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婚姻費用をめぐる調停、何回目で合意に至る?――スムーズに進めるためのポイントと注意点

2025.05.27 弁護士コラム


夫婦が別居している、または離婚を視野に入れている段階で、「生活費をどう分担するのか」が大きな問題になるのは自然なことです。特に、子どもの養育費を含む生活費、いわゆる婚姻費用については、当事者間の話し合いが行き詰まるケースも少なくありません。そのため、多くの方が家庭裁判所の“調停”を利用して合意形成を図っています。

では、この婚姻費用をめぐる話し合いは、いったい何回の調停期日で決着するものなのでしょうか。多くの人が疑問に思うポイントですが、実際には夫婦の事情や対立の程度などによって大きく変わってきます。本記事では、婚姻費用の調停が一般的にどのくらいの回数で決まることが多いのか、またスムーズに進めるためのコツや注意点を詳しく解説します。

婚姻費用をめぐる調停とは?

離婚前の家族の生活費を話し合う手続き

「婚姻費用」とは、夫婦が正式に離婚する前の段階で、別居中の配偶者や子どもを養うために必要な生活費を指します。たとえ離婚協議中であっても、法的に婚姻関係が続いている以上、夫婦は互いに生活を支える義務を負っているのです。しかし、実際には感情的な対立や経済状況の違いなどで合意に至らないことが多々あります。

そこで活用されるのが、家庭裁判所での“調停”という制度です。専門知識を持つ調停委員が第三者として話し合いをサポートし、両者の意見を聞いたうえで、公平かつ合理的な解決策を探ります。

なぜ調停を利用する人が多いのか

夫婦間の話し合い(任意交渉)では、感情のもつれや情報格差から、合意が難航しがちです。一方、調停は非公開で行われ、裁判ほどの費用と時間がかからないことも魅力。さらに、調停委員という客観的な立場の人が間に入ることで、当事者だけでは見つからなかった妥協点を見つけやすくなるメリットがあります。

婚姻費用調停は何回で合意に至ることが多い?

一般的には13回で合意することが多い

結論からいえば、婚姻費用の調停は1回で決着することもあれば、数回にわたって期日が指定されることもあります。統計的なデータや実務上の感覚としては、13回程度の調停期日で合意に至るケースが比較的多いようです。

  • 1回で決まるケース:双方が事前にある程度の話し合いをしており、金額や支払い方法にほとんど差がない場合など
  • 23回で決まるケース:相手の収入や生活状況を確認しつつ、算定表を参考にして調整を重ねるケースなど

それ以上かかる場合はどんなケース?

当然ながら、すべてのケースが1~3回の調停で終わるわけではありません。以下のような要因があると、4回以上かかることもしばしばあります。

  • 夫婦の対立が激しい:財産分与や親権問題も同時並行で揉めている場合、感情的に合意が難しい。
  • 片方が非協力的:呼出状に応じず欠席を続けたり、書類の提出を拒否したりして調停が進まない。
  • 収入額や資産内容が不透明:自営業やフリーランスで収入が安定しない、申告額が実態と合わないなど。
  • 複雑な事情が絡む:子どもの学費や特別支援が必要な医療費などの負担が大きい場合、細かい条件調整が必要となる。

調停回数を増やさずスムーズに進めるためのポイント

事前準備をしっかり行う

婚姻費用の調停で重要なのは、何を根拠に自分の主張をするか、です。相手の収入、子どもの年齢や学費、生活費の詳細など、具体的な数字を示すことで調停委員の理解を得やすくなります。源泉徴収票、給与明細、家計簿、家賃の領収証、子どもの習い事や塾の領収証といった客観的資料をできるだけ揃えて臨みましょう。

婚姻費用算定表を活用する

家庭裁判所では、「婚姻費用算定表」という夫婦の収入と子どもの数・年齢に基づいた目安表を用いて金額を算定することが多いです。あらかじめ算定表を参照して自分のケースではどの程度になるかを把握しておくと、相手との交渉もスムーズに進みやすくなります。

感情的対立を避ける工夫

調停はあくまで“話し合い”で解決を目指す場です。過去の浮気や暴言などを執拗に責めるだけでは、肝心の生活費の話し合いに集中できなくなります。感情的な部分を脇において、「今後の生活費をどのように分担すれば双方が納得できるか」という視点にフォーカスするよう心がけましょう。

調停当日の流れを理解しよう

受付から調停開始まで

指定された日時に家庭裁判所へ行き、受付を済ませると、申立人と相手方はそれぞれ別々の待合室に通されるのが一般的です。実際の話し合いは調停委員が二者を行き来しながら行うため、夫婦が同じ部屋で直接対峙することはほとんどありません。

調停委員との面談

調停委員はまず申立人の意見を聞き、その後相手方の意見を聞く、という形で順番に話を整理していきます。両者の意見の折り合いを探りながら、具体的な金額や支払いスケジュールなどを提案し、合意の可能性を探ります。話し合いがまとまらずに時間切れとなった場合は、改めて次回期日を設定し、再度同じようなプロセスを繰り返すことになります。

合意に至れば調停調書を作成

もしその日のうちに合意できれば、調停調書という書面が作成されます。調停調書は裁判所が作成し、そこに記載された内容は判決と同等の法的効力を持ちます。つまり、もし相手が支払いを怠った場合には、強制執行(給与や銀行口座の差押えなど)を行うことも可能です。

合意が難航した場合の対処方法

弁護士のサポートを検討する

婚姻費用調停は、基本的には本人同士がやり取りする手続きです。ただし、相手が非協力的だったり、こちらの主張がうまく伝わらなかったりする場合には、弁護士に依頼することを考えましょう。弁護士は法律知識と交渉力を活かして、資料の準備や期日での発言をサポートしてくれます。

審判や裁判に移行する可能性も

調停で話がまとまらない場合、家庭裁判所は“審判”という形で裁判官が結論を示すことがあります。また、さらに納得できない場合には訴訟(裁判)へ進む道も残されています。ただし、訴訟になると時間も費用もかさみ、夫婦間の対立が深まるリスクが高い点には注意が必要です。

再調停や条件変更の余地

いったん調停調書が作成されたあとでも、その後の事情変更が大きければ再調停を申し立て、金額や条件を変更することも可能です。失業や収入減、子どもの学費負担の増大など、状況が変わった際には、なるべく早めに専門家と相談しておきましょう。

婚姻費用調停を成功させるための心構え

「何回で決まるか」に固執しすぎない

確かに、婚姻費用調停が何回くらいで終わるかは多くの人が気にするポイントです。しかし、必要以上に「1回で絶対終わらせたい」「3回以内に終わらなきゃ困る」と焦ってしまうと、相手に対して柔軟性のない態度を取ってしまうかもしれません。大切なのは、自分と子どもの生活を守ることと同時に、相手が納得できる落とし所を探ること。結果として短期間で解決するケースもありますが、必要に応じて回数を重ねることも視野に入れましょう。

合理的な主張を心がける

婚姻費用の話し合いでは、相手の責任ばかりを追及しても建設的な解決にはつながりません。むしろ、どのくらいの生活費が必要で、なぜその金額が妥当なのかを具体的に示すことが肝要です。調停委員は問題解決のために動いているので、論理的な根拠や数字が示されると、より理解を得やすくなります。

自分の権利を正しく理解する

「相手が『払えない』と言うからもう諦めるしかない」と思い込む必要はありません。法的には、婚姻関係が続く限り、夫婦はお互いの生活を支える義務があります。調停委員や弁護士と相談しながら、適切な金額や支払い方法を追求する権利があることを忘れないでください。

まとめ

婚姻費用の調停が何回の期日で決まるかは、夫婦の状況や意見の対立度合いなどによって大きく異なります。概して、1~3回の調停で合意に至るケースが多いものの、対立が深かったり、相手が非協力的だったりすると回数が増えることもあるでしょう。

しかし、回数にこだわりすぎるあまり、焦りや感情的対立を生んでしまっては元も子もありません。できるだけスムーズに調停を進めるためには、事前の資料準備や算定表の確認、そして冷静かつ合理的な主張が欠かせません。何より、婚姻費用は自分や子どもの生活を守るための大切な制度ですから、最終的に納得のいく合意を得ることが何よりも優先されるべきでしょう。

  • 13回程度で決着するケースが多いが、対立が激しいと回数が増える場合も
  • 事前の資料準備と算定表の確認で交渉をスムーズに
  • 感情的にならず、生活費の妥当性を具体的に示すことが大切
  • 弁護士のサポートや再調停・審判も視野に入れて対応を検討する

婚姻費用をめぐるトラブルは精神的にも疲弊しがちですが、正しい知識と冷静な対応で、より早期に、より適切な結果を目指せるはずです。家族の将来や日々の生活がかかっているからこそ、自分の権利や手続きをしっかり理解し、必要に応じて専門家の助けを求めながら対処していきましょう。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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