刑事トラブルの弁護費用を徹底解説!依頼前に知っておきたい料金体系と選び方

日常生活の中で、突発的に刑事手続きへ巻き込まれてしまう可能性は決してゼロではありません。もしも捜査機関から呼び出しを受けたり、逮捕されるような事態になった場合、「弁護士をつけたほうがいいのだろうか」「専門家に依頼するといくらぐらいかかるのだろうか」といった不安が生じるものです。
こうした不安要素の中でも特に気になるのが、やはり報酬に関する部分でしょう。実際に刑事問題を扱う専門家に支払う報酬は、一般の民事事件と比べても複雑になりがちです。また、法律事務所によっては費用形態が異なり、着手金や成果報酬、諸経費など、どの段階でどれだけの支払いが発生するのか分かりにくいのも事実です。
本記事では、刑事のトラブルを専門家に任せる際の大まかな料金体系や、その内訳、依頼をするときに知っておくべきポイントなどを解説します。いざというときに、冷静に弁護士を選ぶための参考としてご覧ください。
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刑事手続きにおける弁護士の役割とは
早期段階での対応が重要
刑事領域で大切なのは「速やかな相談」です。逮捕・勾留されると、外部との連絡が制限されることもあり、自力で状況を打開するのは至難の業となります。また、取り調べの際には、供述内容が後の手続きに大きく影響するため(捜査機関は、逮捕直後すぐに自白を獲得するために、徹底的に取り調べることが多いです。)、初期段階から専門家が適切なアドバイスをすることで、不利な立場に追い込まれにくくなります。
弁護人が果たす主な業務
刑事問題を扱う専門家は、次のような活動を行います。
- 捜査段階での弁護活動: 被疑者の権利を守るために、警察や検察の取り調べに同席・アドバイスを行う
- 勾留の回避・保釈請求: 身柄拘束を緩和するために、交流請求に対する意見書の提出、勾留理由開示請求・勾留決定・勾留延長決定に対する準抗告の申立て・特別抗告の申立てや保釈の申し立てを行う
- 示談交渉: 被害者がいる場合、示談交渉を進めて刑事手続きを有利に進める
- 公判での弁護活動: 法廷で被告人の主張を展開し、証拠・証言などを精査して有利な判決を得ることを目指す
刑事手続きの各段階でどのような方策をとるかは極めて重要です。こうした活動を依頼できるのが、刑事事件に精通した弁護士です。
料金体系の一般的な区分
刑事上の問題に携わる専門家へ支払う報酬は、主に以下のような項目に分けられます。ただし、事務所ごとに呼び名や形態が異なることがあるため、実際の依頼時には必ず事前に確認しましょう。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金(成功報酬)
- 実費・接見日当
以下では、それぞれの概要と相場感を紹介します。
相談料
まずは事件の概略や見通しを聞くために相談を行うことが多いのですが、この際にかかる費用が相談料です。事務所によっては、初回相談は無料にしている場合や、一定時間を無料とするケースもあります。
- 相場の例: 30分ごとに5,000円~1万円程度
- 無料相談: 最近では初回無料相談を実施している事務所が増えつつある
相談の段階で費用感や方針をしっかり確認し、納得のいく説明を受けられるかが重要です。
着手金
正式に刑事手続きを任せることになった際に発生するのが、着手金です。これは、事件の結果にかかわらず発生する「依頼をスタートするための費用」であり、たとえ不起訴獲得や無罪判決といった良い結果が得られなくても、基本的には返金されません。
- 相場の例: 30万円~50万円程度(事案の内容によって上下)
着手金の金額は事件の複雑さや拘束期間の長さ、予想される作業量などによって大きく変わります。また、法定刑が重い事件、メディア等で注目を浴びやすい事件などでは、さらに高額になりやすい傾向があります。
報酬金(成功報酬)
事件が終了したタイミングで、「どの程度の成果が得られたか」に応じて発生するのが報酬金です。たとえば不起訴処分の獲得や執行猶予付き判決など、依頼人にとって有利な結果を得られた場合に支払うことが多いです。
- 相場の例: 30万円~50万円程度、あるいは着手金と同額程度が基準とされることが多い
成果の度合いによっては、金額が変動する仕組みを採用している事務所もあります。示談成立ができたか、量刑をどれだけ軽くできたかなど、客観的な指標を基準に報酬額を算定する場合もあるため、契約時にどのような条件で変動するのかを確認することが重要です。
実費・接見日当
交通費や書類の取り寄せにかかる費用、郵便・通信費などの実費は、別途請求されることが一般的です。また、遠方の裁判所や拘置所へ出張しなければならない場合は、日当が発生することもあります(接見1回につき、1.1万円~5.5万円程度。)。事案によってはかなりの回数の出張が必要になる場合もあるため、事前に「実費はどの程度か」「日当はどんな場合にかかるのか」を聞いておくのがおすすめです。
私選と国選の違いによる費用面の注意点
私選弁護人とは
私選弁護人とは、個人で選んだ法律事務所に依頼して、弁護活動を行ってもらう弁護士のことを指します。自費での依頼となるため、先述した着手金や報酬金などを支払う必要があります。一方で、スケジュール調整や方針のすり合わせなどを自由に行いやすく、自分が信頼できると感じる弁護士に依頼できるのがメリットです。
国選弁護人とは
一方、一定の要件を満たす場合に限り、国家の費用で弁護活動を担う国選弁護人を付けることができます。たとえば逮捕・勾留され、公判請求される可能性があるといった条件を満たす場合、経済的余裕がない人も国選弁護人を利用できます。しかし、国選弁護人は指定された弁護士から選ばれるため、「誰に担当してもらえるか」を自由に決めることはできません。
私選か国選かの選び方
「予算を抑えたい」「できるだけ早く活動を開始してほしい」「実績や得意分野を見極めて選びたい」といった様々な要望があるかと思います。特に、私選であれば逮捕前の段階から介入してもらうことが可能であり、国選弁護人では着手が難しいタイミングであっても依頼できるという利点があります。
自分の状況と、費用面での負担、弁護士の選択肢の広さなどを総合的に考慮し、最適な手段を選ぶことが大切です。
刑事事件を扱う専門家の費用が変動する主な要素
同じように見える事案でも、実際には細かい事情や進め方によってかかる報酬は変わってきます。以下に、費用面で影響を与えやすい要素をまとめました。
罪名・法定刑の重さ
傷害致死と軽微な暴行事件では、当然ながら処罰の重さが異なります。量刑が重い事案ほど、弁護活動が複雑になり、費用も高くなりやすい傾向があります。また、法定刑が重いほど、検察の捜査も厳格になりやすく、弁護士側としては入念な準備が必要となります。
拘束期間と取調べ回数
逮捕・勾留が長期化すれば、面会や保釈請求などで動く回数が増え、日当や実費、弁護士の稼働時間がかさむため、料金が高くなる可能性があります。早期に身柄を解放できるよう動くことは、依頼人の生活上のメリットだけでなく、費用面でもプラスになるケースがあります。
被害者との示談交渉の有無
被害者がいる場合には示談交渉が大きなポイントです。示談が成立すると不起訴や軽い量刑が期待できることが多いため、弁護士としても積極的に動くことが一般的です。しかし、被害者側との連絡を取り合い、交渉を重ねるには手間と時間がかかるため、その分の費用がかさむ可能性もあります。
事務所の方針や弁護士の経験値
事務所ごとに料金設定は異なります。大手の法律事務所や豊富な実績を持つ弁護士の場合、基本的な料金が高めに設定されていることがあります。逆に、比較的若手の弁護士が多い事務所では、低料金を打ち出しているところもありますが、その分実績や経験に不安を覚える方もいるでしょう。一概に「高い=良い」「安い=悪い」とは限りませんが、料金と専門性のバランスを考慮することが大切です。
具体的な料金例と目安
費用は法律事務所や事案の内容によって本当に幅があります。あくまでも目安として、以下に一例を示します。
- 相談料: 30分5,000円~2万5000円
- 着手金: 30万円~50万円(簡易な事件なら20万円台もあり得る)
- 報酬金: 不起訴獲得で30万円~50万円、執行猶予判決獲得で20万円~30万円など
- 実費: 交通費や書類請求代など数千円~数万円
- 日当: 1回の出廷・接見で1.1万円~5.5万円程度
たとえば、痴漢や軽度の暴行など、比較的軽い部類の罪名であっても、示談交渉が難航するケースや被害者が複数いるケースでは、多額の弁護士費用が発生することがあります。反対に、罪名が重くとも早期に事件が解決できたり、求刑が軽減されて短期で終了できたりすれば、それほど費用がかからない場合もあります。
費用面で不安がある場合の対応策
国選弁護人の利用
経済的な理由で私選弁護士を依頼するのが難しい方は、国選弁護人の利用を検討しましょう。一定の収入条件を満たす場合、無料で相談を受けられたり、弁護費用の立て替えをしてもらえたりする制度があります。
分割払いの可否を確認する
多くの法律事務所では、まとめて支払うのが原則とされることが多いですが、相談すれば分割払いに対応してくれるところもあります。特に着手金や報酬金の負担が大きい場合は、分割ができるかどうかを事前に相談してみるとよいでしょう。
複数の事務所で見積もりを取る
費用や相性を比較検討するためにも、一つの事務所だけにこだわるのではなく、複数の事務所に相談して見積もりを出してもらうのがおすすめです。実際に話してみることで、専門家の人柄や対応の早さを確認できるうえ、費用の具体的な内訳や方針の違いも把握できます。
専門家選びのポイント
刑事事件を積極的に扱っているか
まず重要なのは、その弁護士が刑事案件の対応を多く手がけているかどうかです。刑事特有のノウハウや警察・検察対応の経験は、経験値によって大きく左右されます。事務所のウェブサイトや経歴を調べ、刑事領域への注力度を確認しましょう。
料金体系が明確か
費用形態が曖昧なまま依頼してしまうと、後から「こんなに高いとは聞いていなかった」とトラブルになる可能性があります。できるだけ、契約書や見積書などに記載された形で、着手金や報酬金、追加料金の発生条件が明確になっている事務所を選ぶと安心です。
コミュニケーションの取りやすさ
刑事手続きはスピードが命です。依頼後に「連絡が取れない」「折り返しが遅い」といったことが多いと、身柄拘束が長引く原因にもなりかねません。初回相談の段階からレスポンスの速さや説明の分かりやすさをチェックし、信頼できると感じた方に依頼するのが望ましいでしょう。
実際に依頼するまでの流れ
初回相談の予約
電話やネット予約フォームから相談のアポイントを取りましょう。費用面が不安な場合は、初回無料相談を行っている事務所を優先的に検討するのも一つの方法です。相談時には、事件の概要や現在の状況、希望する結果などを整理して伝えるとスムーズです。
見積もりと方針の説明
相談を受けた弁護士は、事件の見通しを大まかに立て、そのうえで着手金や報酬金の概要を提示してくれるはずです。ここで費用や方針に納得できない場合は、無理に契約する必要はありません。複数の事務所を回って検討することをおすすめします。
委任契約の締結
契約の内容(着手金や報酬金の金額、支払い方法、弁護士の活動範囲など)に納得したら、正式に委任契約を結びます。契約書は後のトラブル回避のためにも非常に重要なので、細かい点まで読み込んでおくことが大切です。
弁護活動開始
契約が締結されれば、弁護士は直ちに弁護活動に着手します。捜査段階なら接見や取り調べ対応、公判段階なら証拠の精査や法廷戦略の練り直しなど、多岐にわたる作業が行われます。進捗状況の報告や相談のタイミングもこまめにとって、連携を図るようにしてください。
まとめ
刑事上のトラブルで専門家を依頼する場合の報酬は、一般的に以下のような特徴があります。
- 相談料・着手金・報酬金・実費などの複数項目に分かれる
- 事件の種類や進行状況、示談交渉の有無などにより大きく変動する
- 私選弁護人と国選弁護人では依頼できるタイミングや選択の自由度が異なる
費用については、法律事務所に明確な説明を求めることが大切です。「実際にいくらぐらいになるのか」「成功報酬はどのように計算するのか」「追加でかかりそうな費用はあるか」など、気になる点は納得いくまで質問しましょう。
また、早期に相談を始めることで、拘束期間を短くできたり、不起訴処分や執行猶予などの有利な結果を得やすくなったりする可能性があります。早期対応は費用の抑制にもつながる場合があるため、「まだ大したことになっていないから」と放置せず、違和感を覚えた段階で一度弁護士に相談するのがおすすめです。
最後に、この記事の情報はあくまで一般的な目安となるものであり、実際の費用は各事務所ごとに大きな違いがあります。刑事手続きでの弁護士選びは人生の大きな分岐点となり得る重要な選択です。複数の事務所を比較し、自分の状況にあった専門家を選び、納得のいく報酬体系で依頼することが望ましいでしょう。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
