不倫の慰謝料、二重取りに注意!知らないと損する正しい対応と防止策を解説
「不倫の慰謝料を払って終わったと思っていたのに、別の人からまた請求が届いた…」
「夫の奥さんだけでなく、夫本人からも請求された」
そんな相談が実は少なくありません。
不倫トラブルでは、“誰に・どこまで支払えば終わりなのか”がわかりにくく、知らないうちに二重取り(=重複請求)されてしまうケースがあるのです。
この記事では、
- 不倫慰謝料の「二重取り」とは何か
- どうして起こるのか
- 法的に払う必要があるケース/ないケース
- トラブルを防ぐ方法
を、専門用語を使わずにやさしく解説します。
目次 [閉じる]
「二重取り」とはどういうこと?
「二重取り」とは、同じ不倫の件で、重複して慰謝料を請求されることを指します。
例えば、こんなケースです。
- すでに不倫相手の夫(または妻)に慰謝料を支払ったのに、後から本人(配偶者)からも請求された
- 夫婦そろって別々に請求してきた
- 不倫相手と話し合って支払いを済ませたのに、また別の代理人から新しい請求が届いた
このように、「もう解決したはずなのに、またお金を求められる」ことが二重取りの典型です。
一見、「両方に払わなきゃいけないのかな」と思ってしまいがちですが、実は法律的には必ずしも支払う義務はありません。
なぜ二重取りが起こるのか?
不倫慰謝料の二重取りトラブルが起こる原因は、主に3つあります。
(1)夫婦それぞれが「被害者」だと考えている
法律上、不倫による精神的な損害を受けたのは「配偶者」であり、原則として慰謝料を請求できるのは1人だけです。
しかし現実には、夫婦のどちらも怒りを抱えており、「自分も許せない」「自分の人生も壊された」と感じることがあります。
そのため、夫婦それぞれが別々に請求してくることがあるのです。
(2)示談書・合意書があいまい
「話し合いで支払いを済ませたけど、書面を作っていない」
「口約束で“もう終わり”と言われた」
このような場合、後から「支払いは配偶者に対してのもの。自分へのものではない」と主張されるリスクがあります。
きちんとした書面を残していないことが、二重請求を招く原因になってしまいます。
(3)代理人が変わった・情報が共有されていない
相手側の弁護士や代理人が変わると、過去の支払い状況が共有されておらず、誤って再請求されることもあります。
特に内容証明が届いた場合などは、冷静に記録を確認することが大切です。
二重取りが法律的に「ダメ」な理由
法律では、同じ損害について二重に賠償を求めることは認められていません。
不倫の慰謝料は、「夫婦の片方(被害者)」に対して支払えば、それで法的な責任は果たしたと考えられます。
つまり――
一度、不倫による損害の賠償(慰謝料)を支払えば、同じ件で再度請求されることはない
というのが原則です。
もし後からもう一方の配偶者が「自分にも払え」と言ってきたとしても、すでに支払い済みであれば、その請求は“二重取り”として無効になる可能性が高いです。
ただし、注意が必要なケースもある
一方で、「すでに払った=絶対にもう払わなくていい」というわけでもありません。
次のような場合には、追加の支払いが発生することもあります。
(1)別の損害が認められる場合
たとえば、不倫関係が続き、夫婦が最初の示談後に離婚に至った場合。
その後に発生した損害(離婚による精神的苦痛)については、再度慰謝料請求が認められることがあります。
(2)支払いが「片方にしか届いていない」とみなされる場合
示談時の書面に「○○(配偶者)に対しての慰謝料として支払う」と限定的に書かれていた場合、
もう一方の配偶者が「自分は受け取っていない」と主張することがあります。
(3)支払いが不十分だった場合
相場より大幅に低い金額で「和解」したが、実は正式な合意書がなく、相手が後から「納得していない」と言ってくることもあります。
二重取りを防ぐための対策
不倫慰謝料のトラブルを「これで終わり」にするためには、次のような点を押さえておきましょう。
合意書・示談書を必ず作成する
支払いのたびに、「誰に・いくら・どんな理由で支払ったのか」を書面に残します。
文面には必ず、次のような一文を入れましょう。
「本件に関し、甲乙間において他に一切の債権債務が存在しないことを相互に確認する。」
この一文があることで、「これで完全に解決した」という法的証拠になります。
支払い証明を残しておく
振込明細書や領収書、やり取りのメールを大切に保管しておきましょう。
後から「支払いを受けていない」と主張された場合の証拠になります。
直接やり取りをしない
感情的な言葉の行き違いから、トラブルが再燃するケースもあります。
相手が弁護士を立てている場合は、こちらも弁護士を通じてやり取りするのが安心です。
二重取りを疑ったときの対処法
「もしかして、これは二重取りかもしれない」と思ったら、すぐに行動しましょう。
- これまでの支払い履歴・証拠をすべて整理する
- 請求書や内容証明のコピーを確認する
- 自分で判断せず、弁護士に相談する
特に内容証明郵便が届いた場合は、放置しないでください。
無視すると「支払いの意思がない」とみなされ、訴訟に発展するリスクもあります。
弁護士に依頼すれば、過去の支払いとの重複を整理し、必要に応じて「すでに解決済みである」ことを法的に主張してくれます。
弁護士に依頼するメリット
不倫慰謝料の二重取り問題は、「どの支払いがどの損害に対するものか」という専門的な判断が必要になります。
そのため、弁護士に相談することで次のようなメリットがあります。
- 法的に支払い義務があるかどうかを正確に判断してもらえる
- 過去の示談書や証拠を分析し、無効な請求を退けられる
- 相手とのやり取りを代行してくれるため、精神的な負担が軽くなる
- 必要であれば、相手に「請求は不当である」と正式に通知してくれる
自分だけで対応すると、相手の言葉に押されてしまったり、誤って再度支払ってしまうケースが少なくありません。
弁護士が入るだけで、相手の態度が変わることも多いのです。
まとめ:二重取りに泣き寝入りしないで
不倫の慰謝料は、一度支払えばそれで終わり――そう信じていたのに、また請求が来る。
そんな理不尽な状況に、不安や怒り、そして疲れを感じている方も多いでしょう。
けれども、冷静に考えてみてください。
同じ出来事で何度もお金を取られるのは、法律的にも不当です。
それでも、放っておけば「支払わざるを得ない」と追い込まれてしまうこともあります。
だからこそ、二重取りかもしれないと思った瞬間に専門家へ相談することが大切です。
弁護士はあなたの味方として、支払い済みの証拠を整理し、不当な請求からあなたを守ってくれます。
不倫のトラブルは、感情と法律が複雑に絡み合う問題です。
だからこそ、ひとりで抱え込まず、正しい知識とサポートを得ることで、安心して次の一歩を踏み出せます。
もう一度請求されても、もう泣き寝入りする必要はありません。
不当な請求には、しっかりと「NO」と言える力を取り戻しましょう。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。