婚姻費用は遡って請求できる?
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さかのぼれる期間・請求方法・注意点を弁護士が解説
別居中のパートナーから生活費をもらえていない。でも今さら遡って請求できるのかと悩んでいる方は少なくありません。
結論から言うと、婚姻費用は一定の範囲でさかのぼって請求することができます。ただし、遡れる期間や金額には法律上のルールがあり、適切なタイミングで動かないともらえるはずのお金を取り逃がす可能性があります。
この記事では、婚姻費用をさかのぼって請求できる範囲・具体的な手続き・よくある疑問について、できるだけわかりやすく解説します。
婚姻費用とは何か|まず基本を確認しよう
婚姻費用(こんいんひよう)とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことです。民法760条は、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すると定めています。
具体的には次のような費用が含まれます。
- 家賃・住居費
- 食費・光熱費
- 子どもの養育費・教育費
- 医療費
- 被服費・日用品費
別居中でも離婚が成立するまでは婚姻関係が続いているため、収入の多いほうが少ないほうに婚姻費用を支払う義務があります。専業主婦(主夫)の場合はもちろん、共働きでも収入差があれば請求できます。
別居したら生活費はどうするのかという問いに対する答えが、この婚姻費用です。離婚が成立するまでの間、法律によって認められた権利なのです。
婚姻費用は遡って請求できるのか?法律の考え方を解説
原則:請求した時点からしか認められない
婚姻費用の遡及請求について、裁判所(家庭裁判所)の基本的な考え方はこうです。
婚姻費用は、請求した時点以降について認める。
つまり、何年も生活費をもらっていなかったとしても、昨日まで3年分を全部払ってくださいとはなかなかならないのが現実です。裁判所は、請求せずに放置していた期間については生活できていたと判断する傾向があるためです。
例外:調停・審判申立て前にさかのぼれるケース
ただし、まったく遡れないわけではありません。次のような場合には、申立て前の分も認められることがあります。
- 内容証明郵便などで相手に請求していた証拠がある場合
- LINE・メールなどで生活費を払ってほしいと求めていた記録がある場合
- 相手方が支払いを約束していた記録がある場合
これらの証拠があれば、調停を申し立てた日よりも前の分も含めて婚姻費用の支払いを求めることができる場合があります。ただしあくまで裁判官の裁量による部分も大きく、必ずしも全額が認められるとは限りません。
実務上の起算点はいつになるか
実際の審判・調停では、婚姻費用の支払い開始時点(起算点)として以下のいずれかが採用されることが多いです。
- 調停・審判を申し立てた月
- 内容証明郵便などで請求した月
- 別居開始月(相手方が支払いを拒んだ事情が明らかな場合)
いずれにしても一日でも早く動くことが、遡及できる範囲を広げる最大のポイントです。
婚姻費用を遡って請求するための具体的な手順
STEP1:まず内容証明郵便で請求する
調停を申し立てる前に、まず相手方に婚姻費用を支払ってほしいという意思を書面で伝えることが重要です。内容証明郵便はいつ・何を・誰に送ったかが郵便局に記録されるため、後から請求した証拠として使えます。
内容証明には○年○月○日から毎月○○万円の婚姻費用を支払うよう請求しますという形で具体的な金額と期間を明記しましょう。弁護士に作成を依頼すると、より効果的な文章にしてもらえます。
STEP2:婚姻費用分担調停を申し立てる
内容証明を送っても支払いがない場合、または交渉が難しい状況であれば、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てます。
申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。申立費用は収入印紙1,200円+郵便切手代で、比較的低コストで利用できます。
申立書類として必要なもの:
- 婚姻費用分担調停申立書(裁判所のウェブサイトから入手可)
- 戸籍謄本
- 申立人の収入証明書(源泉徴収票・確定申告書など)
- 相手方の収入証明書(把握できる範囲で)
調停が成立すれば調停調書が作成され、これは確定判決と同じ強制執行力を持ちます。相手が払わなければ給料や預金口座を差し押さえることも可能です。
STEP3:調停不成立の場合は審判へ
調停で話し合いがまとまらない場合、自動的に審判手続きに移行します。審判では裁判官が双方の収入や生活状況をもとに婚姻費用の金額を決定します。
審判の場合も起算点は原則として申立日の属する月となることが多いため、できるだけ早く申し立てることが大切です。なお審判に不服がある場合は即時抗告(2週間以内)ができます。
婚姻費用の計算方法|いくら請求できる?
婚姻費用の金額は婚姻費用算定表をもとに計算されます。この算定表は東京・大阪の裁判官が共同で作成したもので、全国の家庭裁判所で広く使われています(令和元年に改訂版が公表されました)。
算定表で考慮される主な要素:
- 夫婦それぞれの年収(給与所得者か自営業者かで計算式が異なる)
- 子どもの人数と年齢
- 子どもを実際に育てているのはどちらか
たとえば、夫の年収が600万円(給与)、妻の年収が150万円(給与)、子ども1人(10歳)を妻が育てているケースでは、算定表上の婚姻費用は月10〜12万円程度になることが多いです(ケースにより異なります)。
目安の金額をすぐに確認したい方は、以下のシミュレーターが便利です。双方の年収と子どもの情報を入力するだけで、算定表ベースの金額を簡単に試算できます。
婚姻費用シミュレーター
なお算定表はあくまで目安であり、住居費の負担割合(例:義務者が婚姻住居のローンを払い続けているなど)や特別な事情がある場合は金額が増減することがあります。
よくある疑問Q&A|遡及請求の気になるポイント
Q:別居から2年経っています。今から請求できますか?
A:今からでも請求できますが、遡れる範囲は限定的です。調停を申し立てた月以降の婚姻費用が認められることがほとんどで、2年前の分を全額取り戻すのは難しいのが現実です。
ただし、別居直後にLINEや内容証明で請求していた記録があれば、その時点までさかのぼれる可能性があります。まずは弁護士に相談してどれだけ遡れるか確認しましょう。
Q:離婚が成立した後でも請求できますか?
A:婚姻費用は離婚が成立するまでの費用です。離婚が成立した後に婚姻費用を請求することは原則できません。
しかし、別居中に発生していた婚姻費用を離婚成立後に請求することは可能です。離婚前の分はあくまで婚姻費用として、離婚が成立した後は養育費として請求できます。両者を混同しないよう注意が必要です。
Q:不倫した側(有責配偶者)でも請求できますか?
A:これはよく誤解されるポイントです。婚姻費用の請求権は不倫したかどうかとは関係なく、原則として収入の少ないほうが多いほうに請求できます。
ただし、自分が不倫して別居を引き起こした有責配偶者の場合、子どもの養育に関わる部分は認められますが、自分の生活費分については婚姻費用の請求が認められないことがあります(最高裁の判例あり)。
Q:相手が会社員でなく収入がわからない場合は?
A:自営業者や収入が不透明なケースでは、確定申告書の提出を求めることができます。調停・審判の場で裁判官が提出を命じることも可能です。
また、相手が収入がないと主張している場合でも、生活実態から推計収入を認定することがあります。弁護士を通じて相手の預金口座や不動産情報を調査する方法もあります。
遡及請求で失敗しないための注意点
①とにかく早く動くことが鉄則
婚姻費用の遡及範囲は、動き出したタイミングで大きく変わります。そのうち解決するだろうと放置していた期間の分は、基本的には取り戻せません。別居したら、なるべく早い段階で内容証明を送るか、調停を申し立てるかを検討しましょう。
②請求した証拠をしっかり残す
LINEやメールで生活費を払ってほしいと伝えていた場合は、そのやり取りのスクリーンショットを保存しておきましょう。口頭での請求は証拠として認められません。内容証明郵便であれば郵便局が記録を保管するため、証拠として非常に有効です。
③離婚協議と婚姻費用は切り離して考える
婚姻費用の話をすると離婚交渉がこじれるのではと心配する方がいますが、婚姻費用の請求はあなたの正当な権利です。婚姻費用を請求することが離婚交渉に直接影響することは多くありません。
むしろ、婚姻費用を受け取りながら離婚条件を冷静に検討できるという意味で、生活基盤を守るためにも積極的に請求することを検討してください。
④弁護士への相談を早めに検討する
婚姻費用の遡及請求は、手続きや証拠収集に専門的な知識が必要なケースも少なくありません。弁護士に依頼すると次のようなメリットがあります。
- 適切な起算点を主張してもらえる
- 相手の収入を調査・確認してもらえる
- 調停・審判での交渉を代わりにやってもらえる
- 強制執行(給与差押えなど)まで対応してもらえる
法テラス(日本司法支援センター)では収入要件を満たせば弁護士費用の立替制度が利用できます。お金がないから弁護士に頼めないという状況でも、まずは無料相談から始めることができます。
まとめ|婚姻費用の遡及請求は速さと証拠が命
婚姻費用は原則として請求した時点からしか認められませんが、内容証明やLINEなどで請求していた記録があれば、それ以前にさかのぼれる場合があります。遡及できる範囲を広げるために最も大切なのは、一日でも早く動き出すことです。
調停・審判の流れで法的に解決すれば、調停調書によって給与や預金の差し押さえも可能になります。不倫の有無は基本的に請求権に影響せず、弁護士や法テラスを活用することで適切な金額と期間を確保しやすくなります。
別居中の生活が苦しい状況は、精神的にも非常につらいものです。しかし、どうせ遡れないからと諦めてしまうのはもったいない。今からでも動けば、少なくともこれからの婚姻費用は確実に受け取ることができます。
まずは家庭裁判所への調停申立て、あるいは弁護士への相談から一歩踏み出してみてください。あなたには法律によって守られた権利があります。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。