有責配偶者でも婚姻費用を請求できる?払わなくていい?
一人で悩んでいませんか?
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
- ✓ 初回相談無料
- ✓ 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
- ✓ 全国どこからでも24時間年中無休でメール・電話・LINEでの相談ができます。
目次 [閉じる]
立場別のルールと判例をもとにわかりやすく解説
不倫や暴力など、婚姻関係を壊す原因を作った有責配偶者と婚姻費用の関係は、離婚問題の中でも特に誤解が多いテーマです。
自分が有責配偶者になってしまったが婚姻費用を受け取れるか。あるいは相手が不倫をして出ていったのに生活費を払い続けなければならないのか。どちらの立場にいる方も、正確なルールを知らないまま損をしているケースは少なくありません。
この記事では、有責配偶者と婚姻費用の関係を請求する側と支払う側それぞれの立場から、判例をもとに正確に解説します。
有責配偶者とは何か
有責配偶者とは、婚姻関係を破綻させる原因を作った配偶者のことです。民法770条1項に定める離婚原因に該当する行為をした側、と言い換えることもできます。
具体的には以下のような行為が有責事由にあたります。
- 不貞行為(いわゆる不倫・浮気)
- 配偶者への身体的暴力(DV)
- モラルハラスメント(精神的DV)
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、家を出て連絡を断つなど)
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由
有責配偶者かどうかは白黒で決まるものではなく、双方に責任がある場合や、どちらが主たる有責配偶者かが争われることも多くあります。婚姻費用との関係でも、責任の程度が金額の判断に影響してきます。
なお、有責配偶者であることは婚姻費用とは別に慰謝料請求の根拠になります。婚姻費用と慰謝料は別々の請求であり、両者を混同しないよう注意が必要です。
自分が有責配偶者の場合|婚姻費用を請求できるか
自分の生活費分は原則として認められない
自分が不倫や暴力などの有責行為をして別居に至った場合、自分自身の生活費にあたる部分の婚姻費用請求は、信義則違反または権利の濫用として認められない可能性が高いです。
裁判所は、夫婦関係を壊した張本人が相手に生活費を求めることは道義上許されないと判断することがあります。東京高裁の平成31年1月31日決定では、激しい暴力行為を繰り返した妻からの婚姻費用請求について、権利の濫用にあたるとして認めませんでした。
ただし、有責行為があっても自動的にゼロになるわけではありません。別居直後など生活再建に必要な期間の生活費については、やむを得ない事情として一部認められた事例もあります(名古屋高裁金沢支部昭和59年2月13日)。有責の程度や別居後の生活状況によって結論が変わるため、一概には断言できません。
子どもの養育費相当分は請求できる
自分が有責配偶者であっても、子どもを連れて別居している場合は、子どもの養育費に相当する部分の婚姻費用は請求できます。
これは、子どもの生活保障は両親の有責性とは切り離して考えるべきという考え方に基づいています。親がどんな理由で別居したかは子どもには関係なく、子どもが適切な生活水準を維持する権利は守られなければならないからです。
実務上は、婚姻費用算定表から自分自身の生活費分を差し引いた金額、すなわち子どもの養育費に相当する部分だけが認められるという処理がとられることが多いです。
金額の目安を確認する方法
子どもがいる場合、算定表上の婚姻費用のうち自分の生活費分がどれくらいかを把握しておくことが重要です。子どもの養育費相当分と自分の生活費分は算定表の内訳から逆算できます。
まずは算定表ベースの合計金額を以下のシミュレーターで確認し、弁護士との相談材料にするとよいでしょう。
婚姻費用シミュレーター
相手が有責配偶者の場合|減額や支払い拒否はできるか
婚姻費用の支払い義務は原則なくならない
相手が不倫をして出ていったとしても、こちらの収入が多い場合、婚姻費用の支払い義務は原則として残ります。離婚が成立するまで夫婦関係は続いており、生活扶助義務は婚姻中は消えないというのが法律の立場です。
支払いを止めると相手から婚姻費用分担調停を申し立てられ、調停調書や審判に基づいて給与や預金を差し押さえられるリスクがあります。感情的に支払いをやめてしまうと後で不利になるため、正式な手続きで減額を求めることが大切です。
相手の有責性を理由に減額・免除を申し立てられる
相手が有責配偶者である場合、婚姻費用分担調停や審判で減額・免除を求めることができます。裁判所は、請求する側の有責性を考慮して算定表より低い金額を認める場合があります。
減額が認められやすいのは次のような状況です。
- 相手の有責行為(不倫・暴力など)が明確な証拠で立証できる場合
- 相手が一方的に家を出て連絡を断ち、生活費の交渉に応じない場合
- 相手に一定の収入があり、自立して生活できる状況にある場合
- 自分が婚姻住居のローンや費用を負担し続けている場合
ただし、相手が子どもを連れて別居している場合、子どもの養育費相当部分については減額が認められにくくなります。有責性は親自身の生活費部分にのみ影響し、子どもの養育費は別に考えるというのが裁判所の基本姿勢です。
減額を求める手続きの流れ
相手の有責性を理由に減額を求める場合は、まず有責行為の証拠を集めることが先決です。不倫であれば交際の証拠(メッセージ・写真・探偵の報告書など)、暴力であれば診断書や写真、DVシェルターへの避難記録などが証拠になります。
証拠をもとに相手に減額を申し入れ、応じない場合は婚姻費用分担調停を申し立てます。調停の場で有責事実を主張・立証することで、算定表より低い金額での合意または審判を目指すことになります。
有責配偶者が婚姻費用を支払う立場の場合
自分が有責配偶者で、なおかつ収入が相手より多い場合、婚姻費用を支払う側になることがあります。この立場では注意すべき点がいくつかあります。
支払いと離婚交渉は切り離して考える
有責配偶者が婚姻費用を支払い続けることは、離婚交渉において誠意を示すことにもつながります。有責配偶者から離婚を求める場合、裁判所は相手方への生活保障への配慮を重視します。婚姻費用をきちんと払っているかどうかが、離婚が認められるかどうかの判断材料の一つになることがあるのです。
逆に、有責配偶者が婚姻費用を支払わなかったことが特段の事情として離婚請求の棄却につながった判例もあります(東京高判平成元年5月11日)。離婚を進めたいのであれば、婚姻費用の支払いを継続することが結果的には有利に働くことがあります。
有責配偶者からの離婚請求が認められる条件
有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、最高裁昭和62年9月2日の大法廷判決以降、一定の要件を満たす場合には例外的に認められています。その3つの要件は次のとおりです。
- 夫婦の別居期間が当事者の年齢・同居期間との対比で相当長期間に及んでいること
- 夫婦の間に未成熟の子がいないこと
- 相手が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれないこと
この3要件のうち、経済的に苛酷な状態におかれないことの判断において、婚姻費用を継続的に支払ってきたかどうかが重要な考慮事項になります。婚姻費用の支払いは、離婚交渉の戦略という観点からも軽視できないのです。
よくある疑問Q&A
Q:不倫した側が婚姻費用を請求してきた。無視していい?
A:無視するのは危険です。相手が調停を申し立てれば、裁判所は子どもの養育費相当部分について支払いを命じる可能性があります。また、支払いをしないまま放置すると調停外での不利な合意を迫られたり、後の離婚交渉で不利になることもあります。正式な調停の場で有責性を主張しつつ、自身の生活費部分についての減額・免除を求めるのが正しい対応です。
Q:自分が不倫した。子どもを連れているが生活費はどうなる?
A:子どもの養育費相当分については請求できる可能性が高いです。自分自身の生活費については信義則上難しい面がありますが、別居直後など生活の立て直しに必要な期間については一部認められた判例もあります。まず弁護士に状況を整理してもらうことをおすすめします。
Q:双方に有責事由がある場合はどうなる?
A:双方に有責事由がある場合、どちらが主たる有責配偶者かの判断が問題になります。責任の程度が同等に近い場合は、一方の有責性を理由にした大幅な減額は認められにくくなります。裁判所は双方の有責の程度を総合的に比較して判断するため、自分側の有責事由の軽重も正確に評価しておく必要があります。
Q:相手の不倫の証拠がない状態でも減額を求められる?
A:有責性を主張するには、それを裏付ける証拠が必要です。証拠がなければ調停や審判で有責性が認定されず、算定表どおりの金額が命じられる可能性が高くなります。不倫を疑っている段階であれば、調停を申し立てる前に弁護士と相談しながら証拠収集を進めることが先決です。
まとめ|有責配偶者と婚姻費用の考え方
有責配偶者と婚姻費用の関係は、立場によって結論がまったく異なります。自分が有責配偶者である場合、自分の生活費分は信義則違反として認められない可能性が高く、認められるとしても子どもの養育費相当分にとどまるのが実務の傾向です。
反対に相手が有責配偶者の場合は、調停・審判で有責性を主張することで算定表より低い金額への減額が認められる余地があります。ただし子どもの養育費相当部分については、有責性にかかわらず支払い義務が続くのが原則です。
また、有責配偶者が婚姻費用を支払い続けることは、将来の離婚請求において相手の経済的苦境を緩和する事情として評価される面もあります。婚姻費用は離婚交渉全体の流れとも密接に絡み合っているため、感情的な判断で止めたり無視したりすることなく、弁護士と連携しながら戦略的に対応することが重要です。
有責配偶者に関する婚姻費用のトラブルは、証拠の有無や責任の程度によって結論が大きく変わります。一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することが最善の対処法です。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。