警戒すべきポイントは?盗撮が多発するエスカレーターの実態と対策法

日常生活の中で、自分でも意識しないうちに行動パターンが固定化している場所の一つに「エスカレーター」があります。ショッピングモールや駅など、人が多く行き交う空間で無意識に利用することが多いだけに、最近はこのエスカレーターを狙った盗撮被害の増加が社会問題となっています。
なかでも、スカートや短パンなどを着用している女性や子どもが被害に遭いやすいとされる盗撮は、一度インターネット上に流出すると取り返しのつかないトラブルに発展しかねない重大な犯罪行為です。本記事では、盗撮の手口から法的な取り扱い、被害を避けるための具体策、もし被害に遭った際の対処法まで、包括的に解説します。エスカレーターでの盗撮をひも解きながら、安心して日々を過ごすための情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次 [閉じる]
エスカレーターでの盗撮が増えている背景
スマートフォンの普及と高性能化
スマートフォンが当たり前となった現代社会では、多くの人が高性能カメラを常時携帯しています。動画・静止画の画質が向上しているだけでなく、シャッター音を消すアプリなども存在するため、盗撮のリスクは格段に高まっています。
エスカレーターの構造的な盲点
エスカレーターは階段よりも角度が緩やかなため、下の段から上にいる人を見上げる形になりやすい構造上の特性があります。さらに、乗降客の流れが一定で混雑する場所では、被害者が視線に気づきにくいことも問題です。
混雑と心理的ハードル
駅やショッピングモールでは時間帯によってエスカレーターが非常に混雑し、人との距離が近くなりがち。被害者としては、「誰かが近いけれど、満員だから仕方ないか」と感じてしまい、不審な行動に気づきにくいのです。一方で盗撮を行う側は、「周囲に人が多いほど逆に発覚しにくい」という思考から、あえて混雑時を狙うケースもあります。
盗撮行為の手口:具体的な事例
スマホを手に持ったままの盗撮
最も多いケースが、「スマホを普通に操作しているように装い、そのまま撮影する」手口です。エスカレーターで前の段の人を見上げるようにカメラを向けていても、周囲からはSNSを見ている、メッセージを送っている程度にしか見えず、発覚しにくいのが特徴となっています。
カバンやショッピングバッグに隠したカメラ
小型カメラやスマホをバッグの中に隠し、上方を向けて撮影する手口も多く報告されています。カバンのポケット部分をくり抜くなどしてレンズだけ外に出している巧妙なケースもあり、ぱっと見では気づきにくいのが実情です。
遠隔操作での盗撮
スマホのリモート操作アプリや小型カメラと連動した専用のリモコンなどを使い、自分から少し離れた位置に置いたカメラを遠隔で操作する方法も存在します。撮影者自身はエスカレーターから離れた位置にいても、手元のリモコンやアプリで撮影開始・停止が可能なため、警戒心の薄い場所を狙われることがあります。
盗撮は立派な犯罪! 法的な側面を知る
迷惑防止条例違反
多くの都道府県では、「公衆に対するわいせつな行為」を禁じる迷惑防止条例があり、盗撮行為はこれに違反するとされます。エスカレーターでの盗撮も、条例の適用対象となり、科料や罰金、さらに懲役刑が科される場合もあります。
軽犯罪法や各種法律
迷惑防止条例以外にも、「住居侵入罪」「軽犯罪法」「児童ポルノ禁止法」など、状況によって適用される法令は複数存在します。特に撮影対象が未成年である場合は、より厳しい法律(児童ポルノ禁止法など)が適用される可能性があり、処罰が重くなるケースが多いです。
違法データの拡散リスク
仮に盗撮された画像・動画がインターネット上に拡散されると、被害者が二次被害・三次被害を被るリスクがあります。こうしたデータは一度アップロードされると完全な削除が難しく、深刻なプライバシー侵害となるだけでなく、被害者本人の精神的苦痛を長期間にわたって引き起こします。法的にも名誉毀損やプライバシー侵害として多額の損害賠償が認められる可能性がありますが、拡散防止には迅速な対応が求められます。
被害を未然に防ぐには? 具体的な対策とポイント
エスカレーターを利用する際の注意点
- 自分の後ろにいる人の動向に注意する
極端に近づいてくる場合や、視線を感じる場合は後ろを振り返るなど警戒を示す - 混雑する時間帯は特に警戒
朝夕のラッシュや休日のショッピングモールなど、人が多いほどリスクも高まる
防犯グッズやアプリの活用
- ウエストポーチやバッグでガードする
短いスカートを着用している際は、ウエストポーチやカバンをエスカレーターの後ろ側(下側)に置くことで撮影を阻止できる可能性があります。 - 防犯アラームアプリ
もし怪しい動きを感じたら、スマホアプリの防犯アラームで周囲に知らせるのも一手。大きな音が鳴れば盗撮を躊躇させる効果が期待できます。
周囲の目を活かした牽制
盗撮犯は「誰にも見られていない」「ばれない」と思って犯行に及びます。逆に言えば、周囲の目がある環境や被害者側の警戒心が見える状態では犯行を思いとどまることがあります。少し振り返って相手の顔を見るだけでも牽制になる場合があるので、過度に気を遣いすぎず、堂々とした姿勢を保つことがポイントです。
被害に遭ったときの対処法
その場で声を上げる・周囲に協力を求める
もしエスカレーター上で盗撮行為を確信した場合、可能であれば**「やめてください」「何をしているんですか」**など大きめの声を出し、周囲の注目を集めることで犯人が逃げられない状況を作ることができます。盗撮を疑っただけで声を出すのは抵抗があるかもしれませんが、後になって後悔しないためにも勇気を出すことが大切です。
駅員や商業施設スタッフに連絡
公共交通機関の駅や商業施設内であれば、駅員や警備員、インフォメーションセンターのスタッフに即座に伝えましょう。監視カメラの映像確認や、警備員による現場対応がスムーズに行われる可能性が高まります。万が一、犯人が逃走しても、防犯カメラの映像から特定できるケースもあります。
警察への通報と証拠の確保
盗撮は立派な犯罪行為ですので、可能であればその場で警察に通報してください。盗撮行為をされた際に大切なのは、以下の点を意識して証拠を集めることです。
- 目撃者の連絡先:周囲に協力をお願いして、連絡先や証言を確保する
- 犯人の服装や特徴、身分証の確認:顔や持ち物、車のナンバーなど覚えられる範囲で記録
- ビデオ・写真があれば確保:自分のスマホで可能ならば、相手の様子を撮影したり、周囲の防犯カメラの有無を調べたりしておく
万が一拡散された場合の対処
早期発見が肝心
インターネット上に流出した写真や動画は、拡散スピードが非常に速いのが特徴です。被害者のプライバシーが大きく損なわれる前に、**「そもそも流出していないか」**をいち早く確認する必要があります。
- SNSや動画サイトを定期的にチェック
- 友人や知人にも声をかけて協力を仰ぐ
削除要請と法的措置
もし流出が確認された場合は、速やかにサイト運営会社に削除要請を行います。その際、被害を受けている本人であることを示すために、警察の被害届の受理番号や証拠資料を提出すると対応が早まるケースがあります。並行して、弁護士に相談して法的手続きを取ることも検討しましょう。
メンタルケアと周囲のサポート
拡散が大きな問題になってしまうと、精神的ダメージが非常に大きくなります。不眠や食欲不振、外出恐怖などが出る場合もあるため、カウンセリングや心療内科の受診などをためらわず検討してみてください。家族や友人のサポートも大切です。
盗撮への社会的対策と今後の展望
監視カメラの強化
駅や商業施設では、防犯カメラの増設や高画質化が進み、犯行が発覚しやすい環境が整いつつあります。ただし、撮影データの保存期間が短かったり、死角があったりするため、完全には防げないのが現状です。
迷惑防止条例の改正・強化
一部の自治体では、盗撮に対する罰則の引き上げや、取り締まり対象の拡大など、迷惑防止条例の改正が進んでいます。今後も法整備の強化により、盗撮行為への厳罰化が期待される一方、条例間の差異が課題として残る地域もあります。
テクノロジーによる抑止効果
スマホのカメラ音を無理やり消すアプリや小型カメラの流通に対しては、スマホOSレベルでシャッター音を消せないようにする取り組みや、カメラ使用中にランプが点灯する仕組みなどの実装が進む可能性があります。技術面でのイタチごっこは続くものの、社会全体での「盗撮は断じて許されない」という認識が広がるほど、こうした防止策も効果を上げやすくなるでしょう。
まとめ:エスカレーターでの盗撮被害を防ぐためにできること
本記事では、エスカレーターでの盗撮というキーワードを軸に、現代社会で増えつつある盗撮の手口や法的責任、対策方法について解説しました。エスカレーターは日常生活で避けて通れない便利な移動手段ですが、油断すると盗撮の標的になりやすい環境でもあります。
- 盗撮は犯罪:迷惑防止条例違反や軽犯罪法、さらに児童ポルノ禁止法など、状況によって厳しい罰則が適用される
- 混雑時や構造的特徴を悪用するケースが多い:特に下から上を狙う手口に注意
- 被害を防ぐには警戒心が重要:後ろの人の様子に気を配る、バッグやウエストポーチでガードするなどの工夫
- 万が一の際は声を上げて周囲に協力を仰ぐ:駅員や警備員に即座に通報し、証拠を確保する
- 流出が発生したらサイト削除要請・警察相談・弁護士対応を:早期発見・迅速対処が二次被害を最小限にする鍵
自分自身が被害者にならないようにするのはもちろん、身近な人が不安を感じていたら、適切なアドバイスやサポートをすることも大切です。盗撮は被害者の生活を深刻に損ないうる卑劣な行為であり、決して軽視するべきではありません。社会全体で注意喚起を続け、一人ひとりが防犯意識を高めていくことが、盗撮被害を減らす最良の道となるでしょう。
あなたの安心・安全な日常を守るため、今一度エスカレーターでの盗撮のリスクを意識し、防犯対策をしっかりと行ってください。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
