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自己破産の免責とは?流れ・不許可の理由・再出発に必要な知識【保存版】

2025.10.02 弁護士コラム

自己破産は「借金を返さなくてよい」と裁判所に認めてもらうための制度です。この裁判所の判断こそが「免責許可決定」です。自己破産を申し立てただけでは借金は消えません。免責が認められて初めて借金の支払義務がなくなるのです。

ここを誤解して「破産=借金ゼロ」と思い込むと、後で大きなギャップに直面します。自己破産を考えるなら「免責を得ることが最終ゴール」という視点で流れを理解しておくことが欠かせません。

免責の意味と対象となる借金

免責とは、裁判所が「この人はもう返済しなくてもよい」と判断することです。これが出ると、原則としてほとんどの借金は法的に消滅します。ただし全ての借金が免責されるわけではありません。

免責される借金

  • 消費者金融やカードローンの残高
  • クレジットカードのリボ払い・キャッシング
  • 銀行や信販会社のローン
  • 知人・親族からの個人的な借入

免責されない借金(非免責債権)

  • 税金(住民税・所得税など)
  • 養育費や婚姻費用
  • 故意・悪意のある不法行為による損害賠償
  • 罰金・科料など刑事上の制裁

つまり、免責は「生活再建を阻む借金を帳消しにする」制度であり、社会的責任や生活維持に直結する義務は残るのです。

免責に至るまでの流れ

免責許可決定に至るまでには、いくつかのステップがあります。全体像を押さえておくと不安はぐっと減ります。

  • 弁護士・司法書士に相談・依頼
     依頼後すぐに「受任通知」が債権者に送られ、督促や取り立ては止まる。
  • 申立て準備
     通帳や給与明細、借入契約書、家計収支表、不動産や車の資料、保険の返戻金証明などを揃える。ここが一番の山場で、1〜2か月かかることも多い。
  • 裁判所へ申立て
     書類を提出すると、裁判所が「同時廃止」か「管財事件」に分類。財産が乏しければ同時廃止、一定以上の財産や疑義があれば管財事件となる。
  • 管財人による調査(管財事件の場合)
     破産管財人が選任され、財産の調査や換価が行われる。不自然な出金や財産隠しがないか徹底的に確認される。
  • 免責審尋
     裁判官の前で借金の理由や現在の生活状況を簡潔に答える場。数分で終わることが多い。
  • 免責許可決定
     問題がなければ免責が許可され、借金は原則帳消しとなる。

目安期間は、同時廃止で3〜6か月、管財事件で半年〜1年程度です。

免責不許可事由と裁量免責

免責は原則認められる制度ですが、法律で「この場合は免責を認めない」という不許可事由が定められています。

免責不許可事由の代表例

  • 財産を隠したり家族名義に移した
  • 一部の債権者にだけ返済した(偏頗弁済)
  • ギャンブルや浪費で多額の債務を作った
  • 裁判所に虚偽の報告や不正確な資料を出した
  • 7年以内に過去の自己破産で免責を受けている

ただし、不許可事由にあたっても必ず免責が否定されるわけではありません。裁判所が「反省して生活を改善している」と判断すれば「裁量免責」として許可されることもあります。例えばギャンブルによる借金が一部にあっても、依存を断ち切り家計を立て直す努力を示せば認められる可能性は十分にあります。

免責を得るための準備と説明の仕方

免責を確実に得るには、書類準備と誠実な対応が欠かせません。裁判所が求めているのは「この人は本当に返済できない状況であり、隠し事なく再出発しようとしている」という証拠です。

通帳は過去1〜2年分をすべて提出し、給与明細や確定申告書で収入を示します。家計収支表は数字とレシートなどの根拠を一致させることが大切です。説明は「数字」「背景」「改善策」の順に伝えると説得力が増します。

たとえば「カード債務200万円。転職と通院で収入が減少し、生活費補填で利用が増えた。現在は固定費を見直し、家計簿アプリで管理している」という流れです。正直さと一貫性こそが免責を得る最大の近道になります。

免責許可が出るまでの生活と制限

免責が確定するまでには、いくつかの制限があります。弁護士に依頼した段階で督促は止まりますが、新たな借入やクレジットカードの利用はできません。また、弁護士や司法書士、保険募集人、警備員など一部の職業では免責許可まで資格制限がかかります。

ただし、これらの制限は免責決定と同時に解除されます。仕事を続けられなくなるわけではなく、家賃の支払いや公共料金の契約も通常どおり可能です。この期間は「借金に頼らない生活に慣れるリハビリ期間」と考えると前向きに過ごせます。

免責後に残るもの・消えるもの

免責許可が確定すると、対象となる借金は原則すべて消滅します。取り立ても止まり、借金の重圧から解放されます。一方で、税金や養育費といった非免責債権はそのまま残ります。さらに、信用情報には事故情報が登録されるため、一定期間はローンやカードの利用が難しくなります。

免責はゴールであると同時に新しい生活のスタートです。「借金ゼロになったから安心」ではなく、「再び借金に頼らない生活をどう作るか」が問われる段階になります。

まとめ:免責は再出発のための制度

自己破産の免責は、借金をなくす最後のステップであり、人生をやり直すスタート地点でもあります。免責を得るためには、正直さ、丁寧な準備、改善の意思が不可欠です。

免責で消える借金と残る債務を理解し、不許可事由を避ける。免責が出るまでの生活を前向きに捉え、免責後は現金主義と家計管理で再発を防ぐ。これが再出発への確実な道筋です。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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