「自己破産=家族の人生も終わる」は誤解? 依頼者の3年を弁護士が紹介
自己破産のご相談で多いのが、家族の人生まで終わってしまうのではないか、というご不安です。妻は離婚を考えるのではないか、子どもは学校で噂されるのではないか、自分の親や兄弟との関係も壊れるのではないか。手続きの前にこれだけのことを思い詰めて、何年もご相談に踏み切れないまま過ごされる方も少なくありません。
実際のところはどうなのか。免責決定までの1年、そこから先の2年、合計3年というスパンで、ご家族の生活がどう動いていくのか。これまで担当してきた多くの自己破産案件で見てきた共通の流れを、時系列に沿ってお伝えします。
一人で悩んでいませんか?
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
- ✓ 初回相談無料
- ✓ 親身誠実に、全力で弁護士が依頼者を守ります。
- ✓ 全国どこからでも24時間年中無休でメール・電話・LINEでの相談ができます。
目次 [閉じる]
ご相談時に抱えておられる3つの不安
ご相談にお越しになる方が、最初に口にされるご不安は、整理するとおおむね次の3つに集約されます。
- 子どもの進学や学校生活に影響しないか
- 配偶者が離婚を切り出さないか
- 自分の親や兄弟との関係が悪くならないか
借金そのものよりも、家族の生活が崩れることへの恐怖が前面に出ていることが多く、ご本人が借金の額や手続きの内容について語り始めるのは、これらのご不安にひととおり答えたあとになります。
3つのご不安に対して、その場でお伝えする事実はシンプルです。お子様の進学に法的な影響はなく、戸籍や住民票にも何も載りません。離婚はご本人と配偶者の選択次第であって、自己破産が直接の離婚事由になるわけではありません。ご両親や兄弟に知られるかどうかは、ほとんどの場合、ご自身から伝えない限り知られないままです。
すぐに納得していただけることばかりではありませんが、何年も誰にも話せずに抱えていたものを外に出せたというだけで、ご相談者の表情が和らぐ瞬間がよくあります。ご家族のことを心配されている方ほど、まずはこの段階で事実関係を整理することが、その先のすべての判断の出発点になります。
1年目:受任から免責決定まで
最初の1年は、書類の準備と申立て、そして手続きが進んでいく過程です。ご家族にとっては、いちばん不安が強い時期でもあります。
配偶者への説明は受任通知の前に
ご依頼を受けてまずお願いするのが、配偶者にすべてを話していただくことです。受任通知を出すと債権者からの催促は止まりますが、その代わり数か月後には裁判所からの郵便物が自宅に届きます。ご本人が話していないと、配偶者が郵便を先に見て、関係がこじれます。
説明の場面では、最初の30分が険悪な空気になることはあります。しかし、配偶者の方は借金の存在を薄々感づいておられることが多く、最終的には一緒に乗り越えるという方向に落ち着くケースが大半です。むしろ早く言ってくれてよかった、という反応になることも少なくありません。
逆に、黙って進められたケースで関係がこじれた事例は、私自身も何度か目にしてきました。説明を早めに切り出すことの効果は、現場感覚として明らかです。
申立てから免責までの流れ
保有資産が現金や少額の預金だけのケースでは、同時廃止という比較的簡易な手続きで進むことが多く、受任通知の発送から申立てまでが約2か月、申立てから免責決定までがさらに約3か月から半年というのが、一般的なスケジュール感です。
保有資産がある場合や、ギャンブル・浪費などの免責不許可事由が問題になる場合は管財事件となり、もう少し時間がかかります。それでもトータルで1年以内に免責決定まで進むことが多いのが実務の印象です。
この期間中、ご本人は督促の電話から解放され、夜眠れるようになりますと話してくださる方が大半です。家計が一気に楽になるわけではないものの、毎月の返済額がゼロになるという事実だけで、生活の空気はかなり変わります。
配偶者との関係も、借金が原因で隠していた事柄がなくなることで、事務的な会話が戻ってくることが多い時期です。家計簿を一緒に見直す習慣ができたというご報告も、繰り返し聞いてきました。
2年目:信用情報ブラックでの暮らし
免責決定が確定したあと、日常生活はどう変わるのか。ここがいちばん気になる方が多い部分だと思います。
クレジットカードと現金生活
ご本人の信用情報は、CIC、JICC、KSCの3つの信用情報機関に事故情報として登録されます。期間は5年から7年で、その間は新規のクレジットカードもローンも組めません。
実際に支障が出やすいのは、次のような場面です。
- ETCカードを新しく作れない(ETCパーソナルカードという保証金方式で代替できます)
- クレジット決済のみの通販サイトが利用できない(デビットカードや家族名義カードで対応します)
- スマートフォンの本体代金の分割払いが難しい(一括払いに切り替えます)
買えないわけではなく、代替手段があるものばかりなので、結果的に大きな不便を感じない方が多いというのが正直なところです。むしろ現金主義に切り替えたことで家計の見通しが立ちやすくなった、という前向きな声のほうがよく聞かれます。
お子様の学校生活
ご相談時にもっとも心配されることの多いお子様の進学について、現場で見てきた範囲では、実害が出た事例はほとんどありません。
戸籍や住民票に記載が残らないこと、お子様の信用情報には何も載らないこと、学校の内申書や出願書類のどこにも親の経済状況を書く欄がないこと。この3点が揃っているため、学校で噂が立つ、進学先で不利になる、といった懸念はほぼ起こりません。
家計が逼迫していたご家庭でも、毎月の返済から解放されたぶん、給食費や教材費、修学旅行の積立、塾の月謝といった出費が、以前より無理なく払えるようになったというご報告を多くいただきます。借金の返済を続けながら子育てするより、自己破産後のほうが、子どもにかかるお金は安定する傾向があります。
親や兄弟への対応
ご両親や兄弟への報告は、ご本人の判断次第です。連帯保証人になっていない限り、伝える法的な必要はなく、知られる経路も実務上はほぼありません。
ただし、官報には氏名と住所が掲載されます。一般の方が官報を日常的に閲覧することはありませんが、ご親族のなかに金融関係や法律関係の仕事をされている方がいる場合は、伝わる可能性がゼロではありません。これを心配される方には、事前にご自身から伝えておいたほうが安全とお伝えしています。
実際に伝えた場合のご家族の反応も、多くの場合は予想より穏やかです。心配されることはあっても、関係が壊れたという事例にはほとんど出会いません。
3年目:家計と心の立て直し
3年目に入ると、生活の見え方が変わってきます。借金から解放された状態が日常になり、その上に家計や貯蓄を組み立て直す段階です。
貯蓄ができるようになる
借金がなくなると、当然ながら、毎月の返済に消えていたお金が残ります。月3万円から5万円ほどの返済をされていた方であれば、年間で40万円から60万円が浮く計算です。これを生活費に吸収させずに、貯蓄として残せるかどうかが、3年目の大きなテーマになります。
うまく軌道に乗せられたご家庭では、3年目の終わりに100万円前後の貯蓄ができていることがあります。自己破産直後にはまったく想像できなかった景色だと、ご本人が驚かれる場面によく立ち会います。
家族の空気が変わる
3年目になると、配偶者やお子様の側にも変化が出てきます。借金があった時期の張り詰めた空気がなくなり、家族で外食ができるようになった、旅行を計画できるようになった、というご報告をよくいただきます。
ご相談時には離婚を心配されていた方でも、3年目に近況を伺うと、夫婦関係が以前よりむしろ良くなった、というケースも珍しくありません。借金が抱えていた秘密や緊張がなくなった結果として、家族の対話が増えた、というのが共通する変化です。
信用情報の回復に向けた準備
3年目の終盤になると、信用情報の事故登録が消える時期が見え始めます。CICとJICCはおおむね5年、KSCは7年というのが目安で、自己破産から3年目の段階では、まだ事故情報は残っています。
この時期にできるのは、消えたあとに新しいクレジット履歴をスムーズに積み上げるための準備です。具体的には、銀行口座の取引履歴を整え、給与振込や公共料金の引き落としを継続することで、金融機関から見た信用の基礎を作っておきます。事故情報が消えた直後に申し込みをしても、過去の取引履歴がゼロだとかえって審査が通りにくいため、地道な実績作りが効いてきます。
3年で見えてくる景色
自己破産から3年が経つと、多くのご家庭で次のような変化が定着しています。
- 借金の督促から解放され、家族の会話に余裕が戻る
- 現金主義の家計が定着し、毎月の収支が見えるようになる
- 子どもの教育費や日常の支出が、以前より無理なく払える
- 配偶者との信頼関係が、借金を抱えていた時期より深まる
- 信用情報の回復に向けた基礎が整い始める
自己破産で家族の人生が終わるという発想は、現場の実感とは大きく違います。手続きをきっかけに、むしろ家計と家族関係が立て直されたというケースのほうが、私が見てきた範囲では明らかに多いというのが率直なところです。
もちろん、すべてのご家庭が同じようになるわけではなく、配偶者との関係が思うように修復しないケースや、信用情報の回復に苦労されるケースもあります。それでも、自己破産という選択肢が家族の終わりを意味するわけではない、ということだけは、繰り返しお伝えしたい点です。
家族のことが心配で手続きをためらっておられる方ほど、まずは正確な事実を知ることから始めてみてください。多くの場合、ご想像されている悲観的な未来とは、かなり違う3年が待っています。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。