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自己破産で家族にデメリットはある? 配偶者・子ども・親への影響を解説【弁護士解説】

2026.07.08 弁護士コラム

自己破産をご検討の方からご相談を受けていて、いちばん多く出てくるのが家族の話です。妻のクレジットカードが止まらないか、子どもの進学に影響しないか、実家の親に迷惑をかけないか。借金の額や手続きの中身よりも、まず家族のことを心配されている方が本当に多いというのが、現場での実感です。

結論を先にお伝えしておくと、自己破産は原則として本人の手続きであり、家族には法的な影響がほとんど及びません。ただし、まったくのゼロかというとそうでもなく、いくつかの場面では生活に波及することがあります。本記事ではその境目を、現場で実際に起きていることに沿ってお伝えしていきます。

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自己破産の効力は本人だけに及ぶのが大前提

まず押さえていただきたいのは、自己破産という制度がそもそも誰のためのものか、という点です。

自己破産は、本人の経済的な再出発を目的とした制度で、免責の効果は本人の債務だけに及びます。配偶者やお子様、親御様が連帯保証人になっていない限り、家族の方が代わりに支払う義務を負うことはありません。

信用情報の事故登録も同じです。CIC、JICC、KSCの3つの信用情報機関のいずれも、登録対象は本人だけで、家族の信用情報に破産の事実が記録されることはありません。配偶者やお子様が新たにクレジットカードを作ったり、住宅ローンを組んだりするときに、家族の誰かが過去に破産したからという理由で審査に落ちることもありません。

戸籍や住民票への記載もありません。本籍地の市町村が発行する身分証明書には、復権までの間だけ破産者である旨が記載されますが、これは結婚や就職、賃貸契約などで日常的に提出する書類ではありません。

つまり自己破産は、基本的には本人のなかで完結する手続きです。そのうえで、生活実態が家族と地続きになっている部分では、デメリットが出てくる場面があります。

配偶者へのデメリット

配偶者への影響は、ご相談で最もよくお尋ねいただくテーマです。

妻(夫)の信用情報やカードはどうなるか

配偶者本人が連帯保証人や名義人になっていない限り、配偶者の信用情報には何の傷もつきません。奥様や旦那様がご自身で持っているクレジットカードは、ご自身に延滞や事故がなければそのまま使い続けられます。

少し注意が必要なのが家族カードです。家族カードは本会員、つまり破産者本人の契約に紐づく付帯のカードなので、本人の手続きにあわせて自動的に止まります。これは配偶者の信用に問題があるという話ではなく、本会員の契約自体が終わるからカードも終わるという、ごく単純な理屈です。

以前、奥様のカードが止まると思い込んで何年も手続きを先延ばしにされていた方を担当したことがありました。話を伺うと、奥様のカードはご本人とは別の本人会員契約のものでしたので、まったく影響しませんとお伝えしました。そのご相談者はその場でずいぶん表情が和らいだのを覚えています。

共有財産はどこまで処分されるのか

ご夫婦の財産の扱いは、自己破産でいちばんデリケートな部分かもしれません。

民法762条1項は、婚姻前から持っていた財産と、婚姻中に自分の名前で得た財産は、その人の特有財産になると定めています。実務でも、破産管財人が回収の対象とするのは本人の特有財産だけで、配偶者名義の預金や不動産は、配偶者の収入や資金で得たものである限り原則として手をつけられません。

ただし、次のようなケースでは管財人の調査が入ります。

  • 破産直前に本人名義の財産を配偶者名義へ変更した
  • 配偶者名義の口座を、実質的に本人の生活費口座として使っていた
  • 配偶者名義の不動産だが、ローン返済の原資が本人の収入だった

これらは破産法160条以下の否認権の対象になり、管財人が裁判所の認可を得たうえで取り戻しを求めます。困ったときに財産を家族名義に移しておこうという発想は、結果的に手続きをかえって複雑にしてしまうので、自己流での名義変更は避けたほうが無難です。

家の中の家具・家電はほとんど残せる

家にあるものを全部持っていかれるのではないか、というご相談はとても多いのですが、結論からいえばこれはほぼ杞憂です。

破産法34条3項に自由財産という枠が定められていて、生活に必要な家電や家具は原則として処分の対象になりません。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった通常品は中古評価額がほとんどつかないため、回収されることは実務上まずありません。

加えて、現金99万円までは破産法上の自由財産として当然に手元に残せます。預金や保険解約返戻金、自動車などについては、東京地裁の運用では各項目20万円以下であれば申立てなしに自由財産扱いとなり、それを超える分は自由財産拡張の申立てで判断されます。総額99万円以下に収まる場合は比較的緩やかに認められる運用です。

配偶者の所有物はそもそも対象外ですので、同居中の生活への影響は、実際にはずっと小さいはずです。

子どもへのデメリット

お子様の将来に傷がつかないか、というご不安も、配偶者と並んで重い相談です。

結論として、お子様の進学・就職・結婚に対して、親の自己破産が法的に響くことはありません。戸籍にも住民票にもいっさい載りませんし、お子様の信用情報にも記録されません。学校や就職先がそれを知る方法は実務上ありません。

そのうえで、奨学金についてだけは独自の論点があります。

奨学金は保証方式によって扱いが変わる

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金には、人的保証と機関保証の2種類があります。

  • 人的保証:連帯保証人と保証人を立てる方式。親が連帯保証人になっていれば、親の自己破産で連帯保証債務も免責の対象となり、保証人を立て直す手続きが必要になります
  • 機関保証:毎月の奨学金から保証料が差し引かれる方式。親の経済状況とは切り離されているので、親が自己破産してもお子様の奨学金はそのまま続きます

これからお子様が奨学金を申請する段階であれば、機関保証を選んでおくと親の状況と切り離せます。すでに人的保証で受給中の場合も、JASSOへ事情を伝えれば保証人の変更や機関保証への切り替えの案内を受けられますので、奨学金そのものが打ち切られるわけではありません。

養育費は免責されない

離婚後にお子様への養育費を支払っている場合、養育費の債務は破産法253条1項4号ハ(民法766条の子の監護義務)により非免責債権です。自己破産で免責が下りても、養育費の支払義務はそのまま残ります。

これは子どもの生活を守るための制度なので、現場で見ても合理的な仕組みだと思います。養育費が払えないほど経済状況が厳しいときは、家庭裁判所での養育費減額調停という別の道で対応することになります。

相続権はそのまま

親の自己破産は、お子様の将来の相続権を奪うものではありません。法定相続人としての地位は、親の自己破産という事実によって変わるものではないからです。

ただし、破産手続中に相続が発生した場合は、相続財産が破産財団に組み込まれる可能性がある点だけは押さえておいてください。

親へのデメリット

実家の親に迷惑をかけたくない、というのもよくあるご相談です。

結論から言うと、親御様が連帯保証人になっていない限り、原則として影響は及びません。逆に、連帯保証人になっておられる場合は、ここが家族へのデメリットとしてはいちばん深刻な場面になります。

連帯保証人への一括請求

ご本人が自己破産すると、債権者は連帯保証人である親御様へ全額を一括で請求します。免責はご本人の債務しか消さないので、保証人としての親御様の支払義務はそのまま残ったままです。

実際にあった事例をひとつご紹介します。50代の方のご相談で、住宅ローンの連帯保証人がご高齢のお母様でした。ご本人の自己破産後、債権者から残債約1,800万円の請求がお母様に届き、結局お母様もご自身で自己破産せざるを得なくなりました。事前にご家族へ事情をお伝えできていなかったため、その後の家族関係にも大きな揺らぎが残ってしまったケースです。

連帯保証人がいらっしゃる場合は、自己破産だけを前提に考えないことが大事です。任意整理であれば、保証人がついている債務を整理の対象から外せる場合があり、保証人への請求を回避できる可能性があります。ただし任意整理は債権者ごとの個別交渉になりますので、借入総額や債権者の構成によっては選びにくいこともあります。なお、個人再生を選んでも保証人への一括請求は原則として止まりませんので、保証人に迷惑をかけたくないという理由だけで個人再生を選ぶ判断には注意が必要です。

親名義の財産は基本的に対象外

親御様名義の不動産や預金、自動車は、ご本人の財産ではないので、原則として回収の対象にはなりません。

ただし、配偶者の場合と同じく、破産直前に本人名義から親名義へ移した財産は否認権の対象になります。困ったときに親へ財産を預けるという発想は、後から見れば駆け込みの財産移転と評価されてしまうことが多く、結果的に手続きをこじらせる原因になりがちです。

家族へのデメリットを抑えるためにできること

ここまでの内容を踏まえて、現場で実際にうまくいった工夫を3つお伝えします。

家族カードと家族契約を事前に独立させておく

ご本人が破産手続に入る前の段階で、家族カードを解約し、奥様やお子様の決済手段を別契約に切り替えておきます。準備期間としては2か月ほどを見ておくと安全です。

ご相談者のなかには、奥様名義のクレジットカードを新しく作って家族の生活費の引き落としを完全に切り替えてから手続きに入った方がいて、結果としてご家族はほとんど不便を感じずに済みました。地味ですが、効果の大きい準備です。

連帯保証人がいるなら手段を比較する

親御様や配偶者が連帯保証人になっている債務がある場合、いきなり自己破産を選ぶのではなく、選択肢を比べて決めるほうが安全です。

  • 任意整理で、保証人付きの債務を整理の対象から外せないか検討する
  • どうしても自己破産や個人再生を選ぶ場合は、保証人へ事前に状況を共有する
  • 保証人ご自身の経済状況によっては、保証人の債務整理もあわせて検討する

どの方法が最適かは、借入総額や収入、保有資産、保証人ご自身の状況によって変わります。一度で結論を出す必要はないので、複数の選択肢を並べて検討するのが安全です。

家族への説明はなるべく早く

迷惑をかけたくないという気持ちから黙って手続きを進める方は少なくありませんが、後から判明したときの関係のこじれは、最初に話していた場合よりずっと大きくなりがちです。

説明のタイミングとしては、受任通知を出す前が落ち着いて話せる時期です。受任通知のあとは債権者からの催促は止まりますが、官報公告や裁判所からの郵便物でご家族が事実を知る可能性が出てきます。郵便を先に見られて関係がこじれてしまったケースも、実際に目にしてきました。

ご自身からの説明が難しい場合は、初回相談の場に同席してもらうという方法もあります。法律家から正確な情報を一緒に聞いてもらうと、誤解の余地がずいぶん減ります。

まとめ:家族へのデメリットは限定的、準備の有無で差がつく

ここまでお読みいただいた方には伝わったと思いますが、自己破産が家族に及ぼすデメリットは、法的に見ればかなり限定的です。配偶者の信用情報、お子様の進学や戸籍、親御様の財産は、原則として何の影響も受けません。

影響が出るのは、連帯保証・名義変更・共有財産・家族カードといった特定のポイントに集中します。逆にいえば、ここを事前に整理しておけば、ご家族への影響は大きく抑えられるということです。家族のことが心配で手続きをためらっておられる方ほど、まずは事実関係を正確に把握することから始めてみてください。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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