債務整理の弁護士費用はいつ払う?着手金・報酬金の支払いタイミングと費用が用意できないときの対処法
債務整理を弁護士に依頼したいけれど、今すぐお金の余裕がない。そう思って一歩踏み出せずにいる方は少なくありません。
実は、弁護士費用の支払いタイミングや仕組みを正しく理解すると、手元にまとまった現金がなくても依頼できるケースがほとんどです。この記事では、着手金と報酬金のそれぞれをいつ払うのか、手続きの種類ごとにどう変わるのか、そして費用を用意できない場合にどう対処すればよいかを順を追って解説します。
費用面の不安を解消したうえで、適切なタイミングで専門家に相談できるよう、正確な情報をまとめました。
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1. 弁護士費用の内訳を理解する
債務整理を弁護士に依頼する場合、費用はおおまかに3つに分かれます。それぞれの性質と発生するタイミングが異なるため、まず全体像を把握しておくことが大切です。
弁護士費用の種類と支払いタイミング
| 費用の種類 | 内容 | 支払いタイミング |
|---|---|---|
| 着手金 | 業務を開始するための費用。結果にかかわらず返還されない | 委任契約を結んだとき(依頼時) |
| 報酬金(成功報酬) | 和解成立・免責決定など、手続きが成功した際の費用 | 手続きが完了したとき |
| 実費 | 郵便切手代・書類取得費など実際にかかった費用 | 都度または精算時 |
着手金と報酬金は弁護士費用の中心ですが、手続きの種類によって金額の構成が変わります。たとえば任意整理では着手金と報酬金の両方が発生するケースが多い一方、個人再生や自己破産では着手金のみで報酬金を設定しない事務所もあります。依頼前に費用の全体像を確認しておくことが重要です。
なお、日本弁護士連合会(日弁連)は2011年4月以降、消費者や零細事業者の任意整理事件について、弁護士報酬の上限を定める規程を設けています。この規程は任意整理が主な対象で、個人再生や自己破産は適用外ですが、事務所ごとの規程を事前に確認する習慣をつけておきましょう。
2. 手続きの種類ごとの支払いタイミング
2.1 任意整理の場合
任意整理では着手金と報酬金の2段階で費用が発生します。
着手金は、弁護士と委任契約を結んだ時点で支払います。多くの事務所では1社あたり2万〜5万円程度を設定しており、契約時に一括または分割で支払う形になります。
報酬金は、債権者との交渉がまとまり和解が成立した時点で発生します。解決したことに対して支払う解決報酬金と、借金を減額できた金額をもとに算定する減額報酬金の2種類があり、両方を設定している事務所もあれば、いずれか一方のみの事務所もあります。事前に確認しておきましょう。
任意整理は裁判所を通さないため、裁判所費用は発生しません。実費として郵便切手代や通信費が数千円〜1万円程度かかる場合があります。
2.2 個人再生の場合
個人再生では弁護士費用に加えて裁判所費用も発生します。どちらも一括払いが原則ですが、弁護士費用については多くの事務所で分割払いに対応しています。
着手金は委任契約を結んだ時点で発生します。個人再生の場合は30〜50万円程度が一般的な目安ですが、事務所によって大きく異なります。
裁判所に支払う費用は、収入印紙代・予納郵便切手代・官報公告費用・個人再生委員への予納金などを合わせると、おおむね20万円前後になるケースが多いです。この裁判所費用は分割払いができず、申立て前までに一括で準備する必要があります。ただし法テラスの民事法律扶助制度を利用した場合は、費用の立替制度を使うことで対応できるケースもあります。
住宅ローン特則を利用する場合は、上記に加えてさらに10〜20万円程度の追加費用が発生することがあります。
2.3 自己破産の場合
自己破産の費用は、手続きが同時廃止になるか管財事件になるかによって大きく変わります。財産がほとんどない場合は同時廃止となり費用が抑えられますが、財産がある場合は管財事件となり、破産管財人への引継予納金が別途必要になります。
着手金は委任契約を結んだ時点で発生します。弁護士費用の相場は20〜50万円程度ですが、事務所によって異なります。
裁判所費用は申立て前に一括で用意する必要があります。同時廃止の場合は収入印紙代・郵便切手代・官報費用などで1.5万〜3万円程度、管財事件になると破産管財人への引継予納金として20万〜50万円以上が追加でかかります。
自己破産では免責許可決定が下りると借金の返済義務が免除されますが、弁護士費用はこの免責の対象外です。手続きが完了しても弁護士費用の支払い義務は残るため、混同しないようにしましょう。
3. 弁護士に依頼した直後に返済が止まる仕組み
費用の話をする前に、多くの方が気にしている今すぐ手元にお金がないという問題を解決する重要な仕組みを理解しておく必要があります。
弁護士と委任契約を結ぶと、弁護士は各債権者(消費者金融・カード会社など)に対して受任通知という書面を送付します。この受任通知を受け取った貸金業者や債権回収会社は、貸金業法第21条第1項第9号の規定により、債務者本人への直接の取り立てや督促が禁止されます。違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金という罰則があるため、正規の貸金業者は受任通知を受け取った後は督促をやめます。
このとき、毎月の借金返済もあわせて一時的にストップさせます。これまで返済に充てていたお金が手元に残るようになるため、その資金を弁護士費用の積立に回すことができるのです。
たとえば毎月5万円を返済していた方であれば、依頼後からその5万円が手元に残り、弁護士費用の分割払いに使える計算になります。着手金を分割で支払う場合は、この返済ストップ後の余裕資金を活用するのが一般的なパターンです。
ただし注意点が2つあります。1つ目は、受任通知で督促が止まるのは貸金業者や債権回収会社が相手の場合です。銀行には貸金業法の取り立て規制が直接適用されませんが、実務上は多くの銀行も受任通知後に直接の督促を控えます。ただし銀行が債権者の場合、受任通知の送付によって預金口座が凍結・相殺されるケースがあるため、口座残高の取り扱いは弁護士と事前に確認しておきましょう。2つ目は、個人の知人など貸金業者以外が相手の場合は、受任通知による督促停止の法的強制力が及びません。
4. 費用が用意できないときの対処法
4.1 着手金の分割払い・後払い
債務整理を積極的に扱っている弁護士事務所の多くは、着手金の分割払いに対応しています。一般的には3〜6回払いが目安で、初回の支払いは依頼後1週間以内に設定されるケースが多いです。
ただし着手金を分割払いにした場合、実際の交渉や申立てなどの手続きが始まるのは、着手金の支払いが完了した後になるのが一般的です。受任通知の送付と督促停止は依頼直後から行われますが、具体的な交渉・申立てのタイミングは事務所の方針や契約内容によって異なるため、依頼時に確認しておきましょう。
後払いに対応している事務所もあります。ただし、後払いの仕組みや条件は事務所によって大きく異なります。広告などに記載がなくても、依頼前に支払い方法について相談すると対応してもらえるケースがあります。
4.2 法テラスの民事法律扶助制度を活用する
収入や資産が一定の基準を下回る方は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できます。この制度では、法テラスが弁護士費用を立て替えたうえで、依頼者が月5,000〜10,000円程度の分割払いで返済していく仕組みになっています。
法テラスを通じた弁護士費用の目安は、通常の事務所に依頼する場合の半額程度とされています(2025年3月時点)。また、報酬金が免除される点も大きなメリットです。生活保護を受給している方は、費用の返還義務そのものが免除されるケースもあります。
ただし、法テラスの利用にはいくつかデメリットもあります。担当する弁護士を自分で選べないこと(持ち込み方式という例外はありますが、大手事務所は対応していないケースが多い)、審査に時間がかかること、裁判所費用は一括払いが原則であること(生活保護受給者を除く)などが挙げられます。急いでいる場合や特定の事務所に依頼したい場合は、直接依頼する方法と比較して判断しましょう。
費用が払えないときの選択肢まとめ
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 着手金の分割払い | 弁護士を自由に選べる。手続きが早い | 分割が完了するまで本格手続き開始が遅れることがある |
| 法テラス(民事法律扶助) | 費用が安く月払いで済む。報酬金免除 | 弁護士を選べない。審査に時間がかかる。裁判所費用は一括 |
| 返済ストップ後の資金を活用 | 依頼直後から督促が止まり余裕が生まれる | 銀行口座の凍結リスクあり(銀行が債権者の場合) |
5. 費用に関して事前に知っておくべき注意点
弁護士費用の支払いについては、いくつか見落としがちな注意点があります。依頼前に確認しておくことでトラブルを防げます。
着手金は原則として返金されない 委任後に手続きを途中でやめた場合や、結果が望んだとおりにならなかった場合でも、着手金は返金されないのが原則です。依頼前に十分な説明を受けて、納得してから契約することが大切です。
費用の支払いを滞納すると辞任されるリスクがある 分割払いで弁護士費用を支払っている期間中に滞納が続くと、弁護士から辞任されることがあります。辞任されると督促が再開され、それまでに支払った費用も戻ってきません。無理のない支払い計画を事前に決めておきましょう。
費用倒れに注意する 借金の減額幅よりも弁護士費用の方が大きくなってしまうケースを費用倒れといいます。たとえば借金の残額が1社あたり10万円程度の場合、任意整理の着手金と報酬金を合わせると費用倒れになる可能性があります。信頼できる弁護士は費用倒れになりそうな場合には事前に説明してくれます。
見積もりは必ず書面でもらう 口頭での説明だけでなく、委任契約書や費用の見積書を必ず書面でもらいましょう。日弁連の規程では、弁護士には依頼者への報酬説明義務が定められています。
まとめ
債務整理の弁護士費用の支払いタイミングを整理すると、着手金は委任契約を結んだ依頼時に発生し、報酬金は手続きが成功した後に発生します。裁判所を通す手続き(個人再生・自己破産)では裁判所費用も別途必要で、こちらは申立て前に一括で準備するのが原則です。
手元にお金がなくても依頼できる理由は、弁護士が受任通知を送った後から借金の返済が一時ストップするからです。その浮いた資金を弁護士費用の分割払いに充てることで、まとまったお金がなくても手続きを進めることができます。収入が基準以下の場合は法テラスの民事法律扶助制度という選択肢もあります。
費用面で不安があったとしても、それを理由に相談を先送りにすることで、遅延損害金が増え続け状況が悪化するリスクがあります。初回相談が無料の事務所が多いので、まずは費用の見積もりも含めて相談してみることをおすすめします。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。