盗撮被害の示談金はどのくらい?相場や交渉のポイントを徹底解説

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盗撮行為とは何か
盗撮の定義
「盗撮」とは、被写体となる人の意図しない・許可のない状態で、その人物の姿や身体を撮影・録画する行為を指します。公共の場所や商業施設、学校、さらには個人の自宅など、様々な場所で起こりうる犯罪です。特にスマートフォンや小型カメラなどの普及に伴い、近年は盗撮による被害件数が増加傾向にあると言われています。
犯罪としての重み
盗撮は被害者のプライバシーを深刻に侵害するだけでなく、精神的苦痛を与え、社会生活に大きな支障を来す恐れがあります。そのため、多くの地域で「迷惑防止条例」や「刑法」の適用により処罰の対象となります。罰金刑だけでなく、場合によっては懲役刑が科されることもあるほどの重い犯罪です。
盗撮行為に適用される法律
迷惑防止条例
日本の各都道府県には、公共の場や他者のプライバシーを侵害する行為に対して適用される「迷惑防止条例」が存在します。盗撮行為は、多くの場合この条例違反として検挙されるケースが一般的です。条例の具体的な規定や罰則は都道府県によって異なりますが、初犯でも罰金や懲役が課される可能性があります。
刑法(わいせつ物頒布等罪や住居侵入罪など)
盗撮場所や盗撮内容によっては、刑法が適用される場合もあります。たとえば、住居や更衣室、トイレなど本来プライバシーが強く保護される空間での盗撮は、住居侵入罪や建造物侵入罪などに該当する可能性があります。また、撮影した動画や写真を第三者に譲渡・販売したり、インターネット上にアップロードした場合はわいせつ物頒布等罪に問われることもあります。
民事責任(不法行為)
盗撮行為は刑事処罰の対象であると同時に、不法行為として被害者に精神的苦痛を与えたとして民事上の損害賠償責任が生じることもあります。この賠償責任の一つの形が「示談金」として具現化されることが多いのです。
示談の目的と必要性
示談とは
示談とは、当事者間で話し合いを行い、損害賠償の金額や条件などについて合意を取り付けることを指します。盗撮事件においては、加害者側が被害者に対して示談金を支払うことで合意し、被害者の被る精神的苦痛やその他の損失に対して賠償する形を取ることが一般的です。
示談のメリット
- 被害者側: 精神的苦痛に対する賠償が金銭的に補償される。また、刑事事件での手続きによる精神的な負担を軽減できることがある。
- 加害者側: 示談が成立すると、刑事処分が軽減される可能性が高まる。前科を回避できるケースもあるため、社会的信用を維持できる可能性が残る。
示談が不成立の場合
示談が不成立の場合、被害者は加害者に対して刑事告訴を継続・強化し、加害者は起訴されてしまう可能性が高まります。そうなった場合、罰金刑や懲役刑だけでなく、社会的地位や職場の地位を失うなど大きな代償を払うことにもなり得ます。
盗撮 示談金 相場について
ここで多くの方が気になるのが、いわゆる「盗撮 示談金 相場」です。示談金額はケースバイケースで変動し、被害状況や加害者の経済力、被害者が受けた精神的苦痛の度合いなど、様々な要素が考慮されます。そのため、一概に「平均は○○円」と言い切ることは困難です。しかし、一般的に以下のような要因が示談金の増減に影響を与えます。
- 被害者の年齢や職業、社会的立場
- 盗撮の手口や期間、撮影部位の悪質性
- 流出・拡散の有無
- 加害者の反省の度合い・再発防止策
- 加害者の支払い能力
一般的には軽微な盗撮事案でも、数十万円以上の示談金が提示されるケースが多く、悪質な事案では100万円以上の高額示談に至ることもあります。また、複数回にわたる盗撮や長期間の犯行、被害者が未成年の場合などは示談金が大幅に跳ね上がる傾向があります。
示談交渉の進め方と注意点
加害者側からのアプローチ
被害者に連絡を取る際は、感情的な言動を避け、誠実に謝罪と示談の意向を伝えることが重要です。示談交渉をスムーズに進めるため、弁護士を通じて行うのが望ましいケースも多いでしょう。
被害者側の対応
被害者は「加害者からの直接連絡を受けたくない」という場合が少なくありません。そのような場合も、弁護士を介することで精神的負担を和らげられます。示談金を受け取るかどうかはあくまで被害者の自由意思であり、納得いく条件でなければ合意しないという選択肢もあります。
交渉の注意点
- 証拠の確保: 盗撮の事実を示す証拠(写真、動画、監視カメラ映像、スマートフォンの履歴など)は示談交渉において非常に重要。
- 期限の確認: 示談交渉の期限や、もし示談に応じなかった場合の刑事手続きの流れを把握しておく。
- 弁護士費用: 示談交渉を弁護士に依頼する場合、費用がかかることを理解した上で進める。
示談金支払いの流れ
示談書の作成
示談が成立したら、示談金額や支払い方法、今後の対応(謝罪文や再発防止策など)について明文化した「示談書」を作成します。示談書の内容には以下が含まれることが一般的です。
- 示談金の金額と支払期日
- 支払い方法(現金、振込など)
- 支払いに関する違約金の取り決め
- 今後の訴えの取下げや処罰感情の放棄
示談金の支払い
示談金の支払いは、一括で行う場合が多いですが、場合によっては分割払いが認められることもあります。ただし、分割払いを希望する場合は、被害者の同意を得る必要があります。支払いが滞った場合、示談自体が破談になる可能性もあるため注意が必要です。
示談完了後の流れ
示談金を支払った後、示談書に基づき被害者が刑事告訴を取り下げる、あるいは捜査機関に示談が成立した旨を伝えることで、加害者は刑事処分の減免を期待できます。ただし、最終的に起訴・不起訴を判断するのは検察官であり、示談が絶対に不起訴につながるわけではない点は理解しておく必要があります。
盗撮事案における事例と金額
ここでは、盗撮 示談金 相場をイメージしやすくするために、あくまで一般的な例として参考になる事例をいくつか挙げます。ただし、個別の事情によって金額や条件は大きく変わるため、これらはあくまで目安としてご覧ください。
- 公共施設での軽微な盗撮(初犯・身元明確)
- 示談金の目安: 30~50万円程度
- 被害者への謝罪と反省文の提出が条件となることが多い。
- トイレや更衣室などプライバシーの侵害が大きい場所(複数回・悪質)
- 示談金の目安: 50~100万円以上
- 録画データの消去と今後の拡散防止策を明記する必要がある。
- 被害者が未成年、または盗撮データを拡散した場合
- 示談金の目安: 100万円以上に跳ね上がるケースが多い
- 大きな精神的苦痛を与えたとして、より高額の示談金を要求される可能性が高い。
弁護士に相談するメリット
専門的な知識と経験
盗撮事件の示談においては、法的知識や交渉スキルが求められます。弁護士は専門的な知識と豊富な経験を活かして、加害者・被害者の双方の利益を最大限に守るよう尽力します。
精神的負担の軽減
被害者は、加害者との直接やり取りを避けられるため、精神的負担が軽減されます。加害者側としても、適正な示談金の提示や交渉が行われることで、話し合いがスムーズに進むメリットがあります。
迅速な問題解決
感情的に対立したまま交渉を進めると、示談が長引き、結果的に裁判に発展する可能性もあります。弁護士を通じて冷静かつ迅速な解決を目指すことで、時間とコストを抑えることができます。
示談が成立しない場合のリスク
刑事手続きの進行
示談が成立しない場合、被害者が刑事告訴を取り下げる可能性は低くなり、最終的には起訴に至るおそれがあります。そうなれば、前科がついたり罰金刑や懲役刑が科されたりするリスクが高まります。
社会的信用の喪失
盗撮事件は世間の関心が高い犯罪であり、実名報道されるリスクもゼロではありません。特に、勤務先や所属団体に事件が伝わると、解雇や退学、業務停止など、社会生活に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
精神的負担の増大
被害者にとっては、示談がまとまらず刑事裁判に進めば、裁判所での証言や証拠提出など、さらに精神的な負担がのしかかります。加害者側も裁判手続きにかかる費用や時間、そして不安に苛まれることになるでしょう。
まとめ
盗撮行為は被害者のプライバシーや尊厳を大きく傷つける重大な犯罪であり、刑事処分だけでなく、民事上の損害賠償責任も問われます。示談による解決を目指す場合、加害者・被害者の双方にとってメリットもありますが、そのためには冷静かつ適切な手続きが必要です。
特に「盗撮 示談金 相場」については、被害状況の悪質性や撮影された内容、さらに被害者の年齢や社会的立場など多くの要因によって大きく変動します。軽微な事案でも数十万円、悪質な事案では100万円を超えることも珍しくありません。示談交渉ではお互いの立場を尊重しつつ、法的な観点も押さえながら合意を探ることが重要です。
示談が成立すると、被害者は金銭的な補償を受けられ、加害者は刑事処分の軽減や早期解決の可能性が高まります。しかし、不成立に終われば刑事手続きが継続し、社会的信用の喪失や精神的負担などさらなるリスクが生じます。したがって、盗撮行為が発覚した場合には、できるだけ早く専門家(弁護士)に相談し、適切な対処法を模索することを強くおすすめします。
本記事で紹介した内容はあくまで一般論であり、個別の状況によって示談金や手続きは変化します。もし盗撮事件に関与してしまった、あるいは被害に遭った場合は、早めに法律の専門家へ相談し、最適なアドバイスとサポートを受けるようにしましょう。示談は双方にとって大きな決断となりますが、適切な手続きを踏むことで、可能な限り迅速かつ円満な解決を図ることができます。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
