【現役弁護士が徹底解説!】債務整理時の退職金の取り扱いとは?
債務整理(任意整理、自己破産、個人再生)において、退職金は重要な財産として扱われます。しかし、その取り扱いは、債務整理の方法によって異なります。
今回、現役弁護士が、債務整理における退職金の取り扱いについて、わかりやすく解説します。
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債務整理時の退職金の取り扱いについて
債務整理は、個人が抱える多額の借金を整理し、返済を円滑にする手続きのことです。
債務整理を行う際には、各種資産や収入の取り扱いが重要となりますが、その中で退職金の扱いも注目されるポイントです。
退職金は、多くの方にとって将来への糧となる大切な資産です。しかし、債務整理の手続きにおいては、退職金も財産として取り扱われるため、注意が必要です。債務整理を行う際には、退職金の金額や受け取り時期によって返済計画が変わってきます。
債務整理における退職金の取り扱いは、法律に沿った適正な手続きが求められます。例えば、退職金の一部を取り崩して返済に充てることも考えられますが、その際には適切なアドバイスを受けることが重要です。弁護士や専門家の助言を仰ぎながら、最善の方法で退職金を活用し、借金問題を解決していきましょう。
退職金は将来への備えとして大切な資産ですが、債務整理の過程で適切に取り扱うことが借金問題の解決につながります。債務整理時の退職金の取り扱いについて正しく理解し、専門家のサポートを受けながら適切な対応をしていくことが重要です。
債務整理と退職金:知っておくべきポイント
債務整理の種類と退職金の取り扱い
債務整理の種類によって、退職金の取り扱いは大きく異なります。
自己破産
自己破産の場合、退職金は、原則として退職金額に8分の1を掛け算した金額が20万円を超える場合(退職金額は、160万円を超える場合)には、破産財団に組み込まれ、債権者に分配されます。ただし、破産者が退職金が間近であるなどの事情がある場合には、組み込まれる金額は、退職金額の4分の1となったりすることもあります。
ただし、退職金が確定拠出年金形式(401K)や中小企業退職金共済制度に基づく場合には、前者は確定拠出年金法第32条1項により、後者は、中小企業退職共済法第20条により、差押禁止債権とされており、差押禁止債権については、自由財産となります(破産法第34条3項2号)。
個人再生
個人再生の場合、退職金は原則として再生計画に基づいて扱われます。
- 再生計画で定めた割合で返済に充てる
- 一定額を生活資金として確保する
任意整理
任意整理の場合、退職金は債権者との合意によって扱われます。
- 債権者に退職金を渡す
- 退職金を返済に充てない
退職金の範囲:何が含まれるのか?
退職金とは、会社を退職する際に支払われる金銭を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。
- 退職慰謝金
- iDeCo
- 確定拠出年金
- 雇用保険の解雇手当
- 中小企業退職金共済制度に基づく退職金
<注意点>
- 退職金の一部が差し押さえられる場合もあります(例えば、公務員に支払われる退職金など。)。
- 退職金の種類によっては、債務整理の対象とならない場合もあります。
債務整理における退職金の注意点
債務整理において、退職金に関する注意点は以下の通りです。
- 退職金は高額な財産であるため、債権者から狙われやすい
- 退職金が差し押さえられると、将来の生活資金が不足する可能性がある
- 退職金の取り扱いは、債務整理の種類によって異なる
- 退職金に関する情報は、早めに弁護士に相談することが重要
なぜ弁護士への相談が重要なのか?
債務整理における退職金の取り扱いは、複雑であり、個々の事案によって異なる場合があります。
退職金に関する不安や疑問がある場合は、必ず弁護士に相談しましょう。弁護士は、個々の事案に応じて、最善のアドバイスをすることができます。
弁護士に相談することで得られるメリット
- 退職金の取り扱いについて、専門的なアドバイスを受けることができる
- 自分の状況に合った債務整理の方法を選択することができる
- 債権者との交渉を弁護士に任せることができる
- 安心して債務整理を進めることができる
債務整理を検討している方は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
退職金を守るための具体的な対策
債務整理において、退職金を守るためには、いくつかの具体的な対策があります。
信託口座の開設
信託口座とは、弁護士などの第三者が管理する口座です。退職金を受領したら、すぐに信託口座に移し、債権者に渡らないようにします。
信託口座のメリット
- 債権者から退職金を差し押さえられるのを防ぐことができる
- 弁護士が退職金を受領し、計画的に返済を進めることができる
信託口座のデメリット
- 信託報酬がかかる場合がある
- 手続きが煩雑である
会社との調整
会社によっては、退職金を受領する前に、債権者に直接支払う手続きを認めている場合があります。
会社との調整のメリット
- 信託口座の開設や弁護士への報酬支払いの必要がない
- 手続きが簡便である
会社との調整のデメリット
- 会社の同意が必要である
- すべての会社で認められているわけではない
その他の対策
- 退職金の分割払い
- 債権者と交渉して、退職金を分割払いにしてもらう
- 退職金の早期受給
- 会社の制度によっては、早期に退職金を受給できる場合があります。
- iDeCoや確定給付年金の加入
- 差押禁止とされているiDeCoや確定給付年金に加入する
まとめ
債務整理時の退職金の取り扱いについて、現役弁護士が詳しく解説しました。退職金は債務整理において重要な財産であり、その処遇は債務整理の方法によって異なります。一般的に、退職金の8分の7は差押禁止債権として手元に残され、残りの8分の1が処分の対象となります(20〇万円を超える場合に限る。)。ただし、実際の取り扱いは受け取り時期や金額によって変わることもあります。
個人再生や自己破産の場合、退職金は債務の弁済に一部組み込まれることが一般的です。任意整理の場合も同様に考えられます。したがって、債務整理を行う際には、退職金の取り扱いについて正確な情報を知り、適切な判断をすることが重要です。
退職金の取り扱いは法的な規定や個々の状況によって異なるため、専門家の助言を受けることも有益です。債務整理を通じて再出発を図る際には、退職金を含めた資産の取り扱いを慎重に検討し、将来に向けた計画を立てることが重要です。債務整理を成功させ、健全な財務状況を築くためには、適切な知識とアドバイスを活用して、冷静な判断を行うことが不可欠です。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について