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奨学金は債務整理できる? 保証人への影響と判断基準を弁護士が解説【弁護士の現場】

2026.07.17 弁護士コラム

奨学金の返済に行き詰まり、債務整理を検討したいというご相談は、近年とても増えています。学生時代に借りた数百万円を、社会人になってから10年、20年と返し続ける負担は、想像以上に重いものです。就職してから収入が伸び悩んだ、転職で年収が下がった、結婚や育児で支出が増えた、といったタイミングで、月々の返還が苦しく感じる方は少なくありません。

奨学金は債務整理の対象にできるのか、というご質問には、結論として可能とお答えしています。ただし、奨学金には他の借金にはない特殊性があり、これを踏まえずに手続きを選ぶと、連帯保証人であるご家族に大きな影響が及んだり、思ったほど返済が楽にならなかったりすることがあります。今回は、奨学金の債務整理を考えるうえでの判断基準と、保証人への影響について整理します。

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奨学金は法的には他の借金と同じ扱い

最初に押さえておきたいのは、奨学金は法律上、ほかの借金と同じ位置づけにあるという点です。日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金は、貸金業法上の借入ではないものの、民法上の金銭消費貸借契約として扱われます。任意整理・個人再生・自己破産のいずれの手続きでも、奨学金を整理対象に含めること自体は可能です。

ただし、奨学金には次のような特殊性があります。

  • 金利が極めて低い(第一種は無利息、第二種でも年3%が上限で実際の利率はもっと低い)
  • 返済期間が15〜20年と長い
  • 親や親族が連帯保証人や保証人になっているケースが多い
  • 救済制度(減額返還・返還期限猶予)が独自に用意されている
  • 3か月以上の延滞でCIC・KSCに事故情報が登録される

この特殊性が、債務整理の方法を選ぶ際に大きく効いてきます。普通の消費者金融からの借金と同じ感覚で奨学金を整理対象に出すと、肝心の効果が薄く、かつ保証人への悪影響だけが残るというパターンに陥りがちです。逆に、奨学金以外の借金との組み合わせをうまく整理できれば、生活の立て直しに大きく効きます。

奨学金の任意整理は実は効果が薄い

任意整理は、債権者と個別交渉して将来利息をカットしてもらい、3〜5年で元本を分割返済する手続きです。消費者金融やクレジットカードの借金には大きな効果がありますが、奨学金についてはそうではありません。

理由はシンプルです。任意整理の主な効果は将来利息のカットですが、JASSO奨学金は元々の金利が非常に低いため、カットできる利息額が小さいのです。

  • 第一種奨学金:無利息のため、利息カットの効果はゼロ
  • 第二種奨学金:年3%が上限で、実際の貸与時利率は1%を下回ることが多い

そのうえ、奨学金を任意整理の対象にすると連帯保証人である親御様に一括請求が向かいますので、メリットがほぼないのにデメリットだけが顕在化する形になります。

実務でよく使われるのは、奨学金を任意整理の対象から外し、消費者金融・クレジットカード・銀行カードローンなど高金利の借金だけを任意整理するという組み合わせです。任意整理は対象債権者を選べる手続きなので、この使い分けが現実的な解になります。奨学金は通常どおり返済を続けつつ、もし返還が苦しければJASSOの減額返還制度を併用するという二段構えが、現場でもっとも多く採用されているパターンです。

個人再生での奨学金の扱い

個人再生は、借金を5分の1から10分の1程度に圧縮し、原則3年で残額を返済する手続きです。奨学金も他の借金と一緒に圧縮の対象になります。

圧縮効果は大きいのですが、ここで深刻になるのが連帯保証人への影響です。個人再生は債権者平等の原則のもと、奨学金だけを対象から外すという扱いはできません。奨学金が対象になる以上、JASSOの債権も個人再生によって減額され、減額された分はJASSOから連帯保証人(多くの場合、親御様)へ一括請求がいくことになります。

人的保証の場合の現場での流れは、おおむね次のようになります。

  • 個人再生の受任通知発送と同時に、JASSOにも通知が届く
  • JASSOから連帯保証人へ滞納分の請求が始まり、その後減額対象分の一括請求がいく
  • 個人再生の認可後、本人は再生計画に基づいて減額後の借金を返済する
  • 一方で連帯保証人は、減額されなかった奨学金部分を支払い続けることになる

機関保証で奨学金を借りていた場合は、連帯保証人が個人ではなく公益財団法人日本国際教育支援協会という保証会社ですので、ご家族への直接的な請求は発生しません。ただし、保証会社が代位弁済し、その後は保証会社からの請求になる流れは同じです。本人の信用情報や手続きへの影響は、人的保証の場合と変わりません。

連帯保証人になっておられる親御様には、個人再生を選ぶ前に必ず状況を共有しておくことが、現場での鉄則です。事前に知らせないまま手続きに入り、JASSOから親御様に請求書が届いて初めて事情が判明する、というパターンは、ご家族の関係に深い溝を残すことが少なくありません。

自己破産での奨学金の扱い

自己破産では、奨学金も免責の対象となり、ご本人の支払義務は法的に消滅します。返済負担をゼロにできるという意味では、もっとも大きな効果のある手続きです。

ただし、保証人への影響は個人再生と同じか、それ以上に大きくなります。

  • 人的保証の場合:連帯保証人である親御様へ、残債全額が一括請求される
  • 機関保証の場合:保証会社が代位弁済し、その後の請求は本人に向かうものの、自己破産の免責対象なので結果として消滅する

機関保証であれば、保証会社の代位弁済後の請求も破産手続のなかで免責されますので、結果として誰にも実質的な負担が残らない形に近づきます。一方、人的保証の場合は、ご本人の自己破産で親御様に数百万円単位の請求がいき、結果として親御様自身も自己破産を選ばざるを得ないというケースが、現場では繰り返し起きてきました。

奨学金の自己破産を考える際に、いちばん最初に確認していただきたいのは、ご自身の奨学金がどちらの保証方式かという点です。これは、貸与開始時の書類や、JASSOのスカラネット・パーソナルで確認できます。保証方式によって、家族への影響の重さが大きく変わるためです。

債務整理の前に検討すべきJASSOの救済制度

奨学金には、JASSOが独自に運用している救済制度があります。返済が難しくなったときに、まず検討すべき選択肢です。

  • 減額返還:月々の返還額を当初の2分の1、3分の1、4分の1、または3分の2に減額する制度。1回の願出で12か月、最長15年(180か月)まで延長可能
  • 返還期限猶予:経済困難・傷病・災害などで返還が困難な場合に、返還そのものを待ってもらう制度。経済困難の場合は通算10年まで利用可能
  • 在学猶予:大学・大学院・専修学校などに在学中の間、返還を猶予する制度
  • 死亡・障害免除:本人の死亡や、精神・身体障害で返還できない場合の免除

これらの制度は、滞納する前に申請するのが原則です。すでに長期延滞している場合や、保証会社が代位弁済済みの場合は使えなくなりますので、返済が苦しいと感じた段階で早めにJASSOへ相談していただくのが重要です。

減額返還は、返還総額そのものが減るわけではなく、月々の負担を軽くして返済期間を延ばす制度です。元本は減らないため、返済能力の低下が一時的なものであれば効きます。逆に、返済能力の回復が見込めない、ほかの借金も抱えているといった状況では、債務整理のほうが現実的になります。

債務整理は、こうしたJASSO独自の救済制度では対応しきれない場合に検討するというのが、現場での順序になります。

判断基準:どの手続きを選ぶか

奨学金を含む借金問題で、どの手続きを選ぶかの判断基準を整理します。

奨学金以外にも借金がある場合:

  • 奨学金以外の借金が高金利で大きい場合、奨学金以外を任意整理し、奨学金はJASSOの減額返還で対応するのが第一選択になる
  • 奨学金以外の借金も含めて支払い切れない場合は、個人再生または自己破産を検討する

奨学金がほぼ唯一の借金の場合:

  • まずJASSOの救済制度を最大限活用するのが大原則
  • それでも返済不能なら、自己破産で免責を取る道がある
  • 機関保証への切替が可能なら、家族への影響を切り離す選択肢として検討する

連帯保証人の状況による判断:

  • ご高齢の親御様が連帯保証人なら、保証人にも一括請求が及ぶ手続きは慎重に選ぶ
  • 機関保証なら、本人の手続きで完結する可能性が高くなる
  • 連帯保証人ご自身に資力がない場合は、保証人もあわせて債務整理を検討する

これらを総合して、最終的な手続きを決めることになります。一つの軸だけで判断せず、奨学金以外の借金状況、収入と支出のバランス、保証人の経済状況を並べたうえで、複数のシナリオを比較するのが、後悔のない選択につながります。

まとめ:奨学金は救済制度と債務整理の組み合わせで考える

奨学金は法的には債務整理の対象にできますが、低金利・長期返済という特殊性と、保証人への影響を踏まえると、安易に手続きに乗せるのは得策ではありません。

  • JASSOには減額返還や返還期限猶予など、独自の救済制度がある
  • 任意整理は奨学金には効果が薄いため、他の借金と分けて使うのが現実的
  • 個人再生・自己破産は奨学金も対象になるが、人的保証なら連帯保証人への請求は避けられない
  • 機関保証なら、ご家族への直接的な影響は抑えられる

ご自身の奨学金の保証方式と、ほかの借金の状況、連帯保証人の経済状態を踏まえて、複数の選択肢を比較するのが、後悔のない判断につながります。返済の苦しさを一人で抱え込まず、JASSOの相談窓口や弁護士に早めに状況を共有することから始めてみてください。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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