熟年離婚の慰謝料相場を年代別に解説|広島で50代~70代が知っておくべき増額ポイント
「子どもも独立したし、そろそろ離婚を考えている」「定年後の人生を一人で歩みたい」。そんな思いを抱えている50代、60代の方は少なくありません。熟年離婚は年々増加傾向にあり、特に女性からの申し立てが多いのが特徴です。
熟年離婚を考えたとき、最も気になるのが「慰謝料はいくらもらえるのか」という点でしょう。長年連れ添った相手との離婚ですから、若い世代の離婚とは事情が異なります。結婚期間が長いほど慰謝料は高くなるのか、年金分割とは別にもらえるのか、定年退職金は対象になるのか。疑問は尽きませんよね。
実は、熟年離婚の慰謝料には、若い世代にはない独特の計算要素があります。結婚期間の長さ、退職金の扱い、相手の年金額、介護の負担など、様々な要素が金額に影響するんです。広島でも、50代から70代の方が離婚を決断し、適切な慰謝料を獲得するケースが増えています。
この記事では、熟年離婚における慰謝料の相場から、金額を左右する要素、年代別の注意点、増額するためのポイント、よくあるトラブルと対処法まで、分かりやすく解説していきます。人生の再スタートを切るために、適正な慰謝料を受け取る権利をしっかり理解しましょう。
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熟年離婚の慰謝料相場と若い世代との違い
そもそも熟年離婚とは何歳から?
熟年離婚に明確な年齢の定義はありませんが、一般的には50歳以降、結婚期間20年以上の夫婦の離婚を指すことが多いです。厚生労働省の統計によれば、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数は増加傾向にあり、特に60代での離婚が目立ちます。
熟年離婚が増えている背景には、いくつかの社会的要因があります。まず、平均寿命が延びたことで、「離婚後の人生も長い」と考える人が増えました。60歳で離婚しても、その後20年、30年と人生は続きます。子育てが終わって夫婦二人だけの時間が増えたとき、「この人とこれ以上一緒にいたくない」と気づく方も多いようです。
また、年金分割制度が2007年に導入されたことも、熟年離婚を後押ししています。以前は「離婚したら生活できない」と我慢していた専業主婦も、年金分割によって老後の生活資金にある程度の目途が立つようになりました。女性の社会進出が進み、経済的自立が可能になったことも大きな要因です。
定年退職がきっかけになるケースも多いです。夫が定年退職して家にいる時間が増えると、それまで見えなかった不満が噴出します。「一日中家にいて邪魔」「家事を手伝わない」「趣味ばかりで会話がない」。こういった不満が積み重なって、離婚を決意する方もいます。
熟年離婚の慰謝料相場は100万円~500万円
熟年離婚の慰謝料相場は、ケースによって大きく異なりますが、一般的には100万円から500万円程度です。若い世代の離婚と比べると、やや高額になる傾向があります。
ただし、これはあくまで目安です。離婚の原因、結婚期間の長さ、相手の収入や財産、精神的苦痛の程度など、様々な要素によって金額は変動します。不倫が原因で、証拠もしっかりあり、結婚期間が30年以上あるようなケースでは、500万円を超えることもあります。
逆に、性格の不一致など、どちらかが明確に悪いとは言えないケースでは、慰謝料がゼロまたは少額になることもあります。「結婚期間が長いから自動的に高額になる」わけではない点に注意が必要です。
年代別の慰謝料相場の目安:
- 50代での離婚: 150万円~400万円
- 60代での離婚: 100万円~300万円
- 70代での離婚: 50万円~200万円
年齢が上がるほど相場が下がる傾向にあるのは、離婚後の生活期間が短くなるため、精神的苦痛の継続期間が短いと判断されるからです。また、高齢になると相手の収入も年金だけになり、支払能力が下がることも影響しています。
若い世代の離婚との3つの違い
熟年離婚と若い世代の離婚では、慰謝料の考え方にいくつかの違いがあります。
違い①:財産分与の比重が大きい 若い世代では慰謝料が中心ですが、熟年離婚では財産分与のほうが金額的に大きくなることが多いです。長年かけて築いた財産(家、預貯金、退職金、株式など)を分けることになるため、財産分与だけで数千万円になることもあります。
慰謝料は精神的苦痛に対する補償ですが、財産分与は夫婦が共同で築いた財産を公平に分けるものです。専業主婦として家庭を支えてきた妻も、財産の半分を受け取る権利があります。熟年離婚では、「慰謝料よりも財産分与のほうが重要」というケースも珍しくありません。
違い②:年金分割が加わる 熟年離婚特有の要素が年金分割です。婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦で分割できる制度で、多くの場合、専業主婦だった妻が夫の年金の一部を受け取れるようになります。
年金分割は慰謝料とは別の制度ですが、離婚後の生活設計において非常に重要です。年金分割によって月々数万円の収入が増えれば、老後の生活が大きく変わります。ただし、年金分割には離婚から2年という期限があるので、忘れずに手続きする必要があります。
違い③:介護の負担が考慮される 熟年離婚では、相手の親や相手自身の介護負担が慰謝料に影響することがあります。長年にわたって義理の両親を介護してきた、持病のある夫の世話をしてきた、といった事情があれば、慰謝料の増額要素になり得ます。
若い世代の離婚では介護の問題はほとんど出てきませんが、熟年離婚では大きなテーマです。「介護疲れで離婚したい」というケースも実際にあります。長年の介護負担は、精神的・肉体的苦痛として評価されることがあるのです。
慰謝料の金額を決める6つの要素
離婚原因と有責性の程度
慰謝料の金額を決める最も重要な要素は、離婚の原因です。どちらに非があるのか、どの程度悪質なのかによって、金額は大きく変わります。
慰謝料が高額になりやすい離婚原因:
- 不倫・浮気(不貞行為): 200万円~500万円
- DV・モラハラ: 100万円~300万円
- 悪意の遺棄: 50万円~200万円
- 婚姻関係の破綻: ケースバイケース
不倫は最も慰謝料が高額になりやすい原因です。特に、長期間にわたる不倫、複数の相手との不倫、不倫相手との間に子どもができた、などの悪質なケースでは、500万円以上になることもあります。
DVやモラハラも、証拠がしっかりあれば高額になります。診断書、写真、録音、日記などの証拠があれば、精神的苦痛を客観的に証明できます。広島市内でも、長年のモラハラに耐えていた60代女性が、証拠を集めて離婚し、慰謝料300万円を獲得したケースがあります。
逆に、性格の不一致や価値観の違いなど、どちらが悪いとも言えない理由での離婚は、慰謝料がゼロまたは少額になります。「もう一緒にいたくない」という気持ちだけでは、慰謝料は発生しないのです。
結婚期間の長さ
結婚期間が長いほど、慰謝料は高くなる傾向があります。20年、30年と長年連れ添った夫婦が離婚する場合、それだけ精神的苦痛も大きいと考えられるからです。
ただし、結婚期間だけで自動的に金額が決まるわけではありません。結婚期間が30年でも、離婚原因が軽微なら慰謝料は少額です。逆に、結婚期間が15年でも、悪質な不倫があれば高額になります。
結婚期間は、他の要素と組み合わさって金額に影響します。「結婚期間30年+不倫3年+証拠あり」なら高額、「結婚期間30年+性格の不一致」なら少額、という具合です。
結婚期間と慰謝料の関係性:
- 20年未満:プラス要素は小さい
- 20年~30年:プラス要素として考慮される
- 30年以上:大きなプラス要素になる
相手の年収と支払能力
慰謝料は、相手に支払能力がなければ受け取れません。いくら「500万円が妥当」と判断されても、相手に財産も収入もなければ、実際には受け取れないのです。
定年退職後の相手が年金だけで生活している場合、高額な慰謝料を一括で支払うのは難しいでしょう。退職金を受け取っていれば、そこから支払うこともできますが、すでに使ってしまっている場合は回収が困難です。
現役で働いていて、それなりの収入がある場合は、分割払いも選択肢になります。ただし、分割払いは途中で支払いが滞るリスクもあるため、できれば一括で受け取るのが理想です。
相手が会社経営者や資産家の場合は、高額な慰謝料を請求できる可能性があります。支払能力があるのに支払わない場合は、財産の差し押さえなど法的手段も取れます。
婚姻生活への貢献度
熟年離婚では、婚姻生活への貢献度も考慮されます。特に、専業主婦として長年家庭を支えてきた妻の場合、その貢献が認められることがあります。
例えば、夫が仕事に専念できたのは、妻が家事・育児・義理の両親の介護をすべて引き受けていたから、という事情があれば、妻の貢献度は非常に高いと評価されます。夫が出世して高収入を得られたのも、妻のサポートがあってこそです。
共働きの場合でも、家事や育児の負担が一方に偏っていた場合は、その点が考慮されることがあります。「夫は仕事だけ、妻は仕事も家事も育児も」という状況なら、妻の負担のほうが大きいと言えます。
貢献度は財産分与でより重視される要素ですが、慰謝料の金額を決める際にも影響することがあります。特に、一方が極端に家庭をないがしろにしていた場合は、慰謝料の増額理由になり得ます。
子どもの有無と年齢
熟年離婚の場合、子どもはすでに成人して独立していることが多いです。その場合、子どもの有無は慰謝料にあまり影響しません。
ただし、まだ子どもが学生で経済的に自立していない場合は、養育費の問題が出てきます。養育費は慰謝料とは別ですが、離婚後の経済状況を考える上で重要です。
また、子どもとの関係性も考慮されることがあります。離婚によって子どもとの関係が断絶してしまう、孫に会えなくなる、といった精神的苦痛がある場合、それが慰謝料に反映されることもあります。
子どもの状況別の影響:
- 子どもが独立済み:慰謝料への影響は小さい
- 子どもが学生:養育費が別途必要
- 子どもが障害などで自立困難:扶養義務が継続、影響大
精神的・肉体的苦痛の程度
離婚によって受けた精神的・肉体的苦痛の程度も、慰謝料に影響します。これは主観的な要素ですが、客観的な証拠があれば認められやすくなります。
例えば、相手の不倫を知ってうつ病になり、心療内科に通院した場合、診断書が証拠になります。DVで怪我をした場合、診断書や写真が証拠です。モラハラで精神的に追い詰められた場合、日記や録音が証拠になり得ます。
長年の介護負担で健康を害した、相手の借金問題で精神的に疲弊した、といった事情も、証拠があれば考慮されます。「辛かった」という気持ちだけでなく、それを裏付ける客観的な証拠が重要なのです。
熟年離婚特有の慰謝料増額ポイント
退職金を視野に入れた交渉
熟年離婚で見落としがちなのが、退職金の扱いです。退職金は財産分与の対象になりますが、慰謝料の交渉においても重要な要素です。
すでに退職金を受け取っている場合、それは財産分与の対象です。婚姻期間に対応する部分を、夫婦で半分ずつ分けることになります。例えば、退職金が2000万円で、結婚期間が勤続期間の30年のうち25年なら、対象は約1670万円、その半分の835万円が妻の取り分です。
まだ退職前の場合、将来受け取る予定の退職金も財産分与の対象になることがあります。ただし、将来のことなので不確定要素が多く、計算が複雑になります。退職金規定や勤続年数から、おおよその金額を推定して交渉します。
退職金を財産分与でもらう場合、慰謝料は別途請求できます。「退職金をもらったから慰謝料はなし」ということにはなりません。退職金は夫婦で築いた財産、慰謝料は精神的苦痛への補償、という別の性質のものだからです。
退職金を考慮した交渉のポイント:
- 退職金規定を確認する
- 勤続年数と婚姻期間の重複を計算する
- すでに受領済みなら預金通帳を確認する
- 財産分与と慰謝料は別物と認識する
年金分割との組み合わせ戦略
年金分割は熟年離婚における重要な権利ですが、慰謝料とは別の制度です。両方をしっかり請求することで、離婚後の生活をより安定させることができます。
年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があります。合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を夫婦の合意で分割するものです。通常は50パーセントずつに分割しますが、話し合いで割合を決められます。3号分割は、2008年4月以降の第3号被保険者期間について、自動的に50パーセント分割されるものです。
年金分割によって増える年金額は、それほど多くないこともあります。夫の年金額や婚姻期間によりますが、月に2万円から5万円程度増えることが多いようです。少額に思えるかもしれませんが、これが一生涯続くことを考えれば、大きな金額になります。
年金分割は慰謝料の交渉材料にもなります。「年金分割を50パーセントにする代わりに、慰謝料は少し減額する」といった交渉も可能です。ただし、年金分割は権利として認められているものなので、安易に譲歩する必要はありません。
年金分割の手続きポイント:
- 離婚から2年以内に手続きが必要
- 年金事務所で「年金分割のための情報通知書」を取得
- 分割割合は最大50パーセント
- 慰謝料とは別に請求できる
長年の介護負担を証拠化する
義理の両親や配偶者本人の介護を長年してきた場合、それは慰謝料の増額要素になり得ます。ただし、「介護が大変だった」という主張だけでは認められにくく、客観的な証拠が必要です。
介護負担を証明する証拠としては、介護日記が有効です。いつ、どんな介護をしたのか、どれだけ時間を費やしたのか、どんな精神的・肉体的負担があったのかを記録しておきます。介護保険の利用記録、医療機関の受診記録なども証拠になります。
介護のために仕事を辞めた、仕事を減らした、という場合は、それによる経済的損失も主張できます。本来得られたはずの収入を失ったことは、金銭的な損害として評価されることがあります。
介護負担は、財産分与にも影響します。「夫は仕事に専念し、妻が両親の介護をすべて引き受けていた」という場合、妻の貢献度が高いと評価され、財産分与の割合が妻に有利になることがあります。
モラハラの証拠を積み重ねる
熟年離婚では、長年のモラハラが原因になることも多いです。「お前は何もできない」「誰のおかげで生活できていると思っているんだ」といった暴言を日常的に浴びせられてきた、といったケースです。
モラハラは、DVと違って外傷が残らないため、証拠を集めるのが難しいです。でも、証拠がなければ慰謝料を請求するのは困難です。モラハラの証拠としては、以下のようなものがあります。
モラハラの証拠になるもの:
- 暴言の録音
- メールやLINEのやり取り
- 日記(日時、内容、自分の気持ちを詳細に記録)
- 心療内科の診断書
- 第三者の証言(目撃した家族や友人)
録音は非常に有力な証拠です。スマートフォンの録音アプリを使えば、簡単に録音できます。相手に気づかれずに録音しても、証拠として有効です。「盗聴は違法では?」と心配する方もいますが、夫婦間の会話を録音することは違法ではありません。
日記も継続的につけていれば、有力な証拠になります。「〇月〇日、夕食の支度が遅いと言われ、『お前は何をやってもダメだ』と怒鳴られた。とても悲しく、自分には価値がないと感じた」といった具合に、具体的に記録します。
年代別の慰謝料請求の注意点
50代での熟年離婚:再就職と生活設計
50代での離婚は、まだ体力もあり、再就職の可能性もある年代です。一方で、子どもの学費が残っていたり、親の介護が始まっていたりと、出費も多い時期です。
50代の慰謝料請求で注意すべきは、離婚後の生活設計をしっかり立てることです。慰謝料と財産分与でどのくらい受け取れるのか、それで何年生活できるのか、再就職は可能なのか、年金はいくらもらえるのか。これらを総合的に考えて、請求額を決める必要があります。
専業主婦だった場合、50代からの再就職は簡単ではありません。パートやアルバイトで月10万円稼げれば良いほうでしょう。年金を受給できるまでの10年ほどを、どう乗り切るかが重要です。慰謝料や財産分与を少しでも多く受け取ることが、生活の安定につながります。
50代は、相手もまだ現役で働いている可能性が高い年代です。収入があるため、慰謝料の支払能力も比較的高いです。この点は、60代、70代での離婚と比べて有利です。
50代離婚のチェックポイント:
- 子どもの学費は誰が負担するか
- 自分の再就職の可能性を現実的に評価する
- 年金受給までの10年間の生活費を確保する
- 相手の退職金を視野に入れた交渉をする
60代での熟年離婚:年金と医療費
60代での離婚は、定年退職を機に決断するケースが多いです。「退職して家にいる夫と一緒にいたくない」「第二の人生は一人で歩みたい」という理由です。
60代の慰謝料請求で重要なのは、年金分割です。すでに年金を受給している、またはまもなく受給が始まる年代なので、年金分割の効果がすぐに表れます。慰謝料だけでなく、年金分割もしっかり請求しましょう。
医療費も考慮すべき要素です。60代になると、病気や怪我のリスクが高まります。離婚後は国民健康保険に加入することになり、保険料も自分で払わなければなりません。慢性疾患があって定期的な通院が必要な場合、医療費の負担も計算に入れる必要があります。
60代は、相手も年金生活に入っている可能性が高く、支払能力が限られます。退職金を受け取っていれば、そこから慰謝料を支払ってもらうことになります。すでに退職金を使い果たしている場合、高額な慰謝料の回収は難しいかもしれません。
60代離婚のチェックポイント:
- 年金分割の手続きを忘れずに(離婚から2年以内)
- 相手の退職金の有無を確認する
- 自分の年金額を試算する
- 国民健康保険料と医療費を見積もる
70代での熟年離婚:相続と介護問題
70代での離婚は、数としては少ないですが、増加傾向にあります。「人生の残り時間を考えたら、もうこの人とは一緒にいたくない」という決断です。
70代の慰謝料請求で注意すべきは、金額がそれほど高くならないことです。離婚後の人生が短いため、精神的苦痛の継続期間も短いと判断されるからです。また、相手の支払能力も限られています。年金だけの生活で、まとまった財産がない場合、高額な慰謝料は期待できません。
相続の問題も考慮すべきです。離婚してしまうと、配偶者としての相続権を失います。相手が亡くなっても、遺産を相続できません。離婚するか、婚姻関係を維持したまま別居するか、どちらが経済的に有利かを冷静に計算する必要があります。
介護の問題も深刻です。相手が要介護状態になった場合、離婚していれば介護義務はありません。でも、婚姻関係が続いていれば、介護する義務が生じる可能性があります。「介護したくないから離婚する」というケースもあります。
70代離婚のチェックポイント:
- 慰謝料は少額でも、離婚することの精神的価値を考える
- 相続権を失うことを理解する
- 介護義務の有無を確認する
- 自分の健康状態と余命を現実的に考える
慰謝料請求の具体的な手順
離婚理由の整理と証拠集め
慰謝料を請求する最初のステップは、離婚理由を明確にして、証拠を集めることです。「何となく嫌だから」では慰謝料は認められません。法律上の離婚理由が必要です。
法律上の離婚理由(民法770条)は以下の5つです。
- 配偶者の不貞行為
- 配偶者からの悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病で回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
熟年離婚で多いのは、1の不貞行為、2の悪意の遺棄、5のその他の事由です。5は、DVやモラハラ、性格の不一致、親族との不和など、幅広いケースが含まれます。
証拠集めは、慰謝料請求の成否を左右する重要な作業です。相手の不倫なら、メールやLINEのやり取り、ホテルの領収書、探偵の調査報告書など。DVなら、診断書、写真、警察への相談記録など。モラハラなら、録音、メール、日記など。
証拠は、離婚を切り出す前に集めておくことが大切です。離婚の話を始めてしまうと、相手が警戒して証拠を隠滅する可能性があるからです。
慰謝料の金額を決める
証拠が揃ったら、請求する慰謝料の金額を決めます。この段階では、やや高めの金額を設定するのが交渉のコツです。最初から妥協した金額を提示すると、そこからさらに下げられる可能性があります。
金額を決める際は、以下の要素を総合的に考慮します。
- 離婚原因の内容と悪質性
- 結婚期間の長さ
- 相手の年収と資産
- 自分が受けた精神的苦痛の程度
- 過去の裁判例での相場
過去の裁判例を調べるのは、弁護士に依頼するのが確実です。一般の人が判例を検索するのは難しいですし、自分のケースにどの判例が当てはまるのかを判断するのも専門知識が必要です。
弁護士に相談すれば、「あなたのケースなら、200万円から300万円が妥当でしょう」といった助言がもらえます。その上で、最初は350万円を請求して、交渉の中で300万円くらいで合意する、という戦略を立てられます。
協議離婚での交渉
離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。まずは協議離婚、つまり夫婦の話し合いで進めるのが一般的です。
協議離婚での慰謝料交渉は、直接相手と話す方法と、弁護士を通じて話す方法があります。直接話す場合、感情的になりやすく、冷静な交渉が難しいこともあります。相手が高圧的だったり、話を聞いてくれなかったりすることもあります。
弁護士を入れれば、交渉は弁護士が代行してくれます。あなたは相手と直接やり取りする必要がなくなり、精神的な負担が減ります。弁護士が法的な根拠を示しながら交渉するので、相手も無理な主張はしにくくなります。
交渉がまとまったら、離婚協議書を作成します。できれば、公正証書にすることをおすすめします。公正証書にしておけば、相手が慰謝料を払わなかった場合、裁判なしで強制執行(差し押さえ)ができます。
協議離婚のポイント:
- 感情的にならず、冷静に交渉する
- 合意内容は必ず書面に残す
- 公正証書にして強制執行力を持たせる
- 弁護士に依頼すれば交渉が有利に進む
調停・裁判への移行
協議離婚で話がまとまらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、調停委員が間に入って、夫婦の話を聞き、合意を目指します。
調停は、月に1回程度のペースで行われます。半年から1年程度かかることが多いです。調停委員は、双方の主張を聞いて、妥協点を探ってくれます。「あなたの主張は300万円ですが、相手は100万円と言っています。200万円で合意しませんか」といった提案をしてくれます。
調停でも合意に至らない場合、裁判に移行します。裁判では、裁判官が証拠を見て、法律に基づいて慰謝料の金額を決めます。判決が出れば、相手はそれに従わなければなりません。
裁判は、調停よりもさらに時間がかかります。1年から2年かかることも珍しくありません。費用も高額になります。できれば調停で合意するのが理想ですが、相手が不当に低い金額しか提示しない場合は、裁判も選択肢になります。
慰謝料請求でよくあるトラブルと対処法
相手が支払いを拒否する
慰謝料の金額に合意したのに、相手が実際には払ってくれない、というトラブルは非常に多いです。「お金がない」「今は払えない」と言い訳して、支払いを先延ばしにされるケースです。
このトラブルを防ぐには、公正証書を作成しておくことが有効です。公正証書には「強制執行認諾条項」という条項を入れることができます。これがあれば、相手が支払わなかった場合、裁判を経ずに強制執行(給与や預金の差し押さえ)ができます。
すでに合意しているのに公正証書がない場合、裁判を起こして判決をもらう必要があります。判決があれば、強制執行ができます。ただし、裁判には時間も費用もかかるので、できれば最初から公正証書にしておくのが賢明です。
相手に財産がない場合、差し押さえても回収できないことがあります。年金は一部しか差し押さえできませんし、生活に必要な最低限の財産は差し押さえ禁止です。相手の支払能力を見極めて、現実的な金額で合意することも大切です。
財産分与と混同される
慰謝料と財産分与を混同してトラブルになるケースもあります。「財産分与で1000万円もらったんだから、慰謝料はいらないでしょ」と相手が主張してくることがあるのです。
でも、慰謝料と財産分与は別物です。財産分与は、夫婦が共同で築いた財産を分けるもの。慰謝料は、精神的苦痛に対する補償です。性質が違うので、両方とも請求できます。
ただし、実務上は、財産分与の中に慰謝料的な要素を含めて、まとめて解決することもあります。「財産分与として1200万円を支払う。この中には慰謝料200万円を含む」といった合意です。この場合、財産分与と慰謝料を明確に区別して、書面に残しておくことが大切です。
混同を避けるには、離婚協議書に「財産分与として〇〇万円、慰謝料として〇〇万円を支払う」と明記することです。曖昧な表現は、後々のトラブルの元になります。
年金分割を忘れて後悔する
年金分割は、離婚から2年以内に手続きしないと、権利が消滅してしまいます。この期限を過ぎてから「やっぱり年金分割したい」と思っても、もう手遅れなのです。
熟年離婚では、慰謝料や財産分与に気を取られて、年金分割を忘れてしまうことがあります。離婚届を出して、数年経ってから「年金分割してなかった!」と気づいても、もう請求できません。
年金分割を忘れないためには、離婚協議書に「年金分割を行う」と明記しておくことです。そして、離婚届を出したら、すぐに年金事務所で手続きをしましょう。2年の期限があるからと言って油断していると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
弁護士に依頼していれば、年金分割の手続きも忘れずにやってくれます。「離婚が成立したら、すぐに年金分割の手続きをしてください」とアドバイスしてくれるはずです。
税金の問題を見落とす
慰謝料には、基本的に税金はかかりません。慰謝料は精神的苦痛に対する補償なので、所得税の対象外です。ただし、あまりに高額な場合、贈与税がかかる可能性があります。
財産分与も、通常は税金がかかりません。ただし、不動産をもらった場合、不動産取得税や登録免許税がかかります。また、財産分与で受け取った財産が、相場よりも明らかに高額な場合、贈与税がかかることがあります。
退職金を財産分与でもらう場合、それ自体には税金はかかりませんが、相手が退職金を受け取るときに源泉徴収されていた税金が、後から還付されることがあります。そのあたりの計算も含めて、専門家に相談したほうが安心です。
年金分割による年金も、通常の年金と同じように所得税の対象になります。確定申告が必要になることもあるので、注意が必要です。
弁護士に依頼すべきケースとタイミング
高額な慰謝料を目指す場合
慰謝料を300万円以上請求したい場合、弁護士に依頼することをおすすめします。高額な慰謝料を獲得するには、法的な根拠をしっかり示す必要があるからです。
弁護士は、過去の裁判例を調べて、あなたのケースではどのくらいの慰謝料が認められるのかを判断できます。「この証拠があれば、400万円は狙えます」「この証拠だけだと、200万円が限界かもしれません」といった現実的なアドバイスがもらえます。
また、弁護士が交渉すると、相手も真剣に対応します。素人が「500万円払ってください」と言っても、相手は「そんな金額は払えない」と一蹴するかもしれません。でも、弁護士が法的根拠を示しながら請求すれば、相手も無視できません。
高額な慰謝料を請求する場合、裁判になる可能性も高いです。裁判では、法律の専門知識が必要です。一般の人が自分で裁判をするのは非常に困難なので、弁護士に依頼するのが現実的です。
相手が交渉に応じない場合
相手が話し合いに応じてくれない、連絡を無視する、一方的に離婚を拒否する。こういった場合も、弁護士に依頼すべきです。
弁護士が「受任通知」を送ると、相手も無視できなくなります。弁護士からの通知を無視し続けると、調停や裁判に進むことになり、相手にとっても不利です。多くの場合、弁護士が入ると、それまで頑なだった相手も、交渉のテーブルにつくようになります。
また、相手が弁護士をつけてきた場合、こちらも弁護士をつけないと不利になります。相手の弁護士と直接やり取りするのは、精神的にも負担が大きいですし、法律の知識がないと言いくるめられる可能性もあります。
DVやモラハラがあって、相手と直接会いたくない場合も、弁護士に依頼すべきです。弁護士が間に入れば、あなたは相手と直接会う必要がなくなります。すべての連絡は弁護士を通じて行われるので、安全に離婚を進められます。
財産分与が複雑な場合
財産が多い、不動産がある、退職金が絡む、相手が自営業者で財産を隠している可能性がある。こういった複雑なケースでは、弁護士の力が必要です。
財産分与は、まず財産の全容を把握することから始まります。預貯金、不動産、株式、保険、退職金など、すべての財産をリストアップします。相手が財産を隠している場合、弁護士が調査嘱託という手続きで、銀行や証券会社に問い合わせることもできます。
不動産の評価も専門知識が必要です。固定資産税評価額、路線価、実勢価格など、いろいろな評価方法があります。どの評価額を使うかで、分与額が何百万円も変わることがあります。弁護士は、あなたに有利な評価方法を主張してくれます。
退職金の計算も複雑です。まだ退職していない場合、将来の退職金を現在価値に割り引いて計算する必要があります。中間利息控除という専門的な計算が必要で、一般の人には難しいです。
離婚を決意したらすぐに相談を
弁護士に依頼するタイミングは、離婚を決意したらできるだけ早くがベストです。証拠を集める段階から、弁護士にアドバイスをもらえば、効率的に準備できます。
「とりあえず自分で話してみて、ダメだったら弁護士に頼もう」と考える人もいますが、これはおすすめしません。自分で交渉しているうちに、不利な発言をしてしまったり、証拠を失ったりすることがあるからです。
初回相談は無料の法律事務所も多いので、まずは相談だけでもしてみることをおすすめします。「離婚したいと思っているけど、どう進めればいいか分からない」という段階で相談しても大丈夫です。弁護士が、今後の流れや注意点を教えてくれます。
弁護士費用が心配な方もいるでしょう。でも、弁護士に依頼することで、慰謝料や財産分与が大幅に増えれば、弁護士費用を差し引いても十分にプラスになります。広島でも、弁護士に依頼したことで、慰謝料が200万円増えた、財産分与が500万円増えた、という事例はたくさんあります。
まとめ
熟年離婚における慰謝料は、100万円から500万円が一般的な相場ですが、離婚原因、結婚期間、相手の収入、精神的苦痛の程度など、様々な要素によって金額は変わります。若い世代の離婚と違い、財産分与や年金分割の比重が大きいのが特徴です。
慰謝料を増額するポイントは、退職金を視野に入れた交渉、年金分割との組み合わせ、介護負担の証拠化、モラハラの録音や日記などです。証拠があるかないかで、金額が大きく変わるので、離婚を決意したら、まず証拠を集めることから始めましょう。
年代によっても注意点が異なります。50代なら再就職と生活設計、60代なら年金分割と医療費、70代なら相続と介護問題を考慮する必要があります。自分の年代に合った戦略を立てることが大切です。
高額な慰謝料を目指す場合、相手が交渉に応じない場合、財産分与が複雑な場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。離婚を決意したら、できるだけ早く弁護士に相談して、適切なアドバイスをもらいましょう。人生の再スタートのために、適正な慰謝料を受け取る権利をしっかり行使してください。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。