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有利に離婚調停を進めたい!事前準備と戦略で結論を引き寄せる方法

2025.06.07 弁護士コラム

はじめに

夫婦関係が破綻し、離婚を検討せざるを得ない状況になった場合、裁判ではなく家庭裁判所での「調停」という手続きによって離婚を成立させるケースは少なくありません。しかし、「調停を申し立てれば自動的に相手が譲歩してくれるわけではない」「実際にどんな話し合いが行われるのかわからず不安」といった声が多いのも事実です。

本記事では、離婚を真剣に考える方が、家庭裁判所の調停手続きを通じて少しでも自分に有利な条件を勝ち取るためにはどうすればよいのか、具体的なポイントを解説していきます。いわゆる「離婚調停で勝つには」という視点で、調停の流れや準備すべき資料、当日に押さえておきたい交渉のコツなどを幅広くカバーします。離婚という人生の大きな選択において、ぜひ参考にしてください。

離婚調停とは? 基礎知識を押さえよう

調停離婚の概要

離婚には大きく分けて「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。もっとも一般的なのは話し合いだけで合意に至る協議離婚ですが、夫婦間の合意が得られない場合や話し合いが難航している場合は、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを進める調停離婚へと進むことがよくあります。

調停では、夫婦双方の意見を聞きつつ、調停委員が間に入って妥協点を探りながら合意を目指します。もし調停で折り合いがつかず不成立となった場合は、裁判に進むことが可能です。

調停で話し合う主なテーマ

調停では以下のような項目について協議します。

  • 親権・監護権:子どもがいる場合、どちらが親権を持つのか
  • 養育費:子どもの生活費や教育費をどのように負担するか
  • 財産分与:婚姻期間中に形成した財産やローンなどの分配
  • 慰謝料:不貞行為や悪意の遺棄など、離婚原因を作った側の負担
  • 年金分割:厚生年金等の保険料納付実績をどのように分割するか

これらの項目をめぐって意見が対立することは珍しくありません。とくに親権や養育費、慰謝料などは感情面も大きく絡むため、冷静な話し合いができるよう十分に準備が必要です。

調停委員とは?

調停の場には、裁判官1名と、一般から選ばれた調停委員2名(男女1名ずつが多い)が同席します。調停委員は法律や心理学、福祉などに一定の知見を持つ人から選ばれ、夫婦それぞれの話を交互に聞きながら、落としどころを探っていきます。
自分の主張をまっすぐに伝えるのも大切ですが、調停委員に対して感情的になりすぎると逆効果になることがあります。冷静かつ的確に主張・証拠を提示する姿勢が望まれます。

離婚調停を有利に進めるために重要な事前準備

必要な資料・証拠を整理する

離婚調停で自分の主張を裏付けるためには、客観的な証拠や資料が欠かせません。たとえば、以下のようなものをしっかり用意しておくと、調停の場で説得力が高まります。

  • 不貞行為を裏付ける証拠(写真・SNS・ホテルの領収書など)
  • DVやモラハラを示す記録(診断書・録音データ・メールやLINEのやり取りなど)
  • 財産に関する書類(給与明細、預貯金通帳のコピー、不動産登記簿謄本、ローンの返済明細など)
  • 子どもに関する書類(学費や習い事の費用がわかる資料)

慰謝料や財産分与の金額交渉をする際は、相手に収入を過小申告されないように、給与明細や源泉徴収票を要求するなどの手続きをしておくのも手です。

弁護士への相談を検討する

離婚調停では法的知識が必要になる場面も多々あります。とくに以下のようなケースでは、弁護士に相談しておくと安心です。

  • 相手が不倫やDVをしていた:慰謝料や親権の取り扱いなど複雑になりがち
  • 財産分与の規模が大きい:不動産や株式、事業の資産などが絡む場合
  • 相手が弁護士を立てている:法的知識の差で不利に立たされないため

弁護士費用は安くはありませんが、相手との交渉をすべて任せられるメリットは大きいです。また、事前に30分〜1時間の法律相談を受け付けている弁護士事務所も多いので、まずは相談だけでも検討してみるとよいでしょう。

自分の希望条件を具体的にまとめる

感情のままに「絶対に親権は渡したくない」「慰謝料をたくさん取りたい」と主張しても、調停委員を説得するのは難しいです。むしろ、具体的で現実的なラインを示した方が調停を有利に進めやすくなります。
「養育費は月○万円を希望し、その内訳は子どもの学費や習い事の費用がこれくらい必要だから」など、数値と理由を整理して示しましょう。財産分与についても、夫婦共同の名義や貯金額をリスト化して、自分がどの程度の取り分を求めたいのかを明確にしておくと交渉しやすくなります。

離婚調停が始まってからの流れと対策

第一回目の調停

調停申立書が受理されると、家庭裁判所から第1回調停の日程が指定され、当事者双方に呼出状が送付されます。第1回目の調停では、調停委員が大まかな事情を確認し、論点を整理することが主な目的です。

  • ポイント
    • 初回の印象は重要。丁寧な口調と落ち着いた態度で臨む
    • 調停委員に対して、自分の結論ばかりを押し付けるのではなく、「なぜその結論が妥当なのか」を説明する
    • 相手の主張も冷静に聞き、争点を明確化しておく

複数回にわたる交渉

通常、離婚調停は1回で終わることは少なく、数回にわたって行われます。各回の間隔はおよそ1か月程度が多いですが、家庭裁判所のスケジュールや当事者の状況によって異なります。交渉の過程で、相手が新しい証拠や提案を出してくる場合もあるので、柔軟に対応できるよう日頃から情報収集を続けましょう。

  • ポイント
    • 調停ごとに、前回の内容をよく振り返り、相手の主張や態度の変化を記録しておく
    • 新たな事実が判明した場合は、できるだけ早く調停委員に伝え、書面や証拠を用意しておく
    • 感情に任せず、あくまで論理的に話を進める(ただし、必要に応じて相手の違法性や非道徳性を主張することは重要)

合意に至ったら調停調書が作成される

長い交渉の末に、財産分与や親権など主要な条件で合意に至った場合、調停委員が「調停調書」を作成します。これは裁判の判決と同等の効力を持つ強力な書類であり、後日相手が約束を守らない場合でも、強制執行が可能です。
ただし、一度合意して調停調書にサインすると、後から内容を変更するのは原則として難しくなります。納得いかない点がないか、しっかり確認したうえでサインしましょう。

調停不成立の場合

もしも調停で折り合いがつかず、「今後も話し合いを続けても解決見込みがない」と判断された場合は、調停不成立となります。その際は離婚裁判に移行するのが通常の流れです。ただし、調停不成立後も、再度協議を試みる中で合意に達するケースがあることは覚えておきましょう。

  • ポイント
    • 調停不成立が確定したら、訴訟を起こすかどうかを検討
    • 訴訟の方が費用や時間がかかるので、戦略的に見合うか判断する
    • 証拠や主張を改めて整理し直し、訴訟で有利になるよう準備する離婚調停を有利に進めるための交渉のコツ

感情的にならず冷静かつ丁寧に主張する

調停委員は、夫婦間の対立を客観的に見ながら妥協点を探る役割を担っています。感情を爆発させてしまうと、調停委員があなたに対して「この人は非合理的だ」「主張が一貫していない」と判断する可能性も。逆に冷静かつ論理的に話をする姿勢を示せば、「あなたの話を真剣に聞く価値がある」と思ってもらえるでしょう。
一方、まったく感情を出さずに淡々と話すだけでは、相手の重大な過失や子どもの苦痛などが伝わりにくい面もあります。事実をベースにしながら必要な部分では毅然とした態度で臨みましょう。

譲れない点と妥協できる点を事前に仕分けする

離婚調停で勝つには、「すべての条件を最大限に勝ち取る」ことだけがゴールとは限りません。たとえば、親権だけは絶対に譲れないけれども、財産分与で多少譲歩してもいいというケースもあれば、その逆もあります。重要なのは、自分にとって何が最優先なのかを明確にすること。
調停委員に対しても「私としては親権の確保が何よりも大事。財産面に関してはこの程度なら譲歩できる」というように、交渉可能なラインを示しておくと、調停がスムーズに進む場合があります。

相手への批判と事実の指摘を混同しない

相手の不倫やDVなどの非行があった場合、その事実を調停委員にきちんと伝えることはもちろん大切です。しかし、それが単なる“人格批判”や“感情的な攻撃”に終わってしまうと、調停委員から逆に「話し合いが進まない原因」とみなされるリスクがあります。
相手を批判するのではなく、「こういう事実や証拠があり、これだけの損害や苦痛を被った。そのため慰謝料や養育環境の確保を求める」といった形で、客観的事実と請求内容を関連づける伝え方が有効です。

離婚調停が長引かないための工夫

調停期日の間に書面や資料を整備

調停は1回あたり1時間程度で終了し、次回まで1か月ほど間が空くことがよくあります。ここで何もせずに日数を浪費してしまうと、毎回同じやりとりを繰り返すだけになりかねません。

  • 次回の期日までに、必要な書類や証拠をしっかり準備する
  • 相手がどんな主張をしてくるかを想定し、反論材料やデータをまとめる
  • 弁護士と相談し、より説得力のある主張を組み立てる

こうした作業を積み重ねることで、調停を効率的に進めることができます。

相手と直接連絡を取るかどうかの見極め

調停の場以外で、相手と個人的に話し合いを進めることも可能です。ただし、感情的に対立が激しい場合や、DVの加害者と被害者という関係性では、直接交渉するとさらなるトラブルや精神的ダメージを招く恐れがあります。弁護士を通じてやり取りするか、あえて調停委員を仲介してもらう方が安全な場合もあるでしょう。
逆に、相手とのコミュニケーションが比較的円滑に取れるなら、調停外である程度話を詰めておき、調停で正式に合意を取り付けるとスムーズにいくこともあります。

不要な感情的争点を作らない

離婚には様々な感情が伴いますが、法律的に要求が通るのは「不倫」「DV」など、民法や裁判例で定められた具体的な離婚原因と損害があるケースです。たとえば、「家族行事に積極的でなかった」「私の実家をバカにした」など、主張としては分かるものの、法的には慰謝料の対象にならない場合も多々あります。
こうした争点を過度に持ち出しすぎると、話し合いが混乱し、時間がかかる割に得られる成果が少なくなる可能性が高いです。本当に主張すべき争点を絞り込むことが、結果的に得策になる場合があります。

まとめ

離婚調停は、夫婦間の話し合いがうまくいかなかったり、法的・経済的な複雑さがある場合に、第三者の調停委員を介して解決を図る仕組みです。実際には、感情のこじれや価値観の違いが大きく絡んでくるため、スムーズに進まないことも珍しくありません。そんな中、「離婚調停で勝つにはどうすればよいか?」と考えるとき、以下の点を押さえることがカギとなります。

  1. 資料・証拠の整理:不貞行為やDVがあったなら、その証拠を確実に用意する。財産分与や慰謝料交渉を有利に進めるためにも、相手の収入や資産に関する情報を入手・整理しておく。
  2. 優先度の明確化:親権、養育費、財産分与、慰謝料など、すべてを最大限得るのは難しい場合も多い。自分にとって最も重要な条件は何かを明確にし、譲歩できる範囲を考えておく。
  3. 冷静かつ論理的な主張:調停委員への印象は大きい。事実と法的根拠をベースに話し、感情的な批判ばかりに陥らない。必要に応じて弁護士の力を借りるのも効果的。
  4. 期限内の準備と効率的な交渉:調停期日の合間を利用して十分な情報収集と書面整理を行い、毎回少しでも前進できるようにする。
  5. 不要な争点を増やさない:慰謝料の対象となるかどうか微妙な事柄まで持ち出すと、時間と費用ばかりがかかり、得られる結果が少なくなる恐れがある。

離婚は人生の大きな転機であり、当事者にとっては非常にストレスフルなプロセスです。だからこそ、実務的な視点を持ちながら準備と対策を入念に行い、自分の権利や子どもの将来を守るために最善を尽くすことが必要です。本記事で取り上げたポイントを参考に、ぜひ「自分にとって納得のいく着地点」を見つけ、スムーズな離婚成立に向けて準備を進めてください。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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