重く問われる責任──不同意のわいせつ行為で相手に傷害を負わせた場合の法的影響と対応

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想定外の展開が人生を変えてしまうことも
性的な同意がない状態で接触を図る行為に対して、社会はますます厳しい目を向けています。
近年では、単に「触れた」「キスをした」といった行為だけでなく、その過程で相手に精神的・肉体的な苦痛を与えた場合、より重い法的責任が問われるケースが増えています。
とくに問題となるのが、わいせつな行為を試みる中で、被害者に傷や心身の異常を生じさせてしまった場合です。たとえそれが故意でなかったとしても、「結果的に傷害に至った」と判断されれば、極めて重大な犯罪として扱われます。
どのような行為が「傷害」と見なされるのか
法律上の「傷害」は、骨折や出血といった目に見えるケガだけを指しているわけではありません。被害者の身体に何らかの異常が生じたと認められれば、それは「傷害」として認定される可能性があります。
【傷害と判断されうる例】
- 無理やり手を引いて転倒させた結果、打撲や骨折を負わせた
- 嫌がる相手を強引に押し倒し、首や手首に痣が残った
- 強く抱きしめたことで肋骨にひびが入った
- パニック状態に陥り、精神疾患(PTSDなど)を発症させた
このような事案では、「不同意のわいせつ行為」だけでなく、「傷害罪」もあわせて問われるため、刑罰がより重くなる可能性があります。
適用される罪名と法的な重さ
不同意のわいせつ行為そのものは、刑法で処罰の対象となりますが、そこに傷害が加わることで、さらに重い罰則が科されます。
たとえば、刑法第181条には、わいせつ行為により人を傷つけた場合、加重処罰の対象とする旨が記されています。これは暴行や強制性交とは別の条文でありながら、同様に重く見られる内容です。
具体的には、以下のような法的評価がなされます。
- 単なる不同意のわいせつ:懲役1年〜10年(起訴される可能性あり)
- 傷害を伴う場合:懲役6年以上の判決も視野に入る
- 精神的傷害のみでも、医師の診断や証拠次第で有罪認定の可能性あり
とくに加害者が抵抗や拒否の意思を無視し続けたとされる場合は、重大な加重事案として扱われることがあります。
被害者の心身に与える影響は計り知れない
事件が引き起こすのは肉体的ダメージだけではありません。被害者が感じる恐怖、羞恥、怒り、自己否定、社会不信――これらは長期にわたって生活や人格に影を落とします。
「軽く触れただけ」「相手が誤解しただけ」といった加害者側の感覚が、被害者にとっては心を壊すほどの衝撃になることもあります。
傷害と認定される場合、加害者の意図に関わらず、「相手がどれほどの被害を受けたか」が最も重視されます。つまり、「やったこと」よりも、「どう受け止められたか」が判断基準になるのです。
示談や不起訴は可能か?その条件と現実
不同意の行為に加えて傷害が発生している場合でも、示談によって処罰を免れる可能性は残されています。ただし、条件は厳しく、被害者の理解と受け入れが不可欠です。
【示談による不起訴の可能性を高める要素】
- 早期の謝罪と被害者への接触(※必ず代理人を通じて行う)
- 診断書に基づく適正な損害賠償金の提示
- 被害者が処罰を望まない旨の文書(宥恕の意思)
- 明確な再発防止策や誠意の証明
ただし、傷害が伴う事案では、たとえ示談が成立しても、検察が「社会的な悪質性が高い」と判断すれば、起訴されるケースもあります。
どう向き合うべきか──責任と向き合うという姿勢
法的な防御も大切ですが、それ以上に重要なのは、自分の行動がどれだけ他人の心と身体に影響を与えるのかを理解することです。
「やってしまったからには償うしかない」と覚悟を決めることで、裁判所や被害者、社会からの信頼を少しずつ取り戻していくことが可能です。
また、法的な手続きにおいては、早期に対応することが結果を左右します。責任を感じるからこそ、被害者と向き合い、必要な謝罪と補償を行うこと。それこそが、自らの未来を守る第一歩でもあります。
まとめ:軽視できない重大犯罪としての現実
「触れただけのつもりだった」
「暴力は使っていない」
「相手の反応が大げさだと感じた」
こうした認識は、すべて通用しません。不同意の接触に傷害が加わった時点で、事件の性質は一段と重くなります。自分がどう感じたかではなく、相手がどう傷ついたかが問われる――それが、現代の法と社会の考え方です。
一度起きてしまったことをなかったことにはできませんが、そこからどう責任を取っていくかは、当事者の行動次第です。
誠実な対応を通じて、未来の選択肢を広げることはまだ可能です。どうか一人で抱え込まず、早めの対処と対話を選んでください。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
