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亡くなった人の借金は時効になる?知っておきたい相続の基礎知識と具体的な対処法

2025.06.20 弁護士コラム


家族や親族が亡くなった後、「借金の返済義務を相続することはあるの?」「時効が成立する場合はどうなるの?」といった疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。実際に借金を残して亡くなった人がいる場合、その負債はどう処理されるのか、さらに時効にまつわるルールはどうなっているのか――知っておくことで、スムーズな対応が可能になります。

本記事では、亡くなった方が残した借金や負債に対する相続の基本ルールから、いわゆる「消滅時効」の考え方、さらに相続放棄・限定承認といった手続きまで、包括的に解説していきます。知らずに放置すると不利な状況に陥る場合もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次 [閉じる]

亡くなった人が残した借金はどうなるのか

遺産には「プラス」と「マイナス」の両面がある

相続では、亡くなった方(被相続人)の持っていたプラスの財産(預貯金・不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金・未払金など)も含めて承継することになります。つまり、借金も遺産の一部として相続人に引き継がれる点に注意が必要です。

法定相続人に負債が引き継がれる

民法上、被相続人に子どもがいる場合や親がいる場合、配偶者がいる場合などで相続人の範囲や順位が定められています。これら法定相続人が、遺産と同時に負債を相続する仕組みになっているため、亡くなった方が抱えていた借金がある場合は法定相続人が返済義務を負う形となります。

相続放棄や限定承認の選択肢

相続では「単純承認」という形でプラスもマイナスもすべて引き継ぐのが原則ですが、以下のような制度も用意されています。

  • 相続放棄:プラスの財産も含めて一切の相続を放棄することで、借金を引き継がなくなる
  • 限定承認:相続によって得たプラスの財産を超える負債については責任を負わない

相続放棄や限定承認の手続きには、原則として相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で申述する必要があります。

借金にも時効が存在する?消滅時効の基本

消滅時効とは

借金などの債権(誰かにお金を貸したり、返してもらう権利)が一定期間行使されない場合、その権利が消滅してしまう制度を「消滅時効」と呼びます。これは「長期間放置されている権利を永遠に主張されると社会生活に混乱が生じるため、一定期間が過ぎたら権利を消滅させよう」という法的な考え方に基づいています。

時効期間の目安

一言で「借金」といっても種類や契約形態はさまざまです。一般的には、個人間の金銭消費貸借契約では5年の時効が適用され、商事債権(会社同士の取引など)は5年または民法改正により一律5年となりました(2020年4月1日以降)。ただし、利息制限法や商行為に該当するかどうかで細かな差があるため、実際には契約内容を確認する必要があります。

亡くなった人の借金における時効の考え方

「亡くなった人の借金」が時効の対象になるかどうかは、基本的には借金の種別・契約内容などに左右されます。相続人が借金を承継した場合、その返済義務は相続開始とともに引き継がれますが、債権者(お金を貸した側)が一定期間請求をしないなどの状況が続けば、時効が完成する可能性があります。

亡くなった人が残した借金に時効が成立する条件

時効の中断・更新に注意

時効は一定期間経過すると成立しますが、以下のような行為によって一時的にリセット(中断・更新)されることがあります。

  • 借金の一部を返済する、または利息を払う
  • 債権者への承認行為(借金を認める内容の書面にサインする、口頭で返済を約束するなど)
  • 裁判上の請求や差押え

もし相続人が「相続開始後に利息の一部を支払った」という場合は、そこから改めて時効期間が計算されるため、成立が先延ばしになる可能性が高いです。

相続人が支払い義務を認めると要注意

相続人が誤って「遺産を受け継ぐから借金も支払います」といった内容を安易に発言すると、時効の中断要件に該当する可能性があります。また、返済計画書などに署名・捺印してしまうと、借金を承認したものと見なされるケースもあるので、慎重な判断が必要です。

時効成立までに債権者が請求するパターン

時効完成が近づくと、債権者(金融機関や貸金業者)は請求を行い、中断手続きを図るケースがよく見られます。相続人に対し内容証明郵便で請求書が届いたり、裁判を起こされたりすることもあるため、無視せずにきちんと対応を検討しましょう。

相続人としてとるべき対応策

ここまで、「亡くなった人が残した借金には時効が適用される場合がある」ことを解説しました。しかし、時効を待つだけではリスクも伴います。実際に相続人としてどのような行動をとるべきか、具体的に見ていきましょう。

まずは借金の有無と総額を調査

借金の存在を知ったら、できるだけ早く下記のような手段で情報を集めましょう。

  • 通帳や家計簿、カード明細の確認
  • クレジット会社や金融機関への問い合わせ
  • 信用情報機関への照会(CICなど)

どれくらいの借金があるのか正確に把握しないまま放置すると、思わぬ金額の請求が後から発覚し、対応が遅れる原因になります。

相続放棄・限定承認の検討

もし多額の借金があると分かった場合、相続放棄や限定承認を検討するのが安全策となり得ます。

  • 相続放棄:一切の遺産を相続しない代わりに、借金の返済義務からも免れる
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を弁済する

これらの手続きには3か月以内という期限があるため、見逃さないよう注意しましょう。

示談や分割交渉を行う

借金がそこまで大きくなく、自分や他の相続人が支払える範囲であれば、分割交渉や利息のカットを相談することも考えられます。特に消費者金融などの場合、利息制限法に基づいた再計算が認められるケースや、返済計画の見直しに応じてもらえるケースもあります。

専門家に相談する

借金問題は法的知識が必要な場面が多いため、弁護士や司法書士といった専門家に早めに相談するのがおすすめです。状況に応じて最適な対応策を提案してくれるほか、債権者とのやり取りを代行してくれる場合もあるため、煩雑な手続きから解放されるメリットがあります。

よくある疑問Q&A

Q1:亡くなった人の借金を知らずに放置していたら、いきなり請求が来ました。もう時効は使えないのでしょうか?

A:まずは請求内容や契約内容、最後の返済日などを確認する必要があります。時効がまだ成立していない場合、改めて債権者からの請求で時効が更新されることもあります。ただし、そもそも数年どころか10年以上経っている場合など、条件によっては時効が認められる可能性も。専門家と相談のうえ、主張できるかどうかを検討してみましょう。

Q2:相続放棄をすれば、亡くなった人の借金の請求は一切来なくなりますか?

A:相続放棄が家庭裁判所で正式に認められれば、相続人ではなくなりますので、借金の返済義務は基本的に負いません。ただし、手続きが完了するまでは請求が届くこともあります。完了後も債権者が事実を知らずに請求してくるケースはあるため、その際には相続放棄の証明書などを提示して対応する必要があります。

Q3:限定承認を選択した場合、亡くなった人の借金はどこまで支払えばいいのでしょうか?

A:限定承認をした場合、相続によって得たプラスの財産額を超える借金については支払う義務がなくなります。たとえば、不動産や預貯金が総額500万円で、借金が700万円あったとしても、500万円相当分のみで清算すれば、それ以上の返済を求められることはありません。

Q4:すでに何年も音沙汰がなく、借金の存在すら忘れていました。これは時効が成立していると考えていいのでしょうか?

A:長期間(数年~数十年)何も連絡がなかったとしても、ある日突然債権者が請求してくる可能性は否定できません。時効が完成している可能性はあるものの、相手がどのタイミングで請求してくるか分からない以上、現段階で「絶対に時効が成立している」とは言い切れません。請求がきたときに時効の援用(時効を主張すること)を行うことが必要となります。

6.実際に時効を主張する「時効の援用」とは

6-1.「時効の援用」の手続き

法律上、時効は期間が経過しただけでは自動的に成立するわけではなく、「時効を主張します(援用します)」と意思表示する行為が必要です。具体的には、内容証明郵便で「時効が完成しているので、返済義務はない」旨を通知します。

6-2.弁護士・司法書士への依頼が安心

時効の援用は法的書面の作成が伴うため、弁護士や司法書士に依頼するのが一般的です。誤った表現や証拠不足で相手方が反論し、裁判となってしまうと余計に手間や費用がかかるケースもあります。専門家に依頼すれば、書面の作成や債権者との交渉もスムーズに進むでしょう。

6-3.時効成立後に返済してしまうとどうなる?

仮に時効が成立していたにもかかわらず、知らずに一部を支払ってしまうと「承認行為」とみなされ、時効がリセットされる可能性があります。時効かどうか微妙な場合に相手から催促があっても、安易に支払わず専門家のアドバイスを受けることが大切です。

7.まとめ:正しい知識でトラブルを回避する

亡くなった人が抱えていた借金は、相続の場面で相続人に大きな負担をもたらすことがあります。しかし、負債も含めた相続の仕組みや「消滅時効」の考え方を知っておけば、不要な返済義務を負わずに済む可能性もあります。

  • 相続はプラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぐ
  • 負債が大きい場合は相続放棄・限定承認も検討(3か月以内)
  • 亡くなった人の借金にも時効が成立する場合がある
  • ただし請求や承認行為で時効が中断・更新される点に注意
  • 時効を主張するには「時効の援用」が必要

これらのポイントをしっかり理解しておくことで、冷静かつ的確な対応が取れるようになるでしょう。もし借金の有無や金額が曖昧な場合は、早急に調査を行うことが重要です。そして法的な手続きについては、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、よりリスクを抑えた対処が期待できます。

相続や借金問題は、感情的なトラブルにも発展しがちです。家族や親族同士で話し合い、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、スムーズな解決を目指しましょう。大切な人が残した負債で、後々まで苦しまないためにも、正しい知識を身につけておくことが何よりも大切です。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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