高齢の母が歩行中に事故|高次脳機能障害で5級認定・約5200万円を獲得
「高齢で後遺障害の立証は困難」→5級認定・約5200万円
広島市中区の70代女性が歩行中の事故で高次脳機能障害を負い、ご家族の陳述と専門医の検査で後遺障害5級の認定を得て、約52…
70代女性/広島市中区
事例を読むcolumn
弁護士コラム
治療が長引いている、後遺障害の認定で揉めている、相手が保険に入っておらず連絡がつかない。交通事故の解決が長期化すると、ふと不安になるのが、慰謝料を請求できる期限はいつまでなのかという問題です。
結論からいうと、交通事故の慰謝料には時効があります。原則は5年、どれだけ長くても20年で、この期限を過ぎると相手に請求する権利そのものが消えてしまいます。しかも、どの時点から数え始めるのかは損害の種類によって違い、請求先が自賠責か任意保険か自分の保険かでも期間が変わります。
この記事では、慰謝料の時効期間と起算点を整理したうえで、時効が迫ったときにそれを止める具体的な方法を解説します。解決に時間がかかりそうな人ほど、早めに読んでおいてほしい内容です。
弁護士に相談することで、解決への道筋が見えてきます。
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交通事故の慰謝料は、加害者に対する損害賠償請求権の一部です。この請求権は民法で時効期間が定められていて、人の生命や身体を害する不法行為による損害については、損害と加害者を知った時から5年で時効にかかります。慰謝料だけでなく、治療費や休業損害、逸失利益といった人身に関わる損害はすべてこの5年に含まれます。
一方、車の修理費や壊れた持ち物の弁償といった物の損害については、時効期間が3年と短くなっています。同じ事故でも、ケガの分は5年、車の分は3年と別々に時効が進むという点は押さえておいてください。
もうひとつ、事故の時から20年という期限があります。こちらは損害や加害者を知っていたかどうかに関係なく、事故発生から20年が経てば請求権が消えるというものです。
たとえばひき逃げで加害者がわからないまま時間が過ぎた場合、5年の時効は加害者を知った時から数え始めるので進みませんが、20年の期限は事故の日から進み続けます。事故から20年が経過すれば、後から加害者が判明しても請求はできません。
なお、改正前の民法ではこの20年は除斥期間と呼ばれ、止める手段のない絶対的な期限とされていました。改正後は20年も時効として扱われるようになり、後述する完成猶予や更新の対象になっています。
人身損害の時効を5年とするルールは、2020年4月1日に施行された改正民法によるものです。それ以前は物損と同じ3年でした。
ただし、経過措置によって、2020年4月1日の時点でまだ旧法の3年時効が完成していない事故には、新しい5年のルールが適用されます。つまり2017年4月1日以降に起きた事故であれば、基本的に5年で考えて差し支えありません。それより古い事故は、すでに旧法の時効期間を過ぎている可能性が高く、個別の確認が必要です。
時効期間よりも実務で問題になりやすいのが、いつから数え始めるのかという起算点です。同じ事故でも、損害の種類によって起算点は3つに分かれます。
ケガの部分は事故日から、後遺障害の部分は症状固定日から数えるという違いが重要です。たとえば事故から1年後に症状固定と診断された場合、入通院慰謝料の時効は事故日から5年、後遺障害慰謝料の時効は症状固定日から5年なので、後者のほうが1年遅く完成します。
なお、症状固定の前に事故から5年が経過してしまうと、治療中でも入通院慰謝料の時効が問題になります。重傷で治療が数年に及ぶ場合は、後述する時効を止める措置を早めに検討してください。
加害者が誰かわからない事故では、警察の捜査などで加害者が判明した日が起算点になります。判明しない限り5年の時効は進みませんが、前述のとおり20年の期限は事故日から進みます。
起算点の違いを、ひとつの事故に当てはめて確認してみます。2023年5月10日に事故に遭い、1年間の治療を経て2024年5月10日に症状固定、後遺障害14級が認定されたケースです。
同じ事故でも、期限は4つに分かれていることがわかります。とくに自賠責への請求は、加害者本人への請求より2年早く終わる点に注意が必要です。
ここまでは加害者本人や、加害者の任意保険会社に対する請求の話でした。しかし交通事故の被害者が慰謝料を請求する先は、それだけではありません。請求先ごとに時効期間が異なるため、整理しておきます。
被害者が加害者の自賠責保険会社に直接請求する場合、その時効は3年です。自賠責保険は自動車損害賠償保障法という別の法律にもとづく制度で、民法の改正後も3年のまま変わっていません。
起算点の考え方は民法と同じで、ケガの部分は事故日の翌日、後遺障害の部分は症状固定日の翌日、死亡の部分は死亡日の翌日から数えます。加害者本人への請求が5年あるからと安心していると、自賠責への請求だけ先に時効を迎えてしまうことがあります。
人身傷害保険、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険など、自分や家族の自動車保険から受け取る保険金の請求権は、保険法により3年で時効にかかります。起算点は保険金を請求できるようになった時で、多くの場合は事故日や症状固定日です。
ひき逃げや無保険車による事故で、加害者側から補償を受けられない被害者を救済する政府保障事業への請求も、時効は3年です。加害者が特定できない事故では、この制度が事実上の請求先になるため、期限を意識しておく必要があります。
普通に示談交渉が進んでいれば、時効を気にする場面はあまりありません。しかし次のような状況では、気づかないうちに期限が近づいていることがあります。
とくに交渉が止まったまま放置しているケースは危険です。保険会社から連絡が来なくなると、そのうち向こうから動くだろうと待ってしまいがちですが、時効は待っているあいだも進んでいます。
時効の完成が近づいてきたときに取れる手段はいくつかあります。改正民法では、時効の進行をいったん止める完成猶予と、それまでの期間をリセットして数え直す更新という2つの効果に整理されています。
加害者側が損害賠償の義務を認める行為をすると、時効は更新され、そこからあらためて5年を数え直します。これを承認といいます。
実務で承認にあたるのは、保険会社が治療費を病院に支払う、休業損害の内払いをする、慰謝料の金額を提示するといった行為です。相手の保険会社が対応を続けているあいだは、その都度時効が更新されているので、実は時効の心配はほとんどありません。逆にいえば、保険会社の支払いや連絡が途絶えた時点から、時効が本格的に進み始めると考えてください。
相手に対して損害賠償を請求する意思を書面で伝えることを催告といいます。催告をすると、その時から6か月のあいだは時効が完成しません。
ただし催告の効果は一度きりで、6か月以内にもう一度催告しても延長にはなりません。あくまで訴訟などの本格的な手続きを準備するための時間稼ぎとして使う手段です。いつ請求したかを証明できるよう、必ず内容証明郵便で送ってください。
改正民法で新しく設けられたのが、当事者が話し合いを続けることを書面で合意した場合の完成猶予です。合意した時から1年間、時効の完成が先送りされます。1年経ったら再度合意することもでき、通算で5年まで延ばせます。
示談交渉が続いているものの結論が出ていない場合に、訴訟を起こさずに時間を確保できる方法です。保険会社との間で書面を交わす必要があるため、弁護士を通じて手続きするのが確実です。
裁判所に訴訟を起こす、支払督促を申し立てる、民事調停を申し立てるといった裁判上の手続きをとると、その手続きが終わるまで時効は完成しません。そして判決が確定したり調停が成立したりすると時効が更新され、確定した権利については新たに10年の時効期間が始まります。
時効が迫っていて相手が交渉に応じない場合の、最も確実な方法です。
自賠責保険への請求については、保険会社に時効中断申請書を提出することで時効の進行を止められる運用があります。申請書は自賠責保険会社から取り寄せることができ、承認されればそこから新たに3年を数え直します。
自賠責は民法より時効が短いため、示談が長引きそうなときは、この手続きを早めにとっておくと安心です。
時効を止める手段があっても、期限を把握していなければ使えません。長期化しそうな事故では、次の点を自分で管理しておくことをおすすめします。
保険会社の支払い記録は、承認による更新があったことを証明する資料になります。時効を争う場面になったとき、いつ最後に支払いを受けたかを示せるかどうかで結果が変わることがあります。
時効期間が過ぎると、自動的に請求権が消えるわけではありません。相手が時効を主張して初めて、請求権が消滅します。これを時効の援用といいます。
理屈のうえでは、相手が援用しなければ請求は可能です。しかし保険会社は時効の管理を徹底しているため、期間が過ぎた請求に対しては、ほぼ確実に時効を援用してきます。加害者本人に対する請求でも、相手が弁護士に相談すれば同じことです。時効を過ぎてから何とかしようとするのは現実的ではなく、期限内に止める手段をとることが唯一の対策です。
交通事故の慰謝料は、損害と加害者を知った時から5年、事故の時から20年で時効にかかります。ケガの部分は事故日から、後遺障害の部分は症状固定日から数え、自賠責保険や自分の保険への請求は3年と短くなります。
保険会社が支払いや交渉を続けているあいだは時効の心配は小さいものの、連絡が途絶えた時点から期限は確実に近づきます。時効が迫ったら、内容証明での催告、協議継続の書面合意、訴訟や調停の申立て、自賠責への時効中断申請といった手段で止めることができます。
事故から何年も経っているのに解決していないという人は、まず自分の事故の起算点がいつなのかを確認し、残り期間が1年を切っているなら、すぐに弁護士へ相談してください。
この記事を監修した弁護士
代表弁護士 平田裕也(ひらた ゆうや)
広島弁護士会所属/弁護士登録番号 第57063号
所属弁護士が150名程度いる大手法律事務所にて、約2年間にわたり支店長を務め、現在に至る。 大手法律事務所所属時代には、主として不貞慰謝料請求、債務整理及び交通事故の分野に関して,通算1000件を超える面談を行い、さまざまな悩みを抱えられている方々を法的にサポート。 その他弁護士業務以外にも、株式会社の取締役を務めるなど、自ら会社経営に携わっているため、企業法務及び労働問題(企業側)にも精通している。
平田弁護士について
おりづる法律事務所にお寄せいただいたご相談をもとに、交通事故の解決事例をご紹介します。
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