痴漢事件の示談金|金額の目安・交渉の進め方・成立しない場合のリスク

痴漢事件は刑事事件の中でも処分が重く、逮捕・勾留・起訴と進めば社会的な信用は一気に失われます。そのため、被害者との示談が大きな意味を持ちます。
示談がまとまれば、被害者の処罰感情が和らぎ、不起訴や量刑軽減につながる可能性が高まります。逆に示談に失敗すると、前科がつき、仕事や学業に大きな影響を及ぼすこともあります。
ここでは「痴漢の示談金はどれくらいかかるのか」「どうやって交渉を進めるのか」「失敗したらどうなるのか」を、できるだけ具体的に解説していきます。
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示談金の金額はどのくらい?
痴漢事件における示談金はケースによって異なります。相場は 30万円〜100万円前後 と言われていますが、行為の悪質さや被害者の心身への影響で大きく変わります。
- 電車やバスでの一度きりの接触:30〜50万円程度
- 身体への直接的な接触や悪質なケース:50〜100万円程度
- 継続的・執拗な行為、社会的立場のある加害者の場合:100万円を超えることもある
つまり「一律いくら」とは言えず、被害の内容や加害者の社会的背景によって幅があるのです。
示談交渉の進め方
示談は「お金を払えばすぐ成立する」という単純なものではありません。被害者が納得しなければ成立しませんし、本人や家族が直接連絡を取るのは避けるべきです。
一般的な流れは以下のとおりです。
- 弁護士に依頼する
- 弁護士が被害者側に連絡を取り、示談の可能性を探る
- 示談金額や条件を調整する
- 双方が合意し、示談書を作成・署名捺印
- 検察や裁判所に提出され、処分の参考にされる
重要なのは「専門家を通すこと」。直接のやりとりは圧力と受け取られやすく、逆効果になりかねません。
示談金を支払う際の注意点
示談金は被害者の処罰感情を和らげるためのものです。金額だけでなく、誠意ある態度が伴わなければ示談は成立しにくくなります。
また、支払い方法も重要です。多くの場合は一括払いが求められますが、どうしても難しい場合は弁護士を通じて分割払いが認められるケースもあります。その際は「確実に支払う」という信頼性を示す必要があります。
さらに、示談金を親族が立て替えることも珍しくありません。特に学生や若年層の場合、家族のサポートが不可欠になります。
示談が成立しないとどうなる?
もし示談が成立しなければ、事件は起訴される可能性が高まります。日本の刑事事件は起訴されればほぼ有罪となるため、前科がつく可能性は極めて高いです。
前科がつくことで、就職や転職、資格取得に大きな制約が生まれます。特に公務員や金融関係の職種では致命的な影響となることもあります。社会的信用を守るためにも、示談成立の意義は非常に大きいと言えるでしょう。
示談書の内容と役割
示談が成立すると「示談書」が作成されます。ここには示談金額や支払い方法、今後の責任追及をしない旨が明記されます。
示談書は検察や裁判所に提出され、処分を判断する重要な資料となります。示談書があることで「被害者が処罰を望んでいない」という事実が確認でき、不起訴や量刑軽減につながる可能性が高まります。
示談交渉の落とし穴
痴漢事件の示談交渉には、失敗につながりやすい落とし穴があります。
- 本人や家族が直接接触してしまう
- 金額を優先して謝罪が軽んじられる
- 交渉を引き延ばし、被害者の気持ちが硬化してしまう
- 刑事弁護に不慣れな弁護士に依頼してしまう
これらは示談不成立の典型的な原因です。早期に動き、誠意を持って対応することが何よりも重要です。
まとめ:痴漢事件の示談金は「未来を左右する選択」
痴漢事件における示談金の相場は30万〜100万円程度と幅がありますが、それ以上に大切なのは謝罪の気持ちと誠実な対応です。
示談が成立すれば、不起訴や量刑軽減につながり、社会的なダメージを最小限に抑えることができます。逆に示談が不成立になれば、前科がつき、人生に大きな影響を及ぼすリスクがあります。
痴漢事件は一瞬の行為で人生を狂わせる可能性があります。万が一関わってしまった場合は、速やかに弁護士へ相談し、適切な対応を取ることが未来を守る唯一の道です。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
