盗撮が発覚してしまったらどうなる?知っておきたい法律・処罰の内容と対応策

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はじめに
近年、スマートフォンの普及や小型カメラの進歩に伴い、盗撮被害が社会問題として取り上げられる機会が増えています。一方で、本人にそのつもりがなかったとしても、何らかの形で盗撮行為に関わってしまい、後から大きなトラブルへと発展するケースも少なくありません。もしも撮影がバレてしまった場合、どんな法律違反に当たるのか、どのような手続きが進むのか、そしてその後どのような対処や影響が予想されるのかを正しく知っておくことは非常に重要です。
本記事では、いわゆる「盗撮がバレてしまった」場面を想定し、盗撮行為の法律上のリスクや、もし発覚してしまったときの流れ、加害者側・被害者側それぞれの視点から考えられる対処法などを詳しく解説していきます。また、犯罪行為に該当するかどうかの判断や、万が一検挙された場合の手続き、社会的影響などにも触れます。万一、盗撮に関わるトラブルに巻き込まれたときの参考としてぜひご一読ください。
盗撮行為はどんな場面で問題になるのか
人がプライバシーを求める場所での撮影
盗撮と聞くと、女性のスカート内をスマートフォンで撮影するといった犯罪を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、盗撮とみなされる行為はそれだけに限りません。たとえば、更衣室やトイレ、浴場などプライバシー性の高い場所での撮影も、盗撮行為として扱われるケースがあります。本人の同意なく、故意に撮影している時点で大きな問題になりやすいのです。
無許可での撮影がすべて違法か?
公共の場であっても、人の容姿や行動を許可なく撮影することは場合によってはプライバシーの侵害にあたります。特に、相手に何らかの「性的羞恥心」を与えるような撮影であれば、各自治体の迷惑防止条例などによって処罰の対象となる可能性が高いでしょう。盗撮は「公共の場だからいい」というわけでは決してなく、地域によっては厳しい規定が設けられています。
日常生活でのトラブルへの発展
会社や学校でのちょっとした悪ふざけや、友人間でのふとした撮影などが「気づいたら犯罪行為に問われていた」というケースもあります。仮に「本人同士は冗談のつもり」だったとしても、被写体になった人物が不快に感じたり外部に漏れたりすれば、深刻なトラブルに発展しかねません。盗撮に該当する可能性のある撮影行為は控えると同時に、万が一トラブルになってしまった場合の対応方法を知っておくことが必要です。
盗撮行為が発覚した際に適用される法律や罪名
盗撮行為が法律に触れるかどうかは、撮影場所や被写体の状況によって異なります。主に以下のような法令が関係するため、行為の内容を詳しく確認したうえでどの罪に該当するかを判断することになるでしょう。
各自治体の迷惑防止条例
多くの都道府県が、公共の場所や公共の乗り物における卑わいな行為を禁止する「迷惑防止条例」を定めています。そこでは、「人をひそかに撮影してはならない」といった条文が設けられている場合が大半です。具体的には、
- 駅や電車内でのスカート内盗撮
- 公共施設のトイレや更衣室内での隠し撮り
- 路上や階段などで相手の下着や身体を無断撮影
こうした行為は迷惑防止条例違反となり、逮捕や罰金、懲役刑が科されるケースも珍しくありません。また、条例違反の場合でも、初犯よりも悪質な態様とみなされれば厳しい処分を受ける可能性が高まります。
住居侵入や軽犯罪法違反など
仮に撮影場所が私有地(住居や敷地内など)であった場合、無断で侵入して隠し撮りをしていたとすれば「住居侵入罪」が成立する可能性もあります。また、公衆が利用しない場所で、カメラを設置して撮影を続けていた場合には別の法令(たとえば各種軽犯罪法や刑法が適用されることも)によって罰せられることがあります。
児童ポルノ禁止法
被写体が未成年(18歳未満)で、かつ性的に猥褻な姿を撮影していた場合は「児童ポルノ禁止法」に抵触する可能性が非常に高いです。児童の性的姿態を撮影する、またはそれを保存・所持・配布する行為は法律で厳しく規制されており、逮捕・勾留はもちろん、社会的にも重大な影響を及ぼすケースがほとんどです。
実際にバレてしまったらどうなるのか:流れと対応
現行犯逮捕・通報されるケース
もしその場で被害者や周囲の人に発覚し、警察官を呼ばれた場合は、現行犯逮捕される可能性があります。特に、電車内や駅などでは駅員に取り押さえられる例が多く、周囲の乗客も協力して証拠としてスマートフォンのカメラを抑えるなどの行動をとるケースがあります。現行犯の場合、言い逃れはほぼ不可能となり、そのまま警察署へ連行される流れとなります。
後から身元を特定されるケース
一方、現場ですぐに見つからずに逃げたとしても、監視カメラ映像やSNS上で拡散された写真などから身元が特定されるケースもあります。特に公共施設や商業施設などには監視カメラが多く設置されており、映像から個人を割り出される可能性は十分に考えられます。また、通勤経路や使用する交通系ICカードの履歴など、さまざまな要素から追跡されることもあるため、安易な逃亡はより状況を悪化させる恐れがあります。
警察での取り調べ・捜査の流れ
逮捕された場合、警察署での取り調べが始まります。被疑者として事情聴取を受ける間、スマートフォンやカメラの内部データを確認されることが多いです。もし、他にも盗撮画像や動画が大量に保存されていたり、別の被害者の存在が疑われたりすれば、余罪があるとみなされ捜査が拡大していきます。
起訴・不起訴、罰金・懲役などの可能性
最終的に検察官が「起訴するかどうか」を判断します。迷惑防止条例違反などでは、初犯かつ被害者との示談が成立すれば不起訴になるケースもありますが、確実ではありません。悪質性が高いと判断されれば、罰金刑だけでなく懲役刑が科される場合も。また、児童ポルノ関連の容疑が加われば、さらに重い処分や社会的制裁が待っています。
法的責任以外に及ぶ影響:社会的・経済的ダメージ
盗撮行為がバレて検挙されると、法的処罰だけでなく、下記のような社会的・経済的な面でも大きなダメージが予想されます。
仕事の解雇・退職勧奨
企業や公的機関で働いている場合、何らかの犯罪行為で逮捕・起訴されたとなれば、懲戒解雇や自主退職を求められるケースが多いです。社会的信用が大きく損なわれるため、その後の再就職活動でも厳しい状況に追い込まれるでしょう。
家族や知人への影響
家族や近しい知人にも盗撮行為が知られれば、強い批判や失望を受けることは必至です。また、もし自宅に警察が家宅捜索に来れば、近所の目もあって生活基盤が大きく揺らぐことになりかねません。結婚や離婚、子どもの就学などにも悪影響を及ぼす可能性があります。
民事的な損害賠償請求
盗撮された被害者が精神的苦痛を受けたとして、加害者に対して損害賠償を請求する場合もあります。示談を成立させるためには相応の慰謝料が求められ、数十万円から数百万円まで金額が上昇するケースもあります。示談金の用意が難しい場合、さらに裁判へと発展する可能性も否定できません。
盗撮が発覚してしまったときの対応策
まずは弁護士に相談する
盗撮行為で逮捕される、あるいは警察から事情聴取を受けることになった場合、早めに弁護士へ相談するのが得策です。法的知識を持つ専門家が、どのような主張や証拠が必要なのか、また示談交渉をどのように進めるべきかなどをアドバイスしてくれます。自己判断で安易に供述すると状況を悪化させかねないため、慎重に行動することが大切です。
被害者との示談交渉
もし被害者がいる場合は、示談交渉が逮捕や起訴を回避するための鍵となることがあります。ただし、交渉の進め方を誤ると、相手を余計に怒らせたり不信感を抱かせたりして逆効果になることも。示談金の相場感や文書の作成方法など、専門家のサポートが重要です。場合によっては保険が弁護士費用をカバーする場合もあるため、契約内容を確認しておきましょう。
再発防止に向けての取り組み
刑事処分がどうなるにせよ、同じような行為を繰り返さないために再発防止策を講じることが重要です。たとえば、カメラ付きの携帯電話を持ち歩く際のルールを自分で決めたり、専門家のカウンセリングを受けたりすることで、衝動をコントロールする方法を学ぶケースもあります。再犯率が高いとみなされると、司法当局や社会からさらに厳しい目を向けられる可能性があります。
被害者になってしまった場合の対処
ここまで加害者側の視点を中心に解説してきましたが、反対に「自分が盗撮の被害者になった」という立場の方もいるでしょう。もし盗撮されたと気づいたり、SNSなどで自分の画像が無断でアップされているのを発見した場合には、以下の対応を取ることが推奨されます。
証拠の確保
すぐに相手と直接 confront するのではなく、可能な限り証拠を確保することが大切です。たとえば、
- SNS上に写真が掲載されている場合、そのスクリーンショットを保存
- カメラやスマートフォンを向けられた瞬間の映像や写真があればコピーを取る
- 周囲の証言を得られるならば連絡先を交換しておく
警察や専門機関への通報
盗撮と確信できる場合、迷わず警察へ通報することをおすすめします。駅や商業施設などであれば、まずはスタッフや警備員に連絡し、監視カメラの映像確保を依頼するのも効果的です。相手の身元が特定できる場合でも、安易に自分だけで解決しようとすると危険が伴う可能性があるため、公的機関を頼るのが安心です。
弁護士への相談や削除依頼
もし画像や動画がネットに流出している場合は、放置しておくとどんどん拡散されるリスクがあります。削除請求などの手続きは複雑になりやすいため、ネットに強い弁護士へ依頼する方法がスピーディーです。プロバイダ責任法に基づいて投稿者情報を開示請求するなど、適切な法的手続きを取ることで、被害の拡大を抑えられます。
盗撮を防ぐためにできること
最後に、盗撮行為そのものを未然に防ぐためのポイントをいくつか挙げます。被害に遭わないため、また万が一の疑いを持たれないためにも、日頃から意識しておきたい点です。
- 公共の場での振る舞いに注意
自分自身が盗撮を疑われないよう、意味もなくカメラを起動したり、人に向けてスマホを構えたりしない。周囲から不審に思われる行動を避ける。 - カメラやスマートフォンにロックをかける
他人が無断で操作し、勝手に撮影されたり画像を追加・改ざんされたりするリスクを減らす。 - 悪ふざけでも撮影しない
友人同士だからといって、相手の気分を害する可能性がある撮影はしない。思わぬトラブルに発展するおそれがある。 - プライバシー重視の行動をとる
更衣室やトイレなどで人目を引く行為をしない。仮に誰かが撮影していることに気づいたら、速やかに通報。 - 防犯カメラの位置をチェック
自宅や職場などにカメラを設置する際は、プライバシーを侵害しない範囲で運用する。違法撮影と誤解されないように注意する。
まとめ
いわゆる「盗撮がバレてしまった」場合、迷惑防止条例や刑法、児童ポルノ禁止法など複数の法律に抵触し、逮捕・罰金・懲役といった重い処分を受ける可能性が高まります。さらに、仕事の失職や家族への影響、社会的信用の喪失、示談金や損害賠償など、取り返しのつかないダメージを被ることも珍しくありません。
カメラ付きスマートフォンや小型録画機器が簡単に手に入る時代だからこそ、撮影や記録行為に関するリテラシーを身につけ、違法行為やプライバシー侵害となるリスクを十分に認識しておくことが重要です。もし万が一盗撮行為を疑われる、あるいは逮捕・書類送検などの手続きが進みそうな状況になったときは、速やかに弁護士や専門家に相談し、正しい手順で対処することが被害拡大を防ぎ、最善策を見つけるための鍵となります。
本記事で解説した内容をもとに、盗撮が発覚した際のリスクや手続きの流れ、社会的影響をしっかり理解しておきましょう。そして、犯罪行為やトラブルに巻き込まれないよう、日常生活の中で常に慎重な行動を心がけることが大切です。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
