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車を残したまま債務整理はできる? ローンの有無別に弁護士が解説【弁護士お悩み相談室】

2026.07.13 弁護士コラム

債務整理を検討されている方からよくいただくご相談のひとつが、車を残せるかどうかというものです。地方にお住まいで通勤や送迎に車が欠かせない方、配送や営業で車を使う仕事をされている方にとって、車を失うかどうかは生活の根幹に関わる問題です。

結論からお伝えすると、車を残せるかどうかは、債務整理の方法とご自身の車のローン状況の組み合わせで決まります。本記事では、車の状態を3つに分けたうえで、任意整理・個人再生・自己破産のそれぞれでどうなるかを整理します。

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まず確認!あなたの車は3つのどれに当てはまるか

最初に確認していただきたいのが、ご自身の車がどの状態に当てはまるかです。次の3つに整理されます。

  • ローンを完済している
  • ローンが残っており、所有権留保がついている
  • ローンが残っているが、所有権留保がついていない

所有権留保とは、ローンを完済するまで車の所有権がローン会社や販売店に残るという担保の仕組みです。一般的には次のような区別になります。

  • 信販系・ディーラー系のオートローン:所有権留保あり
  • 銀行系のマイカーローン:所有権留保なし

ご自身の車がどちらかを判別するもっとも簡単な方法は、車検証を確認することです。所有者欄にディーラーや信販会社の名前が入っていれば所有権留保あり、使用者欄も所有者欄もご自身の名前なら所有権留保なしと考えていただいて差し支えありません。

この前提を押さえたうえで、次から債務整理の方法ごとに見ていきます。

ローンを完済している場合

ローンが残っていない車は、ご自身の財産として扱われます。債務整理の方法によって扱いが分かれます。

任意整理の場合は、車に何の影響もありません。任意整理は債権者ごとに個別交渉する手続きで、ローンが残っていない車については整理の対象外であり、これまでどおり乗り続けられます。

個人再生の場合も、車そのものを失うことはありません。ただし、清算価値保障の原則という考え方があり、ご自身の保有資産の総額が大きいと、再生計画での最低弁済額が連動して上がります。自己破産した場合に債権者が受け取れる配当の総額を、個人再生でも最低限返済しなければならないというルールで、車の評価額が高いと、その分だけ返済総額が膨らむことがあります。

自己破産の場合は、評価額が分かれ目になります。東京地裁の運用では、車の評価額が20万円以下であれば自由財産扱いで手元に残せます。20万円を超える場合は原則として処分の対象になりますが、自由財産拡張の申立てが認められれば残せる余地があります。

評価額の調べ方には、次のような方法があります。

  • 中古車買取業者で査定を取る
  • レッドブックなど業界の評価指標を参照する
  • 同じ年式・型・走行距離の中古販売価格を確認する

新車登録から7年以上経過した普通車などは、評価額が大きく下がっていることが多く、書類を整えれば自己破産でも残せるケースは少なくありません。

ローンが残っており、所有権留保がついている場合

このパターンがいちばんご相談が多く、扱いが手続きごとに大きく異なります。

任意整理を選んだ場合は、車のローン会社を整理の対象から外すという選択ができます。

  • 消費者金融やクレジットカードのキャッシング枠だけを対象に任意整理する
  • 車のローンはこれまでどおり返済を続ける
  • 完済すれば所有権がご自身に移り、車も継続して使える

任意整理が車を残すうえで最も柔軟な手続きと言われるのは、この対象選択ができるためです。

個人再生を選んだ場合は、原則として車を引き上げられます。個人再生には債権者平等の原則があり、車のローンだけを対象外にすることはできないためです。所有権留保のある車は別除権の対象となり、再生手続きの外で担保が実行されます。

例外として、別除権協定という仕組みがあります。これは、ローン会社と個別に合意を結び、車の評価額相当を優先的に支払う代わりに引き上げを待ってもらうというものです。ただし、この協定が裁判所に認められるのは、

  • 個人タクシーや個人運送業など、車そのものが収入源となっている職業
  • その車がなくなると再生計画の遂行が困難になることが明らかな場合

といった、ごく限られた状況です。会社員の通勤用、家族の送迎用といった事情だけでは認可が下りないのが実務の運用です。

自己破産を選んだ場合は、所有権留保のある車はローン会社が引き上げます。これは別除権の行使として、破産手続きとは別ルートで進みます。

このパターンで車を残したい場合の現実的な選択肢は、次の2つになります。

  • 任意整理を選び、車のローンを対象外にする
  • 親族にローンを一括返済してもらい、所有権留保を外したうえで個人再生または自己破産を進める

後者の親族返済は、本人が返済の原資を出すと偏頗弁済の問題が生じるため、あくまで親族自身の資金で完済してもらう形が必要です。

ローンが残っているが、所有権留保がついていない場合

銀行系のマイカーローンで購入された車は、所有権留保がついていないことが一般的です。このパターンは、所有権留保ありのケースより選択肢が広がります。

任意整理の場合は、車のローン会社を対象から外して残せます。所有権留保ありのケースと同じく、消費者金融などだけを整理の対象にする形になります。

個人再生の場合は、所有権留保がないため、ローン会社が車を引き上げる根拠がありません。ただし、ローン残債は他の借金と一緒に再生計画の中で減額の対象になります。減額後の残債は再生計画に基づいて支払い、車はご自身の手元に残る形です。清算価値保障の関係で最低弁済額が上がる点は、ローン完済の場合と同様に注意が必要になります。

自己破産の場合は、評価額が20万円以下であれば手元に残せる可能性があります。20万円を超える場合は処分対象になります。ローンの残債は他の借金と一緒に免責の対象となり、ローン会社からの請求は止まります。

このパターンで意外と知られていないのが、銀行系マイカーローンを選んだことが、結果的に車を残しやすくする要素になっているという点です。購入時にどのローンを選ぶかは、後の債務整理の選択肢にまで影響することがあります。

車を残すための実務的な工夫

ここまでの整理を踏まえて、車を残したいというご希望を実現するために、現場で効いてきた工夫を3つお伝えします。

ご相談は早めに動くのが鉄則です。返済が滞ってからご相談に来られると、ローン会社が車の引き上げに動いていたり、評価額が下がるタイミングを逃したりして、選択肢が狭まります。

評価額の根拠資料は、複数の見積もりを取って準備します。買取業者の査定書、中古車情報サイトの相場、業界の評価指標などを揃えておくと、自由財産拡張の申立てや別除権協定の交渉で説得力が出ます。

通勤・業務での車の必要性は、客観的に立証できる形で整えておきます。

  • 勤務先までの公共交通機関での所要時間と乗換回数
  • 業務での車使用の頻度と内容
  • 家族の介護・送迎での車の必要性
  • 居住地域の公共交通機関の状況

これらをまとめておくと、別除権協定の交渉や自由財産拡張の申立てで効いてきます。

まとめ:状況の整理が最初の一歩

車を残したまま債務整理ができるかどうかは、ローンの有無、所有権留保の有無、選ぶ手続きの組み合わせで決まります。整理すると、次のような大枠になります。

  • ローン完済済み:任意整理は影響なし、個人再生は残せるが弁済額に影響、自己破産は評価額20万円が分かれ目
  • ローンあり・所有権留保あり:任意整理が最も残しやすい、個人再生・自己破産では原則引き上げ
  • ローンあり・所有権留保なし:任意整理・個人再生・自己破産いずれも残せる余地が広い

車を残したいというご希望は、債務整理の方針を決めるうえで重要な要素になります。借金の総額や収入だけでなく、車という生活基盤の問題まで含めて方針を検討することで、整理のあとの生活が大きく変わってきます。まずは、ご自身の車が3つのパターンのどこに当てはまるかを確認することから始めてみてください。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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