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盗撮事件の解決を左右する「示談」と「弁護士」の圧倒的な力

2025.07.19 弁護士コラム

突然の警察からの連絡、あるいは現行犯逮捕。もしあなたが、あるいはあなたの大切な人が「盗撮」という行為で人生の岐路に立たされたとしたら、その衝撃と絶望は計り知れないものがあるでしょう。頭の中は「どうなるんだろう」「もう終わりだ」という不安でいっぱいになり、冷静な判断ができないかもしれません。

しかし、立ち止まってはいけません。この絶望的な状況から抜け出し、未来を切り開くための最も重要な道筋の一つが「示談」であり、それを実現するための「弁護士」の存在です。

盗撮事件において、示談が成立するか否かは、その後の人生を大きく左右すると言っても過言ではありません。前科が付くのか、あるいは社会生活への影響を最小限に抑えられるのか。その分かれ道に立つあなたのために、この記事では、盗撮事件における示談の全容、弁護士の選び方とその役割、そして社会復帰に向けた具体的なステップまで、あなたの疑問と不安を解消するための情報を網羅的に提供します。

決して一人で抱え込まず、今からでも正しい知識と行動で、未来を変えるための第一歩を踏み出しましょう。

盗撮事件の深層:なぜ「示談」が最重要なのか?

「盗撮」という行為は、被害者のプライバシーと尊厳を著しく侵害する許されない行為です。しかし、加害者側の立場に立てば、その後の人生への影響は甚大であり、可能な限りその影響を軽減したいと願うのは当然のことです。ここで鍵となるのが「示談」です。

盗撮罪が成立する要件と法的背景

「盗撮」という明確な罪名があるわけではありませんが、その行為は複数の法令によって規制されています。

  • 迷惑防止条例: 各都道府県が制定している条例で、公衆の場所や公共交通機関などでの盗撮行為を直接的に禁止しています。多くの盗撮事件で適用され、罰則は懲役刑や罰金刑が規定されています。
  • 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び規制に関する法律(通称:撮影罪): 2023年7月に施行された比較的新しい法律で、性的な部位や行為を撮影する行為、あるいは撮影した画像を頒布・公衆送信する行為を処罰します。これは迷惑防止条例と異なり全国共通で適用され、より広範な場所での盗撮行為が処罰対象となり得ます。
  • 軽犯罪法: 他人の身体を著しく嫌悪させるような方法で撮影する行為などに適用される場合があります。
  • その他: 住居侵入罪(他人の敷地内に侵入して撮影した場合)、強要罪(盗撮を強要した場合)などが適用される可能性もゼロではありません。

これらの法令の適用によって、盗撮行為は刑事罰の対象となります。重要なのは、被害者の被害感情が強く、社会的な非難も大きい行為であるという点です。

示談が不起訴・減刑に繋がるメカニズム

なぜ、盗撮事件において示談がそれほどまでに重要なのでしょうか。その理由は、日本の刑事司法制度の特性にあります。

  • 「被害者感情」の尊重: 日本の刑事司法では、被害者の感情や意思が、検察官の起訴・不起訴の判断や、裁判官の量刑判断において非常に重視されます。示談が成立し、被害者が「加害者を処罰しないでほしい」「既に十分な償いを受けた」という意思表示をすれば、それは検察官や裁判官にとって、加害者が反省し、被害も回復されたと判断する大きな材料となります。
  • 「示談」=「被害回復」: 示談は、加害者が被害者に対して金銭的な賠償を行うことで、精神的苦痛などの被害を回復する行為とみなされます。刑事事件においては、加害者が被害回復に努めたという事実は、真摯な反省の表れとして評価されます。
  • 起訴猶予の可能性: 検察官は、事件の軽重、加害者の反省の度合い、示談の成否などを総合的に判断して、起訴するか否かを決定します。特に初犯で、示談が成立している場合、検察官が起訴を見送り「起訴猶予」とする可能性が格段に高まります。起訴猶予となれば、刑事裁判を受けることなく事件が終了し、前科が付くことを回避できます。
  • 量刑の軽減: 仮に起訴されてしまったとしても、示談が成立していることは、裁判官が刑罰を決定する際の有利な情状となります。「既に被害者との間で解決が図られている」「再犯の可能性が低い」と判断され、執行猶予付きの判決や、より軽い罰金刑に留まる可能性が高まります。

このように、示談は、刑事処分に与える影響が極めて大きく、加害者にとっての最大の「切り札」となり得るのです。

示談交渉の成功戦略:弁護士が不可欠な理由

示談の重要性は理解できたとして、では、どのように示談交渉を進めれば良いのでしょうか?「被害者と直接交渉すればいいのか?」「いくら払えばいいのか?」など、様々な疑問が浮かぶかもしれません。しかし、安易な自己判断は、事態を悪化させる危険性をはらんでいます。

加害者自身による交渉の危険性

  • 被害者感情の悪化: 加害者から直接連絡が来ることに、被害者は強い恐怖や嫌悪感を抱くのが一般的です。謝罪のつもりでも、かえって被害者の感情を逆撫でし、示談の道を閉ざしてしまう可能性が高いです。
  • 不適切な言動: 精神的に不安定な状況で、冷静な交渉を行うことは困難です。不用意な発言や行動が、後々不利な証拠として利用されるリスクもあります。
  • 足元を見られる: 法的な知識がないまま交渉に臨むと、不当に高額な示談金を要求されたり、不合理な条件を突きつけられたりする可能性があります。
  • プライバシーの問題: 互いの連絡先を知ることで、二次的なトラブルに発展する可能性も否定できません。

これらのリスクを回避し、円滑に示談交渉を進めるために、弁護士の存在は不可欠なのです。

弁護士が示談交渉を成功させるための役割

弁護士は、加害者と被害者の間に立ち、双方の利益を調整しながら、示談の成立に向けて尽力します。その具体的な役割は多岐にわたります。

  • 被害者との橋渡し役: 弁護士が代理人として被害者と連絡を取ることで、被害者の不安や恐怖心を和らげ、冷静な話し合いの場を設定します。これにより、感情的な対立を避け、建設的な交渉が可能になります。
  • 適切な示談金の算定と提示: 盗撮事件の示談金には明確な相場があるわけではありません。弁護士は、事件の具体的な内容(被害の程度、撮影部位、悪質性)、過去の裁判例や類似事件の示談例、加害者の経済状況などを総合的に考慮し、最も適切な示談金を算定し、被害者に提示します。
  • 誠意ある謝罪の伝達: 弁護士は、加害者の心からの謝罪の気持ちを、被害者に正確かつ誠実に伝えます。謝罪文の作成支援や、可能であれば面会での謝罪の機会の調整なども行います。
  • 再犯防止策の提示: 被害者が最も懸念するのは、加害者が再び同様の行為を繰り返すことです。弁護士は、加害者が真摯に反省し、二度と過ちを繰り返さないための具体的な対策(カウンセリングの受講、専門機関での治療、生活習慣の改善など)を被害者に示し、安心感を与えます。
  • 示談書の作成: 示談が成立した際には、示談金額、支払い方法、被害届の取り下げ、今後の民事上の請求権の放棄など、重要な事項を明記した「示談書」を弁護士が作成します。これにより、後々のトラブルを防止し、法的な効力を持たせます。
  • 警察・検察への報告: 示談が成立したことを速やかに警察や検察に報告し、不起訴処分や刑の軽減に繋がるよう働きかけます。

示談金の相場と決定要素

前述の通り、盗撮事件の示談金に「一律の相場」はありません。個別の事情によって大きく変動しますが、一般的には以下の要素が示談金の額に影響を与えます。

  • 被害の悪質性:
    • 撮影された部位(顔、全身、性的な部位など)
    • 撮影された枚数や時間
    • 撮影された場所(公共の場所、半個室、自宅など)
    • 悪質な隠し撮りか、偶然の写り込みか
    • インターネットなどでの流出の有無
  • 被害者の被害感情: 精神的苦痛の度合い、通院の有無、PTSDの発症など。
  • 加害者の反省の度合い: 謝罪の姿勢、再犯防止への具体的な取り組み。
  • 加害者の経済状況: 示談金を支払う能力。
  • 前科・前歴の有無: 初犯であるか否か。
  • 事件の時期: 刑事手続のどの段階で示談交渉を開始したか。

おおよその目安としては、数万円〜数十万円の範囲で示談が成立することが多いですが、事案の悪質性が高い場合や、被害者の精神的苦痛が著しい場合は、100万円を超えるケースも存在します。弁護士と十分に相談し、個別の状況に応じた最適な示談金を検討することが重要です。

弁護士選びが成否を分ける:後悔しないためのポイント

盗撮事件において弁護士を選ぶことは、あなたの未来を大きく左右する重要な決断です。しかし、数多く存在する弁護士の中から、どのような基準で選べば良いのでしょうか。

刑事事件に強い弁護士を見つけるために

  • 刑事弁護の経験が豊富か: 弁護士には、民事、家事、刑事など、様々な専門分野があります。刑事事件、特に性犯罪や盗撮事件の弁護経験が豊富な弁護士を選ぶことが最も重要です。過去の解決実績や、その弁護士が所属する事務所の専門分野を確認しましょう。
  • 性犯罪の特性を理解しているか: 盗撮事件は、デリケートな被害者感情や、加害者側の再犯防止への取り組みが特に重視されます。これらの特性を深く理解し、適切な対応ができる弁護士を選ぶべきです。
  • フットワークが軽いか・迅速な対応が可能か: 逮捕直後は、時間の経過が事態の進行を左右します。迅速な接見(面会)や示談交渉の開始など、スピーディーに対応してくれる弁護士は非常に心強い存在です。土日や夜間でも対応可能かどうかも確認ポイントです。
  • コミュニケーションが円滑か: 依頼者の話に真摯に耳を傾け、専門用語を避け、分かりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう。弁護士との信頼関係は、事件解決への大きな力となります。
  • 費用体系が明確か: 弁護士費用は、着手金、報酬金、実費など、様々な項目があります。契約前に、料金体系について明確な説明を受け、納得できる費用設定の弁護士を選びましょう。不透明な費用請求がないか注意が必要です。
  • 相談しやすい雰囲気か: 刑事事件は、精神的に非常に負担が大きいものです。弁護士は、単なる法的な代理人だけでなく、精神的な支えとなる存在でもあります。安心して何でも相談できる雰囲気の弁護士を選ぶことが大切です。
  • 初回無料相談の活用: 多くの弁護士事務所では、初回無料相談を実施しています。複数の弁護士に相談し、比較検討することで、あなたにとって最適な弁護士を見つけることができます。

弁護士費用とその内訳

弁護士費用は事務所や事件の難易度によって異なりますが、一般的な内訳は以下の通りです。

  • 法律相談料: 初回無料の場合が多いですが、有料の場合もあります。
  • 着手金: 依頼時に支払う費用で、結果にかかわらず返還されません。示談交渉や刑事手続きの開始に際して発生します。
  • 報酬金: 事件が解決した場合に支払う成功報酬です。不起訴、執行猶予、減刑など、達成された結果に応じて金額が変動します。
  • 実費: 交通費、通信費、印紙代、謄写費用など、事件処理に必要な諸経費です。
  • 日当: 弁護士が遠方に出張する場合などに発生する費用です。

契約前に、必ずこれらの費用について詳細な説明を受け、不明な点がないように確認しましょう。

逮捕から示談、そして社会復帰へ:具体的なステップ

盗撮で逮捕されてから示談、そして社会復帰に至るまでの具体的なステップを理解しておくことは、不安の軽減と適切な行動のために非常に重要です。

逮捕・勾留中の弁護活動

  • 逮捕直後の接見: 逮捕されたら、まずは弁護士に連絡し、すぐに接見(面会)に来てもらいましょう。弁護士は、取調べの際の注意点や黙秘権の行使などについてアドバイスし、精神的なサポートを行います。
  • 勾留阻止活動: 逮捕後48時間以内に検察官に送致され、その後24時間以内に検察官は勾留請求を行うか判断します。弁護士は、勾留の必要性がないことを主張し、勾留請求の却下や、勾留された場合の準抗告(勾留決定への不服申立て)などを行い、早期の身柄解放を目指します。
  • 被害者特定と示談交渉の開始: 身柄解放と並行して、弁護士は警察や検察を通じて被害者の連絡先を特定し、示談交渉の打診を開始します。被害者とのコンタクトは、弁護士が間に入ることが絶対条件です。

示談交渉の進捗と刑事処分

  • 示談交渉の段階: 弁護士が被害者側と示談金額や条件について交渉を進めます。この段階で、加害者側の反省の意思や再犯防止策を具体的に示します。
  • 示談成立: 双方の合意が得られれば、示談書を作成し、署名捺印を行います。示談金は、一括払いか分割払いか、被害者の意向や加害者の経済状況に応じて決定されます。
  • 検察官の判断: 示談が成立し、被害者が被害届を取り下げるか、処罰を望まない旨の意思表示をすれば、検察官は起訴猶予とする可能性が高まります。
  • 起訴された場合: 示談が成立しなかった、あるいは被害者の被害感情が極めて強い場合など、やむを得ず起訴されることもあります。しかし、その場合でも、示談が成立していることは、刑事裁判において有利な情状として考慮され、執行猶予付きの判決や、より軽い罰金刑に繋がる可能性が高まります。

盗撮癖からの脱却と社会復帰

事件が解決しても、それで終わりではありません。最も重要なのは、二度と過ちを繰り返さないことです。

  • 専門機関での治療・カウンセリング: 盗撮行為は、性的な逸脱行為や依存症の一種として捉えられることがあります。専門の医療機関やカウンセリング機関での治療、あるいは自助グループへの参加は、再犯防止のために極めて重要です。
  • 生活習慣の見直し: ストレス、孤独感、アルコールなどが盗撮行為の引き金となることがあります。規則正しい生活、健全な人間関係の構築、趣味やスポーツなど、生活習慣全体を見直すことで、再犯のリスクを低減できます。
  • 家族のサポート: 家族の理解と協力は、加害者の社会復帰にとってかけがえのないものです。家族もまた精神的な負担を抱えるため、必要であれば家族向けのカウンセリングやサポートグループの利用も検討しましょう。
  • 就職活動への影響: 前科が付いた場合、一部の職業(公務員、士業など)では就職に影響が出る可能性があります。しかし、全ての職業が制限されるわけではありません。ハローワークや就職支援サービスなどを活用し、自身の状況に合わせた再就職を目指しましょう。

最後に:希望を捨てずに、今すぐ行動を

盗撮という行為は決して許されるものではありませんが、一度の過ちで人生の全てを閉ざされるべきではありません。重要なのは、過ちを真摯に反省し、被害者に対して誠実に向き合い、二度と同じ過ちを繰り返さないための具体的な努力をすることです。

そして、その道のりを一人で歩む必要はありません。

弁護士は、あなたの状況を理解し、法的な知識と経験をもって、示談交渉の成功、そして社会復帰への道筋を全力でサポートしてくれます。

もしあなたが今、「盗撮」という重い現実を抱えているのなら、決して希望を捨てないでください。そして、今すぐ行動を起こしてください。信頼できる弁護士に相談し、示談という解決策に向けて、最善の一手を打つことが、あなたの未来を切り開くための最も確実な方法です。

この苦しい経験を乗り越え、より強く、より誠実な人間として再出発できることを心から願っています。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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