離婚調停で慰謝料はどう決まる?相場・流れ・必要な準備を徹底解説

離婚を考えるとき、「慰謝料はどのくらいもらえるのか」「裁判まで行かずに調停で解決できるのか」といった疑問を持つ方は多いでしょう。
実際、日本での離婚の多くは裁判まで進まず、調停という手続きで解決しています。特に慰謝料については、調停での話し合いで決まるケースが少なくありません。
本記事では、「離婚調停 慰謝料」をテーマに、相場の目安から調停の流れ、必要な証拠や準備について詳しく解説します。
目次 [閉じる]
離婚調停とは?
離婚調停の仕組み
離婚調停は、家庭裁判所で行われる「夫婦の話し合いの場」です。調停委員という第三者が間に入り、双方の意見を聞きながら合意点を探っていきます。
離婚届を出す前に行うこともあれば、すでに協議離婚がうまくいかず調停に持ち込まれることもあります。
調停と裁判の違い
裁判は判決によって白黒をつける手続きですが、調停はあくまで「合意形成」が目的です。したがって、裁判より柔軟に条件を話し合える一方で、証拠や法的根拠がなければ相手を納得させることは難しいという側面もあります。
調停で慰謝料が請求できるケース
調停で慰謝料が認められるのは、相手に明確な責任がある場合です。典型的には以下のようなケースが対象になります。
- 不倫(不貞行為):配偶者が第三者と肉体関係を持っていた場合。
- 暴力や虐待:身体的暴力や過度な精神的虐待がある場合。
- 悪意の遺棄:生活費を渡さない、家庭を顧みないなど。
- モラルハラスメント:長期的な人格否定や支配による精神的苦痛。
これらはすべて「婚姻関係を壊した原因が相手にある」と立証できることが前提です。
調停での慰謝料相場
離婚調停で決まる慰謝料の金額は、ケースごとに異なります。一般的には 50万円から300万円程度 の範囲に収まることが多いですが、内容によっては500万円を超えることもあります。調停での慰謝料額は「法律的な判断」ではなく「双方の合意」を重視するため、裁判に比べて金額が低めで落ち着く傾向があります。
不倫が原因の場合
配偶者の不貞行為による離婚は、慰謝料請求の中でも最も多いケースです。調停での相場は 100万〜300万円前後 が目安です。
ただし、不倫の期間が数年に及んだ場合や、複数の相手と関係を持っていた場合は、悪質性が高いと判断されて金額が上乗せされることがあります。逆に、証拠が乏しい場合や肉体関係が立証できない場合には、金額が低くなる、あるいは認められないケースもあります。
暴力や虐待が原因の場合
身体的な暴力や深刻な精神的虐待は、被害の程度に応じて金額が大きく変わります。殴打による怪我、入院、長期の通院が必要となった場合には、調停でも 200万〜500万円程度 が認められることがあります。
一方で、暴言や威圧的な態度が中心で、医師の診断書がない場合には、慰謝料は低めに設定されることが多いです。調停委員に納得してもらうには、客観的な資料をそろえることが非常に重要です。
モラハラや精神的虐待の場合
モラハラは目に見える証拠が少ないため、金額の幅が大きいのが特徴です。相場は 50万〜300万円程度 とされますが、録音や日記、精神科の診断書があれば200万円以上が認められるケースもあります。
逆に「性格の不一致」とみなされると慰謝料は認められないこともあり、証拠の有無で大きな差が出やすい領域です。
裁判との違い
調停と裁判では、慰謝料の決まり方に違いがあります。裁判では判決として法的判断が下されるため、証拠が揃っていれば高額慰謝料が認められる可能性もあります。しかし調停では、あくまでも話し合いで「双方が納得できる金額」を探るため、法的に請求できる額より低くなることが多いのです。
例えば、裁判なら300万円が認められる可能性がある事案でも、調停では200万円程度で合意するケースは珍しくありません。この点を理解しておくことが、現実的な期待値を持つために大切です。
慰謝料額を左右する要素
慰謝料の金額は一律ではなく、複数の要素によって変動します。
- 婚姻期間の長さ:結婚生活が長いほど増額の傾向。
- 被害の深刻度:暴力や不倫の期間、回数、内容によって大きく変わる。
- 子どもの有無:養育に与える影響が考慮される。
- 証拠の有無:証拠が豊富で具体的であれば金額は上がりやすい。
これらの要素を総合して、調停委員が「妥当な落としどころ」を探ります。
慰謝料請求に必要な証拠
調停は話し合いの場とはいえ、感情的な主張だけでは相手を説得できません。具体的な証拠が不可欠です。
- 不倫の証拠:ラブホテルの出入り写真、LINEやメールの記録。
- 暴力の証拠:診断書、怪我の写真、警察への相談記録。
- モラハラの証拠:暴言を録音した音声、日記、チャットの履歴。
- 生活実態の証拠:生活費を渡していない記録、銀行口座の明細。
証拠が多ければ多いほど、相手が反論しにくくなり、調停を有利に進められます。
調停の流れ
調停は次のようなステップで進みます。
- 申立て
家庭裁判所に調停を申し立てます。申立書には慰謝料請求の理由や希望額を記載します。 - 期日の指定
裁判所から期日が指定され、月1回程度のペースで調停が開かれます。 - 個別の聴取
調停委員が交互に当事者の意見を聞き、状況を整理します。相手と直接顔を合わせなくても進められるため、精神的負担が軽減されます。 - 合意形成
双方が合意すれば、調停調書が作成されます。調書には法的効力があり、支払いが滞れば強制執行も可能です。 - 不成立の場合
合意できなければ、審判や裁判に移行することになります。
8. 調停のメリットとデメリット
調停を利用するメリットは、裁判よりも柔軟で迅速に解決できる点です。直接相手とやり取りせずに済むため、精神的負担も軽減されます。また、費用も裁判より少なくて済みます。
一方で、デメリットもあります。裁判のように判決で白黒がつくわけではないため、証拠が十分でも相場より低い金額で落ち着いてしまうこともあります。調停委員が中立的な立場で調整するため、思い通りの結果にならないこともあるのです。
弁護士に依頼するべきか?
調停は本人だけでも進められますが、弁護士をつけることで大きなメリットがあります。
- 適正な慰謝料額を見極められる
- 証拠を整理し、効果的に主張できる
- 相手や調停委員への交渉がスムーズになる
- 精神的な負担を大幅に減らせる
特に高額な慰謝料を請求したい場合や、相手が強く抵抗している場合は、弁護士を代理人に立てることを強くおすすめします。
まとめ
離婚調停での慰謝料は、裁判よりもスピーディーに解決できる反面、相場の範囲内でまとまりやすい傾向があります。金額を左右するのは証拠の有無、婚姻期間、被害の程度といった具体的な事情です。
調停を有利に進めるためには、早めに証拠を集め、戦略的に準備を整えることが不可欠です。必要に応じて弁護士を活用し、自分にとって最も納得できる解決を目指しましょう。

この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
