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弁護士コラム

自己破産と差し押さえの関係を徹底解説

2026.06.15 弁護士コラム

借金の返済を滞納し続けた結果、給与や銀行口座を差し押さえられてしまった。あるいは、差し押さえの予告通知が届いて途方に暮れている。そんな切迫した状況に追い込まれている方にとって、自己破産は差し押さえを止め、生活を立て直すための最も有効な手段になりえます。

自己破産を申し立て、裁判所から破産手続き開始決定が出ると、進行中の差し押さえは原則として効力を失います。つまり、すでに始まっている給与の天引きを止めることができるのです。ただし、そのタイミングや具体的な扱いは手続きの種類によって異なり、税金滞納による差し押さえなど止められないケースもあります。

この記事では、自己破産と差し押さえの関係について、差し押さえが止まる仕組みとタイミング、給与や口座それぞれの扱い、そして止められないケースまでを体系的に解説します。差し押さえを受けている方はもちろん、差し押さえが目前に迫っている方にも役立つ内容です。

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そもそも差し押さえとは何か

差し押さえとは、借金の返済や税金の納付を長期間滞納した場合に、債権者が裁判所の許可を得て債務者の財産を強制的に回収する手続きです。個人の場合、最も多いのは給与の差し押さえと銀行口座の差し押さえの2つです。

給与が差し押さえられると、勤務先に裁判所から債権差押命令が届き、毎月の給与から一定額が天引きされて債権者に渡されます。借金が原因の場合は手取り給与の4分の1まで、養育費の不払いが原因の場合は手取り給与の2分の1までが差し押さえの対象になります。一度始まると、債務が完済されるか別の法的手段を取るまで毎月自動的に続くため、生活への打撃は非常に大きいです。

銀行口座の差し押さえは、差押命令が届いた時点での口座残高に対して執行されます。給与のように毎月継続するものではなく、その時点での残高が一度だけ回収される形ですが、給与の振込口座を押さえられると生活費を引き出せなくなる点で深刻な問題となります。

なお、差し押さえは一度始まると、自分から債権者に連絡して止めてもらうことは実務上ほぼ不可能です。債権者としては法的手続きを経て回収に至っているため、任意で取り下げる動機がないのです。だからこそ、法的な対抗手段である自己破産や個人再生の申し立てが必要になります。

加えて、給与の差し押さえは勤務先を通じて執行されるため、会社に借金の存在が知られてしまうという副次的な問題もあります。裁判所から勤務先に直接通知が届くため、避けることはできません。こうした点からも、差し押さえが実行される前に対処することが極めて重要です。

いずれの差し押さえも、放置すれば生活基盤が崩壊しかねません。こうした状況を法的に解消できる手段が、自己破産なのです。

自己破産で差し押さえが止まる仕組み

自己破産には債権者平等の原則という考え方が根底にあります。これは、特定の債権者だけが優先的に回収するのではなく、すべての債権者に対して公平に対応すべきという法律上のルールです。差し押さえは一人の債権者による個別の回収行為であるため、自己破産の手続きが始まると、この個別回収は認められなくなります。

具体的には、裁判所が破産手続き開始決定を出すと、すでに行われている差し押さえは効力を失い、新たな差し押さえも禁止されます。これは破産法第42条に定められた規定であり、管財事件の場合は開始決定と同時に差し押さえの効力が消滅します。

例えば、消費者金融A社が給与を差し押さえている状態で自己破産を申し立てると、A社だけが回収を続けることは他の債権者にとって不公平になります。そのため、破産手続きが開始された時点でA社の差し押さえは効力を失い、以降はすべての債権者に対して破産手続きの枠組みの中で公平に処理されるというわけです。

なお、よく誤解されるポイントですが、自己破産の申し立てをしただけでは差し押さえは止まりません。あくまで裁判所から破産手続き開始決定が出された段階で効力が失われるため、申し立てから開始決定までの期間をいかに短くするかが実務上の勝負どころになります。弁護士に依頼すれば、必要書類を迅速に整え、スピーディーに開始決定を得られるよう対応してもらえます。

管財事件と同時廃止で異なる差し押さえの扱い

自己破産の手続きには管財事件と同時廃止の2種類があり、差し押さえが止まるタイミングと給与を全額受け取れるようになるタイミングが異なります。この違いは非常に重要なので、しっかり理解しておきましょう。

管財事件の場合

管財事件では、破産手続き開始決定が出ると同時に差し押さえの効力が失われます(破産法第42条第2項)。そのため、開始決定後の給与は全額を受け取ることが可能です。開始決定前に差し押さえられてまだ債権者に渡されていない分の給与も、この時点で受け取れるようになります。差し押さえの解消という観点では、管財事件のほうが迅速に効果が出ると言えます。

同時廃止の場合

同時廃止では、破産手続き開始決定によって差し押さえは中止されますが、すぐに給与を全額受け取れるわけではありません。開始決定後、本来差し押さえられるはずだった部分の給与は、債務者にも債権者にも渡されず、一時的に勤務先でプールされます。

その後、免責許可決定が確定した段階で差し押さえは完全に失効し、プールされていた分も含めて全額を受け取れるようになります。開始決定から免責確定まで通常2か月から3か月程度かかるため、その間は手取り額が減った状態が続く点に留意が必要です。弁護士が執行裁判所に対して強制執行の中止を上申することで、より早い段階で全額受け取れるよう対応するケースもあります。

どちらの手続きになるかは裁判所が判断しますが、めぼしい財産がなく免責不許可事由もない場合は同時廃止、一定の財産がある場合や借金の原因に問題がある場合は管財事件となるのが一般的です。弁護士に相談すれば、自分のケースでどちらになりそうか、差し押さえがいつ止まるかの見通しを事前に教えてもらえます。

差し押さえ前に自己破産すれば回避できる

すでに差し押さえを受けている状態でも自己破産で止めることは可能ですが、理想的なのは差し押さえが執行される前に自己破産の手続きを開始することです。

借金の返済を滞納すると、債権者はまず督促や催告を行い、それでも返済されなければ裁判所に訴訟を起こします。訴訟で判決が確定した後に、初めて差し押さえの手続きが取られます。つまり、滞納から差し押さえの実行までには通常数か月以上の猶予があり、この間に弁護士に相談して自己破産を申し立てることができれば、差し押さえ自体を回避できる可能性があります。

弁護士に依頼すると、債権者に受任通知が発送されます。受任通知を受け取った金融機関は実務上、訴訟や差し押さえの手続きを一旦保留にする傾向があります。法的な強制力はありませんが、弁護士が介入したことで債権者側も回収方針を再検討するためです。差し押さえの予告通知が届いた段階で弁護士に相談すれば、実際の差し押さえを受けずに済む可能性は十分にあります。

滞納している借金について裁判所から訴状が届いた場合は、差し押さえが近づいているサインです。判決が出てしまうと債権者は差し押さえの手続きに移れるようになるため、訴状が届いた時点で弁護士に相談するのが理想的なタイミングです。裁判が終わってからでは対応が後手に回り、差し押さえを受けてから自己破産で止めるという流れになってしまいます。

自己破産でも止められない差し押さえ

自己破産は借金に起因する差し押さえには非常に有効ですが、すべての差し押さえを止められるわけではありません。以下のケースでは、自己破産をしても差し押さえは解除されないため、別の対応が必要になります。

  • 税金・社会保険料の滞納による差し押さえ:住民税、所得税、国民健康保険料などの公租公課は自己破産で免責されない債務であり、滞納処分による差し押さえは破産手続きの影響を受けない。自治体の納税課に分割納付や換価の猶予を相談する必要がある
  • 養育費の差し押さえ:養育費も非免責債権にあたるため、自己破産をしても支払い義務は残り、差し押さえも止まらない。養育費の減額が必要な場合は家庭裁判所に調停を申し立てるのが適切な対応となる
  • 罰金・過料に基づく差し押さえ:刑事上の罰金や行政上の過料も非免責債権であり、自己破産による解消はできない

このように、差し押さえの原因が税金や養育費である場合は、自己破産とは別の枠組みで解決策を模索する必要があります。弁護士に相談すれば、差し押さえの種類に応じた最適な対処法を提案してもらえます。

任意整理では差し押さえを止められない

債務整理には自己破産以外に任意整理と個人再生がありますが、差し押さえを止めるという目的においては、手段によって効果が大きく異なります。

任意整理は弁護士と債権者が裁判所を介さずに交渉する手続きです。法律上、差し押さえを強制的に中止させる規定がないため、任意整理では差し押さえを止めることは原則としてできません。債権者に解除を依頼することは可能ですが、応じるかどうかは債権者の判断次第であり、確実性に欠けます。

個人再生は裁判所を介した手続きであるため、再生手続き開始決定によって差し押さえを中止させることが可能です。同時廃止の自己破産と同様に、開始決定で差し押さえが中止され、再生計画認可の確定をもって失効します。持ち家を維持しながら差し押さえも止めたい場合は、個人再生が有力な選択肢となります。

すでに差し押さえが始まっていて、一刻も早く止めたいという状況であれば、裁判所を通す自己破産か個人再生のいずれかを選択し、弁護士に迅速な対応を依頼するのが現実的です。どちらの手続きを選ぶかは借金の総額や保有資産の状況によって異なるため、弁護士と相談して判断しましょう。

差し押さえを受けたときにすぐやるべきこと

差し押さえの通知を受け取ったとき、またはすでに給与が天引きされ始めたときに、焦って誤った行動を取ると状況がさらに悪化します。以下の手順で冷静に対応してください。

  • まず弁護士に連絡する:差し押さえは時間との戦いであり、早く動くほど被害を小さくできる。債務整理に強い弁護士事務所に電話やメールで相談の予約を入れる
  • 差押命令の書類を持参して相談に行く:裁判所から届いた書面は最も重要な資料。債権者名、差し押さえの対象、金額などが記載されており、弁護士がこれを見て最適な対応策を判断する
  • 自分で債権者と交渉しない:差し押さえが始まった段階で個人が交渉しても解除に応じてもらえることはほぼない。弁護士を通じた法的手続きに切り替えるほうが確実
  • 口座から急いでお金を引き出さない:差し押さえが進行中に口座残高を移動させると、財産隠しと見なされるリスクがある。行動を起こす前に必ず弁護士の判断を仰ぐ

まとめ

自己破産を申し立てて裁判所から破産手続き開始決定が出れば、借金を原因とする差し押さえは止めることができます。管財事件では開始決定と同時に失効し、同時廃止では中止のうえ免責確定後に失効するという違いはありますが、いずれの場合も差し押さえの解消に向けた法的な効力を持ちます。一方で、税金や養育費に基づく差し押さえは自己破産では止められないため、原因に応じた対処が必要です。

なお、すでに差し押さえが実行され、債権者に渡ってしまった給与を取り戻すことは原則としてできません。だからこそ、被害を最小限に食い止めるためにも、一日でも早く行動を起こすことが鍵になります。

差し押さえは放置するほど生活を圧迫し、回復が難しくなります。差し押さえの通知を受け取った段階、あるいは滞納が続いて差し押さえの可能性が出てきた段階で、できるだけ早く弁護士に相談してください。手続きの選択から裁判所への対応まで、弁護士が一括して代行してくれるため、差し押さえの恐怖から解放され、生活再建に集中できる環境を取り戻せるはずです。

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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