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交通事故の慰謝料相場はいくら?計算方法と増額のポイントを弁護士が解説

2026.07.25 弁護士コラム

交通事故で怪我を負ったとき、加害者側の保険会社から提示される慰謝料の金額に、なんとなく違和感を覚えたことはないでしょうか。実は、保険会社が最初に提示してくる慰謝料は、被害者が本来受け取れるはずの金額より大幅に低いことが少なくありません。

その理由は、慰謝料を計算するための基準が複数あり、どの基準を使うかで金額が2倍以上変わってくるからです。この記事では、交通事故の慰謝料の相場と計算方法を、具体的な金額を交えながら整理し、そのうえで増額のために知っておくべきポイントまで弁護士の視点で解説します。読み終えるころには、提示された金額が妥当かどうかを自分で判断できるようになっているはずです。

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交通事故の慰謝料は3種類ある

まず押さえておきたいのは、交通事故の慰謝料がひとつの金額ではなく、状況に応じて3つの種類に分かれているという点です。それぞれ性質も相場も異なります。

  • 入通院慰謝料(傷害慰謝料):怪我の治療のために入院・通院したことによる精神的苦痛に対して支払われるもの
  • 後遺障害慰謝料:治療を続けても完治せず、後遺障害が残ってしまったことに対して支払われるもの
  • 死亡慰謝料:被害者が亡くなった場合に、本人および遺族の精神的苦痛に対して支払われるもの

慰謝料はあくまで精神的苦痛に対する補償です。治療費や休業損害、通院交通費といった実費の賠償とは別枠で受け取れるものなので、混同しないように注意してください。怪我をして通院した人であれば、まず関係してくるのが入通院慰謝料です。

慰謝料の金額を決める3つの算定基準

交通事故の慰謝料を理解するうえで、もっとも重要なのがこの算定基準の話です。同じ怪我、同じ通院期間でも、どの基準で計算するかによって受け取れる金額がまったく違ってきます。

基準は次の3つです。

  • 自賠責基準:自賠責保険から支払われる、法律で定められた最低限の補償。3つのなかでもっとも低い
  • 任意保険基準:各保険会社が独自に定めている社内基準。非公表だが、自賠責基準よりやや高い程度にとどまることが多い
  • 弁護士基準(裁判基準):過去の裁判例の蓄積をもとにした基準。3つのなかでもっとも高く、本来あるべき適正な金額

被害者に過失がない場合、金額は自賠責基準 ≦ 任意保険基準 < 弁護士基準の順に高くなります。ここで知っておいてほしいのは、保険会社が最初に提示してくるのは、自賠責基準か任意保険基準のいずれか低いほうがほとんどだということです。

保険会社は営利企業ですから、支払額を抑えようとするのは当然の行動です。一方で、弁護士基準は裁判所が妥当と認めてきた水準であり、本来であれば被害者が受け取れるべき金額にあたります。つまり、提示額をそのまま受け入れてしまうと、適正額との差額を取りこぼすことになりかねません。

入通院慰謝料の相場と計算方法

ここからは、具体的な金額の話に入ります。もっとも多くの被害者に関係する入通院慰謝料から見ていきましょう。

自賠責基準での計算方法

自賠責基準の入通院慰謝料は、1日あたり4,300円と定められています(2020年3月31日以前に発生した事故は4,200円)。計算式は次のとおりです。

4,300円 × 対象日数 = 入通院慰謝料

ここで間違えやすいのが対象日数の数え方です。対象日数は、次の2つを比べて少ないほうが採用されます。

  • 治療期間(入院期間+通院期間)
  • 実際に通院した日数 × 2

たとえば治療期間が3か月(約90日)で、実際の通院が月10日(計30日)だった場合、後者は30×2で60日です。少ないほうの60日が採用され、4,300円×60日=25万8,000円となります。通院期間が長くても、実際に通院した日が少なければ金額は伸びない仕組みです。

さらに、自賠責保険には傷害部分の上限120万円という枠があります。この120万円には慰謝料だけでなく治療費や休業損害も含まれるため、治療費がかさむと慰謝料に回る分が圧迫される点にも注意が必要です。

弁護士基準での計算方法

弁護士基準では、1日いくらではなく、怪我の程度と通院期間に応じた金額表をもとに算定します。むちうちや打撲などの軽傷と、骨折などの重傷とで表が分かれており、目安は次のとおりです。

通院のみ・軽傷の場合の弁護士基準の目安。

  • 通院1か月:19万円
  • 通院3か月:53万円
  • 通院6か月:89万円

通院のみ・重傷の場合の弁護士基準の目安。

  • 通院1か月:28万円
  • 通院3か月:73万円
  • 通院6か月:116万円

同じ通院6か月でも、自賠責基準が77万円程度にとどまるのに対し、弁護士基準では軽傷で89万円、重傷なら116万円に達します。骨折などの重いケガほど、基準による差は大きく開いていきます。この差額こそが、弁護士に依頼する価値が出る部分です。

後遺障害慰謝料の相場

治療を続けても痛みやしびれ、機能障害などが残ってしまった場合、後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害には症状の重さに応じて1級から14級までの等級があり、等級が認定されてはじめて請求が可能になります。

等級ごとの慰謝料は、自賠責基準と弁護士基準で大きく異なります。代表的な等級の目安を比較すると次のようになります。

  • 14級(軽い神経症状など):自賠責基準32万円 / 弁護士基準110万円
  • 12級(局部に頑固な神経症状など):自賠責基準94万円 / 弁護士基準290万円
  • 9級:自賠責基準249万円 / 弁護士基準690万円
  • 1級(常に介護を要する重度障害など):自賠責基準1,150万円 / 弁護士基準2,800万円

たとえばむちうちで多い14級でも、基準が変わるだけで3倍以上の開きが生じます。重度の障害になるほど差額は数百万円から1,000万円超に膨らむため、後遺障害が残ったケースでは弁護士基準で交渉できるかどうかが受取額を決定的に左右します。

なお後遺障害慰謝料を受け取るには、後遺障害等級認定の申請を行い、等級を獲得する必要があります。この認定の有無と等級の重さが、賠償金全体を大きく動かす分岐点になります。

死亡慰謝料の相場

被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料も、基準によって金額が変わります。弁護士基準では、被害者が家庭内で果たしていた役割に応じて、おおよそ次の水準が目安とされています。

  • 一家の支柱だった場合:2,800万円程度
  • 配偶者・母親だった場合:2,500万円程度
  • その他(独身者・子どもなど):2,000万〜2,500万円程度

これに対し自賠責基準では、被害者本人分が一律400万円、加えて遺族の人数と扶養の有無に応じた金額が支払われる構成で、合計しても弁護士基準を下回るのが一般的です。死亡事故では逸失利益や葬儀費用も別途加わるため、最終的な賠償額は数千万円規模になることも珍しくありません。

慰謝料が増額・減額されるケース

慰謝料は相場どおりに決まるとは限らず、事故の事情によって上下します。代表的なものを挙げておきます。

増額の可能性があるケース。

  • 加害者の過失が重大(飲酒運転、無免許、ひき逃げ、著しいスピード違反など)
  • 加害者に反省が見られない、不誠実な対応が続いている
  • 怪我や後遺障害によって生活に深刻な支障が出ている

減額されるケース。

  • 被害者側にも過失がある(過失相殺により、過失割合の分だけ賠償額が減る)
  • 通院の頻度が極端に少なく、治療の必要性を疑われる
  • 持病や既往症が症状に影響していると判断される(素因減額)

特に過失相殺は影響が大きく、被害者の過失が3割と認定されれば、賠償額全体がそのまま3割減ります。事故状況の主張をどう組み立てるかで結果が変わるため、過失割合に争いがある場合は専門的な対応が欠かせません。

慰謝料を増額するための3つのポイント

最後に、提示された慰謝料を適正額に近づけるために実践すべきポイントを整理します。

第一に、弁護士基準で交渉することです。被害者本人が保険会社に弁護士基準での支払いを求めても、ほとんどの場合は応じてもらえません。弁護士基準は裁判で認められる水準であり、保険会社は弁護士が代理人に就いてはじめて、現実的に交渉のテーブルに乗せてきます。ここが増額の出発点になります。

第二に、適切な頻度で通院を続けることです。入通院慰謝料は通院の実態をもとに算定されるため、自己判断で治療を中断したり、逆に必要以上に通院したりすると、かえって不利になることがあります。医師の指示に沿って、月に一定の通院実績を保ちながら治療を継続することが、結果的に慰謝料を守ることにつながります。

第三に、後遺症が残った場合は後遺障害等級認定をきちんと受けることです。先に見たとおり、等級がひとつ違うだけで慰謝料は大きく変動します。適切な検査を受け、症状を正確に医証へ反映させたうえで申請することが、正当な等級を得るための鍵になります。

これらをひとりで進めるのは負担が大きく、専門知識も必要です。交通事故に注力する弁護士に相談すれば、増額の見込みや今後の進め方を具体的に把握できます。弁護士費用特約に加入していれば、自己負担なく依頼できるケースも多いため、まずは保険の内容を確認してみてください。

まとめ

交通事故の慰謝料は、入通院・後遺障害・死亡の3種類に分かれ、それぞれ自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つの基準で金額が大きく変わります。保険会社の提示額は最低水準であることが多く、弁護士基準で計算し直すと2倍以上になる例も珍しくありません。

提示された金額に納得できないまま示談に応じてしまうと、あとから取り戻すことは困難です。相場を正しく理解し、必要に応じて弁護士の力を借りることが、適正な補償を受け取るための確実な近道といえます。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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