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【現役弁護士が徹底解説!】相続準備の注意点:今からできる5つの対策

2024.10.05

お父さんやお母さんが残してくれた財産を相続することは、多くの人にとって避けて通れない人生の重要なイベントです。しかし、準備不足や知識不足から、思わぬトラブルや税負担に直面する方も少なくありません。本記事では、現役弁護士として数多くの相続案件を扱ってきた経験を基に、相続準備の重要性と、今からできる具体的な対策についてお伝えします。

 相続の準備は、決して、お父さんやお母さんが高齢になってから始めるものではありません。早い段階から適切な準備を進めることで、将来の不安を軽減し、家族間の争いを未然に防ぐことができます。また、計画的な対策により、相続税の負担を軽減できる可能性も高まります。

 本記事では、相続準備における5つの重要な対策を中心に、よくある落とし穴や注意点、そして専門家の活用方法まで、幅広くかつ実践的な情報をお届けします。これから相続の準備を始めようと考えている方はもちろん、すでに準備を進めている方にとっても、新たな気づきや再確認の機会となるはずです。

それでは、スムーズな相続に向けて、今からできる対策を一緒に見ていきましょう。

相続準備の重要性と早期対策のメリット

 「相続」は、故人(被相続人)の財産を法律に基づいて、遺族に引き継ぐ重要な手続きです。しかし、多くの人々はその準備の重要性を見過ごしがちです。相続準備を適切に行うことは、単なる財産分配以上の意味を持ちます。

相続準備の重要性

・ 家族間の争いの防止:事前に話し合いや取り決めを行うことで、相続時のトラブルを軽減できます。
・ 相続税の最適化:計画的な対策により、合法的に相続税を軽減できる可能性があります。
・ スムーズな財産移転:必要書類や手続きを事前に整理することで、相続手続きを円滑に進められます。
・ 故人の意思の尊重:遺言書などを通じて、故人の希望を明確に伝えることができます。

早期対策のメリット

・時間的余裕
早くから準備を始めることで、じっくりと検討し、最適な対策を講じる時間が確保できます。

・柔軟な対応
法改正や家族状況の変化に応じて、計画を適宜修正する余地が生まれます。

・資産の有効活用
生前贈与などの手段を活用し、資産を有効に次世代に移転できます。

・心の準備
相続について家族で話し合うことで、精神的な準備も整えられます。

・コスト削減
急を要する対策と比べ、計画的に進めることでコストを抑えられる場合があります。

相続準備は決して後回しにすべきではありません。早期から準備を始めることで、将来の不安を軽減し、円滑な相続を実現できるのです。次節では、具体的な相続準備の対策について詳しく見ていきましょう。

相続準備における5つの重要な対策

 相続準備を効果的に進めるためには、計画的かつ包括的なアプローチが不可欠です。ここでは、相続準備における5つの重要な対策について詳しく解説します。これらの対策を適切に実施することで、円滑な相続の実現に大きく近づくことができるでしょう。

財産の把握と整理

 相続準備の第一歩は、現在の財産状況を正確に把握し、整理することです。財産を正確に把握することで、相続税の概算や遺産分割の方針を立てやすくなります。また、相続人が財産の全容を知ることで、相続時のトラブルを防ぐことができます。

具体的には、以下のような作業が必要です:

  • 不動産、預貯金、有価証券、生命保険、事業用資産などの洗い出し
  • 各資産の評価額の確認
  • 負債(住宅ローンなど)の確認
  • 財産目録の作成

これらの情報を一覧にまとめ、定期的に更新することが重要です。

財産の把握と整理は、相続準備の基礎となる重要な作業です。この ステップを確実に行うことで、後の対策がより効果的になります。

遺言書の作成

 遺言書は、被相続人の意思を明確に示し、相続をスムーズに進めるための重要なツールです。法定相続分と異なる分割を希望する場合や、特定の財産を特定の相続人に相続させたい場合に特に有効です。また、遺言書があることで相続人間の争いを防ぐことができます。

 遺言書作成の際は以下の点に注意が必要です。

  • 自筆証書遺言か公正証書遺言かの選択
  • 遺言書の内容(財産の分配方法、相続人以外への贈与など)の決定
  • 法的要件を満たす形式での作成
  • 定期的な見直しと必要に応じた修正

 特に重要な財産や複雑な家族関係がある場合は、弁護士や公証人に相談することをお勧めします。

 適切に作成された遺言書は、相続人の不安を取り除き、スムーズな相続を実現する強力な手段となります。

生前贈与の活用

 生前贈与は、相続税の軽減と円滑な財産移転を同時に実現できる有効な方法です。

 相続税の基礎控除額を超える可能性がある場合、生前贈与を利用することで相続財産を減らし、相続税を軽減できます。また、子や孫の独立・起業支援などにも活用できます。

 生前贈与の主な方法には以下があります。

  • 暦年贈与(年間110万円まで非課税)
  • 教育資金の一括贈与(1500万円まで非課税)
  • 結婚・子育て資金の一括贈与(1000万円まで非課税)
  • 住宅取得等資金の贈与(最大3000万円まで非課税)

 これらの制度を組み合わせて活用することで、より効果的な財産移転が可能になります。

 生前贈与は計画的に行うことで、相続税対策と家族の生活支援を両立させる優れた方法です。ただし、税制の変更に注意が必要です。

相続税対策の検討

 相続税の対策は、財産の規模や家族構成に応じて適切に行う必要があります。

 相続税は最高税率が55%に達するため、対策を怠ると相続財産が大きく目減りする可能性があります。適切な対策を講じることで、合法的に税負担を軽減できます。

 主な相続税対策には以下があります。

  • 財産評価の見直し(特に不動産や非上場株式)
  • 相続時精算課税制度の活用
  • 生命保険の活用(死亡保険金の非課税枠の利用)
  • 不動産の有効活用(賃貸アパートの建設など)
  • 事業承継税制の活用(後継者がいる場合)

 これらの対策は、専門家(税理士や弁護士)と相談しながら、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。

 相続税対策は早期に着手し、定期的に見直すことが効果的です。法改正にも常に注意を払う必要があります。

家族間のコミュニケーション促進

 円滑な相続のためには、家族間で相続についてオープンに話し合うことが極めて重要です。

 相続に関する家族の意向を事前に確認し合うことで、相続時のトラブルを大きく減らすことができます。また、被相続人の意思を家族全員で共有することで、遺志を尊重した相続が可能になります。

 家族間のコミュニケーションを促進するためには、以下の方法が考えられます。

  • 定期的な家族会議の開催
  • 財産状況の共有(プライバシーに配慮しつつ)
  • 各家族メンバーの将来計画や希望の確認
  • 相続に関する専門家を交えた勉強会の実施

 特に、認知症などのリスクがある場合は、早い段階からの話し合いが重要です。

 家族間の十分なコミュニケーションは、相続を単なる財産分配ではなく、家族の絆を深める機会に変える可能性を秘めています。

 これら5つの対策を総合的に実施することで、相続に関する多くの問題を事前に回避し、円滑な財産承継を実現することができるでしょう。次節では、相続準備時によくある落とし穴と注意点について解説します。

相続準備時によくある落とし穴と注意点

 相続準備を進める上で、多くの人が陥りやすい落とし穴があります。これらを事前に認識し、適切に対処することが、円滑な相続の実現には不可欠です。

 相続は法律、税務、家族関係など多岐にわたる複雑な問題を含んでいます。そのため、善意で行った準備が思わぬ結果を招くことがあります。落とし穴を知ることで、より効果的な相続準備が可能になります。

 以下に、相続準備時によくある落とし穴と、それぞれの注意点を挙げます。

財産の把握不足

落とし穴:重要な財産の見落としや評価額の誤認
注意点 :

  • 定期的な財産の棚卸しを行う
  • 預貯金だけでなく、不動産、有価証券、生命保険、知的財産権なども確認
  • 専門家に相談し、適切な評価方法を確認する。

遺言書の不備   

落とし穴:法的要件を満たさない遺言書の作成
注意点 :

  • 自筆証書遺言の場合、全文自筆、日付、氏名、押印が必要
  • 定期的に内容を見直し、必要に応じて更新する
  • 複雑な内容の場合は、公正証書遺言の作成を検討する

生前贈与の誤った実施

落とし穴:税制上の恩恵を受けられない贈与や、将来の生活資金の不足

注意点   :

  • 贈与税の非課税枠を正確に理解し、計画的に活用する
  • 自身の老後の生活資金を十分に確保した上で贈与を行う
  • 贈与と遺贈の税制上の違いを理解する

相続税対策の過信   

落とし穴:違法な節税策への関与や、過度な節税による生活への悪影響

注意点 :

  • 専門家のアドバイスを受けつつ、合法的な節税策のみを実施する
  • 節税だけでなく、円滑な財産承継全体を見据えた計画を立てる
  • 定期的に税制改正をチェックし、計画を見直す

家族間のコミュニケーション不足

落とし穴:相続時の家族間の対立や、被相続人の意思との不一致

注意点 :

  • 定期的に家族会議を開き、相続に関する話し合いの機会を設ける
  • 被相続人の意思を明確に伝え、家族全員で共有する
  • 専門家を交えた話し合いの場を設け、客観的な視点を取り入れる

事業承継の準備不足

落とし穴:後継者不在による事業の停滞や、相続税負担による事業継続の危機

注意点 :

  • 早期から後継者の育成と選定を行う
  • 事業承継税制など、利用可能な制度を積極的に活用する
  • 事業用資産と個人資産を明確に区分する

相続時の手続きの知識不足

落とし穴:期限内に必要な手続きが完了せず、ペナルティを受ける
注意点 :

  • 相続の基本的な流れと必要な手続きを事前に理解する
  • 相続開始後の期限(例:相続税の申告期限は10ヶ月以内)を把握する
  • 専門家のサポートを受けられる体制を整えておく

 これらの落とし穴を認識し、適切に対処することで、相続準備の質を大幅に向上させることができます。常に最新の情報を収集し、必要に応じて専門家に相談することが、スムーズな相続の実現には不可欠です。

 相続準備は長期的な視点で取り組むべき重要な課題です。これらの落とし穴と注意点を心に留めながら、計画的かつ慎重に準備を進めることで、将来の不安を軽減し、家族の絆を深めることができるでしょう。次節では、相続準備における専門家の活用方法について詳しく解説します。

専門家の活用:弁護士・税理士との連携方法

 相続準備において、弁護士や税理士などの専門家との連携は極めて重要です。適切な専門家の支援を受けることで、複雑な相続問題を効果的に解決し、スムーズな財産承継を実現できます。

 相続には法律、税務、財務など多岐にわたる専門知識が必要です。また、家族関係や事業承継など、個々の状況に応じた柔軟な対応が求められます。専門家は、これらの複雑な問題に対して、豊富な経験と最新の知識に基づいたアドバイスを提供できます。

以下に、弁護士と税理士の活用方法と、効果的な連携のポイントを詳しく説明します。

弁護士の活用 

  a. 主な役割:

  • 遺言書の作成支援
  • 相続争いの調停・訴訟対応
  • 遺産分割協議のサポート
  • 成年後見制度の利用支援

  b. 連携のポイント:

  • 早期からの相談:問題が複雑化する前に相談することで、効果的な対策が可能になります。
  • 家族構成や財産状況の詳細な説明:弁護士が適切なアドバイスを行うために必要不可欠です。
  • 定期的な相談:法改正や状況の変化に応じて、定期的に相談することが重要です。

  c. 選び方:

  • 相続専門の弁護士を選ぶ
  • 初回相談で相性を確認する
  • 料金体系を事前に確認する

税理士の活用 

  a. 主な役割:

  • 相続税の試算と対策立案
  • 相続税申告書の作成
  • 財産評価の適正化支援
  • 生前贈与の税務アドバイス

  b. 連携のポイント:

  • 財産の全容を正確に伝える:適切な税務対策のために必要です。
  • 将来の事業計画や家族の状況も共有:長期的な視点での対策立案に役立ちます。
  • 定期的な見直し:税制改正や資産状況の変化に応じて、対策を見直すことが重要です。

  c. 選び方:

  • 相続税専門の税理士を選ぶ
  • 実績や専門性を確認する
  • コミュニケーション能力の高い税理士を選ぶ

弁護士と税理士の連携

    a. 重要性:

  • 法律と税務の両面から総合的な対策が可能になります。
  • 専門家同士の意見交換により、より良い解決策が見つかることがあります。

    b. 連携の方法:

  • 合同相談会の実施:弁護士と税理士を交えた相談会を開催し、総合的なアドバイスを受ける。
  • 情報共有の承諾:各専門家が持つ情報を共有できるよう、事前に承諾を得る。
  • 役割分担の明確化:各専門家の役割を明確にし、効率的な連携を図る。

その他の専門家との連携

    a. ファイナンシャルプランナー:

  • 長期的な資産運用や生活設計のアドバイスを受ける。

    b. 公認会計士:

  • 大規模な資産や事業承継を伴う場合に、財務面での専門的なアドバイスを受ける。

    c. 不動産鑑定士:

  • 不動産の適正評価や有効活用について専門的な助言を得る。

 専門家の活用は、相続準備の質を大きく向上させる重要な要素です。ただし、専門家に全てを任せきりにするのではなく、自身も積極的に学び、理解を深めることが大切です。専門家のアドバイスを適切に理解し、自身の状況に最も適した選択を行うことで、円滑な相続の実現に大きく近づくことができます。

 相続準備は長期的かつ継続的なプロセスです。専門家との良好な関係を構築し、定期的に相談しながら準備を進めることで、将来の不安を軽減し、家族の幸せを守ることができるでしょう。

まとめ

本記事では、円滑な相続を実現するための重要な準備ポイントと、専門家の効果的な活用方法について解説しました。相続準備は、単なる財産分配の計画ではなく、家族の絆を深め、次世代への円滑な資産承継を実現するための重要なプロセスです。早期から計画的に準備を進め、必要に応じて専門家の助言を受けながら、自身の状況に最適な対策を講じることが大切です。

相続に関する法律や税制は複雑で、頻繁に改正されます。そのため、定期的に計画を見直し、最新の情報に基づいて対策を更新することが重要です。また、相続準備は家族全体で取り組むべき課題であり、オープンなコミュニケーションを通じて、家族の理解と協力を得ることが円滑な相続の鍵となります。

本記事の内容を参考に、早めの相続準備に着手し、将来の不安を軽減すると共に、大切な家族の幸せを守るための第一歩を踏み出しましょう。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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