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痴漢示談金の相場はいくら?金額に影響する7つの要素と弁護士の役割

2025.04.25 弁護士コラム

痴漢事件における示談交渉を検討する際、多くの方が最も気になるのは「示談金の相場」でしょう。被害者の立場からは適正な補償を求めたい一方で、加害者の立場からすると経済的負担をできるだけ抑えたいという思いもあり、示談交渉の着地点を探ることは容易ではありません。さらに、痴漢行為の態様や被害者の状況、加害者に前科があるかどうかなど、示談金を左右する要素は多岐にわたります。

本記事では、痴漢示談金の一般的な相場の目安を提示しつつ、金額が変動する具体的な要素、示談交渉における注意点や手続の流れなどを総合的に解説します。また、示談金とあわせてよく取り入れられる謝罪や誓約などの非金銭的条件についても言及し、示談交渉で押さえておきたいポイントを整理します。さらに、弁護士に依頼することによる利点や、示談成立後に考慮すべき法的な影響についても解説しています。痴漢事件のトラブルをできるだけスムーズに解決するうえで、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

痴漢示談金の基本的な相場とその背景

痴漢事件の示談金について、「軽微な痴漢行為なら10万円~30万円程度」「一般的な行為なら30万円~50万円程度」「悪質な行為の場合50万円~100万円程度」「極めて悪質な場合は100万円を超えることもある」というおおまかな目安が知られています。たとえば、電車内で服の上から触るだけの単発的な行為であれば比較的低額になりやすく、反対に、下着の中に手を入れるなど悪質性が高く、被害者の恐怖や精神的苦痛が大きいと判断される場合は高額になります。

しかし、これらはあくまで「目安」であり、実際の示談金額は事件の具体的事情や被害者・加害者の属性、地域性などによって大きく変動します。示談交渉の過程で被害者がどのような希望を持ち、加害者側がどのように反省や補償の意思を示すかといった要素も無視できません。また、痴漢事件に対する世間の視線が厳しくなる傾向がある大都市圏などでは、示談金がやや高額になりやすいとの指摘もあります。したがって、「相場」があるからといって、絶対的にその金額に決まるわけではないという点に留意することが大切です。

痴漢示談金を左右する主な要素

示談金の算定においては、以下のような複数の要素が総合的に考慮されることが多いとされています。ただし、実際にはどの要素をどの程度重視するかは事案次第であり、一律ではありません。

まず重視されるのは「行為の態様と悪質性」です。服の上から触る程度と、直接肌を触る行為、下着の中に手を入れる行為とでは、被害者が受ける精神的苦痛の度合いが明らかに異なるため、一般的には後者ほど示談金は高額になりがちです。さらに、一度きりではなく複数回にわたり継続的に行われていた場合や、加害者に前科や常習性がある場合は悪質性が高いと見なされ、そのぶん示談金のハードルも上がっていきます。

次に、「被害者の属性や被害状況」も大きな影響を及ぼします。被害者が未成年者であれば、本人のみならず家族も大きな精神的苦痛を被るケースが多く、示談金は高めになる傾向があります。また、障害を持つ方や社会的弱者が被害に遭った場合も、配慮すべき点が多いため、金額が上積みされる場合が少なくありません。さらに、被害者がどの程度の精神的苦痛を受け、医療機関への通院などが必要になったかといった面も重視されます。PTSDや不眠症が生じた場合など、被害後の影響が長期にわたると判断されれば、その分示談金は高くなる傾向があります。

加害者の属性も無視はできません。医師や弁護士、教師など、社会的に高い地位があると見なされる職業についている人が痴漢を行った場合は、事件が公になることで社会的な信用を大きく損なう可能性があります。そのため、より早期の示談成立を望んで、高めの示談金を支払う覚悟を示すケースもあります。逆に、経済的に厳しい状況にある加害者の場合、希望しても高額な示談金を支払えないという現実もあるため、分割払いなどの工夫をしながら示談成立を目指すことがあります。

また、「示談交渉を行うタイミング」も金額面に影響します。被害届が提出される前に示談を成立させたい場合は、被害者としても告訴を控えてもらう代わりに示談に応じる姿勢を見せることが多く、比較的低額でも合意に達するケースがあります。一方、逮捕や勾留といった段階に進んでしまった場合、起訴を回避したい加害者側は高めの示談金を提示する傾向があり、さらに起訴された後では、裁判で有利に働く可能性を少しでも上げるために、加害者側がより高額の示談金を支払う意向を示す場合があります。

示談交渉とあわせて検討される非金銭的条件

痴漢事件の示談というと示談金ばかりに目が向きがちですが、多くの場合、示談成立の条件として金銭補償以外にも以下のような取り決めが含まれます。たとえば、加害者からの「謝罪文の提出」はよく見られる条件の一つであり、被害者が加害者に誠意を求める場合に提示されます。そこでは再発防止の誓いや、被害者が受けた苦痛をどのように受け止めているかを示すことが重要とされます。

同時に、「再発防止の誓約書」を取り交わすことも少なくありません。単に謝罪だけでなく、再び痴漢行為を行わないという約束を明文化することで、被害者が少しでも安心して今後の生活を送れるように配慮するのです。さらに、被害者がPTSDなどの症状で治療を受けている場合は、「治療費の負担」を加害者が行うことも示談条件に含まれることがあります。金額の多寡だけでなく、被害者が実際に負担している治療費や通院交通費、カウンセリング費用といった実費の補償を誠実に示すことが示談成立の後押しとなるでしょう。

また、被害者が加害者に近づかれることで恐怖を再び感じないよう、「接触禁止」を示談の条件とする場合もあります。加害者と被害者が同じ勤務先や学校に所属している場合などは、直接対面や連絡を徹底的に避けるための具体的なルールを定めることが有効です。こうした非金銭的条件をどう盛り込むかも、示談交渉の大切な部分となります。

示談交渉における弁護士の役割と依頼のメリット

示談交渉は当事者同士で行うことも可能ですが、痴漢事件のように刑事上の処分が重くのしかかる場面では、弁護士を通して交渉を進めることが圧倒的に有利とされています。被害者側としては、弁護士が間に入ることによって、相場を大きく逸脱した安易な示談金で合意させられるリスクを減らすことができます。加害者側としても、相場を踏まえて適正な金額を提示し、必要以上の高額請求を回避することが期待できます。

また、当事者間で直接話し合うと感情的な対立が激化する可能性があり、話し合いが頓挫することもしばしばです。弁護士が交渉を代理すれば、冷静な視点で事実関係や相場を見極め、法的に有効な示談書の作成へと導くことができます。示談が成立した場合も、その内容が法的に不備なく作成されているかどうかは、のちのトラブル防止にとって非常に重要です。

被害者側では、弁護士と相談しながら、「どの程度の金銭的補償が妥当か」「どのような謝罪や誓約が必要か」などを検討し、加害者側に提示することができます。加害者側では、示談が成立し検察にその事実を伝えることで、不起訴処分(起訴猶予など)となる可能性を高め、前科がつくリスクを下げるという利点があります。こうした刑事手続上のメリットも含め、弁護士が適切にサポートするかどうかで結果は大きく変わるのです。

具体的な事例と示談金の目安

痴漢行為には様々なケースがありますが、典型的には「電車内での単発的な軽微な行為」「直接肌に触れる程度の一般的な行為」「悪質性の高い行為」「被害者が未成年の場合」「常習的な痴漢」のようにいくつかのパターンに分類して説明されることが多いです。たとえば、混雑した電車内で服の上から一瞬触れただけの行為であれば、10万円~20万円程度を目安に示談が成立するケースがあります。一方、直接肌に触れたり、被害者が高い恐怖を抱くような手口であったりすれば30万円~50万円、さらに下着の中に手を入れるなど悪質性が高いと判断された場合は50万円以上を提示することも珍しくありません。

未成年者が被害者の場合は、たとえ直接肌を触れていなくても、「社会的にも心理的にも重大な悪影響を受ける」点が重視され、高額化する傾向があります。また、加害者に前科があったり、同様の行為を何度も繰り返していたりすると、裁判になった場合に厳しい処分が下される可能性があるため、示談交渉段階で高めの金額を提示して早期解決を目指すケースが見られます。これらはあくまで目安ですが、示談金の水準を把握するうえである程度の指針となるでしょう。

示談金の支払い方法と税金の取り扱い

示談金の支払いは一括払いが基本ですが、加害者の経済状況によっては分割払いの合意を検討する場合もあります。被害者としては、分割払いに応じることで最終的に示談金を確保できる反面、支払いが滞ったり、加害者と連絡がつかなくなったりするリスクを抱えることになります。そのため、分割払いを選択する際には、支払いが履行されなかった場合のペナルティや、保証人の設定などを示談書に明記することが望ましいです。

税金面については、一般に痴漢被害に対する示談金は「損害賠償金」として扱われ、被害者側の所得税は非課税となることが多いです。ただし、逸失利益の補償を受ける場合など、内容によって課税対象となることもあるため注意が必要です。一方の加害者側では、示談金を支払っても基本的には所得控除や経費として認められないのが一般的ですが、事業に関連した事情がある場合など、特殊なケースでは経費計上が認められる可能性がゼロではありません。税務上の取り扱いはケースバイケースで異なるため、不明点がある場合は税理士や弁護士に相談すると安心です。

よくある質問(Q&A)

痴漢示談に関しては、以下のような質問がよく寄せられます。ここでは代表的なものを取り上げ、簡潔に回答を示します。

●「示談金の相場は地域によって違いがあるのか?」

都市部などでは、示談金がやや高めに設定される事例が多いとの指摘がありますが、地域による決定的な差異があるわけではありません。あくまで事件個別の事情が重要であり、地域差は参考程度にとどまります。

●「示談金は必ず支払わなければならないのか?」

示談はあくまでも任意の合意であり、法的に強制されるものではありません。しかし、示談に至らなければ、刑事処分が重くなる可能性や、被害者による民事訴訟が提起されるリスクがあります。起訴や有罪判決を回避したい場合は、示談を検討するのが一般的です。

●「示談金の支払いが難しいときはどうすればよいか?」

経済的に一括払いが困難な場合は、分割払いを提案し、示談書に明記することも選択肢の一つです。また、親族からの借り入れや、貸付制度の利用を検討して示談金を用意する事例もあります。まずは弁護士に相談し、現実的な解決策を探ることが大切です。

●「示談が成立した場合でも前科はつくのか?」

示談が成立し、検察官が不起訴処分とすれば前科はつきません。ただし、示談成立後に起訴され、有罪判決が確定した場合は前科がつきます。示談成立は、加害者が不起訴処分を得るうえで大きな材料となるため、早期に交渉を始める意義は非常に大きいです。

●「示談金の領収書は必要なのか?」

示談金を支払った・受け取った事実を明確にするため、領収書は必ず交わすようにしましょう。日付、金額、示談金である旨、受領者の署名や捺印を漏れなく記載することで、後のトラブルを防止できます。

まとめと今後のアクション

痴漢事件の示談交渉は、被害者・加害者双方にとって非常に重要な意味を持ちます。被害者は精神的な苦痛に対する補償を得るだけでなく、再発防止や謝罪を受け取ることで、事件による心理的なダメージを少しでも和らげたいという思いがあります。加害者側は、不起訴処分を目指したり、刑罰を軽減したりするために示談成立を積極的に検討するケースが多いでしょう。

示談金の相場は、軽微な痴漢行為なら10万円~30万円程度、一般的な行為は30万円~50万円程度、悪質な行為であれば50万円~100万円、それ以上になることもあるとされています。ですが、実際には被害状況や加害者の属性、前科の有無、交渉タイミングなどによって大きく変わるため、数字だけを鵜呑みにするのは危険です。交渉が難航する場合は、弁護士に相談し、事件の具体的な事情を踏まえた上で柔軟に対応することが欠かせません。

また、痴漢被害に対する示談交渉では、謝罪や誓約書の提出、治療費の負担など金銭以外の条件も併せて話し合われるのが一般的です。精神的苦痛を負った被害者にとっては、加害者の誠意ある対応や、今後の再発を防止するための具体的な対策が示されるかどうかが重要になります。したがって、被害者の権利と安全を守るためにも弁護士の助言は有効であり、加害者側としても誠意ある態度を早期に示すことが示談成立の鍵となります。

示談が成立すると、加害者は検察や裁判所にその事実を伝えることで、不起訴処分や量刑上のメリットを得られる可能性があります。一方、示談が不成立のまま刑事裁判に進むと、有罪判決を受け前科がつくリスクが高まります。こうしたリスクを回避したいのであれば、示談成立を目指して迅速に行動する意義は非常に大きいと言えます。

痴漢事件は被害者にとっても加害者にとっても、精神的にも社会的にも負担の大きいトラブルです。そのため、トラブルの早期解決を目指すうえでは、痴漢事件に精通した弁護士に相談することが最善策の一つです。オリズル法律事務所では、痴漢事件に関する示談交渉や刑事弁護に関して豊富な実績を有する弁護士がそろっており、一人ひとりの事情に合わせた解決策を提案しています。示談金の相場や交渉方法でお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。早期に行動を起こすほど、トラブルを最小限にとどめられる可能性は高まります。納得のいく形で事件を収束させるために、本記事で示したポイントを参考にしながら、適切なサポートを得るよう心がけてください。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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