合も多々あります。

訴えられた場合の流れと本人に及ぶ影響

店舗側や従業員が警察に通報する場合

無断撮影が発覚した際、店舗側や従業員がまず警察に通報するかどうかが大きな分岐点となります。実際のところ、被害者側が「刑事告訴は避けたい」「早期に和解で解決したい」と考える場合もあれば、店舗の方針で「必ず警察に通報する」ことが明文化されている場合もあります。いったん通報されれば警察が事情聴取を行い、証拠品の提出やデータの確認をされることになります。

書類送検から起訴・不起訴の判断へ

警察が捜査を進めた結果、検察に書類送検されるケースもあります。その後、検察官の判断によって「起訴」(正式裁判)「不起訴」「略式起訴」のいずれかが決まります。迷惑防止条例違反などの場合は略式起訴(罰金刑)で済むケースもありますが、被害者や店舗側の意向、撮影データの扱い、余罪の有無などによっては正式に起訴されることも十分にありえます。

実名報道や社会的信用の失墜

無断撮影関連の事件は、地域のニュースとして報道されることもあります。内容によっては実名や所属先が報道される可能性もあり、加害者として名前が広く知れ渡ることになります。会社員であれば解雇や懲戒処分を受ける場合もありますし、公的資格(教員や公務員など)を持っている人の場合は資格停止や免職処分を受けるリスクも高いです。社会的信用を取り戻すのは容易ではありません。

当事者間で話し合いによる解決を行う際のポイント

刑事事件と話し合いは別軸で進む

無断撮影のトラブルが持ち上がったとき、被害者との間で直接交渉を試みる場合があります。いわゆる「話し合いによる解決」、すなわち和解の手続きを取りたいという意向です。被害者側も、刑事事件として公になるより、当事者間で穏便に解決したいと思うことは少なくありません。

ただし、刑事事件はあくまで公的な手続きであり、当事者間で「被害届を出さないでほしい」「示談金を払うから訴えないでほしい」と合意しても、必ずしもその通りになるわけではありません。状況によっては警察が捜査を継続し、検察が起訴を判断することがあります。

話し合いのメリットとデメリット

  • メリット
    • 被害者に対して直接謝罪し、誠意を示すことができる。
    • 損害賠償や慰謝料の金額について、裁判より早期に決着する可能性がある。
    • お互いの精神的負担や訴訟費用を抑えられる。
  • デメリット
    • 被害者が感情的になっており、話し合い自体が成立しない場合もある。
    • 示談金の額が適正かどうか、当事者だけでは判断しにくい。
    • 話し合いの内容が証拠として残りにくく、後日争いが再燃する恐れがある。

適切な謝罪と誠意ある対応

話し合いをするうえで重要なのは、加害行為を認め、被害者の感情に配慮したうえで真摯に謝罪することです。言い訳がましい態度や、被害者を脅すような発言は逆効果になるばかりか、追加のトラブルを引き起こすリスクさえあります。誠実な対応が結果的に示談金の額や解決までのスピードにも影響するため、感情的にならず、冷静に相手の話に耳を傾けることが肝要です。

弁護士や専門家に依頼する意義と費用面

弁護士をつけるメリット

無断撮影のトラブルは、刑事と民事の両面で進行する可能性があるため、法律の専門家である弁護士を早期に交えておくと安心です。弁護士が入ることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 適正な示談金・損害賠償の額を見極めてもらえる
  • 警察や検察への対応をスムーズに進められる
  • 不用意な発言による事態の悪化を防げる
  • 交渉の窓口を一本化できるため、加害者・被害者双方のストレスを軽減できる

弁護士費用の目安

弁護士費用は事務所や事案の内容によって大きく異なりますが、以下のような目安があります。

  • 相談料:30分~1時間あたり5,000円~1万円程度
  • 着手金:示談交渉の場合、10万円~30万円程度が一つの目安
  • 成功報酬:和解金の何%と定めている場合が多い(10%~20%程度)

ただし、近年は無料相談や定額制のプランを設定している事務所もあります。弁護士に依頼する費用を「高い」と感じるかもしれませんが、起訴されて前科がついたり、高額な賠償金を請求されたりするリスクと比較すると、専門家のサポートは決して無駄にはならないでしょう。

早期相談の重要性

「すぐに警察沙汰になるかもしれない」と焦って行動すると、冷静な判断を欠く可能性があります。状況が悪化する前に弁護士や法律の専門家へ相談し、最善の対応方法を検討しましょう。示談交渉を行う場合でも、弁護士が間に入ることで、誤解を招くやりとりを避けやすくなります。

被害者になった場合の対応と注意点

まずは店舗責任者や警察への相談

もしあなたが大人向けサービス店で働いており、利用客に無断で撮影されたと疑われる場合、まずは店舗責任者や管理者に相談しましょう。撮影機材が発見されたり、SNS上にあなたの写真が流出したりしている場合は、証拠保全が重要です。スクリーンショットやURLを控え、可能であれば早急に警察へ届け出ましょう。

感情に任せた行動は避ける

被害者の立場では、加害者に対して強い怒りや恐怖を感じるのは当然です。しかし、感情的になってその場で暴力的な行為に及んだり、脅迫まがいの発言をしてしまうと、逆にこちらが責任を問われる可能性もあります。冷静に法的手続きを進めることが、結果的に自身の権利や安全を守ることにつながります。

専門家のサポートを得る

被害者として示談を検討する場合も、弁護士を通じて交渉するほうが安心です。加害者側が自己都合の低い金額を提示してきたり、「示談が成立したからもう何をやってもいい」といった誤解を与えないためにも、法的に有効な文書を作成しておく必要があります。

トラブルを未然に防ぐ方法

店舗側の対策

  • 持ち物のチェックを厳格化する
  • 個室の出入口付近やロッカー周辺に防犯カメラを設置する
  • 従業員に対して、怪しい行動やカメラ機材の隠し場所を研修で周知する
  • 利用規約に「撮影機材の持ち込み禁止」を明示し、違反時の対応方針をはっきりさせる

従業員個人のセルフディフェンス

  • サービス中も常に相手の手元や視線に注意を払う
  • スマートフォンや小型カメラなど、不自然なアイテムの有無を感じ取る
  • 異変があればすぐに責任者に連絡し、二次被害を防ぐ
  • SNSへの投稿やデータの拡散に備えて、証拠を確保する

利用者側の心構え


当然ながら、無断撮影は違法性が高く、店舗や相手を深く傷つける行為です。軽い気持ちや好奇心で撮影を行い、後悔するケースが後を絶ちません。利用者としては、店舗のルールを守るのはもちろん、人としての常識とモラルを徹底することが大切です。

まとめ

大人向けのサービス店における無断撮影のトラブルは、加害者・被害者双方にとって大きな心労を伴い、社会的信用や経済状況、精神状態にも深刻な影響を及ぼします。いったん事件化すると刑事処分が下るだけでなく、高額な慰謝料や損害賠償を請求されるリスクもあり、取り返しのつかない事態に発展しかねません。

こうしたトラブルが発生した場合、話し合いによる解決を模索するのは一つの選択肢です。しかし、刑事手続きと当事者間の交渉は別物であることを理解し、被害者との示談を結んでも刑事事件が完全に回避できるとは限りません。もし問題が起こった時には、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談し、適切な手順で話し合いを進める必要があります。

また、店舗側や従業員は、怪しい行動を早期に発見するための対策と、万が一被害に遭った場合の適切なフォロー体制を整えておくことが重要です。利用者側も、一時の興味本位や衝動で違法行為に手を染めてしまうと、多大な社会的・経済的な代償を払うことになるという自覚を持たなければなりません。

最後に強調しておきたいのは、撮影された側が受ける心の傷は非常に深刻であるという点です。大人向けのサービスであっても人権やプライバシーは尊重されるべきであり、違法行為は厳正に対処されるのが現代社会の姿勢です。トラブルを起こさない・巻き込まれないためにも、正しい知識を身につけ、ルールとマナーを守った利用・運営を心がけましょう。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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