個人再生でやってはいけない5つのこと 不認可を避ける行動と注意点を解説【弁護士解説】
個人再生は、自己破産と違って借金を圧縮しながら住宅などの財産を残せる手続きですが、その分、手続き中の行動が結果を大きく左右します。やってはいけないことを一つでもやってしまうと、再生計画が不認可になり、最悪の場合は自己破産へ切り替えざるを得なくなることもあります。
ご相談の現場で実際に見てきたなかで、とくに失敗事例が多い5つの行動と、それを避けるための具体的な注意点を整理しました。これから個人再生を検討される方にも、すでに申立て準備中の方にも参考にしていただける内容です。
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個人再生で不認可になる根本のロジック
5つの行動を見ていく前に、個人再生がどういうときに不認可になるのか、根本のロジックを押さえておきます。民事再生法174条2項に不認可事由が定められており、現場で問題になるのは主に次の2点です。
- 再生計画が遂行される見込みがないとき(履行可能性の問題)
- 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき(清算価値保障の原則の問題)
履行可能性は、減額後の借金を計画どおり3年から5年で払い続けられるかという視点です。継続的な収入があり、家計収支のバランスが取れていることが大前提になります。
一般の利益というのは、債権者が自己破産の場合に受け取れる配当より、個人再生のほうが多く受け取れる状態であることを求めるものです。具体的には、保有財産の総額(清算価値)以上の弁済をする計画になっている必要があります。
これから紹介する5つのやってはいけないことは、すべてこの2つのどちらか、あるいは両方を損なう行動です。なぜダメなのかが腑に落ちると、ご自身の行動を判断しやすくなります。
やってはいけないこと① 偏頗弁済(特定の債権者への返済)
個人再生でいちばん起きやすく、影響が大きいのが偏頗弁済です。これは、複数の債権者のうち、特定の債権者だけに優先して返済する行為を指します。
現場で多いのは次のパターンです。
- 親族や友人から借りていたお金だけを先に返済してしまう
- いつもお世話になっている取引先や個人経営の業者にだけ払う
- 連帯保証人に迷惑をかけたくないという理由で、保証付きの借金だけ完済する
- 残しておきたいクレジットカードの残高だけ返す
どれも心情としては理解できる行動です。しかし、個人再生では債権者平等の原則が大前提になっているため、特定の債権者だけを優遇する行為は計画認可を妨げる要因になります。
偏頗弁済が判明すると、支払った金額が清算価値に加算され、結果として再生計画での返済総額が増えます。それで済めばまだいいほうで、悪質と判断されれば不認可になることもあります。
弁護士に依頼したあと(受任通知発送後)の返済は、ご本人の意思での個別返済が原則として禁止されます。ご相談の場で、これだけはやらないでくださいと最初にお伝えする項目のひとつです。
やってはいけないこと② 財産隠しと名義変更
個人再生では、すべての保有財産を申告する必要があります。預金、保険、自動車、不動産、貴金属、株式、暗号資産など、ご自身名義のものは漏れなく開示するのが大原則です。
ここで起きがちなのが、申立て前に財産を家族名義に移してしまう行動です。
- 夫名義の預金を妻名義に移す
- 自動車の名義を親に変更する
- 高額な貴金属や時計を親族に渡す
- 暗号資産を家族のウォレットに送る
こうした行動は、清算価値を不当に低く見せようとする行為と評価され、申立て自体が信用を失います。再生委員や裁判所は、過去2年程度の預金口座の入出金履歴や、不動産・自動車の名義変更履歴を確認しますので、駆け込み的な財産移動はほぼ判明します。
判明したあとは、移動した財産の評価額が清算価値に加算され、返済総額が増える形で精算されるのが通常の流れです。悪質な隠匿があった場合は、再生計画が不認可となり、自己破産に切り替えざるを得なくなることもあります。
財産を家族と一緒に守りたいという気持ちは理解できますが、自己流の名義変更は逆効果です。残せる財産の範囲は弁護士と相談しながら、合法的な方法で整理するのが、結果的にいちばん得策になります。
やってはいけないこと③ 申立て直前の借入や浪費
ご相談に来られる前後の数か月で、新たに借入をしたり、高額な消費をしたりするのも避けるべき行動です。
具体的には次のような行為が該当します。
- 消費者金融やキャッシング枠から新たに借入をする
- クレジットカードで高額な買い物をする
- 海外旅行や高額な娯楽に支出する
- 浪費やギャンブルにまとまった金額を使う
これらは、履行可能性と一般の利益の両方を損ないます。借金が増えれば返済原資が圧迫されますし、申立て直前の借入は破産・再生手続きを見越した詐欺的な借入と評価されることもあります。
とくに気をつけたいのが、ご相談から申立てまでの数か月間です。受任通知を発送すると返済が止まり、手元のキャッシュフローが一時的に楽になるため、つい使ってしまう方がいらっしゃいます。しかし、この期間の支出は申立て時の家計収支表ですべて確認されますので、贅沢な支出があれば必ず質問されます。
ご相談に入った時点から、家計を見られているという意識で日常の支出を整えていただくのが、結果的に手続きをスムーズに進めるコツです。
やってはいけないこと④ 履行テストの不払い
個人再生の手続中、多くの裁判所で履行テストが課されます。これは、再生計画認可後に予定されている毎月の弁済額を、ご本人が実際に積み立てられるかを確認するための仕組みです。
具体的には、再生委員または申立代理人の口座へ、毎月一定額を振り込む形が一般的です。期間は裁判所によって異なりますが、東京地裁ではおおむね3〜4か月、長いところでは6か月程度になります。金額は再生計画案での予定弁済額に相当する水準が設定されます。
たとえば、借金600万円を5分の1の120万円に圧縮し、3年で返済する再生計画案であれば、毎月の弁済額はおよそ3万3,000円になります。履行テストでは、これと同程度かそれ以上の金額を毎月積み立てることが求められます。
履行テストで振込みの遅れや未払いが続くと、再生計画の遂行可能性が疑われ、不認可の方向に動きます。
- 振込みを忘れて1か月飛ばしてしまう
- 残高不足で引き落としできない月がある
- 期日より大幅に遅れて入金する
こうした事象が1〜2回程度であれば事情説明で乗り切れることもありますが、繰り返されると裁判所の評価は確実に下がります。
履行テストを乗り切るためには、振込みを毎月の固定支出として家計に組み込み、給料日直後に自動で振り込む設定にしておくのが安全です。金額が家計を圧迫するレベルなら、その時点で再生計画案そのものの見直しを弁護士と相談したほうがよいサインでもあります。
やってはいけないこと⑤ 申立て後の新たな債務や保証
申立てから認可までの期間や、認可後の再生計画返済期間中に、新たな債務を負うのも避けるべき行動です。
- 新規のクレジットカード申込み(信用情報の関係でほぼ通りませんが、申込み履歴は残ります)
- 家族や知人の借金の保証人になる
- 携帯電話の本体代を高額機種の分割払いで契約する
- 後払い決済サービスやリボ払いの利用枠を増やす
これらは履行可能性を直接損ないます。再生計画は、現在の収入で減額後の借金を返済できるという前提で成り立っていますので、新たな返済義務が加わると前提そのものが崩れます。
再生計画認可後についても、3年から5年の返済期間中は新たな借入を控えるのが基本です。返済が完了するまでは、現金主義の生活を継続することが、再生を成功させるための最後の鍵になります。
まとめ:不認可を避けるための基本姿勢
5つのやってはいけないことを振り返ると、共通しているのは、再生計画の前提となる2つの軸(履行可能性と一般の利益)を、自分の手で崩さないという姿勢です。
- 偏頗弁済は債権者平等の原則を崩す
- 財産隠しは清算価値を歪める
- 申立て直前の借入と浪費は履行可能性と一般の利益の両方を損なう
- 履行テストの不払いは履行可能性そのものを疑わせる
- 申立て後の新規債務は再生計画の前提を崩す
これらをすべて避けるのは難しいことではないのですが、心情的にやってしまいがちな行動が含まれているのが厄介な点です。とくに親族や友人への返済、家族の生活を守りたいという気持ちからの行動は、ご本人にとっては良かれと思ってのことが多いだけに、事前の情報整理が欠かせません。
迷う行動があれば、自己判断で進める前に必ず弁護士に確認することが、不認可を避けるためのいちばん確実な方法です。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。