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不倫による妊娠と中絶が引き起こす慰謝料トラブル──対処法を徹底解説

2025.05.15 弁護士コラム

近年、芸能ニュースやSNSを通じて不倫の発覚が騒がれる機会が増えたことで、パートナー以外との関係に対する世間の目はますます厳しくなっています。そうした行為は、道徳的にも法的にも深刻な問題をはらんでおり、とりわけ妊娠や手術が関係すると大きなトラブルに発展しやすいのが実情です。

家庭を持つ立場でありながら他の異性との関係を持つと、配偶者や相手との間で深刻な感情的対立が起きるばかりか、法的には慰謝料の請求問題が浮上することがあります。そして、その背景に妊娠が絡み、やむを得ず中絶を選択せざるを得ない状況に陥れば、当事者間だけでなく周囲の人々にも大きな影響を与えかねません。

本記事では、不倫から妊娠・中絶へ至る経緯と、そこで発生しうる慰謝料をめぐる問題について、一般的な知識と注意点を整理してみたいと思います。ただし、個別の事情によっては異なる結果となるケースも多く存在し、実際に問題へ直面している方は、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。

不倫が引き起こすリスクと背景

配偶者からの追及と賠償請求

複数の専門家や裁判例によると、婚姻関係にある人が第三者と性的関係を持った場合、その行為は“不貞行為”とされます。配偶者は、婚姻関係を破綻させた主たる原因がその行為にあると判断できる場合、精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料を請求できる可能性が高いといえます。たとえ独身同士の恋愛に比べ「法律上の強制力が弱そう」と感じても、実際には裁判所が厳しく判断する傾向にある点に注意が必要です。

社会的信用の低下

人間関係のトラブルは、プライベートだけにとどまらず、職場や地域コミュニティでの信用失墜にもつながりかねません。企業によっては、社員の道徳性やコンプライアンス違反に対して厳しい処分を下す場合もあります。とりわけ妊娠や人工妊娠中絶が絡むと「より重大な背信行為」と受け止められ、昇進や昇給などに悪影響が及ぶケースもあるため、リスクは大きいと言えるでしょう。

心理的負担の増大

プライベートな情事が露見したときの精神的ショックは当事者だけでなく、配偶者や子どもなど家族にも大きなダメージを与えます。秘密裏に進行していた関係が妊娠によって一気に表面化し、さらに中絶手術を選択せざるを得ないという事態に至ると、双方の感情が混乱し、社会的・精神的に追い詰められる人が増えやすいのが特徴です。

妊娠・中絶が絡む場合の特徴

事態の重さ

独身同士の交際ならば、妊娠した場合に結婚や出産を前向きに検討することが比較的容易ですが、既婚者同士の関係や片方が既婚であるケースでは、状況は一気に深刻化します。配偶者や家族への告白、あるいは黙って継続的に金銭的支援をするなど、どの選択をしても簡単には解決できない点が大きな特徴と言えます。

決断の重圧と費用負担

当事者のどちらかが妊娠を望んでいない場合や、社会的な理由で出産が難しい場合、中絶手術を選択することになります。この手術は、女性の身体的リスクや精神的負担が重く、さらに手続きや費用面でも大きな負担を伴うでしょう。場合によっては、その費用に関して当事者同士で揉めることや、一方が費用をまったく負担しないまま逃げてしまうケースも考えられます。

認知や養育費の問題

もし妊娠が判明しても中絶せずに出産するとなれば、子どもの認知や養育費の支払いが大きなテーマになってきます。法律上、夫婦以外の関係で生まれた子どもであっても、父親には一定の扶養義務が発生する可能性があります。しかし、それをめぐって配偶者や子どもの権利をどう守るかなど、多面的な問題が生じるため、早めに専門家へ相談することが望ましいでしょう。

慰謝料が問題となる主なパターン

配偶者への損害賠償請求

もっとも典型的なのは、既婚者が浮気をしていた場合、被害を受けた配偶者が精神的苦痛を理由に慰謝料を請求するケースです。特に、妊娠や手術といった深刻な事態が発生すると、心理的ショックはさらに大きくなるため、請求額が増える傾向が見られることがあります。裁判所としても「不倫行為自体が責められるうえに、妊娠・中絶という深刻な結果が生じた」という点を重視し、賠償額を高めに設定する可能性は否定できません。

当事者間での請求

妊娠した女性側が、相手となる男性に対して「手術費用を支払ってもらえなかった」「一方的に出産しないよう強要された」などの理由で慰謝料を求める場合もあります。ただし、実際に金銭を請求して認められるかどうかは、両者の合意内容や責任分担、そして関係性の継続状況など、多くの要素を総合的に判断した上で決まります。

過失・故意の度合い

妊娠に至るまでの事情として、どちらか一方が避妊に全く協力しなかった、あるいは“自分の子ではない”と主張しながらも確たる根拠がないまま女性を傷つけ続けた、というような悪質性が認められると、裁判などで相応の慰謝料が科される可能性があります。結果として、金額が高額化しやすい点にも注意が必要です。

金銭的負担と相場の目安

不倫に関わる慰謝料の一般的な水準

一概には言えませんが、不貞行為で配偶者から請求される慰謝料は、数十万円から数百万円程度が多いと言われています。ただし、不倫の期間が長期にわたる場合や、妊娠・手術を経て心身に大きなダメージを与えたと判断されれば、相場より高額になることも珍しくありません。

中絶費用と関連経費

手術にかかる費用は数万円から十数万円程度が一般的ですが、妊娠週数や医療機関によって変動します。また、体調不良や入院が長引けば追加費用が発生するほか、術後のケアに要する出費や仕事を休むことによる損失などが生じる場合もあります。こうした負担を誰がどの程度負うのかが不明確だと、のちに金銭トラブルが深刻化しやすくなります。

示談交渉の重要性

もし配偶者や当事者同士の間で金銭をめぐる話し合いに入る場合、示談交渉で納得できる形を模索するのが理想的です。裁判を経ずに合意に至れば、時間や費用、精神的コストを軽減できる可能性が高いため、まずは話し合いと証拠整理を丁寧に行うことが大切です。

こうしたトラブルが生じる理由

逃げられない身体的・精神的負担

女性にとって、妊娠や手術の決断は自身の身体や心に直接的な負担を伴います。男性が「自分の子か分からない」などと言い逃れをしたり、費用の負担を渋ったりすれば、女性側の精神的苦痛はさらに増大することになります。こうした不平等感が、トラブルを深刻化させる要因のひとつです。

意思決定プロセスの不一致

関係が深まる過程で、妊娠という事実を受け止めきれない人も少なくありません。出産を選ぶかどうかで意見が対立する、あるいはどちらか一方が急に連絡を絶つなど、コミュニケーションが途絶すればするほど相互不信は深刻化します。結果的に法的措置に訴えざるを得ないケースが増えていきます。

周囲の目と社会的批判

世間一般のモラル意識が高まっている近年では、特に“家庭を持つ者が他の相手との間で妊娠に至った”という事実は大きなスキャンダルとして扱われがちです。配偶者や親族、知人が知った場合の激しい非難はもちろん、職場での立場を危うくする恐れもあります。こうした外的なプレッシャーが、当事者同士の正常な対話を難しくする背景となります。

法律上のポイント

母体保護法による中絶の条件

日本では人工妊娠中絶を行うためには、母体保護法に定める正当な理由が必要とされています。妊娠22週未満であれば中絶手術が可能とされていますが、週数が進むほどリスクも上がります。また、後になって「強制的に手術させられた」といった主張を巡る争いも起きやすいので、当事者間での十分な話し合いや医療機関からの説明が不可欠です。

認知や養育費の問題

中絶を選ばずに出産する場合、相手との間で子どもの認知や養育費をどうするかが争点となります。法律上、父親は自分の子であることを認知すれば、養育費の支払いを求められる立場になりますが、配偶者が存在する場合は婚姻関係の破綻や離婚問題に波及することも多々あります。このような問題には家事事件手続法なども関係し、家庭裁判所が関与する場面も出てきます。

損害賠償請求と時効

慰謝料は民法上の不法行為に基づいて請求されるため、一定の時効期間が存在します。不倫が発覚した時点、または損害と加害者を知った時点から3年(あるいは20年の除斥期間)を超えると、原則として時効で請求できなくなる場合があります。ただし、時効の起算点についてはケースバイケースで異なるので、専門家への相談が不可欠です。

慰謝料をめぐる手続きの流れ

当事者同士の話し合い

まずは、配偶者や不倫相手との間で直接話し合いを行うケースが多いでしょう。口頭だけで終わらせず、可能であれば示談書や合意書を作成し、金銭の支払い方法や期日などを明確に定めておくことが重要です。

内容証明郵便

話し合いで合意に至らないときや、相手が一方的に交渉を拒否している場合は、内容証明郵便で慰謝料請求の意思を正式に伝える方法があります。これにより、後々「請求を受けていない」という主張を封じる効果が期待できますが、内容証明そのものに法的強制力はありません。あくまで証拠としての意味合いが大きいです。

民事訴訟・調停

示談交渉が決裂すれば、最終的に裁判や調停といった公的手続きに移行する可能性があります。裁判所で主張を争う場合、証拠の重要性が増すため、不倫の事実や妊娠・手術の経緯を示す資料をしっかりと揃えておく必要があります。時間と費用、精神面の負担は大きいですが、最終的な結論を明確に得られる手段です。

トラブルを最小限に抑える方法

専門家への早期相談

不倫関係で妊娠が発覚し、中絶の可能性まで見えてくると、当事者同士の冷静な判断は難しくなりがちです。感情的に対立するまえに弁護士やカウンセラーなどの専門家へ相談し、法的なリスクや解決策について具体的な見通しを立てることが望まれます。

言動や証拠管理に注意

メールやSNSのメッセージ、手術に関する領収書や医療機関の診断書などは、後に慰謝料や費用負担の話が出た際の重要な証拠となります。感情に任せて証拠を廃棄したり、相手を中傷するようなメッセージを送ってしまうと、かえって不利になることもあるため注意が必要です。

可能な範囲で冷静な話し合いを

配偶者や当事者同士が激しい感情でぶつかり合うと、事態の収束が見えにくくなります。とりわけ「お金の問題」だけを先行して話し合うと、お互いに納得感を得にくいのも事実です。できれば第三者の立会いや専門家のアドバイスを受けながら、身体面や精神面のケアを含めた総合的なサポートについても検討するとよいでしょう。

まとめ

家庭以外の相手との関係は、それだけでも配偶者の心を深く傷つけ、法的に慰謝料トラブルの素地を生む行為です。さらに妊娠してしまい、最終的に中絶手術を選ばざるを得ないような状況になると、当事者の精神的負担は一層大きくなり、金銭面や社会的立場をめぐる争いが非常に複雑化しやすいと言えます。

こうした問題に直面している方は、まずは冷静に事実関係を整理し、専門家の力を借りて自身の権利と責任を明確にすることが肝心です。慰謝料に関する話し合いは、感情論で終わらせず、法的根拠や実際の相場を踏まえて進めることが重要になります。裁判に発展する前に示談で解決できる場合も多いので、まずは早めに相談窓口を探してみましょう。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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