債務整理は弁護士と司法書士どちらに頼む? 判断基準と費用差【弁護士お悩み相談室】
債務整理を検討される際、最初の大きな分かれ道のひとつが、弁護士と司法書士のどちらに依頼するかという選択です。ネット広告では両方の名前が並んで出てきますし、費用相場も近いため、違いがよくわからないまま安いほうを選んでしまう方も少なくありません。
実は、弁護士と司法書士では対応できる業務範囲が法律で明確に分かれています。違いを知らずに依頼すると、途中で別の専門家に切り替える必要が出てきたり、自分で対応しなければならない部分が想定以上に多かったりすることがあります。本記事では、両者の業務範囲の根本的な違いと、債務整理の種類ごとの判断基準、そして費用の実際の差を整理します。
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弁護士と司法書士はそもそも何が違うのか
弁護士と司法書士は、それぞれ別の法律に基づいた専門家で、得意分野や対応できる業務の範囲が異なります。
- 弁護士:法律トラブル全般の解決を担う専門家。訴訟代理権に上限はなく、最高裁まで対応可能
- 司法書士:もともと登記の専門家。2002年の法改正で、認定司法書士に限り、債務整理など一部の業務が認められた
ここで重要なのが認定司法書士という資格区分です。司法書士のなかでも、法務省の認定試験に合格した方だけが、債務整理や簡易裁判所での代理業務を行えます。普通の司法書士は、登記や書類作成は対応できますが、債務整理の代理業務はできません。
そして、認定司法書士に認められた債務整理の代理権には、法律上の制限があります。具体的には、1社あたりの債権額が140万円以下の案件に限られるという制限です。これは司法書士法3条に基づくもので、平成28年6月27日の最高裁判決でも厳格に運用されることが確定しました。
この140万円の壁が、債務整理を司法書士に頼めるかどうかの最大の分岐点になります。
任意整理での違い:140万円の壁
任意整理では、1社あたりの借金が140万円以下の場合に限り、認定司法書士も代理人として対応できます。140万円を1円でも超える借金がある債権者については、司法書士は代理交渉ができず、弁護士に依頼する必要があります。
ここで間違えやすいのが、140万円の判定は借金の総額ではなく、1社あたりの債権額ベースだという点です。
- A社から80万円、B社から100万円、C社から70万円借りていて総額250万円:すべて140万円以下のため司法書士でも対応可
- A社から200万円、B社から50万円借りていて総額250万円:A社のみ140万円超のため、A社は弁護士に依頼する必要がある
過払い金請求も同じ140万円の壁が適用されます。1社からの過払い金返還請求額が140万円を超える見込みなら、司法書士は対応できません。任意整理の途中で過払い金が想定より多く判明し、司法書士から弁護士へ切り替える必要が出てくるケースは、現場でも実際に起きています。
任意整理を司法書士に頼む際は、依頼前にすべての借入先と債権額を整理し、1社でも140万円を超える借金がないかを確認することが大切です。
個人再生・自己破産での違い:代理権の有無
個人再生と自己破産については、状況がより根本的に異なります。これらの手続きは地方裁判所での手続きになるため、司法書士は代理人になれません。
司法書士が個人再生・自己破産で対応できるのは、書類作成支援のみです。具体的には、申立書や添付書類の作成を手伝ってもらえますが、債権者対応や裁判所出頭はご本人が行う必要があります。
弁護士に依頼する場合と司法書士に依頼する場合の違いを整理すると、次のようになります。
- 受任通知の発送:弁護士は代理人として発送、司法書士は書類作成補助のみ
- 債権者からの問い合わせ対応:弁護士は窓口になる、司法書士は本人が対応
- 申立書類の作成:両者とも対応可能
- 裁判所への出頭:弁護士は代理出頭可、司法書士は本人出頭が必要
- 管財事件での管財人対応:弁護士は代理対応可、司法書士は本人対応
司法書士に依頼するメリットは費用が安いことですが、その代わりにご本人の負担が大きくなります。とくに管財事件になると、管財人面談や債権者集会への出頭、財産調査への対応などが本人に求められるため、平日昼間の時間を確保できない方には現実的に難しいことがあります。
個人再生・自己破産でご自身の負担をできるだけ減らしたい場合は、弁護士への依頼が原則になります。司法書士への依頼が向いているのは、費用を抑えたい、自分で動ける時間がある、手続きの内容をある程度理解できる、というケースに限られます。
費用差:実際にいくら違うか
費用の相場感を整理します。事務所によって幅がありますので、目安としてご覧ください。
任意整理:
- 弁護士:1社あたり3〜5万円程度
- 司法書士:1社あたり2.5〜4万円程度
- 差額:1社あたりおよそ5,000〜1万円
個人再生:
- 弁護士:30〜70万円程度(住宅ローン特則ありは高め)
- 司法書士:20〜40万円程度(書類作成支援のみのため安い)
- 差額:おおむね10〜30万円程度
自己破産:
- 弁護士:30〜60万円程度
- 司法書士:15〜30万円程度
- 差額:おおむね10〜20万円程度
この他に、個人再生・自己破産では裁判所に支払う実費(予納金など)が別途必要になります。少額管財の場合は20万円程度、再生委員報酬は東京地裁では15万円程度です。これらは弁護士・司法書士のどちらに依頼しても同額です。
費用負担が難しい場合は、法テラスの民事法律扶助制度を使う方法があります。一定の収入・資産要件を満たせば、費用の立替制度を利用でき、月5,000〜10,000円程度の分割払いで対応できます。法テラスは弁護士・司法書士のどちらも提携していますので、選択肢を狭める要因にはなりません。
どちらに頼むかの判断基準
ここまでの整理を踏まえて、判断基準を実務的にまとめます。
借金額で見る場合:
- 1社あたり140万円以下の借金しかない:司法書士・弁護士どちらでも対応可
- 1社でも140万円を超える借金がある:弁護士のみ対応可
- 過払い金が140万円を超える見込み:弁護士のみ対応可
手続きの種類で見る場合:
- 任意整理:費用を抑えたいなら司法書士も選択肢
- 個人再生・自己破産で手続きを任せたい:弁護士
- 個人再生・自己破産で費用を抑え、自分で動く時間がある:司法書士
ご自身の対応力で見る場合:
- 平日昼間に裁判所へ出向ける、書類対応にも対応できる:司法書士の書類作成支援でも進められる
- 仕事や育児で対応する時間が確保しにくい:弁護士に任せるほうが現実的
トラブルが拡大しそうな場合:
- 給与差押えが既に始まっている、または近い:弁護士のほうが対応の幅が広い
- 債権者から訴訟を起こされている:地方裁判所案件なら弁護士のみ対応可
これらの軸を組み合わせて判断するのが、現場での実務です。とくに、借金状況が複雑なケースや、家族・保証人への影響が絡むケースでは、弁護士に依頼するほうが結果的にスムーズに進むことが多いというのが実感です。
司法書士に頼む場合の注意点
司法書士に依頼する選択をされる場合に、知っておいていただきたい注意点が3つあります。
ひとつめは、調査の過程で1社あたりの債権額が140万円を超えることが判明したり、過払い金が140万円を超えると見込まれたりした場合、途中で弁護士に切り替える必要が出てくる点です。その時点までの司法書士費用が無駄になる場合があり、結果的にトータルの費用負担が増えることがあります。
ふたつめは、債権者から訴訟を起こされた場合の対応です。簡易裁判所案件であれば認定司法書士も代理人になれますが、地方裁判所に控訴されたり、相手方が地方裁判所で起訴したりすると、司法書士は代理できません。改めて弁護士を探す必要が出てきます。
みっつめは、個人再生・自己破産で司法書士に依頼する場合、ご本人の負担を正確に理解しておくことです。書類作成は手伝ってもらえますが、債権者対応や裁判所出頭、管財人面談など、本来弁護士が代理する部分はすべてご自身で行うことになります。費用を抑えられる代わりに、時間と労力がかかる点を、依頼前に確認しておいてください。
まとめ:費用だけで決めず、対応範囲で考える
弁護士と司法書士は、債務整理での費用面では似ているように見えますが、対応できる業務範囲が法律で明確に分かれています。
- 任意整理:1社140万円以下なら司法書士もOK、超えれば弁護士のみ
- 個人再生・自己破産:司法書士は書類作成のみ、代理は弁護士のみ
- 過払い金請求:1社140万円以下なら司法書士もOK
- 費用差:任意整理で数万円、個人再生・自己破産で数十万円
費用差だけで選ぶと、想定外の途中切替や本人負担の増加で、結果的に損をするケースもあります。借金の規模、手続きの種類、ご自身が手続きにかけられる時間と労力を整理したうえで、対応範囲と費用のバランスを見て選ぶことが大切です。
まずは弁護士・司法書士の無料相談を活用し、自分のケースで両者がどう動けるかを確認したうえで、依頼先を決めるのが安全な進め方になります。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について