痴漢事件の示談金はどこまで上がる?気になる金額の“相場”と交渉のポイント

痴漢行為で逮捕されてしまった場合、その後の人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。前科がつけば就職や転職に支障をきたし、社会的信用を失うことにもなりかねません。そのような状況で、多くの方が「示談」による解決を検討されます。
本記事では、痴漢で逮捕された場合の示談の可能性や流れ、弁護士に依頼するメリット、そして示談が成立した場合の見通しなどについて詳しく解説します。
目次 [閉じる]
痴漢で逮捕された場合の流れ
まず、痴漢行為で逮捕された場合の一般的な流れを理解しておきましょう。
1. 現行犯逮捕または通常逮捕
痴漢事件では、現場で被害者や目撃者に指摘されて現行犯逮捕されるケースが多いですが、防犯カメラの映像などから後日特定されて通常逮捕されることもあります。
2. 警察での取調べ(最大72時間)
逮捕後は警察署に連行され、取調べが行われます。この段階で最大72時間の身柄拘束が可能です。
3. 検察官送致(送検)
警察での取調べ後、事件は検察官に送致されます。検察官は最大20日間(10日間の延長あり)の勾留請求が可能です。
4. 起訴または不起訴の決定
検察官は証拠や供述などを基に、起訴するか不起訴にするかを決定します。起訴されれば裁判に進み、不起訴であれば釈放されます。
痴漢事件で示談は可能か
痴漢事件においても、被害者との示談は可能です。むしろ、刑事処分を軽減するためには、示談成立が非常に重要な要素となります。
示談が可能なタイミング
痴漢事件における示談交渉は、以下のタイミングで行うことができます。
- **逮捕前**:被害届が出される前であれば、示談成立により被害届の提出を思いとどまってもらえる可能性があります。
- **逮捕後・勾留中**:逮捕された後でも示談交渉は可能です。ただし、身柄拘束中は本人が直接交渉することができないため、家族や弁護士を通じて行うことになります。
- **起訴前**:検察官が起訴・不起訴を決定する前の段階でも示談交渉は可能です。この段階での示談成立は不起訴処分につながる可能性が高まります。
- **起訴後**:起訴された後でも示談は可能ですが、この段階では刑事処分を完全に回避することは難しくなります。ただし、刑の軽減には効果があります。
逮捕中の示談交渉の特徴
逮捕中の示談交渉には、以下のような特徴があります。
- 本人が直接交渉できないため、家族や弁護士が代理で行う
- 時間的制約が厳しい(特に現行犯逮捕の場合は48時間以内に検察送致される)
- 早期に弁護士に依頼することが重要
- 示談金の準備が急務となる
逮捕後の示談交渉の流れ
痴漢で逮捕された後の示談交渉は、以下のような流れで進みます。
1. 弁護士への相談・依頼
まず、弁護士に相談・依頼することが重要です。逮捕直後から弁護士が介入することで、適切な法的アドバイスを受けられるだけでなく、示談交渉も効果的に進めることができます。
2. 被害者側との連絡
弁護士は被害者または被害者の弁護士と連絡を取り、示談の意向を確認します。この際、加害者側の反省の意思や謝罪の気持ちを伝えることが重要です。
3. 示談条件の交渉
示談金の金額や支払い方法、謝罪の方法などについて交渉を行います。痴漢事件の示談金相場は、行為の態様や被害の程度によって異なりますが、一般的には10万円~50万円程度です。悪質なケースではそれ以上になることもあります。
4. 示談書の作成・締結
条件について合意が得られたら、示談書を作成します。示談書には以下の内容を明記します。
- 当事者(加害者・被害者)の情報
- 事件の概要
- 示談金の金額と支払い方法
- 被害者が刑事告訴しないことの確約(または取り下げ)
- 宥恕文言
- その他の合意事項
5. 示談金の支払い
示談書に基づいて示談金を支払います。支払いの証明として領収書を受け取ることが重要です。
6. 示談成立の報告
示談が成立したら、その旨を警察や検察に報告します。弁護士がいる場合は、弁護士が適切に対応してくれます。
弁護士に依頼するメリット
痴漢事件で逮捕された場合、弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。
1. 迅速な対応が可能
逮捕直後から弁護士が介入することで、時間的制約がある中でも迅速に示談交渉を進めることができます。特に現行犯逮捕の場合は、48時間以内に検察官送致されるため、素早い対応が求められます。
2. 専門的な交渉力
弁護士は法律の専門家として、適切な示談条件を提案し、効果的な交渉を行うことができます。また、被害者側の弁護士とも対等に交渉できるため、有利な条件を引き出せる可能性が高まります。
3. 示談書の適切な作成
法的効力のある示談書を適切に作成することで、将来的なトラブルを防止できます。弁護士は示談書作成の専門家であり、抜け漏れのない文書を作成してくれます。
4. 刑事手続きへの対応
示談成立後も、検察官による処分決定や裁判などの刑事手続きが続く場合があります。弁護士は刑事手続きにも精通しており、不起訴処分や刑の軽減に向けた活動を行います。
5. 精神的サポート
逮捕という非常に精神的に辛い状況の中で、弁護士は法的アドバイスだけでなく、精神的なサポートも提供してくれます。家族も含めて、今後の見通しや対応策について相談できることは大きな安心につながります。
示談成立後の見通し
痴漢事件で示談が成立した場合、その後の見通しはどうなるのでしょうか。
1. 不起訴処分の可能性
示談が成立し、被害者が処罰感情を持っていないことが確認できれば、検察官が不起訴処分(起訴猶予)とする可能性が高まります。特に初犯で、行為の態様が比較的軽微な場合はその可能性が高くなります。
不起訴処分となれば、前科はつきません。ただし、検察庁のデータベースには記録が残るため、再び同様の事件を起こした場合には厳しい処分を受ける可能性があります。
2. 起訴された場合の見通し
示談が成立していても起訴される場合があります。特に以下のようなケースでは起訴される可能性が高まります。
- 常習性が認められる場合
- 行為の態様が悪質な場合
- 社会的影響が大きい場合
- 被害者が未成年者の場合
起訴された場合でも、示談成立は量刑判断において有利に働きます。執行猶予付きの判決となる可能性が高まり、実刑を回避できる可能性があります。
3. 社会的影響
示談が成立し、不起訴処分となった場合でも、職場や学校に事件が知られてしまった場合には、社会的な制裁を受ける可能性があります。会社からの懲戒処分や、学校からの処分などが考えられます。
示談が難しいケース
以下のようなケースでは、示談交渉が難しくなる可能性があります。
1. 被害が重大な場合
痴漢行為の程度が重く、被害者が深刻な精神的ダメージを受けている場合は、示談に応じてもらえない可能性があります。
2. 常習性がある場合
過去に同様の前科・前歴がある場合や、常習性が疑われる場合は、被害者側が示談に応じにくくなります。また、検察も厳しい処分を求める傾向があります。
3. 未成年者が被害者の場合
被害者が未成年者の場合、保護者の感情的な反応や教育的観点から、示談に応じないケースがあります。また、社会的にも厳しい目で見られる傾向があります。
4. 示談交渉が遅れた場合
事件発生から時間が経過し、刑事手続きが進んでしまった場合は、示談が成立しても刑事処分に与える影響が小さくなることがあります。
示談交渉を成功させるポイント
痴漢事件の示談交渉を成功させるためには、以下のポイントに注意しましょう。
1. 早期対応
逮捕されたら、できるだけ早く弁護士に相談し、示談交渉を開始することが重要です。時間が経過するほど、被害者の処罰感情が固まり、示談が難しくなる傾向があります。
2. 誠意ある対応
示談交渉では、加害者側の誠意ある対応が非常に重要です。以下のような点に注意しましょう。
- 真摯な謝罪の姿勢を示す
- 被害者の心情に配慮する
- 言い訳や責任転嫁をしない
- 約束したことは必ず守る
3. 適切な示談金の提示
示談金の金額は、事件の内容や被害の程度によって異なります。弁護士に相談し、適切な金額を提示することが重要です。金額が低すぎると示談が成立しない可能性がありますが、高すぎる場合は経済的負担が大きくなります。
4. 示談書の内容確認
示談書の内容は慎重に確認しましょう。特に以下の点に注意が必要です。
- 示談金の支払い条件が明確か
- 被害者側の義務(告訴しないことなど)が明記されているか
- 将来的な請求権放棄が含まれているか
- 違約条項の有無と内容
まとめ
痴漢で逮捕された場合でも、示談による解決は可能です。示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性が高まり、前科がつくリスクを減らすことができます。
ただし、逮捕後の示談交渉は時間的制約が厳しく、本人が直接交渉することも難しいため、早期に弁護士に依頼することが重要です。弁護士は専門的な知識と経験を活かして、効果的な示談交渉を行い、最善の結果を目指してサポートしてくれます。
オリズル法律事務所では、痴漢事件を含む刑事事件の示談交渉に豊富な経験を持つ弁護士が、丁寧にサポートいたします。逮捕されてしまった場合は、一刻も早くご相談ください。
よくある質問
**Q1: 痴漢で逮捕された場合、いつから示談交渉を始められますか?**
A1: 逮捕直後から示談交渉を始めることができます。ただし、身柄拘束中は本人が直接交渉することができないため、家族や弁護士を通じて行うことになります。早期に弁護士に依頼することで、効果的な交渉が可能になります。
**Q2: 示談金はいくら準備すればよいですか?**
A2: 痴漢事件の示談金相場は10万円~50万円程度ですが、事案の内容や被害の程度によって大きく異なります。悪質なケースでは100万円を超えることもあります。弁護士に相談し、適切な金額を検討することをお勧めします。
**Q3: 示談が成立しても前科はつきますか?**
A3: 示談が成立し、検察官が不起訴処分(起訴猶予)とした場合は前科はつきません。ただし、起訴され有罪判決を受けた場合は、示談が成立していても前科がつきます。示談成立は不起訴処分や執行猶予判決につながる重要な要素です。
**Q4: 示談交渉は自分の家族でもできますか?**
A4: 法律上は家族が示談交渉を行うことも可能ですが、専門的な知識がないと適切な交渉が難しく、かえって状況を悪化させる恐れもあります。特に刑事事件では弁護士に依頼することをお勧めします。
**Q5: 示談が成立しても会社にばれますか?**
A5: 示談自体は当事者間の合意であり、原則として会社に通知されることはありません。ただし、逮捕の事実が報道されたり、長期間会社を休んだりすることで、事件が会社に知られる可能性はあります。会社への対応については、弁護士に相談することをお勧めします。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
