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不同意性交等罪で示談はできる?成立のメリットと進め方を弁護士が解説

2026.08.19 弁護士コラム

不同意性交等罪の当事者になってしまったとき、加害者やその家族が最初に知りたいのは、被害者と示談ができるのか、示談すれば前科を避けられるのか、という点ではないでしょうか。結論から言えば、示談は可能です。ただし、それを当事者だけで成立させることはほぼ不可能であり、進め方を誤れば取り返しのつかない事態を招きます。

この記事では、不同意性交等罪における示談が処分にどう影響するのか、成立によって何が得られるのか、そして実際にどのような手順で進むのかを、刑事弁護の実務に沿って解説します。逮捕後の刑事手続き全般ではなく、示談そのものに焦点をあてて整理していきます。

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そもそも不同意性交等罪で示談はできるのか

まず押さえておきたいのは、示談ができるかどうかと、示談すれば必ず不起訴になるかどうかは、別の問題だということです。

不同意性交等罪は、2017年の法改正以降、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪になっています。そのため、示談が成立して被害者が処罰を望まなくなっても、検察官が独自の判断で起訴に踏み切ることは制度上あり得ます。検察官には公訴を提起する権限が独立して与えられており、犯行の悪質性や証拠の有無を総合的に見て、最終的な処分を決めるからです。

それでもなお、示談には決定的といえるほどの意味があります。被害者の処罰感情は、検察官が起訴・不起訴を判断するうえで極めて重要な材料になるためです。被害者が謝罪と被害弁償を受け入れ、加害者を許す意思を示せば、その事実は処分を有利な方向へ大きく動かします。示談は、結果を保証するものではないものの、結果を左右する最大の要素なのです。

なお、被害者の連絡先は捜査機関が加害者側に教えることはなく、加害者本人や家族が被害者に近づこうとすれば、それ自体が威迫や証拠隠滅とみなされかねません。被害者の心情に配慮しながら交渉を成立させられるのは、第三者である弁護士に限られると考えておくべきです。

示談が成立することで得られるメリット

示談がまとまると、刑事手続きのさまざまな局面で有利に働きます。主なメリットは次の4つです。

  • 不起訴処分となり、前科がつかずに済む可能性が高まる
  • 逮捕・勾留されている場合に、早期の身柄解放につながりやすい
  • 起訴された後でも、執行猶予の獲得や刑の軽減が期待できる
  • 被害者にとっても、被害回復が図られ、法廷で証言する負担を避けられる

最大のメリットは、やはり不起訴の可能性が高まることです。起訴される前に示談が成立すれば、検察官が起訴を見送り、前科がつかずに事件が終わることは少なくありません。前科は就労や社会生活に長く影響するため、これを避けられる意味は非常に大きいといえます。

身柄拘束を受けている事案では、示談の成立が早期釈放につながることもあります。被害者が処罰を望まない意思を明確にすれば、身柄を拘束し続ける必要性が低いと判断され、勾留が認められなかったり、途中で釈放されたりするケースがあるためです。職場を長く離れずに済めば、社会復帰のハードルも下がります。

仮に起訴されてしまった後でも、示談には価値があります。後述するとおり不起訴に立ち戻ることはできませんが、被害者が許す意思を示した示談が成立していれば、裁判所が刑を決める際に有利な事情として考慮され、執行猶予や減刑につながる可能性が出てきます。

見落とされがちですが、示談は被害者にとっても利点があります。金銭的な被害弁償を受けられるうえ、事件が公開の裁判に至らなければ、法廷でつらい体験を語らずに済みます。示談は一方的に加害者を救う仕組みではなく、双方にとっての解決策でもあるのです。

示談金の相場と支払いの考え方

気になる示談金ですが、不同意性交等罪はもっとも重い性犯罪に位置づけられるため、示談金もほかの性犯罪に比べて高額になりやすい傾向があります。実務上は、おおむね100万円から300万円程度が目安として語られることが多いです。

ただし、これはあくまで一応の目安にすぎません。被害の態様、被害者の精神的苦痛の程度、被害者の処罰感情の強さ、加害者の資力など、さまざまな事情によって金額は大きく上下し、固定された相場というものは存在しないと考えるべきです。

資力に不安がある場合は、家族の協力を得たり、弁護士費用を抑えて示談金に充てる原資を確保したりする工夫が必要になります。逮捕・勾留されているケースで弁護士費用の負担が重いときは、国選弁護人の利用を検討し、手元の資金を示談金に回すという選択も現実的です。

示談書に盛り込む主な条項

示談は、口頭の合意やお金の受け渡しだけでは不十分です。後の刑事手続きで効力を発揮させるには、内容を書面に正しく落とし込む必要があります。示談書に盛り込まれる主な条項は次のとおりです。

  • 謝罪と被害弁償:加害者が謝罪し、示談金を支払うことを定める
  • 宥恕条項:被害者が加害者を許し、処罰を望まない意思を明記する
  • 清算条項:本件に関する金銭関係を清算し、今後民事上の請求を行わないことを定める
  • 接触禁止条項:加害者が被害者へ一切接触しないことを約束する
  • 口外禁止条項:事件についてSNSなどを含め口外しないことを定める

このなかでとくに重要なのが宥恕条項です。被害者が許すという意思を明確に示した文言があってはじめて、検察官や裁判所はその示談を有利な事情として評価できます。逆に、示談金を支払っても宥恕の文言が欠けていれば、評価は限定的なものにとどまり、期待した効果が得られないこともあります。条項の設計は、結果を分ける専門的な作業なのです。

示談成立までの流れ

実際の示談は、おおむね次のような流れで進みます。

  • 加害者側が弁護士に依頼する
  • 弁護士が捜査機関を通じて、被害者へ示談の意向があることを伝える
  • 被害者の同意が得られれば、弁護士が連絡を取り交渉を始める
  • 謝罪・示談金・各条項について条件を詰め、示談書を作成する
  • 示談金を支払い、示談が正式に成立する
  • 弁護士が捜査機関や裁判所に示談書の写しを提出し、処分の軽減を求める

ここで知っておきたいのは、示談書には被害者の氏名や連絡先といった個人情報が記載されるため、弁護士が保管し、加害者本人やその家族には開示されないのが原則だという点です。被害者の安全と心情に配慮した運用であり、信頼できる弁護士に任せることが前提になります。

示談のタイミングが結果を大きく左右する

示談において、内容と同じくらい重要なのがタイミングです。

不起訴を目指すのであれば、検察官が起訴・不起訴を判断する前、すなわち勾留の満期までに示談を成立させる必要があります。このタイムリミットを過ぎて起訴されてしまうと、その後にどれだけ立派な示談ができても、さかのぼって不起訴になることはありません。起訴後の示談は、執行猶予や減刑を狙う情状立証へと、目的そのものが変わってしまうのです。

しかも不同意性交等罪は、性犯罪のなかでも罰金刑の定めがない重い罪であり、起訴後に示談が成立しても実刑判決が下ることは珍しくありません。だからこそ、起訴前のかぎられた時間内に示談を成立させることが何より重要になります。被害者の処罰感情が強い事案では交渉に時間を要することも多く、一刻も早い着手が結果を左右します。

示談が難しい場合の対応

被害者の感情が強く、示談そのものを拒まれることもあります。連絡を取ること自体を断られる場合も少なくありません。それでも、時間の経過とともに被害者の気持ちが変わることもあるため、誠実な姿勢で粘り強く働きかける余地は残されています。

どうしても示談に至らない場合の手段として、被害弁償金を法務局に預ける供託や、慈善団体などへ寄付を行う贖罪寄付といった方法もあります。これらは反省や被害弁償の意思を示すものとして一定の意味を持ちますが、被害者本人の許しを得た示談に比べると効果は限定的です。また、容疑を否認している事案でも、有罪となるリスクに備えて示談を検討すべきか、弁護士とともに慎重に見極める必要があります。

まとめ

不同意性交等罪でも示談は可能であり、成立すれば不起訴や早期の身柄解放、起訴後の減刑など、大きなメリットが期待できます。ただし非親告罪である以上、示談がそのまま不起訴を約束するわけではなく、宥恕条項を備えた適切な内容の示談を、起訴前のタイムリミット内に成立させられるかが結果を分けます。

被害者の連絡先の入手から条項の設計、捜査機関への働きかけまで、いずれも当事者だけで進められるものではありません。示談を考えるなら、できるだけ早い段階で刑事事件に精通した弁護士に相談することが、最善の一歩になります。

代表弁護士 平田裕也

この記事を監修した弁護士

代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)

広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号

所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。

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