奨学金が返せないとき自己破産はできる?保証人への影響と破産前に試すべき3つの制度
大学時代に借りた奨学金の返済が重くのしかかり、自己破産を考え始めている方もいるのではないでしょうか。就職したものの思うように収入が伸びなかったり、転職や病気で収入が途絶えたりすると、毎月の返済額が一気に生活を圧迫します。
結論から言えば、奨学金を理由に自己破産をすることは法律上問題なく認められています。貸与型の奨学金は税金や社会保険料とは異なり、免責の対象になる債務です。ただし、自己破産には保証人への影響という奨学金ならではの深刻な問題があるため、安易に踏み切る前に知っておくべきことが数多くあります。
この記事では、奨学金を抱えた方が自己破産を検討するうえで押さえておきたいポイントを、保証人への影響、破産前に利用できる救済制度、他の債務整理との比較という3つの視点から整理します。自己破産以外の解決策も含めて全体像を把握することで、自分にとって最善の選択肢が見えてくるはずです。
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奨学金でも自己破産はできる ― まず押さえたい基本
自己破産は、収入や財産をもってしても借金を返済できない状態にある場合に、裁判所の手続きによって返済義務の免除を受ける制度です。貸与型の奨学金も法的には借金の一種ですから、免責が許可されれば返済義務は消滅します。日本学生支援機構(JASSO)も、奨学金の返還者が自己破産によって免責を受ける事例が一定数存在することを公表しています。
ただし、自己破産が認められるには支払不能の状態であることが前提です。収入はあるが奨学金の支払いが面倒だから免除してほしいというだけでは認められません。裁判所は、借入総額、月々の収入、生活に不可欠な支出、財産の状況などを総合的に見て判断します。奨学金だけが唯一の債務である場合でも、その金額と収入のバランス次第では支払不能と認められるケースは十分にあります。たとえば、奨学金の残額が400万円ある一方で、非正規雇用で年収200万円程度という状況であれば、支払不能と判断される可能性は高いでしょう。
また、奨学金以外にも消費者金融やカードローンの借入がある場合は、それらも含めた債務総額で判断されます。注意が必要なのは、奨学金以外の借金の原因にギャンブルや浪費が含まれるケースです。これらは免責不許可事由に該当する可能性があり、裁判所が免責を認めないおそれがあります。もっとも、実務上は裁量免責が認められるケースが多いため、該当するからといって直ちにあきらめる必要はありません。
最大の問題 ― 保証人への連鎖的な影響
奨学金の自己破産で最も深刻な問題は、保証人への波及です。JASSOの貸与型奨学金を借りる際には、人的保証か機関保証のいずれかを選択しています。2004年度以降に奨学金を申し込んだ方はこの選択をしているはずです。どちらを選んだかによって、自己破産後の影響は大きく変わります。
人的保証を選んでいる場合
人的保証を選んだ場合、通常は両親のいずれかが連帯保証人に、4親等以内の親族(おじ・おばなど)が保証人になっています。本人が自己破産して免責を受けても、その効果は本人にしか及びません。JASSOは連帯保証人に対して残額の一括返済を請求し、連帯保証人が支払えなければ保証人にも請求が及びます。
奨学金の総額は数百万円に達することも珍しくないため、連帯保証人である親が返済しきれず、親子揃って自己破産に追い込まれるケースも現実に起きています。奨学金を借りている家庭はもともと経済的に余裕がないことが多く、親が定年退職を迎えて年金暮らしに入った後で一括請求を受けるという深刻な事例も報告されています。この連鎖的な破産は奨学金問題の中でも特に深刻なテーマとして社会的にも繰り返し取り上げられてきました。
なお、連帯保証人と保証人では責任の範囲が異なります。連帯保証人は本人とまったく同じ返済義務を負いますが、保証人(通常保証人)には検索の抗弁権と催告の抗弁権があり、法律上は返済総額の半分だけを負担すればよいとされています。過去にJASSOが保証人に全額を請求して問題になった事例もありましたが、保証人は自身の負担割合を主張できることを覚えておいてください。
2-2. 機関保証を選んでいる場合
機関保証を選んでいた場合は、保証機関(日本国際教育支援協会)が連帯保証を引き受けているため、人的な保証人は存在しません。本人が自己破産すると、保証機関がJASSOに残額を代位弁済し、その後に保証機関が本人に求償権を行使する形になりますが、この求償権も自己破産の免責対象に含まれます。
つまり、機関保証を選んでいた方は、自己破産をしても家族や親族に返済義務が移ることがなく、周囲への経済的な影響を最小限に抑えることができます。毎月の奨学金返還額から保証料が天引きされていた記憶がある方は、機関保証を選択している可能性が高いです。保証人への連鎖を避けたい方にとって、機関保証かどうかは自己破産を検討するうえでの重要な判断材料です。契約時にどちらを選択したか分からない方は、JASSOのスカラネット・パーソナルや返還誓約書の控えで確認できます。
3. 自己破産の前に試したい3つの救済制度
奨学金の返済が苦しくなったからといって、いきなり自己破産を選ぶ必要はありません。JASSOには返済が困難な方のための救済制度が用意されており、これらを活用することで破産を回避できるケースも少なくありません。
3-1. 減額返還制度 ― 月々の返済を半分以下に
減額返還制度は、経済的に苦しい状況にある方が、月々の返還額を2分の1または3分の1に減額できる制度です。1回の申請で12ヶ月間適用され、最長15年(180ヶ月)まで延長して利用できます。2024年4月の拡充により利用対象が広がり、年収400万円以下の給与所得者が対象となりました。子どもがいる世帯では基準がさらに緩和されています。
注意点として、月々の返済額は減りますが、返済すべき奨学金の総額が減るわけではありません。返済期間が延びる代わりに月々の負担を軽くする仕組みです。ただし、延長期間分の利息は発生しないため、総返済額が増えることはありません。滞納している状態では申請できないので、返済が苦しくなりそうだと感じた時点で早めに手続きを取ることが大切です。滞納を3ヶ月以上続けると信用情報機関に事故情報が登録され、クレジットカードの利用やローンの契約にも影響が出始めます。さらに長期間放置すると、JASSOから債権回収会社に回収業務が委託され、最終的には裁判所を通じた支払督促や財産の差押えに発展する可能性があるため、早めの対応が肝心です。
3-2. 返還期限猶予制度 ― 最長10年間の返済猶予
返還期限猶予制度は、失業や病気、災害などの事情により返還が困難な場合に、一定期間返済を猶予してもらえる制度です。猶予期間中は返還の必要がなく、延滞扱いにもなりません。1回の申請で12ヶ月間猶予され、通算で最長10年まで利用可能です。
利用には年収300万円以下(給与所得者の場合)であることが基本条件ですが、扶養家族がいる場合や特別な支出がある場合は、控除後の金額で判定されるため、実際にはもう少し幅広い層が対象になり得ます。また、前年度より収入が下がった場合にも申請が認められることがあります。一時的な収入減であれば、この制度で体勢を立て直し、収入が回復してから返済を再開するのが最も穏当な方法です。
3-3. 返還免除制度 ― 返済義務そのものがなくなるケース
返還免除制度は、本人が死亡した場合、または精神もしくは身体に重度の障害を負い労働能力を完全に喪失した場合に、返還未済額の全部または一部が免除される制度です。経済的な困難を理由とした一般的な返済困難では適用されないため、利用できるケースは限定的です。申請には、JASSO所定様式の医師診断書や死亡を証明する戸籍抄本などの公的書類が必要になります。該当する可能性がある方は、JASSOの返還免除係に問い合わせてみてください。
4. 奨学金以外の借金がある場合の戦略
奨学金の返済が苦しいと感じている方の多くは、奨学金だけでなく消費者金融やカードローンなど他の借金も抱えています。こうした場合、すべてを自己破産で処理するのではなく、奨学金以外の借金だけを整理するという方法が有効なことがあります。
任意整理は、弁護士が個別の債権者と交渉して将来利息のカットや返済スケジュールの見直しを行う手続きです。最大の特徴は、整理する債権者を選べる点にあります。たとえば、消費者金融やクレジットカードの借金だけを任意整理の対象にし、奨学金は対象から外してこれまでどおり返済を続けるという対応が可能です。
奨学金はもともと低金利かつ長期の分割払いで設計されているため、他の借金の返済負担が減れば、奨学金の返済に回せるお金が生まれるケースは珍しくありません。たとえば、月々の返済総額が7万円(奨学金2万円+他の借金5万円)だったものが、他の借金を任意整理して月2万円に圧縮できれば、奨学金と合わせても月4万円程度に収まります。月3万円の余裕が生まれることで、自己破産に頼らず生活を立て直せる可能性は十分にあるのです。
一方、個人再生は裁判所を通じて借金総額を大幅に圧縮する手続きですが、奨学金を含むすべての債権者が対象となり、圧縮された残額は保証人に一括請求されてしまいます。奨学金に人的保証が付いている場合は、この点を慎重に考慮する必要があります。どの方法が最善かは借金の構成や保証の種類によって異なるため、まずは弁護士に全体の状況を伝え、シミュレーションをしてもらうのが確実です。
5. それでも自己破産を選ぶべきケースとは
救済制度の活用や他の借金の任意整理を検討してもなお返済の見通しが立たない場合は、自己破産を正面から検討すべき段階です。特に以下のような状況に置かれている方は、自己破産が合理的な選択肢になり得ます。
まず、奨学金以外にも多額の借金があり、総債務額が年収を大幅に上回っている場合です。任意整理では利息カット程度の効果しか得られないため、元本が大きすぎると焼け石に水になります。複数の貸金業者から借り入れを重ねている多重債務の状態であれば、奨学金を含めて一括で解決できる自己破産のほうが、結果的に再出発までの時間を短縮できます。
次に、機関保証を選んでいる場合です。前述のとおり、機関保証であれば家族や親族に返済義務が移ることはありません。本人の経済的再建だけを考えればよい状況であれば、自己破産による不利益は信用情報への登録や一定の財産処分など限定的なものにとどまります。若い年齢であれば、信用情報の回復後にキャリアを立て直す時間も十分にあります。
さらに、人的保証を選んでいるが、保証人との間で事前に十分な話し合いができている場合も該当します。保証人自身にも返済が難しい事情がある場合は、保証人も一緒に債務整理を行うことで、家族全体として解決に向かうという選択肢があります。つらい決断ですが、問題を先送りにして滞納が続けば延滞金が膨らみ、最終的には保証人の財産が差し押さえられる事態に発展します。早めに家族で話し合い、専門家を交えて対応を検討することが、被害を最小限に抑える鍵です。
まとめ
奨学金を理由とした自己破産は法律上問題なく認められており、免責が許可されれば返済義務は完全になくなります。しかし、人的保証を選んでいる場合は保証人への影響が避けられず、親子での連鎖破産という事態にもなりかねない点は十分に理解しておく必要があります。
まずはJASSOの減額返還制度や返還期限猶予制度を利用できないか確認し、奨学金以外の借金があれば任意整理で月々の返済総額を引き下げる方法も検討してみてください。それでも状況が改善しない場合に、初めて自己破産を選択肢に入れるのが現実的な順序です。自分がどの保証制度を選んでいたかを確認するだけでも、取るべき対応の方向性が見えてきます。いずれにしても、滞納を放置して状況を悪化させる前に、弁護士やJASSOの奨学金相談センターに早めに相談することが何よりも大切です。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。