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【弁護士が解説】離婚の慰謝料、相場は? ケース別で詳しく解説

2024.12.31

「夫(妻)の不倫がわかった」「DVやモラハラを受けている」「生活費を払ってもらえない」──こうした深刻な事態に直面すると、「慰謝料っていくらくらい取れるんだろう?」とお悩みになる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「慰謝料」とはそもそも何なのか、どんな場合に請求できるのか、相場はどのくらいなのか、といったポイントを弁護士の視点からわかりやすく解説します。離婚を考えている方や、慰謝料請求を検討している方の参考になれば幸いです。

慰謝料とは何か、どんな時にもらえるのか

慰謝料とはどういうものか、なぜ支払われるのか

金銭的な補償制度です。

なぜなら、結婚生活において、夫婦には互いを大切にし、誠実に接する義務があるからです。ですから、一方が誠実さを欠く行為によって相手を深く傷つけた場合、その精神的な苦痛を金銭で償う必要が生じるのです。

たとえば、あなたが配偶者の不誠実な行為によって眠れない日々を過ごしたり、精神的なダメージを受けて、心療内科や精神病院への通院が必要になったりした場合、それらの精神的苦痛に対する補償として慰謝料を請求することができます。

このように慰謝料は、あなたが受けた心の傷を認め、癒やすための制度なのです。決して相手を罰するためではなく、あなたの新しい人生のスタートを支える役割を持っているのです。

どんな場合に請求できるのか

慰謝料は、配偶者から重大な精神的苦痛を受けた場合に請求することができます。

重大な場合に限られている理由は、法律上、裁判離婚するためには、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しなければ、離婚することができなくなっているためです。つまり、お互いを思いやり、大切にするべき夫婦関係において、一方が相手の心を深く傷つける行為をした場合、それは法的な補償の対象となるのです。

具体的には、以下のような場合に慰謝料請求が認められます:

  • 配偶者による不倫や浮気が発覚した時
  • 継続的な暴力(肉体的・精神的DV)や暴言に苦しめられた時
  • 正当な理由なく生活費を渡してもらえなかった時
  • 突然、理由もなく家から追い出された時

ただし、大切なのは、単なる性格の不一致や価値観の違いだけでは慰謝料請求は難しいということです。もし、このような辛い経験をされている場合は、一人で悩まず、まずは弁護士に相談することをお勧めします。法律の専門家があなたの状況に合わせて、最適な解決方法を提案してくれるはずです。

慰謝料の一般的な金額の決め方

裁判所はどうやって金額を決めるのか

裁判所は、離婚の慰謝料額を決める際、様々な要素を総合的に判断しています。

というのも、慰謝料は精神的な苦痛に対する補償であり、その痛みの程度は個々の事情によって大きく異なるからです。そのため、裁判所は一つ一つのケースを丁寧に検討していきます。

例えば、精神的苦痛の深刻さ、有責行為(不倫やDVなど)の態様や期間、当事者の社会的地位や収入、謝罪の有無などを考慮します。また、離婚に至るまでの経緯や、その後の生活への影響なども重要な判断材料となります。

これらの要素を慎重に検討した上で、あなたの受けた精神的苦痛に見合った金額が決定されることになります。

離婚の原因による金額の違い

離婚の原因となった行為の種類や程度によって、慰謝料の金額は大きく変わってきます。

それは、それぞれの行為がもたらす精神的苦痛の程度が異なるためです。また、社会的な非難の程度によっても金額は変動します。

具体的には、以下のような目安があります:

  • 不倫・浮気の場合:100万円~300万円程度
  • DVや暴力の場合:100万円~300万円程度
  • 生活費不払いの場合:50万円~200万円程度

ただし、これらはあくまでも一般的な目安であり、個々の事情によって増減することをご理解ください。

結婚期間は金額にどう影響するか

結婚期間の長さは、慰謝料額を決める重要な要素の一つとなっています。

なぜなら、長年連れ添った夫婦関係が破綻する場合、より深い精神的苦痛が生じると考えられるからです。また、婚姻期間中の信頼関係の構築度合いも考慮されます。

たとえば、結婚20年以上の夫婦の場合と、結婚2~3年の夫婦の場合では、同じ不倫であっても慰謝料額に違いが生じることがあります。長期の結婚生活で築いた信頼関係が裏切られた場合、より高額な慰謝料が認められる傾向にあります。

子どもがいる場合の考え方

子どもの存在は、慰謝料額の算定において特に重要な考慮要素となります。

なぜなら、子どもがいる家庭の破綻は、子どもの心理面や生活環境にも大きな影響を与えるからです。また、親としての責任を放棄するような行為は、より重大な問題として扱われます。

例えば、以下のような場合は慰謝料額が増額される可能性があります:

  • 子どもの面前でDVが行われた場合
  • 子どもの養育費を支払わない場合
  • 不倫相手を自宅に連れ込むなど、子どもの心を著しく傷つける行為があった場合

このように、子どもへの影響は慰謝料額を決める上で重要な要素となりますが、これは子どもの福祉を守るという観点からも必要な考慮事項とされています。

具体的な慰謝料の金額例

不倫があった場合の金額

不倫による慰謝料の相場は、おおよそ100万円から300万円の範囲で認められています。

これは、不倫という行為が婚姻関係における最も重大な裏切り行為の一つとされているからです。また、不倫の態様や期間によって、金額は大きく変動します。

例えば、以下のような場合は慰謝料が増額される傾向にあります:

  • 不倫期間が長期に及ぶ場合:+50万円程度
  • 複数の不倫相手がいた場合:+100万円程度
  • 不倫相手との間に子どもができた場合:+100万円以上
  • 自宅に不倫相手を連れ込んでいた場合:+50万円程度

なお、相手方の不倫が発覚した際は、証拠の収集と保全が非常に重要です。慰謝料請求の成否に関わる重要な要素となります。

暴力(DV)があった場合の金額

DVによる慰謝料は、一般的に100万円から300万円程度とされています。

それは、暴力が被害者の心身に深刻な影響を与え、時として生命の危険すらもたらす重大な人権侵害だからです。DVの種類や継続期間、暴力の程度によって金額は変わってきます。

具体的には、以下のような場合で金額が変動します:

  • 身体的暴力が継続的だった場合:100万円~300万円
  • 精神的暴力(モラハラ)が主な場合:50万円~100万円
  • 子どもの前での暴力があった場合:+100万円程度
  • 医師の診断書がある場合:さらに増額

生活費を払ってもらえなかった場合の金額

生活費の不払いによる慰謝料は、通常50万円から200万円程度となっています。

これは、配偶者には生活費を負担する法的義務があり、正当な理由のない不払いは重大な義務違反とされるためです。金額は不払いの期間や程度、家計への影響などによって変わります。

以下のような事情がある場合は、金額が変動する可能性があります:

  • 長期間の完全な不払い:200万円程度
  • 収入があるのに故意に支払わない場合:+50万円程度
  • 生活困窮を招いた場合:+50万円~100万円程度
  • 子どもの養育費も含めて不払いの場合:+100万円程度

ただし、これらの金額はあくまでも一般的な目安です。実際の金額は個々の事情や証拠の有無によって大きく変わることをご理解ください。まずは弁護士に相談し、ご自身のケースに即した適切な金額を検討することをお勧めします。

慰謝料の金額が増えたり減ったりする理由

相手の仕事や年収による違い

慰謝料の金額は、相手の支払能力によって現実的な調整が行われます。

というのも、いくら高額な慰謝料が認められても、相手に支払能力がなければ実際の支払いは難しくなるからです。そのため、相手の職業や収入は重要な考慮要素となります。

たとえば、以下のような目安があります:

  • 年収1000万円以上の場合:基準額の1.2~1.5倍程度
  • 年収500万円程度の場合:基準額どおり
  • 年収300万円以下の場合:基準額の0.5~0.8倍程度
  • 無職の場合:大幅な減額や分割払いの検討

結婚していた年数による違い

婚姻期間は、慰謝料額に大きな影響を与える要素の一つです。

なぜなら、長年の結婚生活で築かれた信頼関係が裏切られた場合、より深い精神的苦痛が生じると考えられるからです。

具体的には、このような傾向があります:

  • 20年以上の結婚:基準額の1.2~1.5倍
  • 10年以上の結婚:基準額どおり
  • 5年未満の結婚:基準額の0.7~0.9倍
  • 1年未満の結婚:基準額の0.5倍程度

相手の行為がどれだけひどかったか

相手の行為の悪質性は、慰謝料額を大きく左右する要因となります。

それは、行為が悪質であればあるほど、受けた精神的苦痛も大きくなるためです。また、社会的な非難可能性も考慮されます。

以下のような事情がある場合、慰謝料は増額される傾向にあります:

  • 不倫が長期間・複数回に及ぶ場合
  • DVが継続的で深刻な場合
  • 意図的な嫌がらせや虐待がある場合
  • SNSでの誹謗中傷を伴う場合
  • 親族や職場を巻き込んだ場合

相手が謝罪しているかどうか

相手の態度、特に謝罪の有無は、慰謝料額に影響を与える重要な要素です。

なぜなら、誠実な謝罪は精神的苦痛の緩和につながる一方、不誠実な態度は更なる苦痛を生む可能性があるからです。

具体的には、以下のような場合で金額が変動します:

  • 真摯な謝罪と反省がある場合:基準額から減額の可能性
  • 謝罪はあるが不十分な場合:基準額どおり
  • 謝罪を拒否する場合:増額の可能性
  • 開き直りや逆ギレがある場合:さらなる増額も

ただし、これらはあくまでも一般的な傾向です。実際の慰謝料額は、これらの要素を総合的に考慮して決定されます。ご自身の状況に応じた適切な判断のためにも、専門家への相談をお勧めします。

慰謝料をもらうまでの流れ

話し合いの進め方のコツ

慰謝料の話し合いは、まず穏やかな話し合いから始めることをお勧めします。

それは、裁判に進むと時間も費用もかかり、さらなる精神的負担が生じる可能性があるためです。また、話し合いで解決できれば、早期に新生活をスタートできる利点もあります。

効果的な話し合いのために、以下のポイントを意識してみましょう:

  • 証拠は事前に十分に収集・整理しておく
  • 感情的にならず、冷静に交渉する
  • 具体的な金額の根拠を示せるようにしておく
  • 必要に応じて弁護士に同席してもらう
  • 合意した内容は必ず書面に残す

一括で払えない場合の分割払いについて

相手が一括での支払いが困難な場合、分割払いが選択肢となります。

しかし、分割払いには支払いが途切れるリスクがあるため、以下のような対策が重要です:

  • 公正証書を作成して法的な強制力を持たせる
  • 毎月の支払額と期間を明確に決める
  • 支払い方法(口座振込など)を具体的に定める
  • 遅延した場合の対応も決めておく
  • 連帯保証人をつけてもらうことも検討する

なお、分割払いの期間は通常3年以内とされることが多く、月々の支払額は相手の収入を考慮して現実的な金額に設定することが大切です。

請求できる期限について

慰謝料請求には法律で定められた期限があります。

これは、法的安定性を確保し、証拠が散逸するのを防ぐためです。期限を過ぎると請求権が消滅してしまうため、注意が必要です。

具体的な期限は以下の通りです:

  • 不法行為を知った時から3年以内
  • 不法行為があった時から20年以内
  • 離婚調停や裁判中は時効が中断される

ですから、慰謝料請求を考えている場合は、できるだけ早めに行動を起こすことをお勧めします。特に証拠の収集は早い段階で始めることが重要です。不安な点がある場合は、弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることで、より確実な請求が可能になります。

まとめ

離婚に関する慰謝料について、重要なポイントをまとめました。

まず、慰謝料とは、配偶者から受けた精神的苦痛を金銭で補償する制度です。不倫やDV、生活費の不払いなど、重大な事由がある場合に請求が認められます。このような制度が設けられているのは、婚姻関係において互いを大切にする義務があるためです。

そして、これらの慰謝料の金額を決定する際には、様々な要素が考慮されます。裁判所は、行為の悪質性、婚姻期間、当事者の収入、子どもの有無などを総合的に判断します。具体的な相場として、不倫では100万円~300万円、DVでは100万円~300万円、生活費不払いでは50万円~200万円程度とされています。ただし、これらの金額はあくまでも一般的な目安であり、個々の事情によって大きく変動することがあります。

また、この基準となる金額は、相手の年収や結婚期間によって増減します。さらに、行為の悪質性や謝罪の有無なども重要な判断材料となります。例えば、高収入の場合や結婚期間が長い場合、行為が特に悪質な場合などは、基準額より増額される傾向にあります。一方で、収入が低い場合や結婚期間が短い場合は、減額されることもあります。

実際の慰謝料請求においては、まず話し合いによる解決を試みることが一般的です。しかし、相手に一括での支払い能力がない場合は分割払いも検討できます。その際は、確実な支払いを確保するため、公正証書の作成など法的な保証を得ることが重要です。なお、慰謝料の請求権には期限があり、不法行為を知ってから3年以内に請求する必要があります。この期限を過ぎると請求権が消滅してしまうため、注意が必要です。

このように慰謝料は、新しい人生をスタートするための重要な支えとなる制度です。ただし、請求の要件や金額の算定は複雑で、専門的な判断が必要となります。そのため、具体的な請求を検討される場合は、早めに弁護士などの専門家に相談し、ご自身の状況に応じた適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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