法定養育費はいくらもらえる?月2万円の内訳と通常の養育費との違いを比較
2026年4月から始まる法定養育費。「結局いくらもらえるの?」という疑問を持っている方は多いのではないでしょうか。
先に答えをお伝えすると、法定養育費の金額は子ども1人あたり月額2万円です。子どもが2人なら4万円、3人なら6万円という計算になります。
「え、たったの2万円?」と思われたかもしれません。正直なところ、この金額だけで子育てをまかなうのは難しいでしょう。しかし、この2万円という数字には意味があり、制度の趣旨を理解すれば納得できる部分もあります。
この記事では、法定養育費の具体的な金額や算定の考え方、そして通常の養育費との違いについて詳しく解説します。「本当はもっともらえるはず」という方に向けて、適正な養育費を確保する方法もお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
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法定養育費の金額は子ども1人あたり月2万円
2025年11月、法務省は法定養育費の金額を正式に決定しました。その金額は、子ども1人につき月額2万円です。
この金額は、子どもの人数に応じて単純に掛け算で増えていきます。
・子ども1人の場合:月2万円
・子ども2人の場合:月4万円
・子ども3人の場合:月6万円
・子ども4人の場合:月8万円
たとえば3歳と5歳の子どもを育てているシングルマザーなら、毎月4万円を請求できる計算です。年間にすると48万円になります。
注意したいのは、この金額は子どもの年齢によって変わらないという点です。通常の養育費では、子どもが15歳以上になると金額が上がる傾向にありますが、法定養育費ではそうした調整はありません。0歳でも17歳でも、一律で1人2万円です。
なぜ月2万円なのか?金額の算定根拠
「2万円」という金額はどこから来たのでしょうか。法務省は「子どもが最低限の生活を維持するために必要な費用」を基準にしたと説明しています。
具体的には、生活保護制度における「生活扶助基準」が参考にされています。生活扶助基準とは、衣食住にかかる最低限のお金として国が定めた基準額のことです。憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を数字にしたものと考えてよいでしょう。
ここで重要なのは、法定養育費が「子育ての全費用をカバーするもの」ではないということです。あくまで「最低限のセーフティネット」として設計されています。
塾代、習い事、私立学校の学費、スマートフォン代、部活動の費用。現代の子育てにはさまざまなお金がかかりますが、こうした費用は法定養育費の想定外です。だからこそ2万円という「低め」の金額になっているのです。
法務省も「月2万円が養育費の標準額というわけではない」と明言しています。この点は誤解しないようにしてください。
通常の養育費相場と比較するとどれくらい違う?
では、裁判所で決める通常の養育費と比べると、法定養育費はどのくらい低いのでしょうか。
裁判所が公表している「養育費算定表」を使って、いくつかのケースで比較してみましょう。
【ケース1】支払う側の年収400万円、受け取る側の年収0円、子ども1人(10歳)
・算定表による養育費:月4〜6万円
・法定養育費:月2万円
・差額:月2〜4万円
【ケース2】支払う側の年収600万円、受け取る側の年収120万円、子ども2人(8歳・12歳)
・算定表による養育費:月8〜10万円
・法定養育費:月4万円
・差額:月4〜6万円
【ケース3】支払う側の年収300万円、受け取る側の年収100万円、子ども1人(5歳)
・算定表による養育費:月2〜4万円
・法定養育費:月2万円
・差額:月0〜2万円
このように、多くのケースで法定養育費は通常の相場を下回ります。支払う側の年収が高いほど、その差は大きくなる傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、母子家庭が実際に受け取っている養育費の平均額は月約5万円です。法定養育費の2万円は、この平均の半分にも届きません。
法定養育費だけで生活できる?現実的な金額感
月2万円という金額が、実際の子育てにどの程度役立つのか考えてみましょう。
文部科学省の調査によると、公立小学校に通う子ども1人あたりの教育費は年間約35万円、月に換算すると約3万円かかります。これは学校関係の費用だけの数字で、食費や衣服代、医療費は含まれていません。
子ども1人を育てるのに月々いくらかかるか。もちろん家庭によって差はありますが、一般的には最低でも月5〜7万円程度は必要といわれています。法定養育費の2万円では、これをカバーするのは到底無理です。
だからといって、2万円に意味がないわけではありません。養育費ゼロで頑張ってきたひとり親家庭にとって、無条件で受け取れる月2万円は確かな支えになります。子ども2人なら年間48万円。これだけあれば、学用品を揃えたり、子どもに必要な物を買ってあげたりすることができるでしょう。
ただし、法定養育費で満足してしまうのは得策ではありません。本来もらえるはずの金額を逃してしまう可能性があるからです。
強制執行できる金額は月8万円が上限
法定養育費には、支払いが滞ったときに相手の財産を差し押さえられる「先取特権」という仕組みがあります。この先取特権にも金額の上限が設けられています。
先取特権の上限額は、子ども1人あたり月額8万円です。
・子ども1人の場合:月8万円まで
・子ども2人の場合:月16万円まで
・子ども3人の場合:月24万円まで
「あれ、法定養育費は2万円なのに、なぜ8万円まで差し押さえできるの?」と疑問に思うかもしれません。
これは、法定養育費だけでなく、正式に取り決めた養育費も先取特権の対象になるからです。たとえば、調停で月6万円の養育費を取り決めた場合、その6万円に対しても先取特権が使えます。ただし上限は8万円なので、月10万円の養育費を取り決めていても、優先的に回収できるのは8万円までとなります。
先取特権があると、相手がカードローンや住宅ローンなど他の借金を抱えていても、養育費を優先して受け取ることができます。これまで泣き寝入りしていた方にとっては、大きな武器になるはずです。
法定養育費は増額できない
通常の養育費であれば、事情の変化に応じて増額を求めることができます。たとえば、子どもが私立学校に進学した、相手の収入が大幅に上がった、自分が病気で働けなくなったといった場合です。
しかし、法定養育費にはそうした増額の仕組みがありません。どんな事情があっても、金額は子ども1人あたり月2万円で固定です。
・子どもに持病があって医療費がかさんでも2万円
・相手の年収が1000万円を超えていても2万円
・子どもが私立高校に通っていても2万円
この点は、法定養育費の大きな限界といえます。個別の事情を反映した金額を受け取りたいなら、従来どおり相手と交渉するか、家庭裁判所での調停・審判を利用する必要があります。
逆に言えば、支払う側の収入が低くても2万円は請求できます。通常の算定表では養育費がゼロか1万円程度になるようなケースでも、法定養育費なら2万円を確保できる可能性があります。
「2万円で十分」と誤解しないために
SNSなどでは「養育費は月2万円でいい」「国が2万円と決めた」といった誤解が広がっているようです。これは正しくありません。
法定養育費の2万円は、養育費の「標準額」でも「適正額」でもありません。あくまで「取り決めがない場合に最低限もらえる金額」です。
本来の養育費は、双方の収入や子どもの年齢・人数などを考慮して個別に算定するものです。裁判所の算定表を使えば、多くのケースで月4〜8万円程度の金額が導き出されます。支払う側の年収が高ければ、10万円を超えることも珍しくありません。
法定養育費をもらいながら、同時に正式な養育費の取り決めを進めることは可能です。というより、そうすることが推奨されています。法定養育費は「つなぎ」であり、最終的には適正な金額を確保することが子どものためになります。
より多くの養育費を受け取るには
法定養育費の2万円に満足せず、適正な金額を受け取るための方法を紹介します。
まずは相手との話し合いです。裁判所の養育費算定表を見せながら、「うちの場合はこのくらいが相場」と伝えれば、相手も納得しやすいでしょう。算定表は裁判所のウェブサイトで無料公開されていますし、弁護士事務所が提供している計算ツールを使えば簡単に金額を確認できます。
話し合いがうまくいかない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てましょう。調停では、調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。双方の収入資料をもとに、算定表に沿った金額で合意を目指すのが一般的です。
調停でも合意できなければ、審判に移行します。審判では裁判官が金額を決定し、その決定には法的な強制力があります。
いずれの方法でも、最終的に決まった金額は法定養育費の2万円を上回ることがほとんどです。手間はかかりますが、子どもの将来のためにも、適正な金額を確保する努力をしてください。
よくある質問にお答えします
Q. 月の途中で離婚した場合、その月の金額はどうなりますか?
日割り計算になります。たとえば4月15日に離婚した場合、4月分は15日から30日までの16日分を計算します。2万円÷30日×16日=約10,667円という具合です。
Q. 法定養育費と正式な養育費は両方もらえますか?
同時に両方もらうことはできません。正式な養育費が決まった時点で、法定養育費は終了します。たとえば調停で月5万円の養育費が決まれば、その月から法定養育費2万円ではなく、取り決めた5万円を受け取ることになります。法定養育費をもらいながら交渉を進め、より高額な養育費に切り替えていくという流れが想定されています。
Q. 2万円より低い金額で合意してしまった場合はどうなりますか?
法定養育費は「取り決めがない場合」に適用される制度なので、何らかの合意がある場合は対象外になります。ただし、以前の合意が著しく不当な場合は、改めて調停を申し立てて増額を求めることが可能です。「月1万円で合意したけれど生活が厳しい」という方は、弁護士に相談してみてください。
まとめ:2万円を足がかりに適正な金額を目指そう
法定養育費の金額について、重要なポイントを整理します。
金額は子ども1人あたり月額2万円で、人数に応じて単純に増えていきます。2人なら4万円、3人なら6万円です。この金額は子どもの年齢や相手の収入に関係なく一律で、増額の仕組みもありません。
月2万円という数字は「最低限の生活維持費」として設定されたものであり、養育費の標準額ではありません。裁判所の算定表を使えば、多くのケースでこれを大きく上回る金額が算出されます。
法定養育費は、養育費ゼロの状態を解消するための「最初の一歩」です。この2万円を足がかりにしながら、正式な取り決めに向けて動き出すことが大切です。子どもの成長には何かとお金がかかります。適正な金額を確保するために、調停や弁護士への相談も検討してみてください。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。