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離婚時の住宅ローンと養育費の相殺は認められる?法的な考え方と実務上の対処法を徹底解説

2026.02.17 弁護士コラム

離婚する際、夫婦で購入した自宅に子どもと元配偶者が住み続け、自分が住宅ローンを払い続けるというケースは少なくありません。このような状況で「住宅ローンを払っているのだから、養育費は減額されるべきでは」「ローン支払いを養育費と相殺できないのか」という疑問を持つ方は非常に多くいます。

住宅ローンの支払いは、月々数万円から十万円以上になることもあり、養育費と合わせると大きな経済的負担となります。特に、自分は賃貸住宅に住んで家賃を払いながら、元の自宅のローンも負担し、さらに養育費も支払うという状況は、義務者にとって非常に厳しいものです。

一方で、養育費を受け取る側からすれば、住宅ローンは財産分与の問題であり、養育費とは別の問題だという主張もあります。「ローンを払ってもらっているから養育費はいらない」という合意をしたものの、後になって「やはり養育費も必要だ」と考え直すケースもあります。

この記事では、住宅ローンと養育費の関係について、法律上どのように考えられているのか、実務上はどのように扱われているのか、相殺が認められるケースと認められないケース、そして離婚時にどのような取り決めをしておくべきかまで、詳しく解説していきます。住宅ローンを抱えながら離婚を考えている方、すでに離婚してローン負担に悩んでいる方に、特に役立つ内容となっています。

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住宅ローンと養育費の法的な性質の違い

まず、住宅ローンの支払いと養育費が法律上どのように位置づけられているのかを理解することが重要です。

養育費の法的性質

養育費は、親が子どもに対して負う「生活保持義務」に基づいて支払われるものです。生活保持義務とは、自分の生活を保持するのと同じレベルで、相手の生活も保持する義務のことで、非常に重い義務とされています。

養育費は、親が離婚しても消えることのない、子どもの権利です。親の都合や経済状況によって、一方的に放棄したり減額したりできるものではありません。裁判所も、養育費は子どもの生活と成長に直結する重要なものとして、厳格に扱っています。

また、養育費は「将来に向かって継続的に発生する債務」です。毎月定期的に支払われるものであり、過去に遡って免除されたり、将来分を一括で相殺したりすることは、原則として認められていません。

住宅ローンの法的性質

一方、住宅ローンは、夫婦が共同生活のために購入した不動産に関する債務です。法律上、これは「財産分与」の問題として扱われます。

財産分与とは、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分けることです。住宅という資産がある一方で、住宅ローンという負債もあり、これらをどのように分担するかは、離婚時の財産分与の一環として決められます。

重要なのは、財産分与は「夫婦間の問題」であり、子どもとは直接関係がないという点です。住宅ローンは夫婦の共同債務または夫婦の一方の債務であり、子どもに対する義務ではありません。

また、財産分与は「離婚時に一度確定する問題」です。養育費のように将来に向かって継続するものではなく、離婚時に「この不動産と債務はこのように分ける」と決めれば、基本的にはそれで完結します。

なぜ相殺が原則として認められないのか

このように、養育費と住宅ローンは、法律上まったく異なる性質のものです。養育費は「子どもに対する義務」であり、住宅ローンは「夫婦間の財産分与の問題」です。

したがって、法律の原則としては、住宅ローンの支払いを理由に養育費を減額したり、相殺したりすることは認められません。住宅ローンを払っているかどうかに関わらず、親は子どもに対して養育費を支払う義務を負うのです。

ただし、これはあくまで法律上の原則論です。実務上は、住宅ローンの支払いが義務者の経済状況に与える影響を考慮して、一定の調整が行われることもあります。この点については、後の章で詳しく解説します。

当事者の合意による例外

法律上の原則は上記の通りですが、当事者間で合意すれば、住宅ローンの支払いを養育費の一部とみなすことも可能です。

例えば、「住宅ローン月5万円を支払うことで、養育費月8万円のうち5万円を代替する。残り3万円を現金で支払う」というような合意をすることは、法律上禁止されていません。

ただし、このような合意をする場合は、必ず書面に残し、できれば公正証書にしておくことが重要です。口頭だけの約束では、後から「そんな合意はしていない」「養育費は別に払うべきだ」と争いになるリスクがあります。

また、子どもが不利益を受けるような極端な合意(例えば「住宅ローンを払うから養育費はゼロ」など)は、後から無効とされる可能性もあります。あくまで、子どもの生活に必要な養育費が確保されることが前提です。

実務上の住宅ローン負担の考慮

法律上は別物とされる住宅ローンと養育費ですが、実務ではどのように扱われているのでしょうか。

養育費算定表における住宅ローンの扱い

養育費を計算する際に広く使われている「養育費算定表」では、住宅ローンの支払いは基本的に考慮されていません。算定表は、義務者と権利者の年収、子どもの人数と年齢のみを基準に、養育費を算出します。

算定表の考え方では、住宅費(家賃や住宅ローン)は、すでに標準的生活費の中に織り込まれています。つまり、「一定の収入がある人は、その収入に応じた住居費を負担している」という前提で計算されているのです。

したがって、「住宅ローンを払っているから特別に養育費を減額する」という考え方は、算定表の枠組みには含まれていません。自分が住んでいる家のローンを払うのは当然のことであり、それを理由に養育費が減るわけではないのです。

ただし、これはあくまで「自分が住んでいる家」のローンの場合です。自分は住んでいない、元配偶者と子どもが住んでいる家のローンを払っている場合は、状況が異なります。

元配偶者が住む家のローンを払っている場合

離婚後、元配偶者と子どもが元の自宅に住み続け、自分は別の場所で賃貸住宅を借りて生活しながら、元の自宅のローンを払い続けているというケースがあります。この場合、義務者は「自分の家賃+元の家のローン」という二重の住居費負担を強いられることになります。

このような状況では、家庭裁判所の調停や審判において、住宅ローンの負担を一定程度考慮することがあります。ただし、自動的に養育費が減額されるわけではなく、以下のような要素を総合的に判断します。

考慮される要素:

  • 住宅ローンの月額がいくらか
  • 義務者の収入に対するローン負担の割合
  • 義務者が現在支払っている家賃の金額
  • 住宅の名義と所有関係
  • 離婚時の財産分与でどのように取り決めたか
  • 権利者が住宅に住むことによる経済的利益

例えば、義務者が月収30万円で、元の家のローン月8万円、自分の家賃月5万円を払っている場合、合計13万円の住居費は明らかに過大な負担です。このような場合、養育費を算定表の金額より減額することが検討されます。

調整の具体的な方法

住宅ローンの負担を考慮する場合、どのような調整方法があるのでしょうか。実務上、いくつかのアプローチがあります。

方法1:住宅ローン支払いを養育費の一部とみなす 住宅ローンの支払いを、養育費の一部として位置づける方法です。例えば、算定表では月8万円の養育費となるところ、住宅ローン月5万円を支払うことで、現金での養育費を月5万円に減額する、といった調整です。

この方法では、「住宅ローン支払い+現金の養育費=算定表の金額程度」となるよう調整します。子どもが受けるべき養育費の総額は確保しつつ、義務者の負担方法を変更する形です。

方法2:住宅ローンを住居費として考慮して養育費を算定 権利者と子どもは、住宅ローンを義務者が払ってくれることで、実質的に住居費がゼロまたは低額になっています。この利益を考慮して、養育費を減額する方法です。

例えば、通常なら家賃月6万円相当の住宅に住んでいる場合、その分を養育費から差し引くという考え方です。ただし、この方法は、住宅の所有権が最終的に誰のものになるかによって、調整額が変わります。

方法3:期間限定での調整 住宅ローンの支払いが完了するまで、または子どもが一定の年齢に達するまでなど、期間を限定して養育費を減額する方法です。

例えば、「住宅ローン完済まではローン月5万円+現金月3万円とし、完済後は現金月8万円とする」といった取り決めです。これにより、長期的には適正な養育費が確保されます。

調整が認められにくいケース

逆に、住宅ローンの負担があっても、養育費の減額が認められにくいケースもあります。

ケース1:住宅が将来的に義務者のものになる 離婚時の財産分与で、「当面は元配偶者が住むが、将来的には義務者が所有権を取得する」と決めた場合、住宅ローンは義務者自身の資産形成のための支出です。この場合、養育費の減額理由とは認められにくいでしょう。

ケース2:住宅ローンが高額すぎる 義務者の収入に対して明らかに過大な住宅ローンを抱えている場合、「そもそもそのような住宅を購入したこと自体が問題」と判断されることがあります。自己責任の範囲として、養育費の減額は認められないこともあります。

ケース3:他に減額事由がない 住宅ローンの負担以外に減額の理由がなく、義務者の収入が十分にある場合は、減額は認められにくくなります。算定表の養育費は最低限の金額とされているため、それを下回ることには慎重です。

ケース4:権利者の収入が極めて低い 権利者がほとんど収入がなく、養育費なしでは子どもの生活が成り立たない場合、住宅ローンの負担があっても、養育費の減額は認められにくくなります。子どもの福祉が最優先されるためです。

離婚時の住宅ローンに関する取り決め方

住宅ローンをめぐるトラブルを防ぐには、離婚時にしっかりとした取り決めをしておくことが最も重要です。

住宅を売却する選択肢

最もシンプルで、後々のトラブルが少ないのは、離婚時に住宅を売却してしまう方法です。売却代金でローンを完済し、残った金額を財産分与として分けます。

住宅を売却すれば、「誰がローンを払うか」「養育費との関係はどうするか」といった複雑な問題が一切なくなります。お互いに新しい生活をスタートできるという意味でも、メリットがあります。

ただし、売却にはいくつかの問題もあります。まず、オーバーローン(ローン残高が住宅の売却価格を上回る状態)の場合、売却できても借金が残ります。この残債をどのように分担するかが、新たな争点になります。

また、子どもの生活環境を考えると、転校や友人関係の変化を避けたいという理由で、売却を選択できないこともあります。特に、子どもが受験を控えている、学校に馴染んでいるといった場合、住み続けることを優先することがあります。

権利者が住み続ける場合の取り決め

権利者と子どもが住宅に住み続ける場合、以下の点を明確に取り決めておく必要があります。

所有権の帰属 住宅の所有権が誰のものになるのかを明確にします。選択肢としては、①義務者が所有権を保持する、②権利者に所有権を移転する、③子どもが成人するまで共有とし、その後に改めて決める、などがあります。

所有権を権利者に移転する場合、贈与税や不動産取得税などの税金が発生することがあります。また、離婚に伴う財産分与としての移転であれば、一定の範囲で税金が免除されることもあります。税理士や司法書士に相談することをおすすめします。

住宅ローンの支払い者 誰が住宅ローンを支払うのかを明確にします。義務者が支払い続ける場合が多いですが、権利者が支払う、または双方で分担するという選択肢もあります。

義務者が支払い続ける場合、「いつまで支払うのか」も重要です。ローン完済まで、子どもが成人するまで、子どもが独立するまでなど、明確な期限を設定します。

住宅ローンと養育費の関係 住宅ローンの支払いを養育費とどのように関連づけるかを明確にします。「住宅ローンとは別に、養育費月○万円を支払う」とするのか、「住宅ローン月○万円の支払いをもって、養育費月○万円のうち○万円に代える」とするのかを、具体的に記載します。

曖昧な表現は避け、「住宅ローン月額7万円を支払うことをもって、養育費月額10万円のうち5万円に代え、残り5万円を現金で毎月末日に支払う」というように、誰が見ても分かる表現にします。

売却や賃貸に関する取り決め 将来的に住宅を売却する場合、または賃貸に出す場合の扱いも決めておきます。売却代金の分配方法、賃貸収入の分配方法、売却や賃貸を決定する際の手続きなどを明記します。

例えば、「子どもが成人した時点で住宅を売却し、売却代金は折半する」「権利者が別の場所に転居する場合は、住宅を賃貸に出し、賃料収入からローン返済を行い、残額があれば折半する」といった取り決めです。

義務者が住み続ける場合の取り決め

逆に、義務者が住宅に住み続け、権利者と子どもが転居するケースもあります。この場合は比較的シンプルで、義務者が住宅ローンを払い続け、それとは別に養育費を支払うことになります。

ただし、この場合でも、住宅の所有権をどうするかは決めておく必要があります。婚姻中に夫婦で購入した住宅であれば、財産分与として、権利者にも一定の持分があると考えられるためです。

選択肢としては、①義務者が権利者の持分を買い取る、②権利者が持分を放棄する代わりに、他の財産や金銭で調整する、③共有のまま残し、将来売却時に精算する、などがあります。

連帯保証や連帯債務の処理

住宅ローンを夫婦で連帯保証または連帯債務としている場合、離婚後もその関係は続きます。これは大きなリスクです。

例えば、夫が住宅に住み続けてローンを払う約束だったのに、支払いが滞った場合、連帯保証人である妻に銀行から請求が来ます。離婚しても、法律上の保証債務は消えないのです。

理想的なのは、離婚時に連帯保証や連帯債務を解消することです。銀行と交渉して、住宅に住み続ける側の単独債務に変更してもらいます。ただし、銀行は簡単には応じてくれないことが多く、収入や担保の状況によっては、変更が認められないこともあります。

銀行が応じてくれない場合、せめて離婚協議書や公正証書に、「元配偶者が支払いを怠り、自分が代わりに支払った場合は、その全額を元配偶者に請求できる」という条項を入れておくべきです。これにより、少なくとも元配偶者に対しては求償権を行使できます。

公正証書での明確化

住宅ローンと養育費に関する取り決めは、必ず公正証書にしておくことを強くおすすめします。公正証書には強制執行力があり、約束が守られなかった場合の対処がスムーズです。

公正証書には、以下の内容を具体的に記載します。

  • 住宅の所有権の帰属
  • 誰が住み続けるか
  • 住宅ローンを誰が支払うか、月額はいくらか
  • 住宅ローンと養育費の関係(相殺するか、別に支払うか)
  • 養育費の金額と支払方法
  • 固定資産税や修繕費の負担者
  • 将来の売却や賃貸に関する取り決め
  • 支払いが滞った場合の措置

これらを曖昧にせず、具体的に、誰が見ても同じ解釈になるように記載することが重要です。

すでに離婚している場合の対処方法

離婚時にしっかりした取り決めをしていなかった、または状況が変わって当初の取り決めでは対応できなくなった場合の対処方法を解説します。

住宅ローン負担を理由とした養育費減額請求

離婚後、住宅ローンと養育費の二重負担が苦しくなった場合、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることができます。

調停では、以下の点を主張します。

  • 現在の自分の収入と支出の状況
  • 住宅ローンの月額と残債
  • 自分の現在の住居費(家賃など)
  • 住宅ローン負担による経済的圧迫の実態
  • 元配偶者が住宅に住むことによる経済的利益

ただし、前述の通り、住宅ローンの負担があるからといって、必ず減額が認められるわけではありません。自分の収入、元配偶者の収入、子どもの年齢や必要性などを総合的に判断して、減額の可否と程度が決まります。

調停では、客観的な証拠が重要です。給与明細、源泉徴収票、住宅ローンの返済予定表、家賃の契約書、現在の家計簿などを準備しましょう。

住宅を売却したい場合

離婚後、「やはり住宅を売却したい」と考えることもあります。住宅ローンの負担が重すぎる、住宅の資産価値が上がって売却のチャンスだ、などの理由からです。

住宅の所有権が自分にある場合、法律上は自分の判断で売却できます。ただし、元配偶者と子どもが住んでいる場合、一方的に売却することは、実質的に困難です。強制的に立ち退きを求めることは、特に子どもがいる場合、裁判所も慎重に判断します。

現実的には、元配偶者と話し合い、売却に同意してもらう必要があります。売却のメリット(ローン負担からの解放、売却益の分配など)を説明し、新しい住居への移転費用を負担するなど、条件を提示することで、合意を得られることもあります。

元配偶者が頑なに拒否する場合、家庭裁判所に調停を申し立てる方法もあります。「財産分与に関する調停」として、住宅の処分方法を改めて協議することができます。

住宅ローンを払いたくない・払えない場合

経済状況の悪化などで、住宅ローンを払い続けることが困難になった場合、どうすればよいでしょうか。

まず、銀行に相談することが重要です。返済条件の変更(返済期間の延長、一時的な返済額の減額など)に応じてくれることもあります。黙って滞納するより、早めに相談する方が、選択肢が広がります。

次に、元配偶者と話し合い、住宅ローンの負担方法を見直すことも検討します。元配偶者が一部または全部を負担する、住宅を売却する、元配偶者が住宅ローンを引き継ぐ(債務者変更)などの方法があります。

ただし、元配偶者に収入がない、またはローンを引き継ぐ能力がない場合、現実的な解決策は限られます。最終的には、住宅の任意売却や競売という選択肢もありますが、これは信用情報に大きな影響を与えるため、最後の手段です。

重要なのは、住宅ローンの支払いを止めても、養育費の支払義務は別に存在するという点です。「住宅ローンが払えないから養育費も払わない」という理屈は通りません。養育費は子どもの権利であり、最優先で確保する必要があります。

元配偶者が勝手に住宅を売却・賃貸しようとする場合

逆に、自分がローンを払っているにもかかわらず、住宅に住んでいる元配偶者が勝手に住宅を売却しようとする、または賃貸に出そうとするケースもあります。

住宅の所有権が自分にある場合、元配偶者は法律上、住宅を売却する権限はありません。仮に売却契約を結んでも、所有者の同意なしには有効になりません。

ただし、住宅が共有名義の場合は複雑です。共有者の一方は、自分の持分だけを売却することは可能ですが、住宅全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です。

元配偶者が勝手に住宅を処分しようとしている場合、まずは内容証明郵便で「同意しない」という意思を明確に伝えます。それでも進めようとする場合は、弁護士に相談し、処分禁止の仮処分を申し立てるなどの法的措置を検討します。

トラブルを防ぐための実践的アドバイス

住宅ローンと養育費をめぐるトラブルを防ぐための、具体的な方法をお伝えします。

離婚前に専門家に相談する

住宅ローンが残っている状態での離婚は、法律的にも税務的にも複雑です。離婚を決意したら、できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、住宅の処分方法、養育費との関係、財産分与の方法などについて、法律的なアドバイスが得られます。また、離婚協議書や公正証書の作成もサポートしてもらえます。

税理士に相談すれば、住宅を売却した場合の譲渡所得税、不動産を財産分与した場合の贈与税や不動産取得税などについて、アドバイスが得られます。税金の問題を考慮せずに財産分与を決めると、後で予想外の税金が発生することもあります。

司法書士に相談すれば、不動産の名義変更、抵当権の設定や抹消などの手続きについて、サポートが得られます。特に、住宅ローンが残っている不動産の名義変更は、銀行の承諾が必要など、複雑な手続きになります。

ファイナンシャルプランナーに相談すれば、離婚後の生活設計、住宅ローンと養育費を含めた家計のシミュレーションなどについて、アドバイスが得られます。「この条件で離婚したら、自分の生活は成り立つか」を客観的に判断できます。

感情ではなく経済合理性で判断する

離婚時は感情的になりやすく、「絶対にこの家は渡さない」「相手に一円も払いたくない」といった思いから、非合理的な選択をしてしまうことがあります。

しかし、住宅ローンと養育費の問題は、感情ではなく、経済合理性で判断すべきです。自分の収入、支出、将来の生活設計を冷静に見つめ、本当に持続可能な選択をすることが重要です。

例えば、「思い出の詰まった家だから手放したくない」という理由で住宅ローンを払い続けることを選んでも、実際には自分は住んでおらず、家賃とローンの二重負担で生活が破綻する、というケースもあります。

逆に、「早く離婚したいから、細かいことは後で決めればいい」と住宅ローンの問題を先送りにすると、後々大きなトラブルの種になります。離婚を急ぐあまり、重要な取り決めを疎かにしないことが大切です。

定期的な見直しの機会を設ける

離婚時に決めた条件が、将来も適切であり続けるとは限りません。収入の変化、子どもの成長、住宅ローンの完済、住宅の資産価値の変動など、様々な事情が変わります。

そこで、離婚協議書や公正証書に、「一定期間ごとに見直す」という条項を入れておくことが有効です。例えば、「3年ごとに、住宅ローンと養育費の関係を見直し、必要に応じて変更する」といった取り決めです。

また、「子どもが中学校に進学した時点で見直す」「住宅ローンが完済した時点で養育費を再協議する」など、具体的なタイミングを設定しておくこともできます。

ただし、「見直す」という条項だけでは、一方が不利な変更を強要されるリスクもあります。「見直しは双方の合意によってのみ行う」「見直しで合意に至らない場合は、従前の条件を継続する」といった補足も入れておくべきです。

子どもの利益を最優先に考える

最も重要なのは、すべての決定において、子どもの利益を最優先に考えることです。住宅ローンと養育費の問題も、「子どもにとって何が最善か」という視点で判断すべきです。

子どもにとっては、住み慣れた家で安定した生活を送ることが望ましいこともあります。一方で、親の経済的困窮によって養育費が適切に支払われない状況は、子どもの生活に直接影響します。

「この家に住み続けることが子どもにとって本当に必要か」「養育費を確実に確保するためには、住宅を売却した方が良いのではないか」といった判断を、子ども中心に考えることが大切です。

また、子どもがある程度の年齢(中学生以上など)であれば、子ども自身の意見も聞くべきです。「この家に住み続けたいか」「引っ越しても大丈夫か」といった、子どもの気持ちを尊重することも重要です。

記録を残す習慣

住宅ローンの支払い、養育費の支払い、住宅に関するやり取りなど、すべて記録に残す習慣をつけましょう。後々トラブルになった時、記録が重要な証拠になります。

住宅ローンの支払い記録は、銀行の明細書やインターネットバンキングの画面をこまめに保存します。「これだけ支払っている」という客観的な証拠になります。

養育費の支払い記録も同様です。振込明細、領収書、メールやLINEでのやり取りなど、すべて保管しておきます。

住宅の維持管理に関する支出(固定資産税、修繕費、保険料など)も記録します。これらを自分が負担している場合、財産分与や養育費の調整の際に考慮される材料になります。

元配偶者とのやり取りも、メールやLINEで行い、記録が残るようにします。口頭だけのやり取りは、後から「言った」「言わない」の争いになりやすいため、避けるべきです。

まとめ

離婚時の住宅ローンと養育費の相殺は、法律上の原則としては認められません。養育費は子どもに対する義務であり、住宅ローンは夫婦間の財産分与の問題として、別々に扱われるのが基本です。

ただし、実務上は、義務者が元配偶者の住む家のローンを払いながら、自分も別の住居費を負担している場合など、過度な負担があると認められれば、一定の調整が行われることがあります。住宅ローンの支払いを養育費の一部とみなす、または養育費を減額するといった方法です。

最も重要なのは、離婚時に住宅ローンと養育費の関係を明確に取り決めておくことです。「住宅ローンとは別に養育費を払う」のか、「住宅ローンの支払いを養育費の一部とみなす」のか、具体的に書面に残し、できれば公正証書にしておくべきです。

すでに離婚している場合でも、住宅ローンの負担が過大であれば、養育費減額調停を申し立てることができます。ただし、必ず減額が認められるわけではなく、双方の経済状況や子どもの利益を総合的に考慮して判断されます。

住宅ローンと養育費の問題は複雑ですが、専門家のサポートを受けながら、子どもの利益を最優先に、経済合理性のある判断をすることが大切です。この記事が、住宅ローンを抱えて離婚を考えている方、すでに離婚してローン負担に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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