不同意わいせつで告訴された事案|示談により不起訴処分
告訴され逮捕の可能性→不起訴処分
広島市中区の30代男性が、不同意わいせつ事件で告訴された後、示談により不起訴処分となった解決事例です。
30代男性/広島市中区
事例を読むcolumn
弁護士コラム
不同意性交等罪は、2023年の刑法改正で新しく設けられた性犯罪です。名称こそ耳慣れないかもしれませんが、その内容を正しく理解している人は多くありません。どのような行為が罪に問われるのか、有罪になればどの程度の刑が科されるのか、逮捕されたあとは何が起きるのか。漠然とした不安を抱えたまま情報を探している方も多いはずです。
この記事では、不同意性交等罪について、成立要件・量刑・逮捕後の流れという3つの柱に分けて、弁護士の視点から体系的に解説します。個別の示談交渉や弁護活動の中身ではなく、まずこの罪の全体像を正確につかむための内容です。
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
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不同意性交等罪は、2023年7月13日に施行された改正刑法で新設された犯罪です(刑法177条)。それまで別々に規定されていた強制性交等罪と準強制性交等罪が統合され、名称も成立の枠組みも大きく作り替えられました。
この罪が守ろうとしているのは、性的なことを自分で決める自由、すなわち性的自己決定権です。改正前は暴行または脅迫を用いた場合に処罰が限られていましたが、改正後は、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態を作り出し、あるいはその状態を利用して性交等を行えば成立する形に転換されました。これにより、恐怖で体がすくむ、立場の上下で逆らえないといった、暴力を伴わない状況も処罰の対象として明確になっています。
性別を問わず加害者にも被害者にもなり得る点、婚姻関係の有無にかかわらず成立する点も特徴です。なお、令和7年版の犯罪白書によれば、令和6年の不同意性交等の認知件数は3,936件で、前年から45.2%増加しています。社会の関心と摘発の双方が高まっている領域だといえます。
この罪が成立するかどうかは、おおまかに次の3つの要素で判断されます。第一に一定の原因となる行為や事由があること、第二にそれによって同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態が生じている、またはその状態に乗じていること、第三に性交等が行われたことです。順に見ていきます。
まず、ここでいう性交等には、次の行為が含まれます。
このうち4つ目は、改正によって性交等の範囲に取り込まれた類型です。これらに至らない接触などは、不同意性交等罪ではなく不同意わいせつ罪(刑法176条)の問題となります。
同意しない意思の形成等が困難な状態を生じさせる原因として、法律は8つの事由を例示しています。整理すると、大きく次のように分類できます。
重要なのは、これらが限定列挙ではなく例示であるという点です。条文にはこれらに類する行為や事由という文言が置かれており、列挙された8つに当てはまらなくても、同様の状況であれば成立し得ます。
改正によって、いわゆる性交同意年齢が13歳未満から16歳未満へ引き上げられました。16歳未満の相手に対しては、原則として同意の有無や前述の事由を問わず、性交等を行えば罪が成立します。
ただし、相手が13歳以上16歳未満の場合は、加害者が5歳以上年長であることが要件とされています。これは、年齢の近い若年者同士の関係まで一律に処罰対象としないための調整です。一方、13歳未満が相手の場合は、年齢差を問わず成立します。
このほか、わいせつな行為ではないと誤信させる、行為の相手について人違いをさせる、あるいはそうした誤信や人違いに乗じて性交等を行う場合も処罰されます(刑法177条2項)。たとえ表面的には応じていても、行為の意味や相手を正しく認識できていない以上、有効な同意とは評価されないためです。また、親などの監護者が18歳未満に対しその立場による影響力を利用して性交等を行う場合は、監護者性交等罪(刑法179条)として、本罪と同様に扱われます。
成立要件と並んで関心が高いのが、実際にどの程度の刑が科されるのかという点でしょう。
不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。有期拘禁刑の上限は20年であるため、基本となる刑の幅は5年以上20年以下となります。さらに、併合罪などの事情で加重される場合は最長30年まで引き上げられ、逆に有利な事情があって減軽される場合は下限を下回ることもあります。罰金刑の定めはありません。
行為の過程で被害者を死傷させた場合などは、より重い罪が適用されます。代表的なものを挙げます。
致死傷罪は結果的加重犯であり、基本となる行為が未遂であっても、死傷の結果が生じていれば成立する点に注意が必要です。
法定刑の下限が5年と聞くと、必ず実刑になるように思えるかもしれません。しかし、有利な事情が認められて酌量減軽されれば、刑期は2年6月まで下がり得ます。執行猶予は3年以下の拘禁刑に付すことができるため、酌量減軽が認められれば執行猶予の可能性が生まれます。
実務では、初犯であること、深く反省していること、そして何より被害者との示談が成立していることなどが、酌量減軽と執行猶予を引き寄せる大きな要素になります。逆に、こうした事情が乏しければ、初犯であっても実刑となり刑務所に収容される現実的な可能性が残ります。
最終的な刑の重さは、次のような事情を総合して判断されます。
最後に、捜査が始まってから処分が決まるまでの流れを概観します。
事件は多くの場合、被害者が被害届や告訴を提出することで捜査機関に発覚します。捜査が進むと、必ずしも逮捕されるとは限らず、身柄を拘束せずに在宅で捜査が進む在宅事件となることもあります。一方で、性犯罪は重大事件として扱われやすく、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されれば逮捕に至ります。逮捕の事実が報道され、実名が公表されるリスクがある点も、この種の事件の重い側面です。
逮捕された場合の手続きは、おおむね次のように進みます。
ここで分かれ道となるのが、起訴・不起訴の判断です。不起訴となれば前科はつかず事件は終了します。これに対して起訴されると、不同意性交等罪には罰金刑がないため、書面だけで完結する略式手続きは取られず、公開の法廷で正式な裁判を受けることになります。前述のとおり日本の刑事裁判では起訴後に有罪となる割合が高いため、処分が決まる前の段階でどう対応するかが、その後を大きく左右します。
不同意性交等罪は、2023年の改正で成立の枠組みが暴行・脅迫中心から同意の困難さを軸とするものへと転換され、処罰の範囲が明確に広がりました。法定刑は5年以上の有期拘禁刑と重く、死傷の結果を伴えばさらに加重されます。初犯でも実刑があり得る一方、有利な事情がそろえば執行猶予の余地も残されています。
成立要件や量刑、手続きの流れは複雑で、自分のケースがどこに当てはまるのかを正確に見極めるのは容易ではありません。捜査の対象となっている、あるいは家族がその立場にあるという場合は、早い段階で刑事事件に詳しい弁護士に相談し、見通しと取るべき対応を確認することをおすすめします。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について
おりづる法律事務所にお寄せいただいたご相談をもとに、不同意わいせつ・性犯罪の解決事例をご紹介します。