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債務整理しても家は残せる? 住宅ローンがあるときの選び方を弁護士の現場から解説

2026.06.25 弁護士コラム

債務整理を検討される方の中でも、持ち家をお持ちの方からのご相談は、とくに慎重な判断が必要になります。家を失うことになるのか、家族の生活拠点をどうするのか、というご不安は、借金の額そのものよりも重く受け止められる方が多いというのが現場の実感です。

結論からお伝えすると、住宅ローンがあっても家を残せる選択肢は複数あります。ただし、選べる選択肢はご自身の状況によって異なり、判断を誤ると家を失うだけでなく経済的にも悪い方向に進むことがあります。本記事では、住宅ローンがある状態で債務整理を考える際の判断基準と、家を残すための具体的な選択肢を整理します。

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まず確認すべき自宅とローンの状態

住宅ローンがある状態で債務整理を考える前に、まず確認していただきたいことが3点あります。

  • 自宅の現在価値と住宅ローン残債の関係(アンダーローンかオーバーローンか)
  • 住宅ローンに延滞が発生しているかどうか
  • 住宅ローン以外の借金の総額

自宅の売却価格が住宅ローン残債を上回る状態をアンダーローン、下回る状態をオーバーローンと呼びます。アンダーローンであれば、最悪の場合でも自宅を売却して住宅ローンを完済できる余地がありますが、オーバーローンの場合は売却しても残債が残る計算になります。

住宅ローンの延滞は、選べる選択肢を大きく左右します。延滞が6か月程度続くと、金融機関は期限の利益喪失を通告し、保証会社が代位弁済する流れに入ります。代位弁済が起きると、個人再生の住宅ローン特則を使うには代位弁済から6か月以内に申立てを行う必要があり、時間との勝負になります。

住宅ローン以外の借金の総額は、家を残せる手続きを選べるかどうかの目安になります。総額が500万円を超える場合は個人再生、それ以下なら任意整理という大まかな振り分けが、現場でよく使われる感覚です。

任意整理:住宅ローン以外の借金だけを整理する

住宅ローンの返済は無理なく続けられるけれど、ほかの借金が膨らんで生活を圧迫している、というご相談には任意整理が第一候補になります。

任意整理は対象とする債権者を自分で選べる手続きです。住宅ローンを対象から外し、消費者金融やクレジットカードなどの高金利の借金だけを整理することで、家計の負担を軽くしつつ自宅と住宅ローン契約はそのまま維持できます。

任意整理が向いているのは、次のような状況の方です。

  • 住宅ローンに延滞がなく、月々の返済は続けられている
  • 住宅ローン以外の借金が概ね300万円程度までで、利息カットすれば返済の目処が立つ
  • 安定した収入があり、生活費を確保しながら毎月返済原資を捻出できる

この場合、住宅ローンは何の影響も受けず、自宅の所有権もそのままです。家族にも知られにくく、生活の表面上の変化はほとんどありません。

注意点としては、住宅ローン以外の借金の総額が大きすぎる場合や、住宅ローンの返済自体が苦しい場合、任意整理だけでは家計の立て直しが追いつかないという点です。利息カットだけで間に合わないなら、次の個人再生を検討することになります。

個人再生(住宅ローン特則):家を維持する正攻法

個人再生は、裁判所の手続きを使って借金を5分の1〜10分の1に圧縮する方法です。このとき、住宅ローン特則(民事再生法196条以下)という仕組みを併用することで、自宅と住宅ローンはそのままにしながら、その他の借金だけを大幅に減らすことができます。

住宅ローン特則を使うための主な要件は次のとおりです。

  • 対象不動産が本人の所有である
  • 本人または家族が居住している
  • 床面積の2分の1以上が居住用である
  • 住宅ローン以外の抵当権が設定されていない
  • 住宅ローンに保証会社の代位弁済がある場合、代位弁済から6か月以内に申立てを行う

オーバーローンかアンダーローンかは、住宅ローン特則の適用要件には関係ありません。家の現在価値がローン残債を下回っていても、住宅ローン特則は使えます。

個人再生は、住宅ローン以外の借金が500万円〜5,000万円の範囲にあり、安定した収入で減額後の借金を3〜5年で返済できる方が対象です。住宅ローンの返済は通常どおり続けながら、ほかの借金だけを大幅に圧縮できるため、家を残したまま家計の再建ができる、家を持つ方にとっての本命と言える手続きです。

なお、ペアローンや収入合算で住宅ローンを組んでいる場合、配偶者名義の抵当権が設定されていることがあり、その場合は住宅ローン特則の要件を満たせません。事前の確認が必須です。

自己破産:原則として自宅は手放すことになる

自己破産は、借金の支払い義務を法的に消滅させる手続きです。効果は大きいものの、自宅についてはほぼ確実に手放すことになります。

自宅は破産財団に組み込まれる財産となり、破産管財人によって換価処分されます。住宅ローンが残っている自宅は、抵当権を持つ金融機関が担保権を実行するため、任意売却または競売という流れで処分されます。

任意売却と競売の主な違いは次のとおりです。

  • 任意売却:金融機関の同意のもとで市場価格に近い価格で売却。引越し時期の調整が可能
  • 競売:裁判所主導で強制売却。市場価格より3割程度安くなる傾向があり、引越し時期も選べない

自己破産が決まっても、すぐに家を出る必要はありません。任意売却や競売の手続きが完了するまでには通常6か月から1年程度かかりますので、その間は自宅に住み続けられます。新居の確保や引越しの段取りは、この期間内に進めていく形になります。

なお、自己破産前に自宅の名義を親族に変更しておこうという発想は、絶対に避けてください。詐害行為として後から取消しの対象となり、結果的に名義変更にかかった登記費用や税金が無駄になります。

家に住み続けるための代替策

個人再生の住宅ローン特則が使えない場合や、自己破産を選んでも住み慣れた家を離れたくない場合に、自宅に住み続けるための代替策が2つあります。

親族間売買:

  • ご親族に自宅を購入してもらい、その後賃貸契約を結んで住み続ける
  • 自宅の所有権は親族に移るが、引越しは不要
  • 親族にまとまった資金や住宅ローンを組む余力が必要
  • 金融機関が親族間売買の売却価格を厳しく審査する点に注意

リースバック:

  • 不動産会社や投資家に自宅を売却し、その後賃貸として住み続ける
  • 自宅の所有権は買主に移るが、引越しは不要
  • 売却金で住宅ローンを完済し、その後は家賃を払う形になる
  • 家賃は相場より高めに設定されることが多く、長期で見ると負担が大きい
  • 将来買い戻せる契約を結べる場合もある

どちらも、自宅の所有権は手放すことになりますが、生活拠点を変えずに済むという点で、家族の生活への影響を抑えられます。とくにお子様の通学や、ご高齢のご家族の通院などで引越しが難しい場合に検討される選択肢です。

ケース別の判断基準

ここまでの整理を踏まえて、ケース別の選び方を整理します。

住宅ローンに延滞がなく、ほかの借金もそれほど大きくない場合:

  • 任意整理で住宅ローン以外を整理するのが第一候補
  • 自宅も住宅ローン契約もそのまま維持できる

ほかの借金が大きく、住宅ローン以外を圧縮したい場合:

  • 個人再生(住宅ローン特則)で自宅を残しながら他の借金を圧縮
  • もっとも一般的な選択肢

住宅ローンの返済自体が苦しく、家を諦めざるを得ない場合:

  • 自己破産で借金を整理しつつ、新居を探す
  • 任意売却で売却時期と引越し時期を調整するのが現実的

家を諦めても、住み慣れた家を離れたくない場合:

  • リースバックまたは親族間売買で所有権を手放しつつ住み続ける
  • 自己破産と組み合わせて検討する

住宅ローンが代位弁済された、または滞納が長期化している場合:

  • 個人再生の住宅ローン特則を使うなら、代位弁済から6か月以内の申立てが必要
  • 期限が迫っている場合は、最優先で弁護士に相談する

これらはあくまで大枠の判断基準です。実際には収入や家族構成、お子様の年齢、勤務先との通勤距離など、ご家族ごとの事情を踏まえて最終的な方針を決めることになります。

まとめ:早めに状況を整理することが家を守る最大のコツ

住宅ローンがある状態での債務整理は、選択肢が複雑に絡み合います。ただし、選択肢そのものは複数あり、家を残しながら借金問題を解決できる道は決して少なくありません。

  • 任意整理:住宅ローンを温存しながら他の借金を整理
  • 個人再生(住宅ローン特則):家を残す正攻法、もっとも一般的な選択
  • 自己破産:家は手放すが借金はゼロに
  • リースバック・親族間売買:所有権を手放しても住み続ける代替策

家を残したいというご希望が強いほど、早く動くことが選択肢を広げる最大の要因になります。住宅ローンの延滞が長期化したり、代位弁済が起きたりすると、せっかくの個人再生という選択肢が使えなくなることもあります。家を残せるかどうかは、相談に来られたタイミング次第で大きく変わる、というのが現場での率直な印象です。

借金問題の整理は、ご家族の住まいを守ることでもあります。判断に迷う段階で、まずは状況を整理する場として専門家に相談されることをおすすめします。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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